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1、贖罪のスピネル
40、私はついに人間をつくれたぞ!
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劇を終えた祭り会場は、夜を迎えていた。
星々が煌めき、月が優しく地上に光を注いでいる。
そんな空へと色とりどりの花火が美しく打ち上がり、パァッと大輪の花を咲かせて。
地上にも色とりどりの明かりが輝いていて。夜空と地上が一体となったよう。
民たちは明かりを灯した蝋燭を手に持ち、ダンスを踊って慰霊をしている。
たまに音を外すけれど、全然気にせず音を伸び伸びと響かせる楽器の演奏が、楽しい曲を表現する。
鈴の音が軽快に鳴り響き、太鼓が低く頼もしくリズムを刻む。
民たちは腕を組み合い、中央に集まって、ステップを踏んだ。
手に持った蝋燭の燈火が、神聖な色を魅せている。
それを見つめながら、フィロシュネーはハルシオンを想った。
(花びらは、たくさん集まっている……)
現実、現在の光景を眺めながら奇跡を願えば、神鳥は応えてくれた。
* * *
ハルシオンがひとりでいる。
あの墓地の世界だ。墓地の世界で、ハルシオンが発狂している。
ハルシオンは広大な国土の真ん中で、孤独に耐えかねていた。
彼は徐々に発狂していった。
彼は叫び、吠え、泣きじゃくった。
周囲に誰もいないことに寂しさを感じ、過去を思い出し、喪失感に打ちひしがれた。
孤独に苦しみ、狂えるハルシオンは――何かを創り出した。
(ああ、あの人形だわ)
フィロシュネーが夢でみた人形だ。
人間にそっくり。
「は、は、本物、そっくり。いいぞ。これ、生きてる……人間だ。最初の子、お前は、オルーサ。そう名付けよう。オルーサは私にそっくりだね、ふふ、いい子だね」
ハルシオンは恍惚とそれを愛でた。
鼓動を聞き、呼吸に歓び、手足を動かして、人形遊びに夢中になった。
「私は、カントループ。パパだ。パパだよ。さあ、こたえて。お返事してごらんんん」
(カントループ、ね)
フィロシュネーはその名を胸の中で繰り返した。ハルシオンは、カントループなのだ。
「ひとりで動いて。自分でかんがえて……っ、ふふふ、……笑って。怒って。泣いて。言葉を返して」
けれど、人形に心はなかなか宿らなかった。
呼吸する人形を揺らして、カントループが人形の口にスプーンを突っ込んでいる。
「これは辛い。辛くないか? 嫌だ、とか言ってごらんよ。スプーンを喉に突っ込まれたら苦しいだろ、嫌がれよ……ああ、ごめんね……酷いことをしたいわけじゃないんだ……私が話してる内容、わかる? わかるなら、返事をしなさい。おい、返事をしろ……」
人形が乱暴に壁に叩きつけられ、四肢がもがれる。
(ひゃっ)
怖い。
狂気と嗜虐性を剥きだしにした形相で、カントループが笑っている。
「っははは! 悪い子! 悪い子だから、お仕置きするんだ! どう? 辛い? 表情を変えてごらん、悲鳴をあげて苦しめ! 何か感じることはないのお? ああ、こころがない――……オルーサはダメな子だね、長男なのに、情けないねぇ」
壁にもたれかかり、無感情に天を見るオルーサには、心がない。
何も感じていない。そんな気配が、悲しかった。
「出来損ない。最初からうまくいく方が珍しいんだ、ふふ。期待した私が間違っていた! 他の子は、どうかなぁ……ああ、可哀そうにオルーサ。ぼろぼろじゃないか? 今、治してあげるね……」
狂えるカントループは何体も人形をつくった。
人間をつくる、人類を再興させる、という目的だけを胸に執念を燃やすカントループは自分の身体に禁術をほどこして、老いを拒んだ。死を遠ざけた。
「私は、神になる。人類は滅びていない。私がいるから。人類は蘇る……んへへ。えへへへ、うふふ」
カントループは、たくさんたくさん人形を創った。
人形に心を宿そうと苦心した。
その試みをするうち、とても皮肉なことに、彼の国の外では新たな人類が発生していたようで、彼らは文明を形成し、歴史を刻み、カントループの土地にもやってきた。
