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5、鬼謀のアイオナイト
348、世の中が大変なことになっていますのね
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「なんだか、世の中が大変なことになっていますのね」
体調がすっかりよくなったフィロシュネーは、ノイエスタル邸の自室で侍女ジーナと新聞を見ていた。近くに置かれた文箱には、手紙が何通も入っている。青国の兄アーサーや預言者ダーウッド、学友たち、空国のハルシオンからの手紙だ。
寝込んでいる間にも、世の中は動いている。
フェリシエン・ブラックタロンの研究開発が話題になり、カサンドラ・アルメイダ侯爵夫人が再び罪を犯したあと。
捕縛命令が王弟エリオットの承認付きで出されて、騎士団が捕縛に向かったが、アルメイダ侯爵夫妻には逃げられてしまった。
そして、大陸中で魔法の仕掛けが発動し、人々が生命力と魔力を吸われる事件が多発した。
有害な魔法は、日常の中に当たり前に存在したものに仕掛けられていた。
人々が憩う広場の銅像、時計塔の歯車、街の井戸、図書館の本。
酒場に設置されたピアノに、教会のオルガン……相当な時間をかけて用意されたのだろう仕掛けは、ある日突然、作動して、周囲の人々を傷つけた。
「仕掛けを見つけしだい破壊しているみたいだけど、衰弱した患者がたくさん出て大変みたい。魔力や生命力が吸われて身体が弱ったせいか、季節性の病も流行しちゃっているのですって」
村や都市の医者や治療師は過労気味で、薬が不足している様子。
治療所は患者で溢れ返り、保健状態の悪化を防ぐために新たな施設や設備が急務となっている。
一方で、患者が増加することで、働き手は不足していた。
農夫や職人、商人などが病気に冒され、仕事に支障をきたすことで生産が停滞し、物価が上昇しようとしている……。
「フィロシュネー様。紅都でも毎日のように新しい魔法仕掛けが発見されたりしているようですよ。流行病もありますし、落ち着くまで迂闊に外出できませんね……」
「そうね、サイラスも忙しそうですし。できるだけ外出せずに過ごすようにと言われてしまいましたし」
「月が落ちてくるという話もあるみたいですよ。怖いですね……」
ジーナが不安そうにしているけれど、フィロシュネーはあまり心配していない。
理由は簡単で、自分の婚約者が特別な石を持っていて、何があっても解決してくれそうな安心感があるから。
(わたくしもできることをしましょう)
フィロシュネーは部屋を見渡し、『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』に目を留めた。
「一日も早く世界情勢が落ち着くように、できることをしましょう。このお薬を量産できたら、衰弱している人たちがすぐに回復できるのよね」
『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』は、各国が喉から手が出るほど欲しがっている薬だ。でも、材料が足りていない。
薬の材料は希少で、エルフ族の森でしか採取できないのだ。
「お薬の材料が足りていないってお兄様やハルシオン様も書いていますわ」
薬をたくさん作るためには、当然、材料をたくさん仕入れる必要がある。
各国はエルフに「材料となる魔法植物の取引量を増やせないか」と聞いているが、エルフ側は「希少な魔法植物なのでこれ以上は取引できない」と非協力的らしい。
でも、ダーウッドは興味深いことを書いている。
『以前、侵入したことがあるのですが、エルフ族の森は奥に行くと特別な『光の森』という空間があって、空の色が紫だったりピンクだったりして、太陽と月と星がすべて煌めいていました。あれは、異世界です。
『光の森』はどこまでも続く大森林地帯で、希少な魔法植物が呆れるほど大量に生えていました。
エルフたちは森を大切にし、外部の者が森に入り込むことを好まない性質があるので、非協力的なのです。
人間たちの国で何が起きようと、森を守る方が彼らにとっては大事なのですな……』
「わたくし、エルフにお手紙を書きましょう。あのヴァイロンさんとか、この前お話したときの反応もよかったですし」
「さすがフィロシュネー様。エルフにも慕われておいでなのですね」
「慕われるというほどではない気がするけど、友好的といっていい雰囲気でしたわ」
ジーナが準備をしてくれるので、フィロシュネーはエルフに手紙を書いてみた。
「イシルディンというエルフの方が身分が上のようでしたけど、ここはあえてヴァイロンに手紙を出してみましょう」
文面は、こうだ。
『ヴァイロンさん、ごきげんよう。
魔法薬店ではお話できて嬉しかったですわ。その後、いかがお過ごしでしょうか?
