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本編

お料理

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そうだ!手始めに料理をしてみよう!!丁度そこに味見役がいるし!!



「夕飯食べてく?食べていくよね!?」

【ヴィアンが何か作り置きでもしていったの?】

「これから俺が作る!!」



レインの手が止まった。なんだよ。そんなに俺の事じっと見るんじゃないよ!!



【ちなみに何を作るの?】

「ビーフシチュー!!」



この前の料理本で見たし!!野菜切って~煮込んで~でしょ?出来そうじゃない?



【ベルは、何か料理を作ったことがある?】

「え?ないけど?」

【簡単な物から作ろう?】

「え?なんで?」

【ベルは狩りの時にいきなり大物を狙うの?】

「はっ!!」



成程!確かに俺は初心者だ。もう少し簡単なものから作った方が良いってことか!!

でも、簡単な料理って何?

そんな事を思っているとレインが食材の確認をして、食パンや野菜を取り出した。



【サンドウィッチを作ろう】

「え?流石に俺それぐらいはできるよ?」

【本当に?】

「え?」



他に卵、バターなどを出される。ここなんでもあるな。維持費相当かかってるぞ。



【ゆで卵は作れる?】

「ゆで卵……?えーっと、お湯の中に卵を入れるんだよ、ね?」

【じゃあ、ゆで時間によって半熟や固ゆでなど種類があることを知っているか?】

「え!?そうなの!?」



知らなかった!!いつも黄身がトロっとしてる奴しか食べたことない……。あれはなんて言うんだろう……はん、じゅく?



【それなら卵サンドを作ろう】

「うん!!黄身がトロっとしてる奴作りたい!」

【半熟だな。ならゆで時間は5分から6分くらいだ】



そう言ってレインが俺にどこからか取り出した砂時計を渡した。これがその時間を計れる奴だろう。

俺はそれを受け取って鍋に水を入れて火にかける。

ゆで卵も煮るだけだから案外簡単だな。料理初心者の俺でもいけるのではないか?



他にもレインが野菜を切ったり、他の棚から調味料を出している。黙っているが、結構驚いているはずだ。ここ本当に何でもあるのな。



お湯が沸いて、俺はお玉でそーっとそーっと卵を四つほど入れる。それから砂時計をひっくり返して半熟までじーっと時間が過ぎるのを待つ。



半熟卵が出来たら何にしよう。卵サンドイッチ、輪切りにして野菜と挟むのもいい。あ。そういえば、結構前に厚焼き玉子サンドを作って貰ってそれが美味しかった!ゆで卵出来そうだし、それにも挑戦してみようかな!えーっと、卵をボウルで解きほぐしてた、と思う……。



俺は卵を取り出してボウルを用意する。確か卵割るときってこれをこんな感じで―――。



「あれ?」



思いっきり机に打ち付けたらぐちゃっと手の中で割れてしまい、殻が砕けた。一先ずその手の中のものをボウルに入れる。見事に殻ごと潰れた卵がそこにあった。



「力入れすぎた?これもう食べられないから捨てるか……」



シンクに流そうとしたらばっとそれをレインに奪われた。きょとんとして首を傾げる。



「え?それ捨てるよ?殻たくさん入ったし」



レインはふるふると首を振って、一旦ざるにあけると卵と殻に分けられた。それから器用に細かい殻を大きめの殻で取ってじろっと俺を睨む。俺はうっと気まずくなって視線を逸らすと、いつの間にか砂時計が終わっていることに気付いた。



「あ!!」



慌てて火を止めてそれから水で冷やす。殻にヒビはいっていないようだが、少しゆですぎた気がする。他のものも作ろうとしたからだ。思わずしょんぼりと肩を落とすと、すっと目の前に紙が現れた。



【元気出して(..、)ヾ(^^ )】

「だ、大丈夫。原因は他のものも作ろうとした俺が悪かっただけだから。一先ず厚焼きの方は諦める」

【ああ、成程。じゃあ俺はそれ作るよ。だからベルは卵サンド作ってね】

「うん!」



レイン。公爵家の三男なのに料理が出来るなんてすごいな。権力的にも婚約者がいておかしくないのに顔が怖いせいで皆から断られるなんて可哀そうだ……。こんなにいい子なのに。



それから俺はゆで卵の殻をむいてボールの中でぐちゃぐちゃにする。やっぱり少し茹ですぎたようで黄身がトロっとなっていなかったが、マヨネーズ、塩などと混ぜてバターやマスタードを塗ったパンに挟めば美味しい卵サンドだ。



おお!!俺でも出来た!やったー!!



