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本編
視線
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離宮はすごく豪華だった。
具体的に言うと凄い広いし、高そうな家具ばかりで触ったら最後どんな請求が来るか分からない、というような調度品ばかりだ。そう言うのに興味なくて全く目が肥えていない俺からしてもなんかすごいことは分かる。
流石王宮。
秋、―――呼び捨てでいいと言っていたので遠慮なく―――の部屋はそんな感じで俺だったら絶対に住みたくない。でも漂流者ってこういうのが好きなんだっけ?前の人はここでも狭いとかほざいてウィルが開放感ある部屋(外)に連れていきたかったと言っていたような気がする。
「ここが貴方の部屋です」
「え……?」
ウィルに敬語を使わらせるとは、流石である。そんな事を思いながら秋を見ていたら、彼はぽかんとしてそれからばっとウィルを見た。それから顔を真っ青にしてぶるぶると首を横に振る。
「こ、こんな大きくて立派な部屋で過ごせません!!あ、あの、俺馬小屋でもいいですから!!ここ温かいですし!!それに、万が一でも壊したら、その、大変ですし……」
分かる!!
秋がそう言うので思わずそう声が漏れそうになり慌てて口を抑える。
危ない。こんなので彼の機嫌を損ねたくない。ウィルに睨まれそうだし。
そんな事を考えていると、視線を感じた。いや、正確に言えば、ヴィの方に。俺は基本的にヴィに関してはアンテナを常に張っているのでよく分かる。
秋が凄くヴィを見ている!!え?なに、どういうこと?
そして、気づいているであろう本人はガン無視である。
俺はウィルを見た。ウィルはふーっと息を吐く。顔は笑っているが目が笑っていないのを見るとこれだから漂流者はめんどくさいっと思っているだろう。
でも彼の反応は普通の人にとっては当たり前であると思う。俺ですらそう思ったし……。
「申し訳ありません。此方の部屋しか今は空いていませんでした……。室内にあるものは何でもお使いになって構いませんし、壊しても此方から責めるような事はしませんよ」
「で、でも……」
ウィルはにっこりと笑顔でそう言うが、彼はちらちらヴィを見ている。な、なにを伝えたいのだろうか。でもこのままだとまずいということぐらいはバカな俺でも分かる。
だから今こそ!退職したいがために培った能力を発揮する時!!
俺ははああああっと大きくため息をついた。俺のその行動に注目を浴びるがそれを狙って行ったのである。俺はそれから不遜に見えるように腕を組み睨みつけた。
「さっきから、文句ばっかりうるさいなぁ。大体にしてお前のような不審人物をここにいれるだけでも異例なのに、もっと特別待遇をしてほしいって言いたいの?図々しいね」
「そ、そんなつもりは……っ!!」
「であれば素直に受け取れば?これ以上何を望むの?よそ者の癖に」
「そ、そうですね、すみませんでした……」
しゅんっと肩を落として大人しくなった秋を見てウィル、早くどうにかしてっとこれからのことは彼に丸投げする。
後は頭がいい人がやってくれる。
「一先ず、中に入ってください。これからの話をしましょう」
「は、はい、すみません……」
ウィルの敬語がなれない。なんかぞわぞわするよ。
中に入って行く二人に続いて俺とヴィも中に入る。近衛は外で待機のようだ。
それにしてもさっきは何を伝えたかったのだろうか。バカには分からないものだったわ……。
中のソファにすぐさま座ったウィルが、どうぞっと秋に座るように言う。秋はウィルの許可がおりてから座った。そこは弁えている訳ね。
それからウィルの後ろに俺とヴィが控える。ぶっちゃけ間に立っていたいけどそういうのって失礼なんでしょ?お前信用してねぇからみたいな意味合いにとられちゃうこともあるらしい。全くもってその通りだけどそれを表に出さないのが貴族。俺はそういうの苦手だけど、出なければいけないパーティーとかには言葉通り真に受けないことにしていた。今でも親しい人間以外はそうだけど。
「さて、これからのことを話しましょう。先ほど紹介した通りこの二人が秋様の護衛となります。何かあればこの二人に相談を」
ぺこりっと頭を下げると秋も同じように頭を下げた。ウィルの話は続く。
「基本的のこの離宮では自由にしてくださって構いませんがここ以外に行く場合は二人を連れていってください。其方のベルを鳴らして頂ければいつでも彼らが伺いますので」
「あ、えっと、はい……」
秋が俺を見た。俺は笑顔を返せばいいのか無表情のままでいいのか迷った結果何もアクション出来なかった。
秋の顔が少し真っ青になって怯えているようだ。おう。効果てきめんってことでいいのかな?