「自分以外の存在だ。人間だ。いつの間に?」
「すごいじゃないか。でも、なんだろう。嬉しいような、なんだか気に入らないような」
だって、彼らは自分の知ってる人類と繋がっていないじゃないか。
仲間ではないではないか。
自分が求めていたのは、自分と同じルーツを持っていて、自分と同じ故郷で、自分と同じ人種で……。
揺れる心が、痛々しい。
――カントループの時代の時間が進んでいく。
「この土地は、おかしい。邪悪な気配がする。それに、この人形たちは……?」
外の国からやってきた新人類の男が、カントループの『娘』と出会う。
心がなかったはずの人形の娘は、出会った瞬間に驚いた顔をした。そして、頬を桜色に染めて、恥じらった。
彼女はその時、心を芽生えさせたのだ。
「わ……わたくしでは?」
その人形の娘は、フィロシュネーにとてもよく似ていた。
カントループは、自分の娘に心が生まれたことを喜んだ。
「成功だ! 成功だ! 私はついに人間をつくれたぞ! 可愛い我が娘、我が姫……可愛い! ああ、なんて可愛いんだっ……!!」
カントループは狂喜乱舞して娘にたくさんの贈り物をおくり、溺愛する。
「娘にも友達は必要だ。他の人形たちにも心が宿せないか試すけれど、新人類の男には娘の話し相手になることを許してあげよう」
愛娘は新人類の男と交流するうちに恋仲になり、カントループの国の外に行ってみたいと言い出した。
カントループは悲しんだ。しかし、娘がそれで幸せならばと許したのだった。
「うれしい。お父様、ありがとう……!」
愛し合う二人はたいそう喜び、見つめ合う。ゆっくりと二人の顔が近づいて、吐息が触れ合う距離になり。まつげを伏せて、唇が熱く触れ合った。
* * *
「さ、さいらす……」
「俺がなんです?」
フィロシュネーは真っ赤になって顔をそむけた。
「な、なんでもありませぇん……っ」
人形のフィロシュネーと恋仲になった男は、サイラスにとても似ていたのだ。
「姫?」
訝しげな顔をして、サイラスが手を伸ばしてくる。熱がないか確認するように額に手をあてて、ふむと首をかしげる距離感は、護衛とか兄のものだ。
(この男が! わたくしにぎゅーってして、ちゅってして、優しくて甘い声で愛を囁いていた……ひゃぁ、きゃあ!)
「何を恥ずかしがっておられるんです? 思えば先ほどから……ああ」
何かに思い至ったような声は、面白がるようだった。
「ははあん。さては、奇跡を行使なさって、恥ずかしくなるようなものをご覧になってしまったのでしょう。それも、俺の過去で?」
「あ、あう……」
そのとおりっ!
フィロシュネーはもじもじした。
「俺は見られると恥ずかしい過去がいっぱいですから、もしよければ見ないでほしいのですが? 姫? 俺の過去は、姫の教育上よろしくないと思いますが? 覗き見されると、俺も恥ずかしいですが?」
目の前に膝をつき、下から見上げるようにする顔は、本当に恥ずかしそうだった。成熟した立派な大人の男性が恥じらう表情は、あんまり見ていてはいけないような気分にさせる色香がある。
「す、み、み、みません」
申し訳ない気持ちが湧いて、フィロシュネーはおろおろした。
「わ、わたくしがわるかったです。み、み、みなかったことにしますわ」
「ちょっと。いったい俺が何をやらかしたんです? それほど刺激的でしたか……俺は悪い男ですね……?」
「い、いえ。いえいえいえ」
首を横に振る。
ちょっと目がまわってくる――、
「ひ、姫殿下? ちょっと落ち着きましょう」
ミランダが慌てて肩を抱いて、サイラスから遠ざけてくれる。優しいお姉さんな気配に甘えたい気分になって、フィロシュネーはぎゅうっとミランダに抱き着いた。
「何をごらんになったのだろう……俺はちょっと離れていたほうがよさそうなので、こほん。見回りでもしてきましょう」
その気配が離れていき、動揺が少しずつ静まってくる。
ミランダが背中を撫でてくれるのが、心地よい。
