来世でよろしく

紫鶴

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6歳の俺

孤児 6歳 12

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次の日になって俺は朝御飯を食べていた。ルチアーノは既にあの服を着ていて準備万端といったようだった。
俺も遅いなりにも早く食べようと口にものをつめたは良いが口の中が一杯で噛むのが大変だった。水で流し込んだが。

「よし、行こうかルチアーノ」
「うん!」

ワクワクが止まらないといったような好奇心旺盛のかおでルチアーノは頷いた。俺はルチアーノがきちんとあの服を来ているか確認した後にこっそりとまた裏から出た。一応アンジェリカさんにはこの前作った奴は大丈夫だったということと、散歩にいくことを報告しておいたので何かあればどうにかなるだろう。ついでに今度森で皆でピクニックしたいから危険なものとかも調べてくれる?っと6才の子供に頼むようなものではない頼み事をされた。やるけど。水筒と昼御飯も持っていきなさいって渡されたから夕飯までに帰れば良いんだと思う。ルチアーノはお昼御飯渡された時点で「ピクニック!ピクニック!」っと楽しそうに歌っている。ルチアーノの体質から夜以外は外に出られないだろうから当然の反応だろう。

俺は鞄に昼御飯のパンと水筒を入れてルチアーノと手を握り散歩にいく。ルチアーノは今度はどんどん進むわけではなく、花や草などを一つ一つ採取して大切そうに鞄に入れていた。見かねた俺は溶けない氷の中が見える試験管と氷の蓋を作ってルチアーノに渡した。こんな高そうなの貰えないよ!っと言われたが高いも何も今無料で作ったんだけど、要らないなら壊すねっと叩き割ろうとしたら慌ててルチアーノがいる!っと言ってくれたので壊さずに済んだ。

その試験管にいろんな物をつめてくれるので作った身としてはとても嬉しい。存分に使ってくれ。

「そろそろ昼御飯にしようか?」
「うん!」

適当な切り株にルチアーノを座らせて鞄から昼御飯を出す。パンをルチアーノに渡して俺も彼のとなりに座りパンを頬張る。やっぱり固いが文句言える立場ではないので黙って食べるけど。ルチアーノはにこにこしながら幸せそうに食べている。散歩そんなに楽しかったのかルチアーノ……。

昼御飯を食べたあと少し休憩がてら、ルチアーノが拾ってきた草や木の実など昨日教えられなかった事を詳細に話す。ルチアーノはすごく熱心に聞いてくれるので俺は饒舌に語ってしまった。はっとしてさすがにうざがられてるかと思ったがキラキラした目でルチアーノは見ていた。強い、強すぎる。俺だったら嫌だと思う。

昼御飯を食べたあとに俺は昨日の場所に向かった。ルチアーノも一緒だ。

「ルチアーノ、本当についてくるの?帰ってもいいよ?」
「ううん。一緒にいる!一緒にいく!!」
「ま、まあそんなについてきたいならいいんだけど」

ルチアーノも変な子だなぁ。普通は悪魔に関わりたいと思う人なんていないのに。俺は召喚士という身分から悪魔とかに抵抗はないんだけど。普通の人は恐ろしいものだって思うものだと思うが。

そして二人でその場所に移動して昨日の悪魔達を待つ。ウサギが丸ごとはいるくらいの大きな氷の容器を作り半分くらいまで水を作る。それを同じものを3セット。これでウサギ入れて水の増え方によって順位を決めようと思う。一番楽な方法のはずだ。計るとかより楽だろう。

それを作り終えると、終始キラキラした目で見ていたルチアーノがふと暗い顔をして目を伏せた。俺はん?っと思いルチアーノに声をかける。

「どうしたのルチアーノ」
「……アズールは、大きくなったら魔法の学校とか行くの?」
「え?いや、行く予定はないよ?」

確かに、俺の知らない魔法とかものとかがあったら見てみたい気はするが、そういう学校は授業料がバカ高いに決まっている。授業料を稼ぐために働くとなると授業時間で日中は潰されてしまい、夜はお金を稼ぐために時間を使う。そうなれば俺の時間がなくなる!!俺の!自由時間が!無くなる!!!!一番耐えられない!!!!俺は俺の時間を潰されるのが嫌だ!!だから行かない。