……てことはヴィの方に懐いちゃうかもしれない。
……余計な手間をかけさせてごめんよ。あとで、色々お礼するから……。
「私の話はこれぐらいですが、質問等ございますか?」
「え、あ、えーっと、そう、ですね……」
そう言って秋は考え込む。まあ突然言われても思いつかないよね。ウィルもそれが分かっているようで努めて柔らかい声を出していた。
「そちらの二人に後から聞いてくださっても構いませんよ」
「は、はい!じゃあ今は大丈夫です。ありがとうございます!!」
「それならよかったです。時々様子を見に参りますので、自分の家の様にお過ごしください」
先ほどの何かあったら殺してなんて言葉を言ったとは思えない優しいお言葉。流石だ。流石貴族の中のてっぺん。怖い……。
そして、それをどう受け取ったか分からないけれど多分友好的に捉えたであろう秋ははいっと元気よく返事をしていた。
「それじゃあ二人とも、大事なお客様をよろしくね」
「「はっ!」」
そうしてウィルが去って行った。ここには秋、ヴィ、俺の三人のみ。
どう話を切り出そうかと思っていたら、秋が「ベルさん!!」っと大きな声で俺を呼んだ。
俺は少し驚いて「何?」っと先ほどのキャラを突きとおすために敬語も外してしまう。こんなつもりじゃなかったが、まあ、多分気分を害していないから大丈夫だ。
「あの、先ほどはすみませんでした!!」
「へ?」
「こういう扱いにあまり慣れていなくて……緊張していました。普通に考えて王子様に時間を取らせちゃダメですよね……。今度からは気を付けます!!」
「そ、そう。分かったならいいよ」
「はい!ヴィアンさんも、お時間とらせて済みませんでした!!」
「いえ、仕事ですから」
ヴィがすげなくそう言った。秋がアハハっと少し笑って困ったように頬をかく。
ここに長居はまずい気がする。
「それじゃあ、今晩はもう下がるから。何かあったらそのベルを鳴らして」
「あ、は、はい」
そう言って俺はヴィと一緒に出て行った。秋はしゅんっとしていたが、最後に刺さるような視線を感じ取りやっぱり感じ悪かったか~っと少しばかり明日の身の振り方を考えようと思う。
外に出ると、何故かウィルがいた。
「うわ!!」
思わず叫んでしまい、慌てて口を押える。幸いなことにこの建物自体がそういう部屋として作られているので中にも外にも音は漏れず、特別な道具でなければ聞こえない。
だから秋に聞かれることは無いだろう。
「はー?何その反応。てか出てくるの遅すぎ」
「いやなんでまだいるんですか?」
「君たちの部屋の案内してないから待ってあげてたんだけど。ついてきて」
近衛たちがいるので敬語を使いそう言うと、ウィルが至極当然なことを言ってきた。確かに教えてもらっていなかった。そう言ってどこかに案内された。
「ここだよ。鍵」
ウィルがそういうのでヴィが鍵を出して扉を開ける。中に入るとテーブル、いす、ソファ、が置かれている。それから、多分浴室、お手洗いに繋がる扉、ベッドルームの扉だろうか。なんか、複数の扉が見える。総じて広いということは分かった。
「ここにある道具は何でも使っていいよ。壊しても、持って帰っても請求しない。ただ、無理はさせないように」
「……承知しました」
「わ、分かっています。俺も手伝いますから」
何処かにキッチンあるのかも。頑張って人並みに家事出来るぐらいにはするよ。この一か月で……。
うぐうっと変な顔をするとウィルが今日一番の綺麗な笑顔でポンっと俺の肩を叩いてきた。
「まあ、いつも涼しい顔してるから大丈夫だと思うけどね。それじゃ、三日後くらいにまた様子見に来るから」
ウィルはそう言って今度こそ戻って行った。
俺は何だかどっと疲れたようでソファに座り込むと、ヴィが隣に座って俺の髪を撫でる。
「お疲れ様です。ベルちゃ……」
ちりん、ちりんちりん!!
