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そんな天国に、似つかない汚物が一つ。

「―――な、なんですか、あれ」
また・・当たり……」

人と何かを混ぜて合わせてくっつけてひどい状態のそれは、徐々に徐々にこちらに向かってくる。
何か呻いている。歩くたびに地面が腐る。酷い匂いに一部は吐いたり、悲鳴を上げる不始末。
ぱんっと一発空に向かって空砲を撃つ。
まだ本物に会ったわけでもないというのに、奴らのくだらない策にはまって情けない。

「死にたい奴から前に出ろ」

これが本物だったら悪魔に殺されて眷属にされる可能性がある。だからそうならないように仲間内で殺すのが優しさというものだ。弾を充填して構えると皆一様に震えだす。
顔は各々とこの人に殺されれるくらいなら!という表情だ。

「隊列を組め。偶々今日は人数がいて、相手は一匹のでかい的だ。確実に息の根を止めろ」
「はい!」

のっそりのっそりと相手の動きは遅い。自分の身体をうまく扱えていない生物のようだ。

「―――撃て」

ぱんっ!ぱんっ!と銃声が複数響き渡る。銀の弾丸を体に撃ち込まれたその生物は最後に何かを叫んで灰になった。
気持ち悪い生物だ。もし俺の天使にあんな物がガラス玉みたいな苺色の瞳に映ったかもしれないと思うとぞっとする。

「それにしても、多くないですか?」
「ああ。今までこんなにあたりを引くことはなかったのに連日ずっとだ」

しかも、天使のいる町に近いところばかり。まだ町中で出現していないから一般人には知られていないが、それも時間の問題になってきそうだ。

「カナン君の町の方に歩いてましたね」
「ああ」

憎たらしい。やはり俺の天使に手出ししようっていう魂胆か。
今までは偶然と思っていたが、あまりにもその偶々が重なりすぎている。もうこれは確信に近い。

「悪魔なんぞに俺の天使を奪われてたまるか」
「まだ貴方のじゃないですし、そもそも会話らしい会話したことないじゃないですか」
「? 微笑んでくれただろ俺に」
「こういう人がストーカーになるんだろうなぁ」

失礼な部下ににっこりと笑顔を見せる。本当は武器を持ったまま店に行きたくないが、もしかしたらを考えると手放せない。町中に醜悪な生き物が現れた時に武器がなかったらスマートに殺せる自信がない。

「ああ、そういえば上位悪魔の召喚方法入手しました」
「ご苦労」
「いや、本当にやるんですか? 流石の貴方でも召喚されてきた上位悪魔は手こずるでしょ」
「召喚した時点で、契約上俺が上になるんだ。抵抗はされるだろうが、負けることはない」
「凄い自信ですね。まあ、いたところで足引っ張るだけなので同席しませんが、お気をつけて」
「ああ」

そう言って彼からその方法を記された紙に目を通し、町のセーフハウスでその儀式を行う。

悪魔を召喚する儀式に必要な要素は二つだけである。

一つ、召喚者の血で魔方陣を描くこと。この時、その血を絶やさず描き切らなければならない。
二つ、悪魔が好む願い事を思い浮かべること。この時の欲望によって出てくる悪魔の強さが変わるため、より強い悪魔を引きたいのであれば欲望に忠実にならなければいけない。

二つ目が、微妙だな。何が基準なのか分からない。

今回は、確実に上位の悪魔が絡んでいるので出来るだけ位の高いものを召喚してそこから他の悪魔の情報も引き出したい。

なんせ、天使の命がかかっている。
昼間の彼を思い出してすーっと深呼吸をする。今日も可愛かった。笑顔でパタパタと動く様はもうほんと至福……。
いらっしゃいませ、だなんてもうその言葉言われただけで卒倒しそう。

だから、彼を狙うのであれば容赦はしない。

代償というものがあるが、まあ力でどうにかなるだろう。そもそもこんなものを使うのは自信があるやつとか追い込まれているやつとかだろうし。

俺の天使は俺が守る。
ほかの誰でもない、この俺が。

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