どう考えても未知を探しに旅をした方が良いに決まっている。

俺はそう答えつつ魔力で花を作る。これがかなり悪魔や天使に好評なのだ。花を作ってまず花冠を作る。うん、こんな感じで良いかな。

そう思いながら手を動かしているととんっと肩に衝撃を受けた。そちらを見るとえへへっと笑みを溢しながらルチアーノが引っ付いてくる。しかし、作業に支障の出るほどくっついているわけではないので何も言わずに俺は作業を続ける。

二つの花冠と魔力で作ったリボンで束ねた花束を作った。魔力で物を作るとすべてが飴色のものになり、作っている身としては飴細工をしているようなものだ。ちょっと楽しい。じいっと見つめているルチアーノにも一本だけ花をあげた。

すんごい喜んでた。その姿をほっこりとした気持ちで見ていたらルチアーノが見よう見まねで自分の魔力から花を作ってしまった。わー、すごい。ルチアーノって感覚でも魔法使えちゃうからすごいわ本当に。

「ア、アズールにもあげる。えと、あんまりうまくないけど……」
「ううん。初めてにしてはすごく上手だよ。貰うね」
「!うん!!」

壊さないように耳の上に差してルチアーノとあの三匹の悪魔を待っていると近くで転移魔法の気配がした。誰か、とはいえたぶんアンジェリカさんかテレシア、クラウスぐらいしか使える人いないだろうけど、ここに来たのだろう。そちらの方を一度俺は見たが、危機を感じるほどの気配はしないので大丈夫だろう。きっと知り合いだ。そんなことを思っていたがルチアーノがすぐさま立ち上がり、また包丁を用意してそちらを睨み付ける。俺がそれにビックリして変な悲鳴あげるところだった。とはいえ、ルチアーノがその体勢になったということは知り合いではないことが判明。一応俺は探索を使って何が来るかを確認することに。対処できる自信はあるがルチアーノを怖がらせるわけにもいかない。

目の前に探索鏡を出してその正体をその鏡に写した。

「……子供、と……お?おおっ!?」

探索には一人の子供がこちらに走ってくるのが見える。その後ろには猿の顔に何か獣の胴体をした尻尾が蛇の四つ足の動物がその子供に襲いかかっていた。

何だこの獣。見たことないな。これで完成形なのか?

猿と蛇そして何かの動物が合わさったそれは変異種キメラというものではなかろうか。俺も前は何度か行ったことがある。簡易的なもので猫と意思のない自分の人造人間の遺伝子を組み合わせて顔は猫体は人間、みたいなものを作ろうとして俺の猫耳尻尾つき獣人が作られた。そのときはあまりの異様さに叫んでしまって、俺がそんなことしてるのが当時のパートナーにばれてさんざんな目に遭った。ちなみに人造人間は生命維持活動を1時間くらいに計算して作ったのですぐに死んだ。猫は毛だけもらって遺伝子組み換えできるレベルにまで分解して融合させたので殺していない。

研究者と言えど俺は俺自身または俺のコピーは死んでも傷ついても良いが他の生命を脅かしたり無闇に傷つけないのがポリシーなので生きとし生けるものを殺生する気はない。まあ、自分の指をはねて普通に治癒した場合、指は元通りになるのか否か!をした時に小指切り落として結果元通りにならず、時間戻しを使おうとしたらまたまた運悪くパートナーに目撃され激怒され泣かれてしまってからは自分を傷つける実験はしなくなった。あの発狂ぶりは今思い出しても怖くてトラウマレベルなので、二度としない。

