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17歳の俺
第4王子17歳 4
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クロウディア領に入った。きちんと関所の前で転移していたので密入国にはなりません。大事だからね。
その領地では中心となる街に入る。確かここの近くに侯爵の屋敷があるらしい。まあ、非公式だし挨拶しなくていいだろう。面倒だし。
ただ、気になるのはこのピリピリした空気だ。少し情報収集でもした方がいいだろうか。ティナは人混みに酔いそうだというので下を向いてもらい、俺が手を引いて案内している。まあ俺も人混み苦手だしね。周りの声が聞こえるように魔術を使いながら適当に食いもんを買う。俺も多少はお金持ってるからね。
肉串を買い、お金を出そうとするとすかさず後ろからティナがお金を出された。君こういう時は早いんだね。
丁度近くのベンチに座り、ティナに食べさせ、自分で食べる。中々美味しい。
「聞いたか?」
「ああ、あれだろ?竜が出たって」
「そうそう。領主様のご子息様が双子だから天罰に現れたって聞いてるぜ」
噴き出しそうになった。
「え!そうなのか!?」
「ああ、統治する者が双子を産むとある年に災厄が訪れるっていう言い伝えがあるらしい」
まじかよー。知らなかった。そういう言い伝えがあるのかー。だからあんなに拗れてたのかー。はー、納得。
というか、その話聞いて一気に嘘くさくなったな。竜じゃなくて空飛ぶ何かをそう言ってんじゃねーの?
双子が災いなんて王宮では聞いたことないぞ。当該書物を読んでないからか?でも、双子なんて生まれるの確率じゃん。珍しいものには排他的なのかな。俺だったら喜んで調べるけど。珍しものだったら猶更。皆変わってるなぁ。
「―――だから、領主様のご子息が行くとか」
え?まじで?
かち合う前にとっとと調べてかーえろ。
肉串を食べ終わり、ティナの手を引いて人気のないところに向かう。それからティナが示した場所に転移した。
物静か、であるが、どことなく冷気が漂いい血の匂いがする。
視線を彷徨わせると数メートル先にその巨体が木々の間から見えた。周りにノイン君やノルン君らしき人影は見えない。その事にほっとしながら、俺は竜の様子を見る。
それは地面に伏せていた。寝ているように見える。後ろには何か崩れた祠のようなものが見え、所々に人の腕や足、胴体が散らばっている。やっべ、すでに死んでるかも。
急いで双子の居場所を確認すると、馬車に乗って此方にゆっくりとやってきていた。良かった。
とはいえ、あの竜。この距離で俺たちに気付いてないのか?別に気配を遮断しているわけでもないのに。
いや、俺が竜に期待しすぎたかな。伝説とはいえ、上位悪魔とか天使見てるからな。無意識に高いのかも。
「ティナ。そこで待機」
「畏まりました」
「ん」
知能があれば会話して説得。ないようなら死なない程度に拘束。
そう思いながら、竜に近寄る。そして、竜に一定の距離近づくと竜が起き上がり鳴き声をあげた。
そして―――
『魔導兵器3096、始動。命令3により対象者の排除を行います』
「……ですよねー」
やっぱり本物の竜じゃなかったわー。
魔導兵器か。結構前にそれ調べたんだよね。材質もその時代に最高のものを使っているから同じものばっかり。一桁、ないし二桁代であれば試作品の類いなので調べがいがあるが、そんなものが残っている訳もない。一応ここから一通り鑑定してみるが、やっぱり前調べたのと同じだわ。やる気無くす~。かさばるから持っていけないしぃ。
機械だから血液もないし。持っていくなら心臓部の魔力回路か?もっと伝導率を上げる研究をするとか。まあ、未来の為に持っていくか。
ぶんっと尻尾が振るわれた。氷の壁を作って防ぐとその羽を動かして空に舞い上がる。そして、口を大きく開き冷気を発する。木々が凍り付き俺は壁を作って攻撃を防いだ。
珍しい。冷却系の魔術か。
「死を呼ぶ炎」
人差し指を向けるとその魔導兵器の周りに青色と黒色の炎が包み込み、一瞬で骨組みが消えた。残ったのは心臓部の魔力回路が施され、魔力が中に入っている筒だけがそこから落ちた。落ちたぐらいでは壊れないそれを回収した。
