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16歳の俺
第4王子16歳 12
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俺といると話ができない状態の彼、キースさん。(話の流れで自己紹介をされたので覚えた)ついにユアン兄さまがキレて追い出された。
ユアン兄さま!なんでよ!?貴方が勝手についてきた癖に追い出すって何!?もしや俺、キースさんを普通に戻すために呼ばれたの!?ただ単に、ユアン兄さまがその人と話をしたかったから、丁度いいと思ってついてきたの!?ユアン兄さま酷い!だったら別にアルト連れてこなくてもいいじゃんかー!
仕方ないのでアルトと一緒に(キルトは影に入った)下に向かう。よもや、学院をあまり分からない俺がふらふらする羽目になるとは……。
ちらっとアルトを見るが無表情で案内して?なんて言えない。
ええい!己の勘で突き進む!こっちです!!
すたすたと歩いていく。授業中なのか、廊下は静かで俺の足音だけが響く。アルトは、教育されているのか足音がまるでしない。腰に携えている剣が体に当たってガチャガチャと音も立てないし本当に後ろにいるのか分からない。うん、まあ、居なくなっていても一向にかまわないんだけど。
すたこらと歩いているといつの間にか広いところに出ていた。何だかコロシアムみたいなところで、多分、剣術とかの大会で使うのかな。今は授業の一環で魔獣退治のようなものを行っている。四本足の大きな魔獣で名前は知らない。知らないが、あの戦い方は何だ?
「何だあれ、初心者?」
数名が明らかに前衛装備ではないのに前で囮となっている。その後衛装備のものを庇って盾持ちの前衛がタンクを取っているが効率悪すぎる。その子の装備もお粗末で見れたもんじゃない。その上その後ろではちまちまと魔法を撃ったり、重装備で前衛の格好をしているにも関わらず参加していなかったりと、何やってるんだろう。
厳しい中で戦うっていう授業?
教師を見るとどっしりと椅子に掛けて見ている。注意しないところそういう授業なのだろう。多分。
「う……っ!」
「イリーナ!!」
「マイク!俺が時間を稼ぐから彼女を……!」
斥候であろう女の子が突進攻撃を受けて吹っ飛ばされた。後衛が攻撃されるなんて、タンク役はヘイトを稼ぐスキルも何も持ってないのか?
それよりも、イリーナとマイクって言ってなかった?
じっと倒れている女の子を見てはっとする。確かに彼女の面影がある。その彼女に駆けだしている男、タンク役で盾持ってる奴も見たことがある。
そして、一番は忘れもしないあの綺麗な王子顔!あれ絶対カイルだ。剣を振り、猛攻している。まあ、一匹だけだし対処は楽だろうが、それらを見ているだけなのは何だ?
班で決められてる?それなら魔法で攻撃しな……あぁっ!?
「へったくそ!いや待って今の見た、アルト!前に人いるのにそこに向かって直進の魔法を撃つとか初心者かな?」
同じ魔法を使える者として恥ずかしい下手くそぶり!俺だったら恥ずかしくて暫くひきこもるよ!
ゲラゲラ笑って指さし、アルトに同意を求めると彼は険しい顔でそれを見ていた。
「あ、ご、ごめん……」
思わずそう謝ると、アルトがはっとして此方を見た。それから慌てた様子で言葉を紡ごうとして、その前に「おい!」っと声をかけられた。
場所が遠いが、拡声魔術を使っているのだろう。先ほど下手くそ魔術を披露した男が声をかけてきたのだ。
やべえ、そんな大きな声じゃなかったと思うんだけど。笑ったのがまずかったのか?
「そこのお前!今なんて言ったっ!?」
「……えーっと……」
言うか言うまいか。だって授業中だし?こっちに注目してもらうと彼らがもっと対応できない!
どういえば機嫌を損ねないかと思案すると、すっとアルトが前に出た。
「下手くそ。前に人がいるのにそこに向かって直進の魔法を撃つとか初心者かな?と仰っていました」
ア、アルトー!!
なんでそういうこと言うの!ほらもう彼、顔を赤くしてぶるぶる震えてんじゃん!?ど、どうするんだよ!俺が悪口言ったのが悪いんだけどさ!
「だ、誰が下手くそで初心者だって!?」
「何を仰いますやら、見ていればちまちまとした魔術だけで一匹だけのそれも倒せず、その上射線上に人がいるにも関わらず魔術を放つ。愚行の極みですね。初心者と言われても仕方ないのでは?」
アルトが煽っていくスタイル!ひいっと俺が悲鳴をあげる。言ってない!そこまで俺は言ってない!!