そんな経緯があり生物実験に関しては完全に手を引いていた俺だが、この獣は完成度が高い。まず、体が自由に動いている。普通であれば似たような身体の造りをしている動物を合わせた方が体の組織も酷似しているので合わせても遺伝的に障害なく体を動かせられる。だがこれは蛇が混じっている時点で体の作りが違い、障害が発生するはずだ。それにはっきりと部位分けされている体にも興味がいく。尻尾は蛇、頭は猿体は何かの獣が胴体と足とで数匹に分けられ、どれがベースかよく分からない。

俺のした実験はベースが俺のコピーだったので俺の体が主体になってのものだった。でもこれは何か分からない。本当にこの体を構成している種類の生きものを混ぜ合わせてうまく体が作られたものとしか言いようがない。不思議だ。

それに、さっきから攻撃が妙に子供に当たっていないところも疑問だ。あんなに動いているんだから子供相手に一撃当たっていてもおかしくないはずなのに。どうしてだろう。攻撃にはあまり慣れていないのだろうか?

んー?っと首をかしげてそんなことを考えているとぐいっと腕を引っ張られた。

「アズール!逃げよう!!!」
「え?」

今まで鏡を見ていたがルチアーノが包丁をしまって焦ってそう叫んだ。俺は鏡を消しておうっと声を漏らす。既に視界に入るほどにはやつらは近づいていたようだ。地面が揺れ俺よりも何倍もそれは大きかった。成長もしているのかこの生き物。ますますなんの生き物使っていたのか詳しく知りたくなる。知りたくなるが、俺は今たいした設備も持っていないただの子供なので消すしかない。いやあ残念だ。俺がもう少し大人だったら……。

はああっと深くため息をついた。

「ルチアーノ、包丁借りても良い?」
「え?こ、これだけじゃ無理だよアズール!!」
「大丈夫大丈夫。強靭付与、貫通付与、身体限界解除、身体無限向上」

包丁に二つ簡単な魔法付与した後に、自分の筋力等々を一時的に限界をなしにして兎に角向上させる魔法を使う。それからその包丁を猿の眉間に向かって投げた。加速して目と目の間にそれが貫かれ、耐久値を優に越えた包丁は砕け散った。貫かれたそこから血飛沫をあげグラッとその巨体が倒れる。

俺はとどめを刺すために手をかざし、火の魔法を繰り出そうと唱える。

ファイヤー……」
『た……す、け……』
「え?」
『い、たい……くるし……ぃ』
「なんだこの声?」
「ノイン……?」

俺がそう呟くと呆然としながら追われていた子供がそう呟いた。ノイン?誰かの名前か?

というか、この声この獣の中から聞こえるな。ちょっと中身開けるか。

「ルチアーノ、まだ刃物持ってる?」
「え?う、うん」

そう言ってルチアーノはまた包丁を出した。何でこんなに包丁が。たぶんルチアーノマジックパックっていう収納空間を作ってるんだろうな。そこからもの出してるんだと思う。俺が使えているので珍しい魔法かどうか分からないが、ルチアーノから聞いていないのでただの憶測にすぎない。聞く気もない。

俺はルチアーノから包丁を借りて獣の胴体をかっさばいた。まだ死後硬直もしていないのでびちゃっと大量の血があふれでる。俺は包丁で肉を切り落とし、手で中の内蔵を掻き出す。背後で盛大に追われていた子供は吐いていたが、ルチアーノは俺の方に近づいてきて中を見やすいように広げてくれる。一瞬俺の手は止まり「だ、大丈夫?気持ち悪くない……?」と聞いたら首を振っていた。どんな環境で育ったんだ君。

一瞬そんなことを考えて作業を進めると中から人の手が見えた。

「! おい、俺の声聞こえてるかっ!?」

俺がそう叫ぶとピクッとわずかだが手が動いた。俺は体を傷つけないようにかつ、素早く周りのものを切っていくと男の子が膜のようなものでおおわれ、この獣の肉に張り付いていた。先程の衝撃で少し膜が破れ手が出ていたらしい。それにしてもなんだこの膜。こんなのに子供まるごと入れているのも妙だ。

