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「カァ――ッ!!」
「うおわ!?」
繻楽から雪瓔の頭に向かって手を伸ばしていたら不意に烏の泣き声が聞こえた。あまりにもリアルな鳴き声に、驚いて声を上げるとごとりと何かが落ちてくる。
あぶねえ!!この子達に当たらなくて良かった!!
「おいこらくそ烏!! 今度上からもの落としたら焼き鳥にすんぞ!!」
飛び立っていく烏の後ろ姿めがけて人差し指を立ててやった。周りを確認してなかった俺も悪かったけど、腹が立って仕方ない。
「大丈夫かお前ら。びっくりし……いっ!?」
「! ぱぱ!!」
腕の中にいる二人の様子を伺おうとしたら、繻楽が今までに無い力で一撃、俺の腹に蹴りを入れる。あまりの痛みに悶えて、雪瓔を下ろしてしまうと彼は悲鳴に似た声を上げながらなでなでと俺の腹をさすってくれた。
だ、大丈夫。それよりも急にどうしたんだ繻楽……は……。
「繻楽!!」
「いぃああああああああああああっ!!!」
顔を上げて繻楽の後ろ姿を捕らえると、繻楽は烏が落とした青色の光る大きな石を飲み込もうと口を開けていた。明らかに彼の口の大きさでは入りきらないのに無理矢理詰めようと口を押さえている。
俺は慌てて繻楽の背部を叩き、口を押さえている手を掴む。ぽろっと飲まれなかった石が地面に転がったのを目視して繻楽を抱え込んだ。
あれ!?瞳の色が、薄い青色になってる!
よくよくみると、薄い赤色だったはずだった繻楽の瞳は青色に変化していた。その瞳は、一切石から視線を外すこと無く、繻楽はがりがりと俺の肩に爪を立て始める。爪切りしてて良かった。
「どうした、どうした。あれが欲しいのか?」
「うう~~っ!! うううううううっ!!!」
「んん~~? 欲しいの?」
くるりと体の向きを変え、繻楽の視界に石が入らないようにする。暫くすると繻楽は落ち着いてきたのかゆっくりと肩から手を離してちょこんと胸の前に手をしまう。
なんだそれ、可愛いんだが?
「欲しい?」
俺がそう聞くと繻楽は一度ふるりと首を振る。しかし、次にはこくこくと首を縦に振った。
これはどっちだ?いや、そもそも赤ん坊にこんな質問する方が馬鹿げてるのかな?でも、この子達俺の言葉分かってる気がするんだよね。天才かな?
そう考えるともしかして――。
「繻楽は欲しくないけど、何でか欲しくなっちゃうの?」
「う」
こくんっと繻楽は大きく首を縦に振る。ほうほう成る程?そういう設定?
赤ん坊にしてはなかなか重い業を背負っている気がするが、ゲームだしそういうこともあるんだろうな。
「そうかそうか。んー、キラキラしたものがだめなのかな? そういうのは撤去して貰おうか。あとあのくそ烏は焼き鳥の刑」
そもそも烏が落としたのが悪いので慈悲はない。自分の訳の分からない衝動に驚いただろうに繻楽は泣きもせず大人しい。偉いな。
「さて、部屋に戻ろうか。部屋の中でも楽しく遊ぼう!!」
雪瓔も抱っこして三人で部屋に戻ることにする。まさか少しだけ出た庭先でこんなことになるとは思わなかった。繻楽にとっては散々な一日だろう。ぎゅーっとずっと俺の服を離さないでしがみ付いてくるので相当恐怖を感じたらしい。
「大丈夫。パパはお前らを絶対に見捨てないぞ~。怖いものも俺が追っ払ってやる」
繻楽だけでは無く、雪瓔や優蘭にも言い聞かせるように優しく声を出す。
「だから、お前達はただ元気に育ってくれれば良いんだ」
最後になでなでと三人の頭を撫でるのを忘れない。三人はそうすると嬉しそうな表情を浮かべてぎゅっと俺にひっついてきた。可愛い。俺の子可愛すぎるぅ……っ!!