なまじ顔がいいので無表情のまま淡々とそう言う姿は怖い。うっと男が思わずひるんでいるがその後ろで重装備の男と高そうな軽装備をしている女が彼に何かを言っている。
それをアルトが見下すように首をくいっと動かしじろっと睨みつけている。
その彼が何を言われたのかにやあっと笑った。
「おい、そんなに言うならお前がやってみろ」
「だそうですよ?」
「俺なんかい!」
元凶は俺だけど!煽ったのはお前だぞ!俺の方が立場的に上だからお前が尻ぬぐいしろよ!!
渋々、俺はそこに出た。だってうだうだしてたらカイルの体力が底つきそう。
「そんなローブ被って、お前も魔術師なんだろ?」
「え、あ、はいそうです」
「あんなこと言うんだから前衛がいても絶対に当たらないんだろ?」
「……あ、えー、まあ……」
寧ろ要らないとか言えない。というか、部外者の俺が入っていいの?ちらっと教師を見るがこちらを全く見ていない。容認しているのだろうか。教師の立場どうなってんだよ。
「どけ!」
そう言って重装備の男が攻防を繰り広げているカイルを押しのけ、ヘイト稼ぎのスキルを発動させる。男の方に魔物が襲い掛かり、それに群がるように今まで遠巻きに見ていた奴らがそれに襲い掛かる。わあお。こりゃ俺の出番ないぜ。
すーっと俺は倒れているカイルに近寄った。
「大丈夫?君」
「え、あ……」
「傷治すよ。治癒」
外傷はない。体力は流石に回復できないから療養してね?
魔物にあんなに群がってるんだから俺がいなくても……。
「邪魔なのよ!」
「ーーーっ!」
「イリーナ!」
隅でけがの手当てをしていたマイクとイリーナを押しのけて魔術を発動している奴がいた。バカなの?
「影槍」
その瞬間俺は魔物の影から槍のようなものを出して魔物を貫いた。確認しなくても死んでる。俺は、はあっとため息をついて今度はイリーナに近寄った。
「君の傷は?」
「あ……」
「診せて」
先ほどの突進で肋骨が一本折れている。痛いだろう。これも治癒で治して他に傷がないか念入りに調べる。女の子の体なんだから傷ものにしちゃだめだ。例えマイクが嫁にするだろうけども。
大丈夫そうなので今度はマイクを見る。
「君は?」
「お、俺は大丈夫だ」
「そう?ならいいけど」
診た感じ特に重い傷を受けているわけではなさそうだ。くるっと方向転換して最初にやられていた彼らの治療を行うが、俺の前に重装備の男が立ちふさがった。
まだ何かあるのか?俺は誰にも迷惑かけないで殺したぞ?
じろっと睨みつけると男は尊大な態度でこう言った。
「そんな奴より俺らの治療が先だろう!」
「え?怪我なんかしてないでしょ、何言ってんの?」
寧ろその装備で怪我するってどんだけ下手くそなの?
一応診てみるが、傷と言ってもかすり傷程度だ。これを怪我だなんて……。
「そんな怪我で喚くならこの授業辞めたら?大人しく安全な場所で安全な授業した方がいいと思うよ?」
「な……っ!俺が怪我をしたと言ってるんだぞ!?」
「頭大丈夫?」
心底心配してそう言うと彼がかっと顔を赤くした。すると、あの魔術下手くそ男が声をあげる。
「お前!この方を誰だと思ってるんだ!」
「はあ……」
「カール・コロエスタ侯爵様だぞ!」
侯爵?ちょっとどれぐらいの位か分からないけどとりあえず王族の俺よりは確実に下だよね?
というか、なんでここで身分をひけらかすの?何か意味あるの?
「えーっと、だから何?」
「だから何!?お前、どこの田舎者だ!」
「んー……」
これはどうすればいいのだろうか。
どういう経緯があって俺のことを侯爵以下の田舎貴族、もしくは平民だと思っているのか。思い込みが激しいのか?それにしたってひどくないか?どういう教育されてんの?
面倒になって怪我人の前に転移しさっさと治療する。それからすぐにアルトの元に転移して戻った。
この世には知らない方がいいものもあるよ。うん。
「おい!逃げるのか!」
下で何か騒いでいるが、聞こえないふりをする。
君達の為に何も言ってないんだよ。もうやめて俺に関わるのは。
「さてアルト、違うところに……」
ひゅんっと何かが風を切った。ぎゃあっと悲鳴が聞こえてみるとアルトが腰につけていた剣が皆の前に刺さっている。それからまたアルトを見ようとしてばっとフードを取られた。
何するん!?