最近、人間の国では悪い呪術師のせいで体調を崩す人がたくさんいますの。エルフの方々は、大丈夫でしょうか?
ひとつしか手持ちがないのですが、わたくしのお手製のお薬を贈ります。もし身近にご体調の優れない方がいたら、使ってくださいね。
そういえば、わたくしのお友達が教えてくれたのだけど、そちらには『光の森』という異世界のような美しい森があるのだとか。もし可能でしたら、一度あなたとお散歩してみたいですわ』
「フィロシュネー様。いきなり取引量を増やしてほしいとは書かないのですね」
「ジーナ、いきなりハードルの高いお願いを書いても、さくっと断れてしまいますわ」
ふふん、と若干どや顔で説明しつつ、フィロシュネーは手紙を畳んで封筒に入れた。
「このお手紙に『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』をつけて、まどろみの森に届けてくださる?」
* * *
手配して、数日後。
フィロシュネーのもとには、ヴァイロンからの返答がきた。
ヴァイロンは感謝の気持ちを手紙に綴っていた。
くわしく読んでみると、なんとヴァイロンの妹が病気になっていて、タイミングよく『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』が役に立ったらしい。
『エルフの集落にも、最近病が流行っている。「聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~」の作り方を教えてもらう代わりに「光の森」に案内しよう』
――手紙には、望む結果が書いてあった。
「まあ。ほんとうにエルフの森にご招待してもらえるようですね。すごいです!」
ジーナがおおはしゃぎしている。フィロシュネーは「よしよし、しめしめ」とにっこりしつつ、サイラスに「光の森に出かけたいの」と手紙を書いた。
泊りがけで仕事に追われる日が続いているサイラスは、短い返答を書いて届けてくれた。
「世界樹にお歌をうたうと、喜ばれますよ」
これは、行ってもいいということなのよね?
そして、たぶん石を使って預言をしてくれているのね?
フィロシュネーはサイラスの預言を胸に留めつつ、エルフの森へと出かける準備をした。
体調がすっかりよくなったフィロシュネーは、ノイエスタル邸の自室で侍女ジーナと新聞を見ていた。近くに置かれた文箱には、手紙が何通も入っている。青国の兄アーサーや預言者ダーウッド、学友たち、空国のハルシオンからの手紙だ。
寝込んでいる間にも、世の中は動いている。
フェリシエン・ブラックタロンの研究開発が話題になり、カサンドラ・アルメイダ侯爵夫人が再び罪を犯したあと。
捕縛命令が王弟エリオットの承認付きで出されて、騎士団が捕縛に向かったが、アルメイダ侯爵夫妻には逃げられてしまった。
そして、大陸中で魔法の仕掛けが発動し、人々が生命力と魔力を吸われる事件が多発した。
有害な魔法は、日常の中に当たり前に存在したものに仕掛けられていた。
人々が憩う広場の銅像、時計塔の歯車、街の井戸、図書館の本。
酒場に設置されたピアノに、教会のオルガン……相当な時間をかけて用意されたのだろう仕掛けは、ある日突然、作動して、周囲の人々を傷つけた。
「仕掛けを見つけしだい破壊しているみたいだけど、衰弱した患者がたくさん出て大変みたい。魔力や生命力が吸われて身体が弱ったせいか、季節性の病も流行しちゃっているのですって」
村や都市の医者や治療師は過労気味で、薬が不足している様子。
治療所は患者で溢れ返り、保健状態の悪化を防ぐために新たな施設や設備が急務となっている。
一方で、患者が増加することで、働き手は不足していた。
農夫や職人、商人などが病気に冒され、仕事に支障をきたすことで生産が停滞し、物価が上昇しようとしている……。
「フィロシュネー様。紅都でも毎日のように新しい魔法仕掛けが発見されたりしているようですよ。流行病もありますし、落ち着くまで迂闊に外出できませんね……」
「そうね、サイラスも忙しそうですし。できるだけ外出せずに過ごすようにと言われてしまいましたし」
「月が落ちてくるという話もあるみたいですよ。怖いですね……」
ジーナが不安そうにしているけれど、フィロシュネーはあまり心配していない。
理由は簡単で、自分の婚約者が特別な石を持っていて、何があっても解決してくれそうな安心感があるから。
(わたくしもできることをしましょう)
フィロシュネーは部屋を見渡し、『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』に目を留めた。