その瞬間ベルが鳴った。
え?早すぎね?
流石に俺は驚いてでも仕事だからと腰を上げると、ヴィが制止をかける。
「僕が行くよ」
「え、でも……」
「いいの。お風呂入ってきていいよ」
「いや、それは……」
とても魅力的であるがこれ以上ヴィに迷惑をかけるわけには……!そう思ったが……。
「お願い、ね?だめ?」
「ううん。いいよ、ありがとう」
可愛くお願いされたらころりと落ちちゃう。なんて単純なんだ俺……。意思が弱すぎる……。
俺はヴィの言う通りにお風呂の準備をしてそのままお風呂に入る。あ、お風呂の部屋、トイレの部屋、台所と食べるところがある部屋、ベッドがある部屋と結構分かれていた。ベッドがあった部屋は、なんか棚とかに見たことないものが置いてあって、何に使うか分からないが多分安眠グッズだと思うものを見つけつつ、クローゼットからバスローブとタオルを取って向かった。
因みにお風呂場にも数種類の石鹸、入浴剤などがあって金はあるところにはあるんだなっと思いました。
お風呂から上がってもヴィは帰っておらず流石に丸投げはまずかったかなっと反省してソファで待っていた。眠らないようにとキッチンからなんかまずそうな色のピンク色の茶葉を適当に淹れた。お湯ぐらいは沸かせるのだ。俺でも。
「うわ、まっずぅ!!」
しかし、自分で淹れたお茶がこんなにまずいだなんて知らなかった。でもこのまずさが眠気を吹っ飛ばしてくれる。ティーカップいっぱいに淹れたので眠りにつくことは無いだろう。
うう。なんてまずいお茶なんだろうか……。仕事を任せた俺の罰だ。甘んじて受け入れるよ。
――――あれ?何か頭がふわふわしてきた。体も熱い。さっき風呂入ったからかな?一先ず、ヴィが来るまで起きてないといけないからこのまずいお茶を飲まねば!!
具体的に言うと凄い広いし、高そうな家具ばかりで触ったら最後どんな請求が来るか分からない、というような調度品ばかりだ。そう言うのに興味なくて全く目が肥えていない俺からしてもなんかすごいことは分かる。
流石王宮。
秋、―――呼び捨てでいいと言っていたので遠慮なく―――の部屋はそんな感じで俺だったら絶対に住みたくない。でも漂流者ってこういうのが好きなんだっけ?前の人はここでも狭いとかほざいてウィルが開放感ある部屋(外)に連れていきたかったと言っていたような気がする。
「ここが貴方の部屋です」
「え……?」
ウィルに敬語を使わらせるとは、流石である。そんな事を思いながら秋を見ていたら、彼はぽかんとしてそれからばっとウィルを見た。それから顔を真っ青にしてぶるぶると首を横に振る。
「こ、こんな大きくて立派な部屋で過ごせません!!あ、あの、俺馬小屋でもいいですから!!ここ温かいですし!!それに、万が一でも壊したら、その、大変ですし……」
分かる!!
秋がそう言うので思わずそう声が漏れそうになり慌てて口を抑える。
危ない。こんなので彼の機嫌を損ねたくない。ウィルに睨まれそうだし。
そんな事を考えていると、視線を感じた。いや、正確に言えば、ヴィの方に。俺は基本的にヴィに関してはアンテナを常に張っているのでよく分かる。
秋が凄くヴィを見ている!!え?なに、どういうこと?
そして、気づいているであろう本人はガン無視である。
俺はウィルを見た。ウィルはふーっと息を吐く。顔は笑っているが目が笑っていないのを見るとこれだから漂流者はめんどくさいっと思っているだろう。
でも彼の反応は普通の人にとっては当たり前であると思う。俺ですらそう思ったし……。
「申し訳ありません。此方の部屋しか今は空いていませんでした……。室内にあるものは何でもお使いになって構いませんし、壊しても此方から責めるような事はしませんよ」
「で、でも……」
ウィルはにっこりと笑顔でそう言うが、彼はちらちらヴィを見ている。な、なにを伝えたいのだろうか。でもこのままだとまずいということぐらいはバカな俺でも分かる。
だから今こそ!退職したいがために培った能力を発揮する時!!