「お見事です!殿下」
「ああ、ありがとう。これ、持って」
「はい殿下!」
そう言ってティナは鞄にそれを詰めた。亜空間に物入れられる鞄だから大丈夫だ。
俺はそのままバラバラ死体を横目に崩れた祠に向かう。出入口が崩れているが、地下に空間が続いている。
研究施設か?だったら嬉しいなー。面白いのありそう。
そう思っていたら、その崩れた祠に植物のツタが絡み入りやすいように入り口が開かれた。
「どうぞお入り下さいませ。殿下」
「ありがとう」
ティナは植物を操る魔術に特化されている。植物とかの場所にいれば最強だ彼は。
入りやすいように開けてくれたそこの隙間から中に入る。明かりのランタンを出したティナが先行しながら進む。床には真新しい足跡が残っていた。森を歩いてきたのならば土がついても違和感ないだろう。一人、二人……五人か。
そして外の死体の数を数える。
「足りないな……」
「殿下」
「ん?」
とある部屋に明かりが漏れている。それはちらちらと揺れていた。
誰かいるのだろうか。
「様子を見てまいります」
「いや、俺も行くよ」
「分かりました。あまり離れませんようお願いします」
「了解了解」
まだ気になるものないしな。
ティナのマントを掴みながら、その部屋に向かうと何かがティナに突撃してきた。ぎょっと俺がティナを見るとティナが目にもとまらぬ速さで何かを横殴りにする。
その瞬間、獣の唸り声のような鳴き声が聞こえたが、途中で止まった。そしてぎちぎちと何かを拘束している音がする。
「殿下、どうぞ」
「あ、うん。ありが……っ!」
ティナが頭を下げて俺に道を譲るが、からんっと音がして足元に血の付いたナイフが落ちた。そして、ぽたぽたとティナのわき腹から血が滴っている。
俺はそれを見て血液が下に下がっていくような感覚を覚えた。
「うわああああああああっ!?」
「え!?どうしましたか殿下!!」
何でもないように話をするティナが怖い。君さっきぶつかられたときに刺されてたんじゃないの!?なんで言わないの!!
「治癒!!」
「え、あ……」
「ケガしてるなら言って!びっくりしたわ!!後は!?ちょっと体診せて!!」
「ひゃっ!」
ティナの外套を剥ぐようにして怪我の具合を確認する。他にはけがはないようだ。ナイフに毒が塗られていないようで良かったよ。毒あったら取り返しのつかないことになってた。もう!ティナってば痛くなかったの!?俺だったら痛いからすぐに治療するんだけど!
ともあれ、大した傷じゃなくてよかったよ。
「ティナ、傷がついたらどんな小さくても言って」
「は、はい殿下」
ぽわあっと惚けたような顔をして俺を見ているティナ。
分かってんのかこいつと、半眼で彼を見るが俺が気にかければいいだろうと結論付ける。俺ははあっとため息をついた後に部屋の中を改めてみた。
先ほど、ティナに襲い掛かったであろう人が蔦に拘束されている。血管が浮き出て、興奮状態のようで暴れまわっている。なんだこいつっと近寄って鑑定をする。
……半魔物化?
……。
たらっと冷や汗が流れる。聞いたことがある。聞いたことがあるような状態だ。
俺は他に部屋を漁る。試験管や管などの実験道具が散乱する中、綺麗に束ねられた紙を見つけた。俺はその紙を引っ掴み状態を確認してほっとした。
風化していない真新しい紙に最近のインクで書かれている。セーフ。俺じゃない。大体、こういう危ない実験は監禁されてからやってるから俺の研究結果が漏れることは無いか。あービックリした。
似たようなことやってたんだよね~。勿論人じゃないよ?ネズミで実験してた。魔物化。つまりは、自信の限界を超える代わりに理性を無くし、攻撃的に仕上げた生き物。
結果、俺は成功している。
人の実験は俺のクローンだ。今のこれのように血管が浮き出て暴れまわる。周りを攻撃するしか機能を持っていないのでこんな仕上がりになった。
べらべらとその紙を確認する。
……に、似てる、で済んでいいのかな。これ。
興味が無くなったら放置をする俺ではあるが記録は逐一覚えている。どんな記録をしどんな実験をしたか、正確に。
だが、いつ、だれに監禁されたときに俺はこの実験をしたのか覚えていない。それ一番大事なのに!
