上 下
12 / 16

11、ごはん仲間が試験勉強仲間になりました

しおりを挟む

 試験期間が近づいて、学生たちはストレスを抱えている。「ごはん仲間」のメンバーは「試験勉強仲間」に変わっていた。パワーアップだ。

「異世界から来たばかりのあたしにみんなと同じ点を取れって無理だと思うの」
 嘆くマナちゃんは、国の歴史や外国語が苦手で、数学が得意みたい。

「歴史は暗記すればいける。いい国つくろうオレのお祖父様即位、だ」
 アキュレス殿下が年表を手に暗記方法を教えている。ロザリア様はその隣で白いハンカチを手に、さりげなくアキュレス殿下の汗を拭った。

「ありがとうオレのロザリア。愛しているよ」
「アキュレス殿下……」

 熱く見つめ合う二人を日常背景にして、私たちはノートに「いい国つくろうアキュレス殿下のお祖父様即位」と書き留めた。

 そして後日行われた試験で揃って同じ文言を書いて、赤ペンで「いい国は年号を指すのかと思いますが、ちゃんと数字で年号を書きましょう。アキュレス殿下のお祖父様ではなくちゃんとお名前を書きましょう」と丁寧に指摘されたのだった。

「お前たち、何故そっくりそのまま答案に書いたのだ。オレのせいみたいだろうが」
 アキュレス殿下は残念そうな顔をしてジャスティン様の肩を叩いた。

「ジャスティンはちゃんと正解したぞ、見習いたまえ」

 アキュレス殿下は褒美と称して仰々しいプレゼントボックスを運ばせた。

「わあ、何が入っていますの?」

 見守る私たちの視線の先で、箱がパカっと開けられる。

「箱ですね」

 なんと箱の中には箱があった。

「……」

 アキュレス殿下に微妙な視線が集中すると、ロザリア様が「殿下は悪戯がお好きで……」とフォローしている。

「ジャスティン、ちょっと箱の中に箱が入ってたくらいでなんだその眼は、不敬だぞ。オレの好意を疑うな、ほらさっさと次オープンだオープン」
「殿下……」

 半眼になりながらジャスティン様が箱を開けていく。

 パカっ。
「また箱ですね」
「どうだ、この一瞬の期待が絶望に変わる感覚。楽しいだろう?」
「いえ全然」
 
 パカっ、
「また箱……もう開けなくていいです?」
「諦めるなよ! 投げ出すなよ! 最後まで開けていこうぜ!」
 
 パカっ。
「……」
「ジャスティン、ファイトだ! くじけるな!」
「じゃ、ジャスティン様、頑張って……」

 だんだんうんざりムードの高くなるジャスティン様。
 アキュレス殿下は謎のハイテンションで暑苦しく励まし続け、それにロザリア様が乗り、しまいには私とマナちゃんも応援し始めた。

「ふぁ、い、と!」
「頑張って……!」
「なんであたし応援してるんだろうコレ。まあいっかがんばれー!」
「最後にきっと良いことがありますわ!」

 謎のハイテンション空間、箱オープン大会は、やがて終わりを迎えた。

「あ、箱じゃなくてモノがありましたよ。これはハンカチですね」
 何度か箱を開けて、ジャスティン様がようやく贈り物に辿り着いたのだ。


「うむ! そのハンカチをコーデリア嬢に渡して刺繍してもらうのだ!」

 アキュレス殿下が突然キラーパスをしてくる。

「ふぁっ!?」

「もうすぐダンスパーティだろう! そこでコーデリア嬢は刺繍入りのハンカチをジャスティンに渡すのだ。オレ様の命令だぞ!」

「殿下! オレ様キャラも素敵ですがあんまり暴君っぽくなると悪役ルートに入って痛い目に遭う危険性もありますから、気をつけてくださいまし……!」

 ロザリア様があやしい発言をしている。

「さてはロザリアちゃん、の人ね?」
 マナちゃんが目をキラーンとさせた。

 この日私たち女子三人は異世界トークができる仲間になったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません

黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。 でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。 知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。 学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。 いったい、何を考えているの?! 仕方ない。現実を見せてあげましょう。 と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。 「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」 突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。 普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。 ※わりと見切り発車です。すみません。 ※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

始まりはよくある婚約破棄のように

メカ喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

処理中です...