そんなことを思案するが今は子供が先だ。

一応体を傷つけないように膜を裂いて、中からその子供を取り出す。中は粘着性の強い液体で覆われていたようで子供の体にも俺にもねばねばしたそれが引っ付いた。げほげほっとその子が咳き込む。俺は死体から離れた場所に横たわらせてまず魔法で体を綺麗にしてから身体を検査して異常がないか確認する。栄養失調、疲労、魔力不足、打撲、切り傷、擦り傷か。栄養失調は今どうにもならないけど、疲労回復、魔力譲渡、回復ヒールでどうにかなるだろう。

ふうっと一息ついて、自分も体をきれいにしたあと次は吐いてる子の方をみようとすると彼は横たわる子供を見て青い顔をもっと青くして近寄ってきた。

「ノイン!!うそ、大丈夫!?ねえ返事してよ!!」
「大丈夫だよ。栄養失調になってるけどもう大丈夫。君もみせてくれる?」
「本当にっ!?本当に大丈夫なの!?ノインは僕と違って優秀でパパからもおじいちゃんからも慕われてて僕より価値が高いの!!僕はどうなってもいいからノインは!ノインだけは!!!」
「落ち着いて」

そうまくしたてて俺にその子はすがりついた。改めて顔を見るとこの2人よく似ている。兄弟か?

「この子はもう大丈夫。俺はこれでもそこそこ腕の立つ魔法使いでね。今度は君の番だよ。よく頑張ったね」
「ぼ、僕は何もしてない。ノインが庇ってくれて守ってくれたから……」

きゅっと胸のところで何かを掴む仕草を彼はした。なにかの儀式か、精神安定のためのなにかか……。ひとまず、思いのほか冷静でいてくれて助かった。

「そう。じゃあ後でお礼言わないとね」
「お礼……?」
「うん、守ってくれてありがとうって」
「……うん」
「じゃあ体みるよ」

そう言うとビクッと彼の体が震えた。なんだ?

その反応を気にしつつも身体検査をする。触らなくても見るだけで分かるので、上から下まで隈無く彼を見つめうん、と頷いた。

「君も栄養失調と疲労、打撲、擦り傷、切り傷があるかな。回復ヒールこれで大丈夫だと思うけど具合悪いとかない?」
「……え、あ、だ、大丈夫……」
「そ、ならいいや。家はどこら辺?」
「あ……えと……分かんない……」
「遠くに来ちゃったのか」

なるほど。初めはそんなもんだよ転移。俺も初めてやった時知らないところに出ちゃって慌てたもん。すぐに戻れたからよかったけど最悪密入国者扱いされて牢屋に入れられる所だったからね。うんうん。失敗は成功のもとっていうし、次頑張ればいいよ。

まぁ、俺が彼の記憶を探って家を探し連れていくことは容易だが、その前に先程の獣についても聞きたい事がある。

「なるほど、じゃあ話変わるけどさっき追われてた獣って……」

その瞬間また、誰かが転移してきた。なんだなんだ?今日はやたらと客が多いな。そう思ってちらっとそちらを見ると木の影から人影が見えた。

ルチアーノは、すぐさま新たな刃物を手にしてその切っ先をそれに向けている。俺も知り合いではないと確信を得たので何時でも応戦できるような体勢をとる。そして、ひょっこりとそれは木の影から姿を現した。

豊満な胸を強調するような服装で横にスリットが入っている足首までのスカートを纏い派手なメイクをした女性がいた。

彼女は最初に獣、それから2人の少年、そして、俺とルチアーノの順で視線を動かしんー?と声を上げて顎に指を当て首をかしげた。

「あらぁ?一応今までで1番の出来らしい生物兵器がやられているじゃないの~。なにか不具合でも起きたのかしら?」
「あ……あ……」

その女性がそう話し出すと男の子は、がくがくと震えて、それでも必死に気絶中の子を隠そうとしていた。

察するにこの女性に何かをされたのだろう。生物兵器とか言ってるから文字通りの生物実験の材料にでもされたのか?そう思うとこの子達は幸運だったな。五体満足で良かったね。