時間も誰がいようとも気にしない俺だからそこら辺は覚えていないのだ。
何かの手掛かりがあるだろうかと紙をめくり、息をのむ。
「―――名前」
「カルロッテ、ですか?」
ティナが俺の手元のそれをのぞき込んでそう言った。
流石の俺でも名前ぐらいは憶えている。いつの時代も名前は被らなかったからだともいえるが。
カルロッテ。カルロッテは一番初めの名前だ。
そもそものこうなってしまった一番最初の名前である。
――――ルチアーノだ。
ルチアーノしか知らないはずだ。記憶が残ってる?思い出した?いつ、どのタイミングで?どうしてこんなことをして―――。
ふと、どこかで見たことのあるような字を見つけた。
じいいいいっと食い入るようにその字を見つめて、はっとする。
「あ、あああああああっ!!!」
「ど、どうしましたか殿下!?」
あいつだ!絶対あいつ!!くっそ、俺を騙して殺した奴がぁっ!!
今まで気にしなかった俺の死因だ。
俺の死因、全てにとある人物が関与している。今にして思えば、全員同じ人物なのだろう。よく知りもせず、甘言に騙された俺が全面的に悪いがなっ!!
がりがりと親指の爪を噛んで、よくその人物について思い出そうとするが霞がかってよく思い出せない。何か、死ぬ前に術をかけられているのだろう。
くそ!くそがっ!!俺は善良な王子様だぞ!?というか、その時点でただの市民なのにひどい!!俺に何の恨みがあるんだてめえはぁっ!!
ああああああっともう一度叫んでぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜる。その姿をティナがおろおろとしているが少しばかり待ってくれ。もうすぐ落ち着くから。
ふーっと深呼吸をしてからティナを見て謝っておく。ふるふると首を振って大丈夫ですっと返してくれた。ごめんよ。
一先ず、俺の覚えている限りの彼の記憶を思い出すしかない。また殺されたらたまったもんじゃない。
俺今世は長生きすることを目的としているから!まじで辞めて本当に!!
その領地では中心となる街に入る。確かここの近くに侯爵の屋敷があるらしい。まあ、非公式だし挨拶しなくていいだろう。面倒だし。
ただ、気になるのはこのピリピリした空気だ。少し情報収集でもした方がいいだろうか。ティナは人混みに酔いそうだというので下を向いてもらい、俺が手を引いて案内している。まあ俺も人混み苦手だしね。周りの声が聞こえるように魔術を使いながら適当に食いもんを買う。俺も多少はお金持ってるからね。
肉串を買い、お金を出そうとするとすかさず後ろからティナがお金を出された。君こういう時は早いんだね。
丁度近くのベンチに座り、ティナに食べさせ、自分で食べる。中々美味しい。
「聞いたか?」
「ああ、あれだろ?竜が出たって」
「そうそう。領主様のご子息様が双子だから天罰に現れたって聞いてるぜ」
噴き出しそうになった。
「え!そうなのか!?」
「ああ、統治する者が双子を産むとある年に災厄が訪れるっていう言い伝えがあるらしい」
まじかよー。知らなかった。そういう言い伝えがあるのかー。だからあんなに拗れてたのかー。はー、納得。
というか、その話聞いて一気に嘘くさくなったな。竜じゃなくて空飛ぶ何かをそう言ってんじゃねーの?
双子が災いなんて王宮では聞いたことないぞ。当該書物を読んでないからか?でも、双子なんて生まれるの確率じゃん。珍しいものには排他的なのかな。俺だったら喜んで調べるけど。珍しものだったら猶更。皆変わってるなぁ。
「―――だから、領主様のご子息が行くとか」
え?まじで?
