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2、協奏のキャストライト
79、お前の王様、変態になってしまって…
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――なのに。
「カントループ様だ!! ハルシオン殿下を王にする! アルブレヒトは、悪逆非道の王として処刑する!」
オルーサ様が、決めてしまった。
よくわからないが、呪術王カントループの生まれ変わりはオルーサ様にとって、敵対する相手でなく、お守りして王として立てる相手なのだとネネイは察した。
ご兄弟は、互いに互いを庇いあっている。
私は死にたくない一心で非道に加担しつづけているのに、ご兄弟は自分の身をかえりみず、大切な相手を守ろうとしているのだ。
そして、オルーサ様の思惑通りにアルブレヒト陛下が悪逆の王にされていき、処刑の未来に続く道を歩かされる。
気付いて。
どうか、気付いて。あなたたちを陥れている者がいます……。
「青王は、あ、あ、あやしいです。青王は、……ふ、普通ではないと、思うのです」
目を向けてみて。調べてみて。疑ってみて。
……仕掛けられるまま、陥れられるまま、悪い王様にされていく私の空王陛下。疑うことを知らない、隙だらけで未熟で純真な青年。
この王様は、どうすれば助けられるだろう。
……オルーサ様に、もしも。呪術王カントループが、アルブレヒト様だと信じさせることができたら?
思いつきに、どきどきする。
「私、青王に申し上げます。青王が支援するべき『正しき王』は、アルブレヒト陛下だと。ダーウッドも、お願いすれば、私の預言に合わせてくれる、かも……」
……死なないで。たとえ、兄君を犠牲にしても。
「不快な預言で耳を汚すな、この莫迦娘!」
――ああ、我が君。アルブレヒト様、ごめんなさい……。
「ネネイは、空王に青王をあやしむよう進言したらしいのです」
そして、組織にも知られてしまう。オルーサ様や組織をよく思っていないことを。アルブレヒト陛下を助けようとしたことを。
死にたくない。
この期に及んで、怯えている。私は、自分のことばかり……。
* * *
「空王陛下は、お前に見捨てられたのをたいそう気にしているようですよ。このままだと退位してしまうかもしれませんな」
独り言のように自分に語りかける声がする。
「私のアーサー陛下は私がいなくなっても気づきもせずに元気いっぱい槍を振っていそうですが、逆に少し寂しいですな。うむ」
(あれっ? 私……?)
石になったネネイは、自我が存続していることに気付いた。
(私、生きている? 動けないけど)
自分が、消えていない。考えることができて、声を聞くこともできている。
ネネイは、石になったまま、すすり泣いた。
「空王陛下……」
逃げたのだ。自分は、あの青年王が傷つくとわかっていながら、見捨てたのだ。
その罪悪感で、胸が締め付けられるようだった。
「ふっ……、ネネイ、お前の王様……縛られて喜ぶ変態になってしまって……」
――何を言っているの?
面白がるようにダーウッドが王の近況を語る。
「麻縄がお好きなようで……ふふ……」
――あなた、私の王様に何をしたの? 麻縄って、何?
ネネイは理解が追いつかずに情緒が乱される一方だった。
「カントループ様だ!! ハルシオン殿下を王にする! アルブレヒトは、悪逆非道の王として処刑する!」
オルーサ様が、決めてしまった。
よくわからないが、呪術王カントループの生まれ変わりはオルーサ様にとって、敵対する相手でなく、お守りして王として立てる相手なのだとネネイは察した。
ご兄弟は、互いに互いを庇いあっている。
私は死にたくない一心で非道に加担しつづけているのに、ご兄弟は自分の身をかえりみず、大切な相手を守ろうとしているのだ。
そして、オルーサ様の思惑通りにアルブレヒト陛下が悪逆の王にされていき、処刑の未来に続く道を歩かされる。
気付いて。
どうか、気付いて。あなたたちを陥れている者がいます……。
「青王は、あ、あ、あやしいです。青王は、……ふ、普通ではないと、思うのです」
目を向けてみて。調べてみて。疑ってみて。
……仕掛けられるまま、陥れられるまま、悪い王様にされていく私の空王陛下。疑うことを知らない、隙だらけで未熟で純真な青年。
この王様は、どうすれば助けられるだろう。
……オルーサ様に、もしも。呪術王カントループが、アルブレヒト様だと信じさせることができたら?
思いつきに、どきどきする。
「私、青王に申し上げます。青王が支援するべき『正しき王』は、アルブレヒト陛下だと。ダーウッドも、お願いすれば、私の預言に合わせてくれる、かも……」
……死なないで。たとえ、兄君を犠牲にしても。
「不快な預言で耳を汚すな、この莫迦娘!」
――ああ、我が君。アルブレヒト様、ごめんなさい……。
「ネネイは、空王に青王をあやしむよう進言したらしいのです」
そして、組織にも知られてしまう。オルーサ様や組織をよく思っていないことを。アルブレヒト陛下を助けようとしたことを。
死にたくない。
この期に及んで、怯えている。私は、自分のことばかり……。
* * *
「空王陛下は、お前に見捨てられたのをたいそう気にしているようですよ。このままだと退位してしまうかもしれませんな」
独り言のように自分に語りかける声がする。
「私のアーサー陛下は私がいなくなっても気づきもせずに元気いっぱい槍を振っていそうですが、逆に少し寂しいですな。うむ」
(あれっ? 私……?)
石になったネネイは、自我が存続していることに気付いた。
(私、生きている? 動けないけど)
自分が、消えていない。考えることができて、声を聞くこともできている。
ネネイは、石になったまま、すすり泣いた。
「空王陛下……」
逃げたのだ。自分は、あの青年王が傷つくとわかっていながら、見捨てたのだ。
その罪悪感で、胸が締め付けられるようだった。
「ふっ……、ネネイ、お前の王様……縛られて喜ぶ変態になってしまって……」
――何を言っているの?
面白がるようにダーウッドが王の近況を語る。
「麻縄がお好きなようで……ふふ……」
――あなた、私の王様に何をしたの? 麻縄って、何?
ネネイは理解が追いつかずに情緒が乱される一方だった。
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