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本編
漂流者
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遠征も無事終わり、ヴィのお願いを聞くことになった。
次のお休みに着せ替え人形になることである。本当は嫌だけどお願いだから聞くしかない。次の休みは無いに等しい……。
それから後から聞いた話だが、遠征では苦戦する班が多かったそうだ。
最近だったら手助けが入るところ全くその介入もなく改めて甘えがあったことに気付き、新人を巻き込んでの地獄の訓練が始まった。
それを新人まで巻き込むんじゃねーよと声を大きくして言いたいのだが、今はそんな事を言っている場合でもない。
具体的に言うと、訓練に入った瞬間の嫌がらせが増した。
訓練着には泥がついたり、靴がゴミ箱に入っていたりと鼻で笑ってしまうようなものだ。
今日は集合場所を教えてもらえずに遅刻してしまった。
「またあなた?しっかりなさい。10周追加ね」
「……はい」
めんどくさい。別に10周追加がきついとかそう言うのは無いのだが、時間がかかるんだ。普段の俺ならさっさと終わらせられるが、このキャラだとかなり時間をかけないといけない。仕方ない事ではあるが、これが結構神経を使う。さぼらないようにと上官の監視の目がありながらそれをするのが。そこら辺の騎士はこれで欺けられるとは思うが上官クラスになると適当にやってるとばれる。
ヴィの叔父がそうだ。
ヴィの叔父も騎士団で上層部にいる人物である。彼は入団試験の時、俺がかなり手を抜いていることにすぐに見抜いて、自分の直属の部下になりたくなければ全力を出すこと、と脅された。
彼の直属の部下は王族の近衛騎士なのでなったら最後中々やめることが出来ないだろう。かなりの出世コースではあるが、あの王子にだけは仕えたくない。
―――あれー?婚約者に捨てられたのー?かわいそー。仕方ないから俺が貰ってあげるよ~。捨てられた可哀想な親友を俺が!
脳内で彼が俺を笑いながらそう言っているのが容易に想像できた。やめろ、高笑いするな、そんな目で俺を見るなー!!あとお前は親友じゃないしまだ捨てられてない!!
ぶるりと身震いをして全力出した結果勢い余って試験場を半壊したのがいい思い出だ。あんなに焦ってたのに半壊にとどめた俺を心の中で褒めたが、彼にはそこまでやれとは言っていないっと怒られた。理不尽。
そんな事があり上官クラスは気を付けないとダメだ。
その中でもこの男は特に用心しなければならない。
リドル・キャンベルホープ。
所属は近衛騎士、つまりヴィの叔父の部下。第一師団と近衛騎士の方で取り合いになってヴィの叔父が勝ち取った男である。
今は、特別に指導の為に時間を割いて第一師団の訓練を見てくれていると言っているが実際はどうか分からない。第一あそこも結構忙しかったはずだ。こんな他部署で無駄な時間を過ごすとは思わない。
ともあれ、言われた通り特訓をこなした後に10周をだらだら走る。キャンベルホープに睨まれながら。
ただ黙って見られているだけで冷や汗が流れる。くそう。仕方ないことだけど!
10周走り終えてふうっと呼吸を整えつつ汗を拭うと足元に木刀が投げられた。それと同時にひゅっと風を斬る音がして、俺は反射的に足元の木刀を手にしてそれを受け止めた。
「———っ!?」
俺に攻撃を仕掛けたのはキャンベルホープだ。俺は驚きの表情を浮かべていると彼は俺を押しのけようと力をくわえる。俺はそのまま押されたないように足に力を込めて押し返そうとするがふっと相手が力を抜いた。
げっと声を出す前に受け身を取って地面に転がり距離を取る。木刀を構えると追撃が始まった。
左、右右、薙ぎ払い。まずい。普通にやっているがこれは一旦攻撃を受けて木刀を離すべき……っ。
「成程ね」
―――とその前に終わってしまった。
すっと彼が離れて木刀を降ろす。俺は慌てて言い訳を言った。
「ど、どうして、こ、こんなことをっ!!」
息切れしているようにみせかけつつそう聞くと彼は呆れた顔をする。
「貴方なんでそんなことしてるの?」
「え……?」
「息切れも大してしてないくせに、そんな振りをして恥ずかしくないの?」
「……」
バレた。
俺はどういえばいいのだろうかと頭をひねるが全くいい案が浮かばない。
素直に退職させられたいからなんて言えるかこんな状況で。
「ちょっと、黙ってないで何か……っ!!」
「キャンベルホープ様!!」
すると誰かが彼を呼んだ。ちっと舌打ちをした後に慌てて駆け寄ってきた男を見る。
青い軍服だ。近衛騎士しか着れない奴。俺はラッキーっと思ってにっこりと笑顔を見せる。
「それでは僕これで!」
「なっ!待ちなさい!!」
叫ばれたが次の業務があるのでー!!と叫んで俺はとっとと去った。
全く。危ない危ない。さっきの人ナイス!助けてくれてありがとう!!
