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38、おれにはなし?

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そっと落ち着いて腰を落ち着かせる。一先ず聞きたいことが俺にはあった。

「だれにやられたの」
「え?」
「おなかさされたって!」
「あー……」

そういって黒は困った顔をした後にふるふると首を振った。

「突然だったから俺もよく分からなくて……」

じいいいいっと黒を見つめる。彼は嘘を言っている。言いにくい相手、つまりは俺の知っている誰かだ。
元々俺を慕っている子が多く、俺がいなくなったイコール要らなくなったとでも判断したのだろう。ああ、申し訳ない。
ぎゅうううっと抱きしめて帰ったら誰か探してやろう、と思い直す。

「それよりも、なんで琥珀は普通に、その、保護されてるの……?」

それな。俺も思うそれ。
俺が妖としての妖力すらなくなっているということだろうか。うーん、自分じゃわからない。とはいえ、黒の傷を治すのに残りの力をほぼ使い切ったので暫くは休んでいないといけないのだが……。
そうも言ってられないこの状況。どうやってあっちに帰ろうか。

「それがわからないんだよねー。まあ、わかるまえにかえっちゃおう?」
「そうだね」

うんそうそう!だからやることは一つ!
そう思って提案をしようとした時、どんどんっと扉が叩かれる音がした。

「すみませーん!あのー!俺君春っていうんですけど、琥珀さんにお話がしたくて来ましたー!」

玄関先でそんな大きい声が聞こえた瞬間黒が飛び出していくように走っていった。そして「何しに来た帰れ!!」と叫んでいる。

「あ、いや、琥珀さんに話が……」
「いませんが?」
「え、ええ!?いやそんな事はないでしょう!?」
「いませんが?」
「圧が凄い!!」

そんな話声が聞こえるので俺が慌てて出て仲裁に入る。俺が現れると君春君が手を合わせて「琥珀さん!」と俺を呼ぶ。黒は思いっきり舌打ちをしていた。そういう態度はよくないっと黒にダメだよっとジェスチャーをする。

「ありがとうございました!」

君春君がそういうので首を振った。それから手を握って何しに来たの?っと首を傾げる。俺のジェスチャーで何が言いたいのか分かったのかはいっと彼は返事をする。

「貴方に聞きたいことがあって二人でお話しできませんか?」
「ダメ」
「え!?」
「だめ、許さない」

黒!大丈夫だから!そんなに過保護にならなくても自分でできるし!俺の方が強いし!!
大丈夫っと丸を作るとぱっと君春君は顔を明るくして、黒を見る。すると黒は信じられないといったような顔をした。

「だめだよ!何かあったらどうするの!?」
「え?……あ」

確かに、俺が離れている間に黒の身に何かあったら大変だ。でもでも、二人で話がしたいって言われてるから同席は無理でしょ?うーん、いったいどうすれば……。

「大丈夫ですよ!俺が守ります!」
「それが信じられないって言ってるの!琥珀を飼ってるだの、生きてるなんて信じられないだの失礼な人を!」

まあ確かに、話の流れ的におかしかったもんね。それが何なのか俺にはわからないけど。
二人が言い合っているさなか俺はどうすれば黒が安全かを考える。黒は人間とはいえ、昨日の君春くんの話によればここは危ない場所なのだ。できれば早々にあちらに帰りたい所存です。あと、こっちに来たら御館様ルートが潰える……。それは駄目!それは嫌!俺のわがままなんだけど、黒には幸せになってほしいから、尚且つ、俺とも仲良くしてほしいから!!

「あれー?第一部隊の隊長さんじゃないですかー!」
「うわ……」
「うわってひどいな~。俺傷つきますよ?」

そういって現れたのは霜田くんだ。非番なのか隊服ではなく、なんか、和洋折衷の服って感じのレトロな服で髪もなんかお洒落に編んでる。

「あ、こんにちは!琥珀くん……でいいんだよね?隊長から聞いたんだけど」

霜田くんは次に俺を見てそう言った。俺は彼の言葉に頷くと、彼はにっこりと笑顔になる。それからそっと自然に手を取られた。

「また会えるなんて思わなかったよ。どこかに行こうとしてたの?」

そう聞かれてぶんぶん首を振る。

お、俺は言いつけ通り静かにしてました!君春くんが来たからここにいるだけです!本当です!!
真摯にそう訴えるが、通じているかわからない。やばいよ。警戒されて双熾に報告でもされたら終わりだ!
そんなことを考えていると俺と霜田さんに手を黒が引きはがした。それからじろっと霜田さんを睨みつけるように見る。

「どなたでしょうか?」
「えーっと、もしかして雪那さんが拾ったっていう……?」
「そうですが。琥珀とは友人です」
「あー!なるほどなるほど!俺は霜田唯人です!名前を聞いてもいいですか?」

霜田くんはそう言って黒に握手を求める。黒は迷うようにして俺を見た。
そうだ。妖に真名はダメだって言ったもんね!ガンガン他のメンバーの名前きいてる俺ってば卑怯すぎる!!悪用しません。危険にさらされるようなことがなければ。

「? どうかした?」

固まっている黒にまずいと俺は二人の間に入る。

「かれのなまえはおれもしらないんです。だからくろってよんであげてください」
「え?黒?ていうか、友人って言ってるのに名前を教えないってどういうこと?」

そりゃあ俺が妖ですから!名前大事!
これで押し通すしかないのでじいいいっとひたすら霜田くんを見た。折れろ折れろっと心の中でそう呟きながら。

「まあ、琥珀くんが知らないのに俺だけ教えてもらう訳にはいかないか。じゃあ、黒って呼ぶけどいい?」
「はい」
「うん。ところで、蘆屋隊長はどうしてここに?」

そして霜田くんは多分一番聞きたかったであろう質問をした。じゃなければ声かけないだろうしね。
君春くんは神妙にうなずいてすっと俺の横に立つ。

「琥珀くんと二人っきりで話がしたくて!!」
「下心隠さずに直球でそういう所俺は好きですよ!でも、数回しか会ってない男にそう言われたら誰だって警戒しますよ?」
「琥珀くんはいいって」
「琥珀くんは少し警戒心を持とうね?」

わあ、俺の方にも飛んできた。霜田君が俺を見るのでその圧に耐え切れずに目をそらした。
だって、大丈夫な気がするし?弱そうだし。

「でも、お互いに必要な話だよ」

君春くんが急に真剣な表情でそういった。声も先ほどののんきな声でもなく本気っぽい。
え?怖い。俺これから何きかされるの……?

「……じゃあ、隣で俺と黒くんが控えてます。話の内容は一切聞きません」
「は!?あの、勝手にそんな話を決めないでください!」
「やったー!じゃあ行こうか琥珀くん!」

黒がそう抗議するが君春くんの行動の方が早かった。俺の腕をつかんでさっさと中に入ってしまう。俺もつられて中に入り、すぐに俺と雪那さんが寝ていた部屋に入ってしまう。どたどたと俺たちを追いかける足音が二つ聞こえていたが、ぱたんっと襖がしまった瞬間聞こえなくなった。

「さて、これで二人っきりだね」

え、うんそうだね。

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