来世でよろしく

紫鶴

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?歳の俺

国王陛下 ?歳 2

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「陛下、どうされたのですか?」
「!?」


はっと意識が浮上した。どっどっと心臓の音がうるさく冷や汗が止まらない。

先ほどのは夢か……?

ぼんやりとそう思いながらふと、目の前に同じ二つの顔がずいっと近づく。うおっと声をあげて身を引こうとしたが無駄に長い背もたれのおかげで頭をぶつけてしまった。
いったぁっと声に出さず頭をなでると、片方の男が「大丈夫ですか?」っとこちらの顔色を窺った。


「ああ、平気だ」
「左様ですか」


そう言ってスッと二人が身を引く。俺は自然に足を組んでひじ掛けにもたれかかった。


「で、貴君らは何を私に持ってきたのかな?」
「……はい、私たちは陛下に異国の美酒を持ってまいりました」
「陛下のお口に合えば幸いでございます」


今の状況死ぬほどわかんないけどすらすら言葉が出てくる。こいつら同じ顔だから双子のノイン君かノルン君か?分からんが!

ははは、まあ何かよくわからんがここ乗り切ればどうにかなる気がする!

うむ、っと頷いてその酒と杯を貰う。

おお、日本酒じゃないか。しかもちゃんとおちょこも用意するなんて通だね~。でも俺としては升が良かったな~。日本酒の香りを楽しみたい。

酒は飲めるのでウキウキしながらそれがおちょこに注がれるのを見つつ、それを一気に片方があおるので思わずずっこけそうになった。

俺のじゃないんですかそれ!

じとーっと若干圧をかけて見つめていると、ごくんとそれを飲み込み、それからまたそれに酒が注がれる。


「……どうぞ」
「ありがとう!」


くるっと自分が口をつけたところを回して俺に酒の入ったおちょこを渡してくる。

毒味かあっとそこで理解した。一応俺国王陛下らしいし。うん、なんでか知らんが!

とはいえ、今は酒だ。おちょこに入った酒をグイっとあおってごくりと飲み込む。

ん~、うまい!


「もう一杯いかがですか?」
「うん!」


すっと空になったおちょこを渡すとそこに酒が注がれる。はー!これまじうまー!

6歳の俺はお酒飲めないしそもそもこういうのは高級品だから今世では飲めないと思ったよ~。あ、いや、これがどういうのか分からないけど。夢の中でもお酒が飲めて幸せですわ!

ぐびぐび注がれるままに飲み続けて、一本飲み切ってしまった。飲みすぎた。別に酔っていないが、気持ち的にこう、やべってならない?


「貴君らの品は確かに受け取った。下がってよい」
「「はっ」」


俺がそう言うと二人が頭を垂れて返事をしきびきびと歩いていく。ここから出るまでの道のりは長く、いや、なんでこんなところでやったの俺っと思うくらいには時間がかかる。少し、扉前にずらすか。

空間系の魔法を使おうとして、ひゅっと喉が鳴った。


「あ……?」


ぐらっと視界が回って椅子から転げ落ちる。

呼吸がうまくできずにひゅっひゅっと空気を切る。苦しくて胸や首を抑えるが効果はない。


「ようやく効いた。王族って毒に慣れさせてるとは聞いたけどここまでとはね」
「……効果あったからいいんじゃない?」


ふっと視界に影が出来て、どうにかそれを確認する。
そこには先ほどこちらを背に歩いていた双子が並んで俺を見下している。苦しくて、俺が彼らの足に縋りつこうとするとその手を一切の遠慮なく踏みつぶした。

悲鳴を上げる俺を見て、二人はけたけたっと笑いだす。


「ねえねえ、ノイン。アズールが面白い声上げてるよ」
「……本当だ。自分の痛みには敏感みたいだね、ノルン」


ごきっと鈍い音を立てて踏まれていた手が尋常じゃない痛みを発する。声も出ずに、だらだらと唾液を垂らしながら肩を動かし、苦しみにもがきあえぐ。

二人の顔が歪んでよく見えない。けれど、笑い声は耳にこびりついて頭の中で響きわたる。


「アズールぅ、なんで?なんで殺したの?あの子君に何かした?」
「……あいつはお前に尽くした。なのにどうしてお前はあいつを裏切った?」
「は……ひゅ、ぅ……」


彼らが何を言っているのか分からない。

あの子?あの子って誰?俺が知ってる子?

名前言ってくれないと、分かんないんだけど――――。


「あ、お、おわっちゃいました……?」


不意に第三者の声がした。誰かは予想がつかない。けれど、その声音、態度に当てはまるのは一人だけだ。
あの薬師、今はどこかの魔法研究職に就いているらしいティナだ。


「んーん!まだ生きてるよ。ティナさん」
「……言いたいことあったら言うと言い。死んだら面と向かって言えない」
「え!あ、そ、そうですね……」


こつこつと足音が聞こえてくる。

彼も、いや、彼だからこそこの毒殺を選んだのだろう。彼は植物に関しての知識は目を見張るものがあった。その上、相性がいいのでそこで凄まじい才能を開花させていた。


「……俺は、未だになんで貴方があの子を見殺したのか分からないんです。でもそれを探るよりも貴方に対する憎悪の方が強かった。貴方はあの子に好かれながらどうして簡単に切り捨てた!」


う、ううっとその男が泣きながら叫んだ。

俺はその言葉を聞きながらゆっくりと意識が落ちるのを感じた。

―――これを夢で終わらせるにはあまりにも不吉だった。
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