俺は、完備しているシャワー室に向かい汗を流す。勤務用の服に着替える。
はー、えらい目に遭ったぜ~。これからの書類作業が嫌だな~っと思いながら第一班の業務部屋に入ると、がばっと正面からヴィに抱き着かれた。
え!?
ぐっと足に力を入れてそれを受け止める。
な、なに!?一体どうしたわけ!?
俺は戸惑いながらおろおろとしていると、アルフレッドが中から出てきた。説明しろっと目で訴える。
「一先ず中に……」
「帰る」
「え?」
「おわぁああああああ……っ!!」
ヴィがそう言ったと思ったらぐんっと持ち上げられた。
そしてそのまま開いていた窓から飛び出す。ここは5階だ。そこそこ高い。一人ならまだしも荷物を持っている状態であれば、怪我をする。
叫びつつ、風を起こし地面に優しく着地させる。ほっと胸をなでおろし、ヴィに怪我が無いかを確認しようとしてまた彼が走り出した。
何が彼をそうさせているのか分からない。だいたい、こんなことしたら目立っちゃうし、きり捨て計画は……?
「どこ行く気っ!?ベルクラリーサ様は置いていけっ!!」
「断る!!」
アルフレッドも窓から飛び出そうとして他の団員に止められていた。
俺が必要なのか?わざわざ?俺を?
「ヴィ……」
「舌噛むから黙って」
あ、これ結構やばいな。ヴィ、すごく怒ってる。そんな内容の仕事ってどんなの?俺なんかに回ってくるんだから大したことないと思うけど……。
その時、俺達の周りが急激に冷えて目の前に氷の壁が出来上がった。ヴィはそれにぶつからないように方向を変えるが行き先々にそれが立ちふさがり気づけば囲まれていた。ヴィが魔装具を発動させようとすると鞭が飛ぶ。
「———っ!」
「ヴィっ!!」
ヴィの背中を叩かれた。どこからの攻撃かを判断する前にその人物が現れる。
げっと声が漏れそうになって慌ててヴィを抱きしめて顔を埋める。
「どこに行く気?任務放棄は許されないわよ」
キャンベルホープだ。鞭は彼の魔装具でこの魔法も彼のものだろう。
ヴィはゆっくりとそちらを見てにっこりと笑顔を見せる。
「……その件であればお断りいたします」
「拒否権は無いわ。これは王命よ。貴方の我儘は通らないの」
「……っ!!」
お、王命ってやばいじゃん。ヴィ、やめとけって!!
そんな事を思ったが、彼はぎりいっと親の仇でも見るような目でキャンベルホープを睨んでいる。
そんな彼にキャンベルホープはあっとため息をついてやれやれと頭を振る。
「貴方も一緒なんだから素直に従いなさいよ。面倒くさい」
「漂流者は異常者です!!そんな奴を護衛だなんてまっぴらごめんです!!」
え?漂流者?確か、異世界から来た人のことだよね?何かしら知識を持っていたりするので国は保護を義務付けているとか。
まあ、保護なんて言っているが要は監視である。なんか数年前に問題起こした漂流者がいて、その法律が制定された。
その原因は、まあ俺達なんだけど。
いやあ、あの漂流者はやばかったな~。ヴィの婚約者だった俺を目の敵にして。年齢差もかなりあったんだけどね~。俺まだ10歳くらいだったと思うけど、ヴィは15歳だったかな?学院で過ごしててわけわかんないことを俺に言ってたと思う。それから―――。
あれ……?なんだっけ?どうしたんだっけっか?気づいたらベッドの上で、何か話そうとするたびに血を吐く生活をしてるうちにその法律が作られて学院にいた漂流者は牢屋行き。何かされたんだろうけど全く覚えていない。まあ、今では普通に声出せるし、気にしてない。あれなんだったんだろうね?