味見として一つ手に取って食べてみる。食べれる!!普通に食べれる!!自分でもまともな料理が出来たことに感動しながら、他にも野菜(既にレインが切っていたもの)を拝借して、他に輪切りにした卵と一緒に挟む。



「出来た!!ねーね―見て見て!!ヴィのご飯!!」

【すごい。美味しそうだね】



さっと既に書いてあったのかその紙だけをレインは出して俺に見せる。なんだよ~。俺出来るって思われてたのか~。その事に嬉しくなってにこにこしながらもう一つの皿を出す。



「こっちはレインの!」

「!」



あ!厚焼き玉子出来たみたい!

フライパンから綺麗にオムレツみたいな厚焼き玉子を皿に移したレインがぴたりっと動きを止める。ん?っと彼の様子を伺うが生憎何言いたいか分からない。すまん。



「あ!要らなかった?」



ぶんぶんっと全力で首を振った後にかああっと顔を赤くしたレインは、わたわたと紙を準備しようとするが俺は何を言わんとしているのか流石にわかり、ふっと笑みを浮かべる。



「どういたしまして~。そっちの厚焼き玉子は俺のね」



こくこくっと縦に首を振ったレインがフライパンを片付けて厚焼き玉子サンドを完成させる。



そうして、俺の初めてのお料理は終わった。

レインは俺が作ったサンドウィッチを布に包んで部屋から出て行った。ここで食べていってもいいとは言ったが頑なに断ったので俺は仕方なく見送り、ヴィが帰ってくるのを待つ。初めてにしては上出来なのでは?と茹で時間の失態は無かったことにして自分を褒め称えつつ、一通り風呂なども終わらせてソファがある部屋で待っていた。







――――次の日の朝まで。

窓から日の光が差し込んできて俺はぎりいっと歯を食いしばる。



「あんの漂流者がああああああああっ!!」



まだ!ヴィの婚約者はまだ俺なのに!!朝帰りさせるなんてひどい!!文句の一つでも言ってやろうとさっさと準備を済ませて部屋に向かう。昨日の呼び出しのお返しでばんばんばんっと派手にノックをする。

この野郎!!俺の努力を踏みにじりよって!!許さん!!



「ちょっと!!起きろよ!!一晩も仕事させるなんてどれだけ……っ!!」

「あれ?おはようございます、もう一人の護衛の方」

「ああ゙!?」



思わず柄悪くそう言ってしまった。やべっと一瞬焦って其方を見るが相手は何も気にしていないようだ。というか、にやにやと何やら見下されているような視線を感じる。



「秋様とヴィアン様は城下で一晩過ごされましたよ?何でも昨日、星降り祭という祭事があったとか」

「え?ああ……」



そういえばそんなのもあったな。俺は興味なかったからそういうイベントごとに疎いんだけど……。

そこまで考えてあっと声を出す。それから顔を青くした。



ま、まさか今まで行きたかったのかな!?で、でもあんな人混みの中ヴィなんか目立つから色んな人に声かけられて疲れるんじゃないかとか思ってたし、めんどくさかったし……。いや、いいや!!俺は!今までそう自己完結して何もヴィに聞いてなかった!!自分のことばっかり優先してた!!



「その顔だと、誘われもしなかったんですね。ヴィアン様の婚約者なのに」

「……っ!」



今!そのワードを出さないでくれ!!婚約者なのに俺ばっかり甘えてたって今更実感したくない!!



「ま、またあとできます!!」

「そうですね~。ヴィアン様もきっとお疲れでしょうからね~」



分かってるよそんな事!!

俺は舌打ちしそうになってダッシュで部屋に戻る。

帰ってきたらとりあえず寝かせて、今日は部屋から出さないようにしないと。仕事しすぎ。させすぎ俺。



あと、祭り行きたかったかどうかを聞かないと……。



うわーん!今までごめんヴィ!かなりその祭り逃してるよねぇ?!今度の祭りは行くからぁ!!
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