「一日も早く世界情勢が落ち着くように、できることをしましょう。このお薬を量産できたら、衰弱している人たちがすぐに回復できるのよね」
『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』は、各国が喉から手が出るほど欲しがっている薬だ。でも、材料が足りていない。
薬の材料は希少で、エルフ族の森でしか採取できないのだ。
「お薬の材料が足りていないってお兄様やハルシオン様も書いていますわ」
薬をたくさん作るためには、当然、材料をたくさん仕入れる必要がある。
各国はエルフに「材料となる魔法植物の取引量を増やせないか」と聞いているが、エルフ側は「希少な魔法植物なのでこれ以上は取引できない」と非協力的らしい。
でも、ダーウッドは興味深いことを書いている。
『以前、侵入したことがあるのですが、エルフ族の森は奥に行くと特別な『光の森』という空間があって、空の色が紫だったりピンクだったりして、太陽と月と星がすべて煌めいていました。あれは、異世界です。
『光の森』はどこまでも続く大森林地帯で、希少な魔法植物が呆れるほど大量に生えていました。
エルフたちは森を大切にし、外部の者が森に入り込むことを好まない性質があるので、非協力的なのです。
人間たちの国で何が起きようと、森を守る方が彼らにとっては大事なのですな……』
「わたくし、エルフにお手紙を書きましょう。あのヴァイロンさんとか、この前お話したときの反応もよかったですし」
「さすがフィロシュネー様。エルフにも慕われておいでなのですね」
「慕われるというほどではない気がするけど、友好的といっていい雰囲気でしたわ」
ジーナが準備をしてくれるので、フィロシュネーはエルフに手紙を書いてみた。
「イシルディンというエルフの方が身分が上のようでしたけど、ここはあえてヴァイロンに手紙を出してみましょう」
文面は、こうだ。
『ヴァイロンさん、ごきげんよう。
魔法薬店ではお話できて嬉しかったですわ。その後、いかがお過ごしでしょうか?
最近、人間の国では悪い呪術師のせいで体調を崩す人がたくさんいますの。エルフの方々は、大丈夫でしょうか?
ひとつしか手持ちがないのですが、わたくしのお手製のお薬を贈ります。もし身近にご体調の優れない方がいたら、使ってくださいね。
そういえば、わたくしのお友達が教えてくれたのだけど、そちらには『光の森』という異世界のような美しい森があるのだとか。もし可能でしたら、一度あなたとお散歩してみたいですわ』
「フィロシュネー様。いきなり取引量を増やしてほしいとは書かないのですね」
「ジーナ、いきなりハードルの高いお願いを書いても、さくっと断れてしまいますわ」
ふふん、と若干どや顔で説明しつつ、フィロシュネーは手紙を畳んで封筒に入れた。
「このお手紙に『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』をつけて、まどろみの森に届けてくださる?」
* * *
手配して、数日後。
フィロシュネーのもとには、ヴァイロンからの返答がきた。
ヴァイロンは感謝の気持ちを手紙に綴っていた。
くわしく読んでみると、なんとヴァイロンの妹が病気になっていて、タイミングよく『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』が役に立ったらしい。
『エルフの集落にも、最近病が流行っている。「聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~」の作り方を教えてもらう代わりに「光の森」に案内しよう』
――手紙には、望む結果が書いてあった。
「まあ。ほんとうにエルフの森にご招待してもらえるようですね。すごいです!」
ジーナがおおはしゃぎしている。フィロシュネーは「よしよし、しめしめ」とにっこりしつつ、サイラスに「光の森に出かけたいの」と手紙を書いた。
泊りがけで仕事に追われる日が続いているサイラスは、短い返答を書いて届けてくれた。
「世界樹にお歌をうたうと、喜ばれますよ」
これは、行ってもいいということなのよね?
そして、たぶん石を使って預言をしてくれているのね?
フィロシュネーはサイラスの預言を胸に留めつつ、エルフの森へと出かける準備をした。
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