そう言えば、そこから少し過保護になった気もしなくもない。
漂流者のイメージにも関わるのでその話を知っている者は関係者以外いない。まあ、漂流者全員がそうではないとは思ってるからね。
「言い方が悪かったわね。単なる監視よ。黒髪だからあんたと一緒で警戒が薄れるだろうっていうのと、何か起こったときの為に対応できる実力の者って決められてるの」
「じゃあ、俺とアルフレッドでいいじゃないですか!」
「次期総団長に何かあったら困るのよ」
「ふざけ……っ!」
「その任務お受けいたします」
王命ならやばいって。逆らうのやばいって!!
小心者なので俺はすぐにそう言った。だって怖いじゃん流石に!!
「ベルちゃん!!」
「本人が決めたんだから貴方にはそれを捻じ曲げることはできないわよ。一先ずこのまま王宮に行って、漂流者に会って貰うわ」
「分かりました。ヴィ下ろして」
「っ!!」
ヴィは色んな感情がごちゃ混ぜになった表情をしてようやく俺を下ろす。
俺は、キャンベルホープに向き直って頭を下げる。
「案内よろしくお願いします」
「ええ。手を抜いたら許さないから」
「……はい」
しっかり釘を刺されてしまい憂鬱だ。
騎士団の訓練に来てたんじゃなくて品定めに来てたってことか。何かあるとは思ったが、こんなことになるとは……。お陰でヴィが超不機嫌だよ。もう。
次のお休みに着せ替え人形になることである。本当は嫌だけどお願いだから聞くしかない。次の休みは無いに等しい……。
それから後から聞いた話だが、遠征では苦戦する班が多かったそうだ。
最近だったら手助けが入るところ全くその介入もなく改めて甘えがあったことに気付き、新人を巻き込んでの地獄の訓練が始まった。
それを新人まで巻き込むんじゃねーよと声を大きくして言いたいのだが、今はそんな事を言っている場合でもない。
具体的に言うと、訓練に入った瞬間の嫌がらせが増した。
訓練着には泥がついたり、靴がゴミ箱に入っていたりと鼻で笑ってしまうようなものだ。
今日は集合場所を教えてもらえずに遅刻してしまった。
「またあなた?しっかりなさい。10周追加ね」
「……はい」
めんどくさい。別に10周追加がきついとかそう言うのは無いのだが、時間がかかるんだ。普段の俺ならさっさと終わらせられるが、このキャラだとかなり時間をかけないといけない。仕方ない事ではあるが、これが結構神経を使う。さぼらないようにと上官の監視の目がありながらそれをするのが。そこら辺の騎士はこれで欺けられるとは思うが上官クラスになると適当にやってるとばれる。
ヴィの叔父がそうだ。
ヴィの叔父も騎士団で上層部にいる人物である。彼は入団試験の時、俺がかなり手を抜いていることにすぐに見抜いて、自分の直属の部下になりたくなければ全力を出すこと、と脅された。
彼の直属の部下は王族の近衛騎士なのでなったら最後中々やめることが出来ないだろう。かなりの出世コースではあるが、あの王子にだけは仕えたくない。
―――あれー?婚約者に捨てられたのー?かわいそー。仕方ないから俺が貰ってあげるよ~。捨てられた可哀想な親友を俺が!
脳内で彼が俺を笑いながらそう言っているのが容易に想像できた。やめろ、高笑いするな、そんな目で俺を見るなー!!あとお前は親友じゃないしまだ捨てられてない!!