かち合う前にとっとと調べてかーえろ。
肉串を食べ終わり、ティナの手を引いて人気のないところに向かう。それからティナが示した場所に転移した。
物静か、であるが、どことなく冷気が漂いい血の匂いがする。
視線を彷徨わせると数メートル先にその巨体が木々の間から見えた。周りにノイン君やノルン君らしき人影は見えない。その事にほっとしながら、俺は竜の様子を見る。
それは地面に伏せていた。寝ているように見える。後ろには何か崩れた祠のようなものが見え、所々に人の腕や足、胴体が散らばっている。やっべ、すでに死んでるかも。
急いで双子の居場所を確認すると、馬車に乗って此方にゆっくりとやってきていた。良かった。
とはいえ、あの竜。この距離で俺たちに気付いてないのか?別に気配を遮断しているわけでもないのに。
いや、俺が竜に期待しすぎたかな。伝説とはいえ、上位悪魔とか天使見てるからな。無意識に高いのかも。
「ティナ。そこで待機」
「畏まりました」
「ん」
知能があれば会話して説得。ないようなら死なない程度に拘束。
そう思いながら、竜に近寄る。そして、竜に一定の距離近づくと竜が起き上がり鳴き声をあげた。
そして―――
『魔導兵器3096、始動。命令3により対象者の排除を行います』
「……ですよねー」
やっぱり本物の竜じゃなかったわー。
魔導兵器か。結構前にそれ調べたんだよね。材質もその時代に最高のものを使っているから同じものばっかり。一桁、ないし二桁代であれば試作品の類いなので調べがいがあるが、そんなものが残っている訳もない。一応ここから一通り鑑定してみるが、やっぱり前調べたのと同じだわ。やる気無くす~。かさばるから持っていけないしぃ。
機械だから血液もないし。持っていくなら心臓部の魔力回路か?もっと伝導率を上げる研究をするとか。まあ、未来の為に持っていくか。
ぶんっと尻尾が振るわれた。氷の壁を作って防ぐとその羽を動かして空に舞い上がる。そして、口を大きく開き冷気を発する。木々が凍り付き俺は壁を作って攻撃を防いだ。
珍しい。冷却系の魔術か。
「死を呼ぶ炎」
人差し指を向けるとその魔導兵器の周りに青色と黒色の炎が包み込み、一瞬で骨組みが消えた。残ったのは心臓部の魔力回路が施され、魔力が中に入っている筒だけがそこから落ちた。落ちたぐらいでは壊れないそれを回収した。
「お見事です!殿下」
「ああ、ありがとう。これ、持って」
「はい殿下!」
そう言ってティナは鞄にそれを詰めた。亜空間に物入れられる鞄だから大丈夫だ。
俺はそのままバラバラ死体を横目に崩れた祠に向かう。出入口が崩れているが、地下に空間が続いている。
研究施設か?だったら嬉しいなー。面白いのありそう。
そう思っていたら、その崩れた祠に植物のツタが絡み入りやすいように入り口が開かれた。
「どうぞお入り下さいませ。殿下」
「ありがとう」
ティナは植物を操る魔術に特化されている。植物とかの場所にいれば最強だ彼は。
入りやすいように開けてくれたそこの隙間から中に入る。明かりのランタンを出したティナが先行しながら進む。床には真新しい足跡が残っていた。森を歩いてきたのならば土がついても違和感ないだろう。一人、二人……五人か。
そして外の死体の数を数える。
「足りないな……」
「殿下」
「ん?」
とある部屋に明かりが漏れている。それはちらちらと揺れていた。
誰かいるのだろうか。
「様子を見てまいります」
「いや、俺も行くよ」
「分かりました。あまり離れませんようお願いします」
「了解了解」
まだ気になるものないしな。
ティナのマントを掴みながら、その部屋に向かうと何かがティナに突撃してきた。ぎょっと俺がティナを見るとティナが目にもとまらぬ速さで何かを横殴りにする。
その瞬間、獣の唸り声のような鳴き声が聞こえたが、途中で止まった。そしてぎちぎちと何かを拘束している音がする。
「殿下、どうぞ」
「あ、うん。ありが……っ!」
ティナが頭を下げて俺に道を譲るが、からんっと音がして足元に血の付いたナイフが落ちた。そして、ぽたぽたとティナのわき腹から血が滴っている。
俺はそれを見て血液が下に下がっていくような感覚を覚えた。
「うわああああああああっ!?」
「え!?どうしましたか殿下!!」
何でもないように話をするティナが怖い。君さっきぶつかられたときに刺されてたんじゃないの!?なんで言わないの!!