「不敬だぞ!!この方を誰だと思ってる!!」
一瞬にして空気が凍り付いた。
アルトの怒気をはらんだ声に俺はびっくりする。それから恐る恐るコロシアムの方を見ると固まって顔を青くしている者ばかりだ。だからもう何も言わなかったのに。
「おい、何時まで呆けてるつもりだ?」
「も、申し訳ありません!!」
アルトの声にはっとしたのか一斉に頭を下げる。アルトはコロシアムに行って地面に刺さっている剣を引き抜き、鞘に納める。それから恭しく俺に向かって敬服のポーズを取った。
「申し訳ありません、殿下。殿下の温情を受けながら好き勝手に話をする彼らに我慢が出来ませんでした。甘んじて処罰を受けます」
「あー、そういうのは良いよ」
はあっとため息をついて、俺もそっちに向かう。
仕方ない。こうなったら俺は言いたいことを言う。権力の名の下に!
「最初に魔物と戦っていた奴以外この授業やめた方がいいよ?あと、教師って誰?他の授業担当したら?見てて不愉快だし、貴族としての矜持をはき違えてる子たちが多いみたいだから一から教育しなおしてね?アルト行くぞ」
「はっ!」
俺はそう言ってすぐにアルトを引き連れて出ていった。
うーん、やっちまった!
「アルトのせいだからー!」
「はい?私は殿下のお言葉をお伝えしただけですが?」
「俺のせいじゃない!俺のせいじゃない―!!」
「流石です殿下。4歳から何もお変わりなく、権力に笠を着てずけずけと好き放題言いますね」
「はぁっ!?失礼なこと言わないでくれない!?」
「自分のことは客観的に見られませんものね。仕方ありません」
「こ、この……っ!」
アルトが悪いもん!俺は悪くないもの!てか、お前口悪くなってんぞ!前の執事だった頃とまるで一緒じゃねーか!!
というか、お前俺のこと嫌ってんじゃないの!?ティファ―ニアを無理矢理連れてきたバカ王子ってことで恨んでいるんじゃ……、分かった!さっきイリーナ達が虐められてたからそれを無くすために使われたんだ!そうだ!だからあんなことしたわけね?成程成程。別に記憶が戻ったとかではないよね?
君の中での執着対象はティファ―ニアでいいんだよね?ね?
ユアン兄さま!なんでよ!?貴方が勝手についてきた癖に追い出すって何!?もしや俺、キースさんを普通に戻すために呼ばれたの!?ただ単に、ユアン兄さまがその人と話をしたかったから、丁度いいと思ってついてきたの!?ユアン兄さま酷い!だったら別にアルト連れてこなくてもいいじゃんかー!
仕方ないのでアルトと一緒に(キルトは影に入った)下に向かう。よもや、学院をあまり分からない俺がふらふらする羽目になるとは……。
ちらっとアルトを見るが無表情で案内して?なんて言えない。
ええい!己の勘で突き進む!こっちです!!
すたすたと歩いていく。授業中なのか、廊下は静かで俺の足音だけが響く。アルトは、教育されているのか足音がまるでしない。腰に携えている剣が体に当たってガチャガチャと音も立てないし本当に後ろにいるのか分からない。うん、まあ、居なくなっていても一向にかまわないんだけど。
すたこらと歩いているといつの間にか広いところに出ていた。何だかコロシアムみたいなところで、多分、剣術とかの大会で使うのかな。今は授業の一環で魔獣退治のようなものを行っている。四本足の大きな魔獣で名前は知らない。知らないが、あの戦い方は何だ?
「何だあれ、初心者?」
数名が明らかに前衛装備ではないのに前で囮となっている。その後衛装備のものを庇って盾持ちの前衛がタンクを取っているが効率悪すぎる。その子の装備もお粗末で見れたもんじゃない。その上その後ろではちまちまと魔法を撃ったり、重装備で前衛の格好をしているにも関わらず参加していなかったりと、何やってるんだろう。
厳しい中で戦うっていう授業?
教師を見るとどっしりと椅子に掛けて見ている。注意しないところそういう授業なのだろう。多分。
「う……っ!」
「イリーナ!!」
「マイク!俺が時間を稼ぐから彼女を……!」
斥候であろう女の子が突進攻撃を受けて吹っ飛ばされた。後衛が攻撃されるなんて、タンク役はヘイトを稼ぐスキルも何も持ってないのか?
