育成ゲームで悪党を育てた爸爸は、最初から詰んでいる。~大きくなった我が子が、俺を監禁するため探しているらしい……~

紫鶴

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6 爸爸呼びに弱い

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「や!!!」

「んもー、大食いのくせに好き嫌い激しいんだから。ほら雪瓔、食べなさい」

「いーやーっ!!」



 よく食べ、よく寝て、よく遊び、三人は大きくなった。6歳児だ。現実だったら小学生だぞ。いやあ、時の流れって早いもんだ。

 そんな三人を食卓に座らせ、ご飯を食べるように催促しているのだが、よく食べるのに好き嫌いが激しい雪瓔がぷいっとそっぽを向く。

 結構うまくいったんだけどな。魚の煮付け。

 雪瓔は果物や菓子類が好きで、肉や魚はてんでだめ。野菜は比較的食べるんだけどね。



爸爸ぱぱ食べて!!」

「こう言うときだけそういう。仕方ない。一口食べたらあとは俺が食べてあげる」

「食べさせて!!」

「はいはい仰せのままに」



 あーんっと匙で魚の切り身を掬い雪瓔の口に運ぶ。先ほどまでそっぽを向いていた雪瓔のお口は素直にあーっと開いて待っていた。その中に匙を滑り込ませると、もぐもぐと雪瓔がよく噛んで飲み込む。

 よく出来ましたと雪瓔の頭を撫でてやる。すると、もう用は済んだとばかりに雪瓔はずいっと俺の方に煮付けの入った器を押した。それからすっと俺のデザートである桃の入った器を自分の方に引き寄せる。



「こーかんね?」

「分かったよ。全くちゃっかりしてるんだから」



 雪瓔は嬉しそうな表情を浮かべたあとにもぐもぐと自分の分の桃を口にしてから、俺の分に手を伸ばす。まあ、他のおかずは平らげたようだからよしとしよう。



「そーれーでー? 繻楽、魚の骨で何作ってる?」

「城!! 格好いいだろおり」



 器用に魚の骨でくみ上げたお城のようなもの。どうやったら魚の骨でそんなものができるのか分からないが,繻楽は器用である。それは良いのだが、困ったことに繻楽は飽きるとすぐに遊び始めるのだ。



「格好いいね。でも食べ物で遊んじゃだめ。玩具で遊ぼう。ご飯は食べ終わった?」

「まだ!! 爸爸、オレもあーんして!!」

「一口だけね? あとは自分で食べる」

「はーい!!」



 元気よく返事をした繻楽にも食べさせてあげる。もぐもぐと元気の良い返事と共に他のおかずにも手をつけて食べ始めるが、また数分後には飽きて違う遊びをしているはずだ。繻楽はそういう子。



「優蘭」

「……」

「優蘭。本を読むのはやめなさい」



 最後に、俺の膝の上を陣取って堂々と本を読み続ける優蘭。ご飯時だから本を遠くに置いたはずなんだけど、二人を相手している間に持ってきて読み始めたらしい。隙あらば本に齧り付く本の虫だ。

 俺の言葉が聞こえているのか優蘭は少しだけ本をあげ顔を隠す。そしてぼそりと呟いた。



「……あとちょっと」

「だめでーす!!」



 そう言って最後まで読むつもりなのは分かっている。ひょいっと本を回収して遠くに置く。むうっと上から見ても分かるくらい優蘭は唇を突き出して、不満げにこんこんと箸で机をつついた。



「行儀悪い! ほら早く食べる!!」

「……爸爸」

「まーったく!! この甘えん坊さんたちめ!! 一口だけだぞ!!」



 そうして優蘭にもあーんをしてあげつつ、自分の分も急いでかきこむ。

 都合の良いときだけパパ呼びしやがって。別に良いんだけどさ!!織でも不満はないよ!?まあ、パパの方が嬉しいけど!
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