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紫鶴

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16歳の俺

第4王子16歳 4

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さて、大いに取り乱したが状況を整理しよう。

今の俺は色々やばい状況だ。うん。だってどうなってあんな未来になるのか予想がつかない。そもそも好意的?ではあるのに俺を殺す理由が全く分からない。

うぐうっと唸って頭を抱える。先ほど兄たちとの再会?を果たし、二人に驚きの真実を告げられ気づけば夜だ。どこが俺の部屋か分からずに無駄に探索を使い、ようやくついたと思えばびくびくと使用人たちに怯えられ様子を伺われながら夕食ですなんて言われた。あーえー、はい。っと言うしかない。そのままどうにか頭を下げた使用人は扉を閉めた瞬間バタバタと走って去っていくのが足音で分かった。うん。

俺の代わりに王子やってた子、どうした。何やったんだお前。

とはいえ、この態度。前世の時と変わらないともいえる。ほとんどのものが俺は辺境行きの役立たず王子という認識だったので、まあ怯えられるより嘲笑が多かったかな?どうでもいいが。

あの未来では国王陛下になると確実に死しか待っていないのでできれば王位継承破棄をしたい。それか前世のように無能王子という認識を王様に与え辺境の地に……大丈夫か、俺監禁回避できるそれ。

とはいえ、憂鬱すぎる晩餐。だれくるんだ?

国王は忙しくてほとんど出席しないってのをびくびくしてる使用人に聞き出したから多分いない。王妃もダイエットをしているとかで減量中というのを聞いたの。多分別メニューのはずだから来ないのでは?と予想。となると三人の兄と晩餐。えー……。憂鬱度が増した。いや、両親(仮)がいないだけましか。

テレシアたちは俺の傍にはいるらしく気配はするが視認できない。まあ、別に構わないんだが。

さて、と俺は気合を入れて食事をするところの部屋に案内された。扉を開けられいざ行かん!っと顔をあげ中を覗く。思わず扉を閉めた。

俺のみ間違いでなければ全員いた気がする。案内が終わったと思って油断していた使用人がぎょっとして俺を見ている。待ってほしい。だって、おかしくない?推測だけで考えるのは確かに悪いけどさあ、全員集合なの?

は、ははっと乾いた笑みが漏れた。それを不気味そうに見られたが気にしていられない。

すーはーっと深呼吸をしてかっと目を見開く。もう起きたものは仕方ない。むしろチャンスだ。俺、役立たず、無能ってアピールするチャンスぅ!

改めて扉を開こうとしてくんっと扉がひとりでに動いた。つんのめって転びそうになるが踏ん張った。


「何ぼさっとしてるの?さっさと入って」
「あ、は、……うん、ごめん」


思わず敬語を使いそうになったがぎろっと睨まれて慌てて変えた。ユアン兄さまに連れられてまさかの椅子まで引かれた。


「全く、弟は手がかかるんだから」


はあっとため息をつきつつユアン兄さまは俺を座らせるとすぐ隣の空席に座った。俺の隣だったのかお前!っと思いながら大変居心地の悪い晩餐が始まる。

俺が座ったことにより前菜から始まる料理が並べられる。マナーは前世でみっちりしごかれたので完璧ではある。ちらちら使用人とかに見られているがきっと俺の完璧なマナーに驚いているのだろう。少し優越感。

ふふんっと鼻を鳴らして少し自慢げになると次の料理が出された。俺は思わずフォークを口にくわえて飲み物に手を伸ばしてしまいハッとする。


「ちょっと、フォーク咥えたままだと危ないでしょ。口開けて」
「あ」


かぱっと口を開けるとユアン兄さまが俺が咥えていたフォーク取って置く。うぐぐ、さっきまでは完ぺきだったんだよ?つい、その、ここ数年の習慣が抜けなくて。あははっと思わず笑いながらすーっと視線を逸らす。


「さっきまですごい完璧に食べてたのに、間抜けだね弟」
「ぐ……っ。そ、そりゃあ俺はお兄様のように完璧にはいきませんよ。なんせ不出来な弟ですから」


アンリ兄さまがそう言って笑ったので思わず言葉が詰まる。しかし、ここで一つ王様に俺ってできない子ですってアピールもできた。付け焼刃だって分かっただろうし、ね!作戦だから!これは作戦だからぁ!


「別にマナーを気にするような間柄ではないだろう。弟は好きに食えばいい」
「まあね」


ルイ兄さまがそう言ってもぐもぐとメイン料理を口にする。アンリ兄さまがそれに同意しつつ涼しい顔で食事をする。俺もあははっと笑いつつもぐもぐと食べた。

今度は気を引き締めて一口一口ゆっくりと落ち着いて食べる。孤児院のときは皆早食いだったけどここではゆっくりだから焦って食べることもない。孤児院の食事も美味しいがここの食事もいい。まあ、高級食材のオンパレードなうえ宮廷付きコックがまずい飯を作るわけはない。

うまうまっと口には出さないがもぐもぐ食べていると王様がそっとフォークを置く。


「アズール」
「え、は、はい」


そして俺の名前を呼ぶので思わず返事をして俺も同じようにフォークを置き、彼を見る。よく見ると王様は同じような赤い髪で若そうに見える。青色の瞳が俺を見つめてどきっとしてしまう。変な汗出てきた。


「反抗期は終わったの?」
「え!ああ、まあ……」


曖昧にそう答えつつちらちらと兄たちの様子を伺う。あれを言うか言うまいか。言っとくが俺は信用してないぞ。
その俺の様子ににこっとをアンリ兄さまが笑顔を見せた。


「お父様。その事については後で話があります」
「ん?それは君たちがアズールを弟、と言ってるのと関係あるのかな?」
「ええ、でもここではちょっと……」
「そうか。なら後で私の部屋に来るといい」
「はい」
「手を止めて悪かったね。食べて構わないよ」


王様がそう言うので俺はそのまま食事を再開する。そうして晩餐は終わった。
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