いやあ、これゲームなのに愛情湧いちゃうわぁ~。
彼らがどんな風に育つのか楽しみだ。
「うおわ!?」
繻楽から雪瓔の頭に向かって手を伸ばしていたら不意に烏の泣き声が聞こえた。あまりにもリアルな鳴き声に、驚いて声を上げるとごとりと何かが落ちてくる。
あぶねえ!!この子達に当たらなくて良かった!!
「おいこらくそ烏!! 今度上からもの落としたら焼き鳥にすんぞ!!」
飛び立っていく烏の後ろ姿めがけて人差し指を立ててやった。周りを確認してなかった俺も悪かったけど、腹が立って仕方ない。
「大丈夫かお前ら。びっくりし……いっ!?」
「! ぱぱ!!」
腕の中にいる二人の様子を伺おうとしたら、繻楽が今までに無い力で一撃、俺の腹に蹴りを入れる。あまりの痛みに悶えて、雪瓔を下ろしてしまうと彼は悲鳴に似た声を上げながらなでなでと俺の腹をさすってくれた。
だ、大丈夫。それよりも急にどうしたんだ繻楽……は……。
「繻楽!!」
「いぃああああああああああああっ!!!」
顔を上げて繻楽の後ろ姿を捕らえると、繻楽は烏が落とした青色の光る大きな石を飲み込もうと口を開けていた。明らかに彼の口の大きさでは入りきらないのに無理矢理詰めようと口を押さえている。
俺は慌てて繻楽の背部を叩き、口を押さえている手を掴む。ぽろっと飲まれなかった石が地面に転がったのを目視して繻楽を抱え込んだ。
あれ!?瞳の色が、薄い青色になってる!
よくよくみると、薄い赤色だったはずだった繻楽の瞳は青色に変化していた。その瞳は、一切石から視線を外すこと無く、繻楽はがりがりと俺の肩に爪を立て始める。爪切りしてて良かった。
「どうした、どうした。あれが欲しいのか?」
「うう~~っ!! うううううううっ!!!」
「んん~~? 欲しいの?」
くるりと体の向きを変え、繻楽の視界に石が入らないようにする。暫くすると繻楽は落ち着いてきたのかゆっくりと肩から手を離してちょこんと胸の前に手をしまう。
なんだそれ、可愛いんだが?
「欲しい?」
俺がそう聞くと繻楽は一度ふるりと首を振る。しかし、次にはこくこくと首を縦に振った。
これはどっちだ?いや、そもそも赤ん坊にこんな質問する方が馬鹿げてるのかな?でも、この子達俺の言葉分かってる気がするんだよね。天才かな?
そう考えるともしかして――。
「繻楽は欲しくないけど、何でか欲しくなっちゃうの?」
「う」
こくんっと繻楽は大きく首を縦に振る。ほうほう成る程?そういう設定?
赤ん坊にしてはなかなか重い業を背負っている気がするが、ゲームだしそういうこともあるんだろうな。
「そうかそうか。んー、キラキラしたものがだめなのかな? そういうのは撤去して貰おうか。あとあのくそ烏は焼き鳥の刑」
そもそも烏が落としたのが悪いので慈悲はない。自分の訳の分からない衝動に驚いただろうに繻楽は泣きもせず大人しい。偉いな。
「さて、部屋に戻ろうか。部屋の中でも楽しく遊ぼう!!」
雪瓔も抱っこして三人で部屋に戻ることにする。まさか少しだけ出た庭先でこんなことになるとは思わなかった。繻楽にとっては散々な一日だろう。ぎゅーっとずっと俺の服を離さないでしがみ付いてくるので相当恐怖を感じたらしい。
「大丈夫。パパはお前らを絶対に見捨てないぞ~。怖いものも俺が追っ払ってやる」
繻楽だけでは無く、雪瓔や優蘭にも言い聞かせるように優しく声を出す。
「だから、お前達はただ元気に育ってくれれば良いんだ」
最後になでなでと三人の頭を撫でるのを忘れない。三人はそうすると嬉しそうな表情を浮かべてぎゅっと俺にひっついてきた。可愛い。俺の子可愛すぎるぅ……っ!!
いやあ、これゲームなのに愛情湧いちゃうわぁ~。
彼らがどんな風に育つのか楽しみだ。
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