「まぁいいわ。坊やたち、悪いことは言わないからその後ろの子供をこっちに引き渡してくれる?大人しく従うなら貴方達の存在は見なかったことにしてあげる」
「ま、待って!お願い、連れていくのは僕だけにして!ノインも見逃して、お願い、お願いします!!」

男の子がそう言って地面に額を擦り付けてひれ伏した。その様子を女性は一瞥したがはぁ~っと深いため息をつく。

「何を言ってるの?貴方よりそっちの方が価値あるんだから見逃すわけないでしょ。魔力も十分にない癖にあなたにそんな権利があると思っているわけ?依頼主が双子のサンプルが欲しいっていうから連れてきただけでただのおまけよ?立場わかってるの?」
「……っ!お、お願い……」
「不快よ。うるさいわ。貴方のせいでうっかり手が滑って巻き込まれた可愛そうな子供達を殺しそう~」

女性が短剣を器用に弄びながらそういった。後ろで嗚咽混じりの声がして彼がないていることが分かる。

というか、話聞いてればまただよ。被験者の意見無視で無理矢理実験するタイプ。同じ研究者として恥ずかしいし、研究者としての誇りはないのかって言いたくなるわ。全く。

「ちょっと、嫌がる被験者を無理矢理実験に付き合わせるのはダメでしょ。お互いに良くないよ」
「……はぁ?え、何いきなり?」
「だから、無理矢理実験させるのはダメだってこと。人の嫌がる事はしちゃいけませんって簡単な事がなんでわかんないの?」

やれやれっと肩を竦めてそう言うと、一瞬女性が硬直した後、顔を歪ませた。

「こんな所にも立場のわかってないガキがいるのね。あー、嫌だ嫌だ。だから子供は嫌いなのよ」
「立場が分かってないのは君の方でしょ?被験者は大事にするべきであって虐げるものじゃない。協力して貰ってる立場でなんでそんなでかい態度とれるのか俺は逆に不思議だよ」
「うるさい」

その瞬間女性の短剣が投げられた。俺は予め物理攻撃無効化の魔法を掛けているのでその攻撃は当たらない。いや、うん、当たらないんだけど……。

きんっと金属で弾く音がしてその短剣は近くの木に刺さった。ほあっとおもわず俺の声が漏れたしまったのは仕方がない。なんせ、今の攻撃俺の魔法で弾いたのではなくルチアーノが見事に軌道を変えたのだ。

4歳児ってこんなに有能だっけ……?

さすがに女性も驚いたが、まぐれだと思い間髪入れずに次々と短剣を投げる。しかし全てルチアーノが捌ききってしまった。

え、え、っと戸惑いの声を俺はあげてオロオロしている中地の這うような声がする。

「てめぇ、達の召喚士・・・に何すんだぁぁぁぁっ!!身の程を弁えやがれこの愚劣な下等生物がぁっ!!てめぇはただこうべを垂れて召喚士・・・の慈愛と優しさに満ちたありがたい言葉を忘れねぇように刻み込んで悔い改めればいいんだよ!!寧ろ、言葉をかわして下さったその時点で気づけやこのゴミムシがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

一瞬ぽかんとしてしまったがハッとして事態の収拾に努める。

ルチアーノが俺とか、召喚士とか言わない。つまりこれは見事に悪魔に憑かれてる。

確かにあたりも暗くなってきたし、昨日の悪魔達の約束の刻限に近い。つまり付近に昨日の悪魔がいたのだ。そしてこの状況下、奇跡的にルチアーノとあの3匹のどれかの悪魔の考えは同じだったのだろう。