俺ははああああっと大きくため息をついた。俺のその行動に注目を浴びるがそれを狙って行ったのである。俺はそれから不遜に見えるように腕を組み睨みつけた。
「さっきから、文句ばっかりうるさいなぁ。大体にしてお前のような不審人物をここにいれるだけでも異例なのに、もっと特別待遇をしてほしいって言いたいの?図々しいね」
「そ、そんなつもりは……っ!!」
「であれば素直に受け取れば?これ以上何を望むの?よそ者の癖に」
「そ、そうですね、すみませんでした……」
しゅんっと肩を落として大人しくなった秋を見てウィル、早くどうにかしてっとこれからのことは彼に丸投げする。
後は頭がいい人がやってくれる。
「一先ず、中に入ってください。これからの話をしましょう」
「は、はい、すみません……」
ウィルの敬語がなれない。なんかぞわぞわするよ。
中に入って行く二人に続いて俺とヴィも中に入る。近衛は外で待機のようだ。
それにしてもさっきは何を伝えたかったのだろうか。バカには分からないものだったわ……。
中のソファにすぐさま座ったウィルが、どうぞっと秋に座るように言う。秋はウィルの許可がおりてから座った。そこは弁えている訳ね。
それからウィルの後ろに俺とヴィが控える。ぶっちゃけ間に立っていたいけどそういうのって失礼なんでしょ?お前信用してねぇからみたいな意味合いにとられちゃうこともあるらしい。全くもってその通りだけどそれを表に出さないのが貴族。俺はそういうの苦手だけど、出なければいけないパーティーとかには言葉通り真に受けないことにしていた。今でも親しい人間以外はそうだけど。
「さて、これからのことを話しましょう。先ほど紹介した通りこの二人が秋様の護衛となります。何かあればこの二人に相談を」
ぺこりっと頭を下げると秋も同じように頭を下げた。ウィルの話は続く。
「基本的のこの離宮では自由にしてくださって構いませんがここ以外に行く場合は二人を連れていってください。其方のベルを鳴らして頂ければいつでも彼らが伺いますので」
「あ、えっと、はい……」
秋が俺を見た。俺は笑顔を返せばいいのか無表情のままでいいのか迷った結果何もアクション出来なかった。
秋の顔が少し真っ青になって怯えているようだ。おう。効果てきめんってことでいいのかな?
……てことはヴィの方に懐いちゃうかもしれない。
……余計な手間をかけさせてごめんよ。あとで、色々お礼するから……。
「私の話はこれぐらいですが、質問等ございますか?」
「え、あ、えーっと、そう、ですね……」
そう言って秋は考え込む。まあ突然言われても思いつかないよね。ウィルもそれが分かっているようで努めて柔らかい声を出していた。
「そちらの二人に後から聞いてくださっても構いませんよ」
「は、はい!じゃあ今は大丈夫です。ありがとうございます!!」
「それならよかったです。時々様子を見に参りますので、自分の家の様にお過ごしください」
先ほどの何かあったら殺してなんて言葉を言ったとは思えない優しいお言葉。流石だ。流石貴族の中のてっぺん。怖い……。
そして、それをどう受け取ったか分からないけれど多分友好的に捉えたであろう秋ははいっと元気よく返事をしていた。
「それじゃあ二人とも、大事なお客様をよろしくね」
「「はっ!」」
そうしてウィルが去って行った。ここには秋、ヴィ、俺の三人のみ。
どう話を切り出そうかと思っていたら、秋が「ベルさん!!」っと大きな声で俺を呼んだ。
俺は少し驚いて「何?」っと先ほどのキャラを突きとおすために敬語も外してしまう。こんなつもりじゃなかったが、まあ、多分気分を害していないから大丈夫だ。
「あの、先ほどはすみませんでした!!」
「へ?」
「こういう扱いにあまり慣れていなくて……緊張していました。普通に考えて王子様に時間を取らせちゃダメですよね……。今度からは気を付けます!!」
「そ、そう。分かったならいいよ」
「はい!ヴィアンさんも、お時間とらせて済みませんでした!!」
「いえ、仕事ですから」