ぶるりと身震いをして全力出した結果勢い余って試験場を半壊したのがいい思い出だ。あんなに焦ってたのに半壊にとどめた俺を心の中で褒めたが、彼にはそこまでやれとは言っていないっと怒られた。理不尽。
そんな事があり上官クラスは気を付けないとダメだ。
その中でもこの男は特に用心しなければならない。
リドル・キャンベルホープ。
所属は近衛騎士、つまりヴィの叔父の部下。第一師団と近衛騎士の方で取り合いになってヴィの叔父が勝ち取った男である。
今は、特別に指導の為に時間を割いて第一師団の訓練を見てくれていると言っているが実際はどうか分からない。第一あそこも結構忙しかったはずだ。こんな他部署で無駄な時間を過ごすとは思わない。
ともあれ、言われた通り特訓をこなした後に10周をだらだら走る。キャンベルホープに睨まれながら。
ただ黙って見られているだけで冷や汗が流れる。くそう。仕方ないことだけど!
10周走り終えてふうっと呼吸を整えつつ汗を拭うと足元に木刀が投げられた。それと同時にひゅっと風を斬る音がして、俺は反射的に足元の木刀を手にしてそれを受け止めた。
「———っ!?」
俺に攻撃を仕掛けたのはキャンベルホープだ。俺は驚きの表情を浮かべていると彼は俺を押しのけようと力をくわえる。俺はそのまま押されたないように足に力を込めて押し返そうとするがふっと相手が力を抜いた。
げっと声を出す前に受け身を取って地面に転がり距離を取る。木刀を構えると追撃が始まった。
左、右右、薙ぎ払い。まずい。普通にやっているがこれは一旦攻撃を受けて木刀を離すべき……っ。
「成程ね」
―――とその前に終わってしまった。
すっと彼が離れて木刀を降ろす。俺は慌てて言い訳を言った。
「ど、どうして、こ、こんなことをっ!!」
息切れしているようにみせかけつつそう聞くと彼は呆れた顔をする。
「貴方なんでそんなことしてるの?」
「え……?」
「息切れも大してしてないくせに、そんな振りをして恥ずかしくないの?」
「……」
バレた。
俺はどういえばいいのだろうかと頭をひねるが全くいい案が浮かばない。
素直に退職させられたいからなんて言えるかこんな状況で。
「ちょっと、黙ってないで何か……っ!!」
「キャンベルホープ様!!」
すると誰かが彼を呼んだ。ちっと舌打ちをした後に慌てて駆け寄ってきた男を見る。
青い軍服だ。近衛騎士しか着れない奴。俺はラッキーっと思ってにっこりと笑顔を見せる。
「それでは僕これで!」
「なっ!待ちなさい!!」
叫ばれたが次の業務があるのでー!!と叫んで俺はとっとと去った。
全く。危ない危ない。さっきの人ナイス!助けてくれてありがとう!!
俺は、完備しているシャワー室に向かい汗を流す。勤務用の服に着替える。
はー、えらい目に遭ったぜ~。これからの書類作業が嫌だな~っと思いながら第一班の業務部屋に入ると、がばっと正面からヴィに抱き着かれた。
え!?
ぐっと足に力を入れてそれを受け止める。
な、なに!?一体どうしたわけ!?
俺は戸惑いながらおろおろとしていると、アルフレッドが中から出てきた。説明しろっと目で訴える。
「一先ず中に……」
「帰る」
「え?」
「おわぁああああああ……っ!!」
ヴィがそう言ったと思ったらぐんっと持ち上げられた。
そしてそのまま開いていた窓から飛び出す。ここは5階だ。そこそこ高い。一人ならまだしも荷物を持っている状態であれば、怪我をする。
叫びつつ、風を起こし地面に優しく着地させる。ほっと胸をなでおろし、ヴィに怪我が無いかを確認しようとしてまた彼が走り出した。
何が彼をそうさせているのか分からない。だいたい、こんなことしたら目立っちゃうし、きり捨て計画は……?