それよりも、イリーナとマイクって言ってなかった?
じっと倒れている女の子を見てはっとする。確かに彼女の面影がある。その彼女に駆けだしている男、タンク役で盾持ってる奴も見たことがある。
そして、一番は忘れもしないあの綺麗な王子顔!あれ絶対カイルだ。剣を振り、猛攻している。まあ、一匹だけだし対処は楽だろうが、それらを見ているだけなのは何だ?
班で決められてる?それなら魔法で攻撃しな……あぁっ!?
「へったくそ!いや待って今の見た、アルト!前に人いるのにそこに向かって直進の魔法を撃つとか初心者かな?」
同じ魔法を使える者として恥ずかしい下手くそぶり!俺だったら恥ずかしくて暫くひきこもるよ!
ゲラゲラ笑って指さし、アルトに同意を求めると彼は険しい顔でそれを見ていた。
「あ、ご、ごめん……」
思わずそう謝ると、アルトがはっとして此方を見た。それから慌てた様子で言葉を紡ごうとして、その前に「おい!」っと声をかけられた。
場所が遠いが、拡声魔術を使っているのだろう。先ほど下手くそ魔術を披露した男が声をかけてきたのだ。
やべえ、そんな大きな声じゃなかったと思うんだけど。笑ったのがまずかったのか?
「そこのお前!今なんて言ったっ!?」
「……えーっと……」
言うか言うまいか。だって授業中だし?こっちに注目してもらうと彼らがもっと対応できない!
どういえば機嫌を損ねないかと思案すると、すっとアルトが前に出た。
「下手くそ。前に人がいるのにそこに向かって直進の魔法を撃つとか初心者かな?と仰っていました」
ア、アルトー!!
なんでそういうこと言うの!ほらもう彼、顔を赤くしてぶるぶる震えてんじゃん!?ど、どうするんだよ!俺が悪口言ったのが悪いんだけどさ!
「だ、誰が下手くそで初心者だって!?」
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アルトが煽っていくスタイル!ひいっと俺が悲鳴をあげる。言ってない!そこまで俺は言ってない!!
なまじ顔がいいので無表情のまま淡々とそう言う姿は怖い。うっと男が思わずひるんでいるがその後ろで重装備の男と高そうな軽装備をしている女が彼に何かを言っている。
それをアルトが見下すように首をくいっと動かしじろっと睨みつけている。
その彼が何を言われたのかにやあっと笑った。
「おい、そんなに言うならお前がやってみろ」
「だそうですよ?」
「俺なんかい!」
元凶は俺だけど!煽ったのはお前だぞ!俺の方が立場的に上だからお前が尻ぬぐいしろよ!!
渋々、俺はそこに出た。だってうだうだしてたらカイルの体力が底つきそう。
「そんなローブ被って、お前も魔術師なんだろ?」
「え、あ、はいそうです」
「あんなこと言うんだから前衛がいても絶対に当たらないんだろ?」
「……あ、えー、まあ……」
寧ろ要らないとか言えない。というか、部外者の俺が入っていいの?ちらっと教師を見るがこちらを全く見ていない。容認しているのだろうか。教師の立場どうなってんだよ。
「どけ!」
そう言って重装備の男が攻防を繰り広げているカイルを押しのけ、ヘイト稼ぎのスキルを発動させる。男の方に魔物が襲い掛かり、それに群がるように今まで遠巻きに見ていた奴らがそれに襲い掛かる。わあお。こりゃ俺の出番ないぜ。
すーっと俺は倒れているカイルに近寄った。
「大丈夫?君」
「え、あ……」
「傷治すよ。治癒」
外傷はない。体力は流石に回復できないから療養してね?
魔物にあんなに群がってるんだから俺がいなくても……。
「邪魔なのよ!」
「ーーーっ!」
「イリーナ!」
隅でけがの手当てをしていたマイクとイリーナを押しのけて魔術を発動している奴がいた。バカなの?
「影槍」
その瞬間俺は魔物の影から槍のようなものを出して魔物を貫いた。確認しなくても死んでる。俺は、はあっとため息をついて今度はイリーナに近寄った。
「君の傷は?」
「あ……」
「診せて」
先ほどの突進で肋骨が一本折れている。痛いだろう。これも治癒で治して他に傷がないか念入りに調べる。女の子の体なんだから傷ものにしちゃだめだ。例えマイクが嫁にするだろうけども。
大丈夫そうなので今度はマイクを見る。
「君は?」
「お、俺は大丈夫だ」
「そう?ならいいけど」
診た感じ特に重い傷を受けているわけではなさそうだ。くるっと方向転換して最初にやられていた彼らの治療を行うが、俺の前に重装備の男が立ちふさがった。
まだ何かあるのか?俺は誰にも迷惑かけないで殺したぞ?
