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4 鬼のような影

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「あー!!!」

「はいはい抱っこだな雪瓔」



 暫くゲームをしていたが、何の不満も無く今では快適にお世話ができている。

 それに伴って、少しだけ懐いてくれたのかお風呂騒動があったあと雪瓔はやたらと抱っこを所望し始めた。嬉しい。

 それから、雪瓔と優蘭だけでは無く繻楽もはいはいができる赤ちゃんだったことも判明した。

 ベッドの中は暇らしく、「あーあー!」と何かを訴えていた繻楽を抱えて床に離したらだーっと縦横無尽にはいはいした。周りに危ないものがなくて良かったが、ひたすら障子に穴を開けている。楽しいの?それ。

 雪瓔を抱っこしながら繻楽の様子を確認しつつ、静かに本を読んでいる優蘭をみる。文字だけの書物のはずだが、興味引かれるらしく熱心に読書をしていた。



「ぶーあぶー!!」

「ご機嫌だな繻楽。穴開けるの楽しいか?」

「あー!!」



 ぷすぷすと小さな指のあとが障子についている。現実だったら叱っているところだが、ゲームの中なので許せる。そもそもいつの間にか復元されているから張り替える必要も無いしね。



「そろそろご飯の時間だな。ミルクの用意しないと……うお!?」

「失礼致します」



 そんなことを呟いていたらミルクの入った哺乳瓶をお盆に置いてもってきたNPCが。そのまま彼女はそれを机に置くと去って行った。

 雪瓔が泣かなくなったのは良いけど、やっぱり突然現れるのはまだ慣れない……。



「最初は俺が作ったけど、一回俺やればNPCが覚えて準備するみたい何だよな。楽で良いけど、育成シュミレーションとしてはどうなんだ……?」



 こういう所がクソゲーと呼ばれてしまうんだよなぁ。

 準備された哺乳瓶を持って最初に雪瓔に咥えさせる。雪瓔がごくごくミルクを飲み干したあとにトントン背中を叩いてあげて、げっぷを出させた。そしてそのままいったん絨毯の上に置く。



「あーうー」

「ちょっと待ってな。繻楽~ご飯だぞ~」



 地面に下ろされた雪瓔がはいはいで俺の足に縋り付いてくる。抱っこをして欲しいのだろう。しかし繻楽と優蘭のご飯をあげないといけないから少しだけ我慢してくれ。



「あー!」

「はいどうぞ~」



 繻楽の抱っこもようやく慣れたようだ。はじめ拒否をされたが今では静かに抱っこさせてくれる。

 繻楽もいい飲みっぷりで、最後にげっぷをさせたあと膝から下ろす。すると、繻楽は次にてててっと雪瓔のもとに向かうとぐわしと彼の髪をわしづかみにした。



「あああああっ!!」

「きゃっきゃっ!!」

「やめんか繻楽!!」



 障子に穴を変えるのは飽きたらしい。今度は雪瓔で遊ぶつもりだ。俺はすぐさま繻楽を抱えて引き剥がし、道術を使って空中浮遊させる。これもまたお気に入りのようできゃいきゃいはしゃぎながらくるくる器用に回っていた。悪戯好きで困ってしまうぜ……。



「ふあ、ふあああ!!」

「よしよし、びっくりしたね雪瓔」



 髪をむしり取られそうになった雪瓔は涙を浮かべながら手を広げて待っていた。俺は彼の要望に応えるべく抱っこをしてあやしてあげる。



「ごめんね、もう少しだけ待って」



 すんすん鼻を鳴らしている雪瓔を片手で抱っこしつつ優蘭の元に向かう。



「優蘭、ご飯だぞ」

「……」

「優蘭、本は一旦やめようか」

「…………」



 うんだめだ。これはもう本の世界にどっぷりハマってしまっている。ぱたんっと強制的に俺は本を閉じた。すると優蘭は固まったあとにころんっと仰向けになって俺を見上げた。

 そして、俺と目が合うと面倒そうな表情で「あぅ」と声を上げる。



「お腹空かないのかお前。ほらほら頑張って飲む」

「んむ」



 不服そうな表情を浮かべるが、やはり腹は減っているらしい。二人に比べてそこまで食いつきはないがごくんごくんっと膝の上で彼はゆっくりとミルクを飲んでいた。

 優蘭は抱えて飲ませると不満のようで少しだけ膝で角度をつけて飲ませるとよく飲んでくれる。

 流石にゲップを出すときは抱っこしないといけないので雪瓔と交代でやったあと、優蘭は、用は済んだとばかりに膝の上から下りて本に向き直る。
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