ヴィがすげなくそう言った。秋がアハハっと少し笑って困ったように頬をかく。
ここに長居はまずい気がする。
「それじゃあ、今晩はもう下がるから。何かあったらそのベルを鳴らして」
「あ、は、はい」
そう言って俺はヴィと一緒に出て行った。秋はしゅんっとしていたが、最後に刺さるような視線を感じ取りやっぱり感じ悪かったか~っと少しばかり明日の身の振り方を考えようと思う。
外に出ると、何故かウィルがいた。
「うわ!!」
思わず叫んでしまい、慌てて口を押える。幸いなことにこの建物自体がそういう部屋として作られているので中にも外にも音は漏れず、特別な道具でなければ聞こえない。
だから秋に聞かれることは無いだろう。
「はー?何その反応。てか出てくるの遅すぎ」
「いやなんでまだいるんですか?」
「君たちの部屋の案内してないから待ってあげてたんだけど。ついてきて」
近衛たちがいるので敬語を使いそう言うと、ウィルが至極当然なことを言ってきた。確かに教えてもらっていなかった。そう言ってどこかに案内された。
「ここだよ。鍵」
ウィルがそういうのでヴィが鍵を出して扉を開ける。中に入るとテーブル、いす、ソファ、が置かれている。それから、多分浴室、お手洗いに繋がる扉、ベッドルームの扉だろうか。なんか、複数の扉が見える。総じて広いということは分かった。
「ここにある道具は何でも使っていいよ。壊しても、持って帰っても請求しない。ただ、無理はさせないように」
「……承知しました」
「わ、分かっています。俺も手伝いますから」
何処かにキッチンあるのかも。頑張って人並みに家事出来るぐらいにはするよ。この一か月で……。
うぐうっと変な顔をするとウィルが今日一番の綺麗な笑顔でポンっと俺の肩を叩いてきた。
「まあ、いつも涼しい顔してるから大丈夫だと思うけどね。それじゃ、三日後くらいにまた様子見に来るから」
ウィルはそう言って今度こそ戻って行った。
俺は何だかどっと疲れたようでソファに座り込むと、ヴィが隣に座って俺の髪を撫でる。
「お疲れ様です。ベルちゃ……」
ちりん、ちりんちりん!!
その瞬間ベルが鳴った。
え?早すぎね?
流石に俺は驚いてでも仕事だからと腰を上げると、ヴィが制止をかける。
「僕が行くよ」
「え、でも……」
「いいの。お風呂入ってきていいよ」
「いや、それは……」
とても魅力的であるがこれ以上ヴィに迷惑をかけるわけには……!そう思ったが……。
「お願い、ね?だめ?」
「ううん。いいよ、ありがとう」
可愛くお願いされたらころりと落ちちゃう。なんて単純なんだ俺……。意思が弱すぎる……。
俺はヴィの言う通りにお風呂の準備をしてそのままお風呂に入る。あ、お風呂の部屋、トイレの部屋、台所と食べるところがある部屋、ベッドがある部屋と結構分かれていた。ベッドがあった部屋は、なんか棚とかに見たことないものが置いてあって、何に使うか分からないが多分安眠グッズだと思うものを見つけつつ、クローゼットからバスローブとタオルを取って向かった。
因みにお風呂場にも数種類の石鹸、入浴剤などがあって金はあるところにはあるんだなっと思いました。
お風呂から上がってもヴィは帰っておらず流石に丸投げはまずかったかなっと反省してソファで待っていた。眠らないようにとキッチンからなんかまずそうな色のピンク色の茶葉を適当に淹れた。お湯ぐらいは沸かせるのだ。俺でも。
「うわ、まっずぅ!!」
しかし、自分で淹れたお茶がこんなにまずいだなんて知らなかった。でもこのまずさが眠気を吹っ飛ばしてくれる。ティーカップいっぱいに淹れたので眠りにつくことは無いだろう。
うう。なんてまずいお茶なんだろうか……。仕事を任せた俺の罰だ。甘んじて受け入れるよ。
――――あれ?何か頭がふわふわしてきた。体も熱い。さっき風呂入ったからかな?一先ず、ヴィが来るまで起きてないといけないからこのまずいお茶を飲まねば!!
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