じろっと睨みつけると男は尊大な態度でこう言った。
「そんな奴より俺らの治療が先だろう!」
「え?怪我なんかしてないでしょ、何言ってんの?」
寧ろその装備で怪我するってどんだけ下手くそなの?
一応診てみるが、傷と言ってもかすり傷程度だ。これを怪我だなんて……。
「そんな怪我で喚くならこの授業辞めたら?大人しく安全な場所で安全な授業した方がいいと思うよ?」
「な……っ!俺が怪我をしたと言ってるんだぞ!?」
「頭大丈夫?」
心底心配してそう言うと彼がかっと顔を赤くした。すると、あの魔術下手くそ男が声をあげる。
「お前!この方を誰だと思ってるんだ!」
「はあ……」
「カール・コロエスタ侯爵様だぞ!」
侯爵?ちょっとどれぐらいの位か分からないけどとりあえず王族の俺よりは確実に下だよね?
というか、なんでここで身分をひけらかすの?何か意味あるの?
「えーっと、だから何?」
「だから何!?お前、どこの田舎者だ!」
「んー……」
これはどうすればいいのだろうか。
どういう経緯があって俺のことを侯爵以下の田舎貴族、もしくは平民だと思っているのか。思い込みが激しいのか?それにしたってひどくないか?どういう教育されてんの?
面倒になって怪我人の前に転移しさっさと治療する。それからすぐにアルトの元に転移して戻った。
この世には知らない方がいいものもあるよ。うん。
「おい!逃げるのか!」
下で何か騒いでいるが、聞こえないふりをする。
君達の為に何も言ってないんだよ。もうやめて俺に関わるのは。
「さてアルト、違うところに……」
ひゅんっと何かが風を切った。ぎゃあっと悲鳴が聞こえてみるとアルトが腰につけていた剣が皆の前に刺さっている。それからまたアルトを見ようとしてばっとフードを取られた。
何するん!?
「不敬だぞ!!この方を誰だと思ってる!!」
一瞬にして空気が凍り付いた。
アルトの怒気をはらんだ声に俺はびっくりする。それから恐る恐るコロシアムの方を見ると固まって顔を青くしている者ばかりだ。だからもう何も言わなかったのに。
「おい、何時まで呆けてるつもりだ?」
「も、申し訳ありません!!」
アルトの声にはっとしたのか一斉に頭を下げる。アルトはコロシアムに行って地面に刺さっている剣を引き抜き、鞘に納める。それから恭しく俺に向かって敬服のポーズを取った。
「申し訳ありません、殿下。殿下の温情を受けながら好き勝手に話をする彼らに我慢が出来ませんでした。甘んじて処罰を受けます」
「あー、そういうのは良いよ」
はあっとため息をついて、俺もそっちに向かう。
仕方ない。こうなったら俺は言いたいことを言う。権力の名の下に!
「最初に魔物と戦っていた奴以外この授業やめた方がいいよ?あと、教師って誰?他の授業担当したら?見てて不愉快だし、貴族としての矜持をはき違えてる子たちが多いみたいだから一から教育しなおしてね?アルト行くぞ」
「はっ!」
俺はそう言ってすぐにアルトを引き連れて出ていった。
うーん、やっちまった!
「アルトのせいだからー!」
「はい?私は殿下のお言葉をお伝えしただけですが?」
「俺のせいじゃない!俺のせいじゃない―!!」
「流石です殿下。4歳から何もお変わりなく、権力に笠を着てずけずけと好き放題言いますね」
「はぁっ!?失礼なこと言わないでくれない!?」
「自分のことは客観的に見られませんものね。仕方ありません」
「こ、この……っ!」
アルトが悪いもん!俺は悪くないもの!てか、お前口悪くなってんぞ!前の執事だった頃とまるで一緒じゃねーか!!
というか、お前俺のこと嫌ってんじゃないの!?ティファ―ニアを無理矢理連れてきたバカ王子ってことで恨んでいるんじゃ……、分かった!さっきイリーナ達が虐められてたからそれを無くすために使われたんだ!そうだ!だからあんなことしたわけね?成程成程。別に記憶が戻ったとかではないよね?
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