「どこ行く気っ!?ベルクラリーサ様は置いていけっ!!」
「断る!!」
アルフレッドも窓から飛び出そうとして他の団員に止められていた。
俺が必要なのか?わざわざ?俺を?
「ヴィ……」
「舌噛むから黙って」
あ、これ結構やばいな。ヴィ、すごく怒ってる。そんな内容の仕事ってどんなの?俺なんかに回ってくるんだから大したことないと思うけど……。
その時、俺達の周りが急激に冷えて目の前に氷の壁が出来上がった。ヴィはそれにぶつからないように方向を変えるが行き先々にそれが立ちふさがり気づけば囲まれていた。ヴィが魔装具を発動させようとすると鞭が飛ぶ。
「———っ!」
「ヴィっ!!」
ヴィの背中を叩かれた。どこからの攻撃かを判断する前にその人物が現れる。
げっと声が漏れそうになって慌ててヴィを抱きしめて顔を埋める。
「どこに行く気?任務放棄は許されないわよ」
キャンベルホープだ。鞭は彼の魔装具でこの魔法も彼のものだろう。
ヴィはゆっくりとそちらを見てにっこりと笑顔を見せる。
「……その件であればお断りいたします」
「拒否権は無いわ。これは王命よ。貴方の我儘は通らないの」
「……っ!!」
お、王命ってやばいじゃん。ヴィ、やめとけって!!
そんな事を思ったが、彼はぎりいっと親の仇でも見るような目でキャンベルホープを睨んでいる。
そんな彼にキャンベルホープはあっとため息をついてやれやれと頭を振る。
「貴方も一緒なんだから素直に従いなさいよ。面倒くさい」
「漂流者は異常者です!!そんな奴を護衛だなんてまっぴらごめんです!!」
え?漂流者?確か、異世界から来た人のことだよね?何かしら知識を持っていたりするので国は保護を義務付けているとか。
まあ、保護なんて言っているが要は監視である。なんか数年前に問題起こした漂流者がいて、その法律が制定された。
その原因は、まあ俺達なんだけど。
いやあ、あの漂流者はやばかったな~。ヴィの婚約者だった俺を目の敵にして。年齢差もかなりあったんだけどね~。俺まだ10歳くらいだったと思うけど、ヴィは15歳だったかな?学院で過ごしててわけわかんないことを俺に言ってたと思う。それから―――。
あれ……?なんだっけ?どうしたんだっけっか?気づいたらベッドの上で、何か話そうとするたびに血を吐く生活をしてるうちにその法律が作られて学院にいた漂流者は牢屋行き。何かされたんだろうけど全く覚えていない。まあ、今では普通に声出せるし、気にしてない。あれなんだったんだろうね?
そう言えば、そこから少し過保護になった気もしなくもない。
漂流者のイメージにも関わるのでその話を知っている者は関係者以外いない。まあ、漂流者全員がそうではないとは思ってるからね。
「言い方が悪かったわね。単なる監視よ。黒髪だからあんたと一緒で警戒が薄れるだろうっていうのと、何か起こったときの為に対応できる実力の者って決められてるの」
「じゃあ、俺とアルフレッドでいいじゃないですか!」
「次期総団長に何かあったら困るのよ」
「ふざけ……っ!」
「その任務お受けいたします」
王命ならやばいって。逆らうのやばいって!!
小心者なので俺はすぐにそう言った。だって怖いじゃん流石に!!
「ベルちゃん!!」
「本人が決めたんだから貴方にはそれを捻じ曲げることはできないわよ。一先ずこのまま王宮に行って、漂流者に会って貰うわ」
「分かりました。ヴィ下ろして」
「っ!!」
ヴィは色んな感情がごちゃ混ぜになった表情をしてようやく俺を下ろす。
俺は、キャンベルホープに向き直って頭を下げる。
「案内よろしくお願いします」
「ええ。手を抜いたら許さないから」
「……はい」
しっかり釘を刺されてしまい憂鬱だ。
騎士団の訓練に来てたんじゃなくて品定めに来てたってことか。何かあるとは思ったが、こんなことになるとは……。お陰でヴィが超不機嫌だよ。もう。
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