アズール召喚士が危ない。というひとつの思考になってどれかがルチアーノにとり憑いた。びっくりさせんなよ。全く……。

「なんだとこのがきぃ!!殺す!その舐めた口聞いたこと後悔させながら殺してやる!!」
「糞が。こっちのセリフだ人間!!」

完全に怒り心頭の女性は短剣を持ったまま突っ込んできた。このままだとルチアーノに殺しをさせてしまう。それはダメだ。とり憑かれていたとしても酷すぎる。

「顕現並びに契約。好きにしていいよ」

その瞬間、ふっとルチアーノから悪魔が出ていき実態を得た。ふらっとルチアーノの体が傾いたので俺はそれを受け止めて苦笑。ルチアーノは気絶をしているようだが、特に状態異常はないようだ。よっぽど先ほどの悪魔と相性が良かったのだろう。普通であれば軽く生命力が吸われていてもおかしくはない。

女性はそんなことを思っている俺にそのままその短剣の切っ先を振り下ろした。しかしそれは俺に届くことなく簡単にふっ飛ばされる。

「殺す」
「ほ、程々にしておいてね」
「悪ぃが聞けねぇ」

あー、ご愁傷さま。

悪魔、しかも、召喚した時点で人型になれる悪魔は中位以上。その中でも、もっと細かなランク付けがされているのだが今はいいだろう。どっちにしろ、人間1人じゃ中位以上の悪魔に勝てないのだから。

背中に大剣という、装備持ちであることもランク高めである事がわかる。完全にオーバーキルな力差がある彼らを見て心の中で手を合わせておいた。

女性も流石にそのヤバさが分かるのか顔を青くして逃げる準備をしている。天使だったら逃げられたが悪魔はダメだ。彼等は何処にでもいる。そして、強い者に従う。何処に逃げようともすぐにバレてしまうのだ。ごめんね。ここまでする気はなかったんだ。

でも、止めないけど。

「どうした?殺すんだろ?かかってこいよ」
「糞があっ!このがきっ!!」

まじか!この女、転移でオレの後ろ取った!召喚士っていうワードは知識的にあるけど実際戦闘で戦ったことないんだな。少なくとも、召喚士に好意を持っている悪魔に対してそれは悪手だ。何故なら悪魔は暗いところであればどこにでもいて、強いものに服従する特性を持つ。そして、下位の悪魔を召喚し従えることができる。

俺の影から黒い二足歩行の動物が出てきて女に噛みついた。

「きゃああっ!!離せ!!離せこのぉっ!!!」

女は悲鳴を上げて襲い掛かってくるその悪魔を攻撃している。悪魔の攻撃を一度でも受けてしまえばまず浄化作業を行わないと傷は治らない。噛まれたところは黒く浸食し、広がり続ける。悪魔の特性の一つだ。神官か天使の持つ浄化、もしくは聖水でないとその浸食は止まらない。だから、悪魔と戦うときにはまず前提として浄化できるものがいないとだめなのだ。神官でもなければ天使でもない彼女はもう死んだも同然だ。しかもその悪魔親の仇っ!とでもいうように追撃を繰り返している。そのたびに体が黒く浸食していく。さすがに悪魔の攻撃を受けている人を見るのは初めてで思わずうわあっと声が漏れる。

女がこちらを見た。泣きそうな顔で「助けて!」っと声をあげるのでちらっと彼を見た。

「ダメ?」
「ダメだな。好きにしていいんだろ?」
「うん、俺はできない約束はしない主義だから」
「知ってる」

そんな会話をしていたら女はいつの間にか体が黒くなり、動かなくなった。それをもしゃもしゃと獣の悪魔が食べるのでお礼も込めて自分の魔力で作った花を一輪渡しておいた。めっちゃ喜んでぶんぶん尻尾を振り回しながらその女もろとも影の中に消えていった。帰ったらしい。俺が召喚したわけじゃないからすぐに帰れてよかった。この前の悪魔みたいな感じにならなくて。

