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16、先代様のお屋敷

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先代様は威圧的に笑いながら使用人たちを蹴散らしている。煩わしいという態度を出しながら俺たちを連れて行く。それは父さんも同じだ。最初、俺を見て何か口を開こうとした使用人が父さんに睨まれて悲鳴を上げ兎に角頭を下げていた。先代様は何故か威嚇しているようで空気が重い。数名の使用人が死にかけてるけど、そういう訓練かな?
そんな屋敷の廊下を通り、すぱーんっと先代様は襖を開いた。

「木蘭、来たよ~」

そこには優雅にお茶を飲んでいる木蘭様がいて、彼はじろっと俺を睨みつける。そしてため息をついた。

「時間も分からないのか?」
「ふふ、琥珀は君に会いたくて早く来ちゃったんだって」
「良く回る口だな」
「誰もそんな事言ってないだろう。息を吸うように嘘をつくなよ」

木蘭様と先代様の会話に父さんが割って入る。すると木蘭様は眉をひそめて父さんを上から下まで見た。

「お前は呼んでいないはずだが?」
「銀ちゃんが、パパ一緒に来て欲しいって言ってきたから」
「えー?君が無理やり頷かせてた気がするけどー?」
「そんなことないよ?ねー銀ちゃん」

返答に困るから俺に振らないで父さん。すーっと空気になることを目指したのにやめてよ。黙っている俺に先代様はほらあっとどや顔だ。やめて?ねえほんと、喧嘩するなら俺を巻き込まないで!!

「まあ、いい。黒橡は忙しいからな。午後になった休みを出すつもりだ。仕方ない、それまでは……」
「銀ちゃんが来たんだから今すぐ休ませて話を聞くべきでしょ?待たせないでくれる?」

木蘭様の言葉に被せてうちの父が無茶を言ってきた。
これがモンスターペアレントか!?やべえ!

「なんだと?時間も分からない獣が勝手に来たのにどうして此方がそんな事をせねばならないんだ?」
「お前の伴侶が勝手に連れてきたんだ。誠意を見せたらどうだ?」
「先代様に逆らうのかお前は」
「先代様に逆らわずにここまで来てやったんだよ?こっちは」
「と、父さんいいから!俺は有給取って休みだけど木蘭様たちにも事情があるから仕方ないよ!」

木蘭様と父さんの言い合いが始まったので思わずそう言うが、父さんはゆっくりと首を振る。

「ここで、上下確認しないとダメだよ銀ちゃん」
「そんなもの、分かり切っているだろうに。今更なんだ?気にしていないならいいだろう」
「お前んとこのが潰してんだろうが。いつまで役に立たない壁を連れ歩いてるんだ?殺してやろうか?」
「やめろ。四六時中お前がそれに引っ付いてるわけではないのに余計な種をまくな」
「まく種なんて残さないよ。大体、お前が拾わなければ全部消したのに」

木蘭様と父さんがまた言い合いを始めてしまった。いつ口を挟もうかと思っていると、ちょいちょいっと先代様が俺の服を引っ張った。

「琥珀。美味しいお菓子があるから食べよ」
「え、でも……」
「いーのいーの。いつものことだから。大体二人して心配性なんだよ~。放っておいても大丈夫だって言っても聞きやしない」
「……??」

ぐいぐいと服を引っ張られてそこから離れる。

先代様も、両親も時々よく分からない会話をする。ほとんどが俺に関する話だろうと思うのだが、ちょっと抽象的な表現が多すぎて何を話しているのかさっぱりだ。俺の話をしているなら、俺に分かるように話してほしい。でも、喧嘩は困るのでやめてください。
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