フィロシュネーがほっとひと息ついたとき、音楽が止んだ。そして、ワァッ、と歓声が湧いた。
なんだか、とても盛り上がっている。視線を向けると、黒と赤の旗がたくさん掲げられて、振られていた。
星々が煌めき、月が優しく地上に光を注いでいる。
そんな空へと色とりどりの花火が美しく打ち上がり、パァッと大輪の花を咲かせて。
地上にも色とりどりの明かりが輝いていて。夜空と地上が一体となったよう。
民たちは明かりを灯した蝋燭を手に持ち、ダンスを踊って慰霊をしている。
たまに音を外すけれど、全然気にせず音を伸び伸びと響かせる楽器の演奏が、楽しい曲を表現する。
鈴の音が軽快に鳴り響き、太鼓が低く頼もしくリズムを刻む。
民たちは腕を組み合い、中央に集まって、ステップを踏んだ。
手に持った蝋燭の燈火が、神聖な色を魅せている。
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あの墓地の世界だ。墓地の世界で、ハルシオンが発狂している。
ハルシオンは広大な国土の真ん中で、孤独に耐えかねていた。
彼は徐々に発狂していった。
彼は叫び、吠え、泣きじゃくった。
周囲に誰もいないことに寂しさを感じ、過去を思い出し、喪失感に打ちひしがれた。
孤独に苦しみ、狂えるハルシオンは――何かを創り出した。
(ああ、あの人形だわ)
フィロシュネーが夢でみた人形だ。
人間にそっくり。
「は、は、本物、そっくり。いいぞ。これ、生きてる……人間だ。最初の子、お前は、オルーサ。そう名付けよう。オルーサは私にそっくりだね、ふふ、いい子だね」
ハルシオンは恍惚とそれを愛でた。
鼓動を聞き、呼吸に歓び、手足を動かして、人形遊びに夢中になった。
「私は、カントループ。パパだ。パパだよ。さあ、こたえて。お返事してごらんんん」
(カントループ、ね)
フィロシュネーはその名を胸の中で繰り返した。ハルシオンは、カントループなのだ。
「ひとりで動いて。自分でかんがえて……っ、ふふふ、……笑って。怒って。泣いて。言葉を返して」
けれど、人形に心はなかなか宿らなかった。
呼吸する人形を揺らして、カントループが人形の口にスプーンを突っ込んでいる。
「これは辛い。辛くないか? 嫌だ、とか言ってごらんよ。スプーンを喉に突っ込まれたら苦しいだろ、嫌がれよ……ああ、ごめんね……酷いことをしたいわけじゃないんだ……私が話してる内容、わかる? わかるなら、返事をしなさい。おい、返事をしろ……」
人形が乱暴に壁に叩きつけられ、四肢がもがれる。
(ひゃっ)
怖い。
狂気と嗜虐性を剥きだしにした形相で、カントループが笑っている。
「っははは! 悪い子! 悪い子だから、お仕置きするんだ! どう? 辛い? 表情を変えてごらん、悲鳴をあげて苦しめ! 何か感じることはないのお? ああ、こころがない――……オルーサはダメな子だね、長男なのに、情けないねぇ」
壁にもたれかかり、無感情に天を見るオルーサには、心がない。
何も感じていない。そんな気配が、悲しかった。
「出来損ない。最初からうまくいく方が珍しいんだ、ふふ。期待した私が間違っていた! 他の子は、どうかなぁ……ああ、可哀そうにオルーサ。ぼろぼろじゃないか? 今、治してあげるね……」
狂えるカントループは何体も人形をつくった。
人間をつくる、人類を再興させる、という目的だけを胸に執念を燃やすカントループは自分の身体に禁術をほどこして、老いを拒んだ。死を遠ざけた。
「私は、神になる。人類は滅びていない。私がいるから。人類は蘇る……んへへ。えへへへ、うふふ」
カントループは、たくさんたくさん人形を創った。
人形に心を宿そうと苦心した。
その試みをするうち、とても皮肉なことに、彼の国の外では新たな人類が発生していたようで、彼らは文明を形成し、歴史を刻み、カントループの土地にもやってきた。
「自分以外の存在だ。人間だ。いつの間に?」
「すごいじゃないか。でも、なんだろう。嬉しいような、なんだか気に入らないような」
だって、彼らは自分の知ってる人類と繋がっていないじゃないか。