「治癒!!」
「え、あ……」
「ケガしてるなら言って!びっくりしたわ!!後は!?ちょっと体診せて!!」
「ひゃっ!」
ティナの外套を剥ぐようにして怪我の具合を確認する。他にはけがはないようだ。ナイフに毒が塗られていないようで良かったよ。毒あったら取り返しのつかないことになってた。もう!ティナってば痛くなかったの!?俺だったら痛いからすぐに治療するんだけど!
ともあれ、大した傷じゃなくてよかったよ。
「ティナ、傷がついたらどんな小さくても言って」
「は、はい殿下」
ぽわあっと惚けたような顔をして俺を見ているティナ。
分かってんのかこいつと、半眼で彼を見るが俺が気にかければいいだろうと結論付ける。俺ははあっとため息をついた後に部屋の中を改めてみた。
先ほど、ティナに襲い掛かったであろう人が蔦に拘束されている。血管が浮き出て、興奮状態のようで暴れまわっている。なんだこいつっと近寄って鑑定をする。
……半魔物化?
……。
たらっと冷や汗が流れる。聞いたことがある。聞いたことがあるような状態だ。
俺は他に部屋を漁る。試験管や管などの実験道具が散乱する中、綺麗に束ねられた紙を見つけた。俺はその紙を引っ掴み状態を確認してほっとした。
風化していない真新しい紙に最近のインクで書かれている。セーフ。俺じゃない。大体、こういう危ない実験は監禁されてからやってるから俺の研究結果が漏れることは無いか。あービックリした。
似たようなことやってたんだよね~。勿論人じゃないよ?ネズミで実験してた。魔物化。つまりは、自信の限界を超える代わりに理性を無くし、攻撃的に仕上げた生き物。
結果、俺は成功している。
人の実験は俺のクローンだ。今のこれのように血管が浮き出て暴れまわる。周りを攻撃するしか機能を持っていないのでこんな仕上がりになった。
べらべらとその紙を確認する。
……に、似てる、で済んでいいのかな。これ。
興味が無くなったら放置をする俺ではあるが記録は逐一覚えている。どんな記録をしどんな実験をしたか、正確に。
だが、いつ、だれに監禁されたときに俺はこの実験をしたのか覚えていない。それ一番大事なのに!
時間も誰がいようとも気にしない俺だからそこら辺は覚えていないのだ。
何かの手掛かりがあるだろうかと紙をめくり、息をのむ。
「―――名前」
「カルロッテ、ですか?」
ティナが俺の手元のそれをのぞき込んでそう言った。
流石の俺でも名前ぐらいは憶えている。いつの時代も名前は被らなかったからだともいえるが。
カルロッテ。カルロッテは一番初めの名前だ。
そもそものこうなってしまった一番最初の名前である。
――――ルチアーノだ。
ルチアーノしか知らないはずだ。記憶が残ってる?思い出した?いつ、どのタイミングで?どうしてこんなことをして―――。
ふと、どこかで見たことのあるような字を見つけた。
じいいいいっと食い入るようにその字を見つめて、はっとする。
「あ、あああああああっ!!!」
「ど、どうしましたか殿下!?」
あいつだ!絶対あいつ!!くっそ、俺を騙して殺した奴がぁっ!!
今まで気にしなかった俺の死因だ。
俺の死因、全てにとある人物が関与している。今にして思えば、全員同じ人物なのだろう。よく知りもせず、甘言に騙された俺が全面的に悪いがなっ!!
がりがりと親指の爪を噛んで、よくその人物について思い出そうとするが霞がかってよく思い出せない。何か、死ぬ前に術をかけられているのだろう。
くそ!くそがっ!!俺は善良な王子様だぞ!?というか、その時点でただの市民なのにひどい!!俺に何の恨みがあるんだてめえはぁっ!!
ああああああっともう一度叫んでぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜる。その姿をティナがおろおろとしているが少しばかり待ってくれ。もうすぐ落ち着くから。
ふーっと深呼吸をしてからティナを見て謝っておく。ふるふると首を振って大丈夫ですっと返してくれた。ごめんよ。
一先ず、俺の覚えている限りの彼の記憶を思い出すしかない。また殺されたらたまったもんじゃない。
俺今世は長生きすることを目的としているから!まじで辞めて本当に!!
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