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本編

気絶させようとしたら縛り上げられた

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初めての料理だぜ~って喜んでいた数時間前の自分を心底殴りたい。早くヴィを休ませる環境を整えなければ!



お風呂いれて、着替え持って来て、入浴剤とか準備して……、あ、このお茶ダメなんだっけ?いやそもそも淹れるの下手くそだから出せないんだけど。



サンドウィッチは冷蔵庫に……いや、今食べてしまおう。こんなの食べないだろう。祭りで美味しいもの食べてきたんだろうし。丁度朝ご飯まだ食べていないし。

それは置いたままにしておいて、ベッドルームを整理する。そういえば、棚が沢山あったと思い一先ず近くの棚を開けた。



「え……?」



これ、なんだ?下着……?

肌触りの良い素材であるが、すごく透けているし穴が開いている。夜のあの行為の時に挿入しやすそう、触りやすそうっていうのはあるが、なんでここにあるの?しかも色んなデザインのあるし。

そっと元の場所に戻して他の棚を開ける。



「……???」



そこには瓶が沢山あった。中身を確認すると甘い匂いがする。他のものを確認すると柑橘系の香りもした。香油のようなものなのか少し手につけるとしっとりしている。アロマか何かだろうか。紙にしみこませて火でもつければ良い匂いがするようなものだろう。一先ず眠れそうな香りを選んで棚から取り出す。



それから別の棚を開けた。これは見たことがある。今はあまり使っていないが前はよく使用していた玩具だ。なんだっけ?拡張に必要な物だって言ってた!



それが綺麗にガラスケースの中に入れられている。封が切られていないところを見ると未使用のようだ。これもそっと閉じて次の棚を見ようとしたが、人の気配を感じた。



それと同時にがちゃりっとベッドルームの扉が開く。



あ!



「お疲れ様!!はい!いったん寝て!!」

「え?」



そこにはヴィがいた。なにやらキラキラした小物を身に纏っておりそれを服からむしり取ってはごみに捨てていたヴィがきょとんした顔をしている。

俺はヴィに近寄って追いはぎの様にその服を脱がせる。それからぐいぐいベッドに引っ張った。



「昨日ずっとあの子と一緒にいたんでしょ?疲れただろうから一旦休んで!」

「ああ。大丈夫だよこれぐらい」

「俺が大丈夫じゃないの!!」



むっと頬を膨らませると、ちゅーっとキスをされる。それを甘んじて受け入れると舌が入ってきて、いつの間にかベッドにひっくり返されていた。



「んっ、ちょ、ヴィ……」



がっと顔を抑えられて深く深くキスをされ、上からのしかけられているので起き上がることも出来ない。

そのままシャツのボタンを取られて、ヴィを止めようとするが彼の手が止まらない。



「びぃ、あ、ふっ、ま……」



そしてズボンに手をかけられるが、不意にまたちりんちりんっとベルが鳴った。がばっとヴィが起き上がるので、俺はすかさずヴィに寝技を食らわせる。



「ちょ、ベルちゃん……?」

「お、れ、が、いく!!」

「わ、分かった。じゃあ一緒に……」

「ふん……っ!!」

「ちょ、苦しいよ……?」



くそ。流石に落ちないか!ならこれでどうだ……っ!!違う技で抑え込もうとしたが、ヴィがいきなり力強く押し返されてしまい、逆にあっさり俺が寝転がされた。そのうえ、何処から出したのか紐で縛られた。