「君もありがとう」
「ジークだ」
「ジーク?……もしかして誰かの眷属?」
「ああ、テレシア様の」
「まじか……」

個体名があり、召喚できる生き物は大抵眷属と言って誰かもっと上の人の下僕的な存在だ。悪魔や天使にも派閥というものがあるらしくテレシアやクラウスもその強大な力を持ってしまったがゆえに眷属を持たないと周りがうるさいらしい。適当に作ったとは言っていたがまさか今、俺が記憶を持っているときに現れるとは何たる不運。気づかれる前にさっさと契約を破棄……。

「おやおや、アズール。私を差し置いて眷属と契約を結ぶなんて……」

びくうっと俺は体を震わせた。早い、早すぎる!!こんなに早く情報を掴むなんて眷属ってもしかして情報共有もほとんどラグなしで掴めてるのではっ!?

声のしたほうを見ると相変わらず悪魔とは思えないきれいな微笑をしたテレシアがいた。ジークはさっと片膝を地面について頭を下げている。その敬意を払った行動にテレシアは一瞥をした後、ちっと舌打ちをする。

「この身の程知らずが」
「うぐ……っ!?」

テレシアはジークの首を掴んで持ち上げた。片手で彼を持ち上げるのでなんだその腕力は!っと思いつつ、はっと我に返って慌ててテレシアの腕に引っ付く。

「やめて!彼は俺を助けてくれただけだから!!」
「ふぅん?」

だから?みたいな顔でテレシアはこちらをちらりとも見ないでそういった。ジークは苦しそうにしながらも抵抗をしていない。眷属の弊害ともいうべきものだ。主に楯突くことは許されない。傷つけることも許されないのだ。だから彼は今抵抗ができない状態なのだ。それがわかっていてテレシアは本気で殺そうとしているのだ。そんなにプライドが許さなかったのか!?たかが契約でしょう!?

「お、俺と契約して何か利点があるのっ!?」
「アズールの魔力を食べ放題」
「分かった!契約しよう!!!」

それでそんなに怒ってるのね君は!!

俺がそういうとぱっと顔を明るくして大手を振って彼は喜んだ。げほげほっとせき込みながらもおめでとうございますっとジークはそう言葉を口にする。今殺されかけてたよ君。

というか、契約にそんな利点があったとは知らなかった。これでも召喚については研究をしたというのに……。ちょっとショックだ。

「契約。えーっと……」

自由はだめだよな。どうしよう。特にやらせることもないし……。

「幾度輪廻転生をしようとも貴方にだけ付き従うことを誓います」

お、ま、え!契約に誓約をつけるな!!

召喚士と召喚されたものの間の誓約は何よりも大事なものだ。召喚士にとって信頼というのは1番大切なもので、誓約を破ろうとすれば彼らの中で召喚士の信頼度が地に落ちる。そうなれば、まず日常的に顔を出すことは無いし、召喚に応じなくなる。人と同じで信頼のないやつは縁を切るのだ。当たり前だが。

だが、それを受諾する前に破棄すれば問題は無い。という事で破棄しようとしたがちらっとジークを見るのでこの野郎っと思いながらも最終的に受諾した。これでこれから俺は何度転生した時点でテレシアと契約を結んでいることになる。厄介だ。今の俺はある程度分かっているが、何も知らない頃の俺に何されるかたまったもんじゃない。

未来に憂鬱を感じつつ、はあっとため息をつく。

「約束は守ること」
「はい!もちろんですアズール!」

まさか、俺にそこまでの価値があるとは思えないが、ひとまず、ジークに危害が加わらなくてよかった。

大丈夫?っと声をかけようとしたら彼は両膝を地につけて握りこぶしを作った両手を上げていた。まさに、勝利だの喜びだのを表している様に俺がびびった。まさか、首締められてよろこんでいるのでは?と。

「あぁ、眷属にも貴方の魔力は流れるんですよ。だから喜んでるんですね」
「……なるほど定期的に餌が貰えると」
「んー。まぁ、そうですね」

なんだか含みのある言い方だが間違った見解ではないのだろう。全く。
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