仲間ではないではないか。
自分が求めていたのは、自分と同じルーツを持っていて、自分と同じ故郷で、自分と同じ人種で……。
揺れる心が、痛々しい。
――カントループの時代の時間が進んでいく。
「この土地は、おかしい。邪悪な気配がする。それに、この人形たちは……?」
外の国からやってきた新人類の男が、カントループの『娘』と出会う。
心がなかったはずの人形の娘は、出会った瞬間に驚いた顔をした。そして、頬を桜色に染めて、恥じらった。
彼女はその時、心を芽生えさせたのだ。
「わ……わたくしでは?」
その人形の娘は、フィロシュネーにとてもよく似ていた。
カントループは、自分の娘に心が生まれたことを喜んだ。
「成功だ! 成功だ! 私はついに人間をつくれたぞ! 可愛い我が娘、我が姫……可愛い! ああ、なんて可愛いんだっ……!!」
カントループは狂喜乱舞して娘にたくさんの贈り物をおくり、溺愛する。
「娘にも友達は必要だ。他の人形たちにも心が宿せないか試すけれど、新人類の男には娘の話し相手になることを許してあげよう」
愛娘は新人類の男と交流するうちに恋仲になり、カントループの国の外に行ってみたいと言い出した。
カントループは悲しんだ。しかし、娘がそれで幸せならばと許したのだった。
「うれしい。お父様、ありがとう……!」
愛し合う二人はたいそう喜び、見つめ合う。ゆっくりと二人の顔が近づいて、吐息が触れ合う距離になり。まつげを伏せて、唇が熱く触れ合った。
* * *
「さ、さいらす……」
「俺がなんです?」
フィロシュネーは真っ赤になって顔をそむけた。
「な、なんでもありませぇん……っ」
人形のフィロシュネーと恋仲になった男は、サイラスにとても似ていたのだ。
「姫?」
訝しげな顔をして、サイラスが手を伸ばしてくる。熱がないか確認するように額に手をあてて、ふむと首をかしげる距離感は、護衛とか兄のものだ。
(この男が! わたくしにぎゅーってして、ちゅってして、優しくて甘い声で愛を囁いていた……ひゃぁ、きゃあ!)
「何を恥ずかしがっておられるんです? 思えば先ほどから……ああ」
何かに思い至ったような声は、面白がるようだった。
「ははあん。さては、奇跡を行使なさって、恥ずかしくなるようなものをご覧になってしまったのでしょう。それも、俺の過去で?」
「あ、あう……」
そのとおりっ!
フィロシュネーはもじもじした。
「俺は見られると恥ずかしい過去がいっぱいですから、もしよければ見ないでほしいのですが? 姫? 俺の過去は、姫の教育上よろしくないと思いますが? 覗き見されると、俺も恥ずかしいですが?」
目の前に膝をつき、下から見上げるようにする顔は、本当に恥ずかしそうだった。成熟した立派な大人の男性が恥じらう表情は、あんまり見ていてはいけないような気分にさせる色香がある。
「す、み、み、みません」
申し訳ない気持ちが湧いて、フィロシュネーはおろおろした。
「わ、わたくしがわるかったです。み、み、みなかったことにしますわ」
「ちょっと。いったい俺が何をやらかしたんです? それほど刺激的でしたか……俺は悪い男ですね……?」
「い、いえ。いえいえいえ」
首を横に振る。
ちょっと目がまわってくる――、
「ひ、姫殿下? ちょっと落ち着きましょう」
ミランダが慌てて肩を抱いて、サイラスから遠ざけてくれる。優しいお姉さんな気配に甘えたい気分になって、フィロシュネーはぎゅうっとミランダに抱き着いた。
「何をごらんになったのだろう……俺はちょっと離れていたほうがよさそうなので、こほん。見回りでもしてきましょう」
その気配が離れていき、動揺が少しずつ静まってくる。
ミランダが背中を撫でてくれるのが、心地よい。
フィロシュネーがほっとひと息ついたとき、音楽が止んだ。そして、ワァッ、と歓声が湧いた。
なんだか、とても盛り上がっている。視線を向けると、黒と赤の旗がたくさん掲げられて、振られていた。
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