「あれっ!?」

「ちょっと待っててね」

「ちょ、ま、待って!一緒に!一緒にって言ったじゃん!?」

「うん。でもベルちゃんは一人で行こうとしたし」

「わ、分かった!!ごめんね?一緒に行こう!!??」



俺がそう言うが、ヴィが全く意に介さず何故か足元で屈む。だから彼の顎めがけて蹴りを食らわせようとして足首を掴まれた。



「ベルちゃん?」

「げっ!ご、ごめんって!あ!ちょっと待って!?ヴィ!足まで縛らないでよ!!」

「うーん。どうしようかなー?」

「そう言いながら縛らないでよ!!」



じたばたと足を動かすが簡単に縛り上げられてしまい、それだけでは飽き足らず近くの棚から鋏を取り出した。



「え!?」

「大人しくしててね?あまり傷つけたくないから……」

「ヴィ、ヴィ!お、落ちつ……」



すっと袖口から鋏が入って肌に冷たい刃が当たる。びくっとその冷たい感覚に体を震わせてぐっと黙る。

そして、じょきんっと無慈悲に袖口が斬られた。そのままじょきじょきと袖口から肩まで軍服を斬られる。



予備で一枚家にあるはずだが、ここにはこれ一着しかない。

つまり、本格的に漂流者との関わりを断とうとしているということが分かる。

なんで!?と叫びそうになるが、昨日のレインの話を見るとその対応も仕方ないというもので……。あと、そもそも気絶させようとした俺が悪いのであまり強く文句を言えない。



というか舐めてた。ヴィ一応エースを担ってるものね、これぐらいは捌けるよね、普通。



そんな事を思っている間にも俺の服ははさみで切られて上着はズタボロだ。そして、次にズボンの裾に刃が入り思わず「ヴィ」っと叫ぶ。



「ぬ、脱ぐ!脱ぐから!!」

「脱ぐには解かないといけないよね?また蹴られちゃうかもって思うと……」

「うぐっ!」



少しまた蹴れるかもって思ってたのバレたかもしれん!でもでもこのままだと俺ヴィに任せっきりになってしまう!!

それにこれ以上切られると困る!!何か意識を逸らさないと!!



「そ、そういえば!昨日俺料理作ったんだけど!ヴィの分もキッチンのところに……」

「え!?」

「で、でも呼ばれてるから食べられ無いよね?あーあ。折角ヴィにも作ったのにな~?レインにあげようかな~?」

「ま、待って!食べる!!」



鋏を置いたヴィが慌てて出て行った。俺はどうにか体を動かしてその鋏を取り、縛っている紐を切る。バラバラになった上着はそこら辺に捨ててさっき追いはぎしたヴィの上着を手にした。若干キラキラしてるのがまだついているが気にすることは無い。



何より、これ俺着て行ったらヴィが漂流者のところに行けない!!

扉に手をかけて開けようとするがどういうわけか少ししか開かない。その原因を突き止めようと少し開けたところから覗くとソファとテーブル、いすなどがそこに積みあがってバリケードになっていた。



「ちょ、え!?なにこれっ!?ヴィ―――っ!!」



キッチンにいるヴィにこの叫び声は聞こえなかった。いや、聞こえていたとしても無視しているかもしれない。でも、彼の上着は俺が預かっている。必ずこのバリケードを片付けるはずで……。

そんな事を志向していると、がちゃっとまたどこかの扉が開いた。かと思えば、そこにレインが現れた。このバリケードを見てぎょっとした後に、扉の隙間から俺を見つけてすっと紙を取り出した。



【何したの?】

「き、気絶させて一人で行こうと……」

【(´・ω・`)】



なんだその顔文字は!!俺だって悪いとは思ってるよ!!でも仕方ないじゃん!行こうとするんだもん!!



「でも、ヴィの上着ははぎ取ったからヴィが行くことは……っ!」



俺がそう言うとレインが目を逸らし、手元の何かをさっと背後に隠した。それからそっと扉を閉じようとする。



「ちょっと!その手元の見せな!!そして寄越せ!!」

【手、挟まる】

「レインはヴィが可哀そうだと思わないの!?」

【漂流者の方が可哀想だと思う】

「あいつのことはどうでもいいんだよ!!」



―――ちりんちりんちりん!!

少しも待てないのかまたベルが鳴る。キッチンからヴィが出てきて俺と目が合うとにっこりと笑顔を見せた。



「ベルちゃん。美味しいサンドウィッチどうもありがとう」

「あ、ど、どういたしまして」



褒められて悪い気はしないので照れながらそう答える。それからヴィはレインの荷物を手に取った。



「ありがとう。レインは先に行ってていいよ」



こくんと頷いたレインはそしてさっさと部屋を出て行った。彼もあのベルの音には気づいているだろうし、同じ仕事仲間だから当たり前なんだけど!

視線をヴィに向けると、どういうわけかその荷物から今俺が来ている軍服を出した。ヴィがそれを着て、ボタンを留める。



あー!!



「待って!ねえ待って!!」

「ベルちゃん、行ってくるね?お昼に少し戻ってくるから」

「ヴィ―――――――っ!!」



そうしてヴィも行ってしまった。

俺は、漂流者が突然病気になってベッドから起き上がれなくなればいい!!と呪いの念を送りながらふて寝した。



だってベッドしかないんだもん。やることないし。
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