58 / 63
2章
57、清明節、申の刻半、告白
しおりを挟む妖狐の母にしがみついて泣いているうちに、霞幽は淡々と後始末を進めてくれた。
警備兵が駆け付けて、妖狐に驚きつつも、宮女を救助してくれる。
それに、辟邪(魔除け)の刺繍がされた布を運んできて、霞幽に渡している。
二人いた霊のうち、もう一人はいつの間にか消えていた。
もう一人は、誰だったのだろう……。
「あの。助けてくれてありがとうございました」
「ええと……紺紺さん?」
「紺ちゃん、だよね?」
呼びかけられて、紺紺はぎくりとした。
「あっ」
九術師の衣裳姿で妖狐にしがみついている自分は、素顔だ。
「あああ~~っ!」
一瞬で頭が冷える。
思わず母の影に隠れてしまうが、もう遅い。ばっちり見られた後だ。
幻惑の術を使えば「今見たことは忘れなさい」とか「気のせい」とか言い含めることはできるが……。
……でも、ちょうど侍女の仕事は終わりの頃合いだ。
そんな思いが、ふと湧いた。
だから、紺紺は母の影から姿を見せて、背筋を伸ばした。
三人のお友だちは、言葉を待ってくれている。
たぶん、なんとなく何を言うか先に理解されている。
でも、紺紺が自分で言うのを待っている。
……自分から言うのが、大切なんだ。
「わ……私、紺紺です」
三人のお友だちは「知ってる」「うん」「そうね」と頷いた。
ちょっと間抜けな感じになってしまった。
恥ずかしいかも……紺紺は母の後ろに隠れたくなりながら赤い顔で言葉を続けた。
「えっと、傾城と呼ぶ人もいます。西領出身です。宮廷術師をしていて、後宮調査のお仕事で侍女をしていました」
寂しい感じがした。
もう戻れないんだ、と思った。
「正体を隠しててすみません。でも……お、おおお、……お」
三人が首をかしげている。
「おおおお?」
「おお?」
「お?」
助けて、お母様。言葉がうまく形にならない。
そんな内心が伝わったのか、母はふわふわの狐尾でぽふぽふと腕を包んでくれる。
「――おと……っ」
三人は、理解しようとしてくれている。
「と?」
「おと?」
「音?」
紺紺は胸の前で手をあわせ、心が伝わるようにと祈りながら告白した。
「……おっ、お友だちだと思ってまして! 仲よくしてくれて、うれしくて!」
言えた! 言えたよー!
「私、同じ年ごろの女の子のお友だち、ずっといなくて! 同じ年ごろのお友達でも作りなさいって言われて! 作りたいなって思ってて! お友だちになってもらえてうれしくて……! み、みんなのことが、大好き」
必死に言ってから、恥ずかしくなって袖で顔を隠すようにすると、三人は笑ってくれた。
「……私もお友だちだと思ってるよ!」
「偉い術師様でも、紺紺は紺紺だね」
「紺ちゃんが傾城様って、不思議な感じ。でも、私も白家の霞幽様に見染められてて、将来は嫁ぐかもしれないし」
三人は口々にそう言って……あれ? 白家の霞幽様?
「小蘭? 今なんて?」
そういえば、小蘭の髪に見覚えのある真珠の簪があるような。あれ?
「アッ。いけない。内緒でしたね、霞幽様」
ぽっと頬を染めて小蘭が霞幽を見ている。しかも、恋する乙女みたいな眼で。
「えっ? えっ? 霞幽様? 小蘭?」
見比べるようにして驚いていると、霞幽は、「池の鯉が人間の言葉を話している」みたいな、たいそう冷めた目を小蘭に向けた。
「小蘭。以前も伝えたが、その簪は単に母親と面会しやすいように許可証代わりに渡したのだ。妙な誤解はしないように」
霞幽が名を呼んでいる。誤解らしい。
でも、私を呼ぶ時は「紺紺さん」なのに、小蘭は呼び捨て?
「霞幽様? 私のお友だちに、簪を? 口説いたり、接吻したり、将来を誓ったりなさったんですか?」
「紺紺さんは、私の言葉を聞いていたかい。簪は『この娘に便宜を図らうように』という意向表明であり、さらに言うなら君と特別仲が良い友人だから今後も仲良くしてくれるようにと保護者の立場から賄賂を渡しただけだよ」
「その賄賂で誤解されてるじゃないですかーーっ! それに、私のことは呼び捨てじゃないのに、小蘭は呼び捨てなんですか?」
「君は高貴で特別だから……高嶺の花と野花の呼び方が違うのは当然だろう」
憤然として霞幽の服を掴むと、びしょ濡れだ。
前にもくしゃみをしていたけど、風邪をひくんじゃないだろうか。
紺紺は上等な服の裾をぎゅっと絞ってみた。
「紺紺さん、何をしてるんだい」
「この服……着替えた方がいいと思います」
「君もびしょ濡れだよ。自覚あるかい」
呆れたように言う霞幽の顔は人間味が感じられて、紺紺は不満が薄れていく気がした。
ところで、皇帝陛下は……ご無事?
* * *
皇帝は奮闘していた。
「わわわわっしょーいっ!」
かまど娘娘は裏切って演舞台に結界を張っていたらしい。
だが、宝石商人が取り押さえてくれたようで、今は結界は解けている。
『主上、先見の公子から青釭剣が献上されております』
宝石商人は、助けに入ることなく剣を放り投げてきた。青釭剣だ。
『先見の公子が「我が主たるもの、やんちゃな猫さん坊やごときに負けませんよね?」と伝えるようにと』
なんという試練。
しかし、青釭剣は手に頼もしく馴染み、岳武輪の倚天剣に折れる気配がない。
力いっぱい刃を受け止め、押し返すことができる!
「むぅん。朕に青釭剣あらば、百戦して百勝間違いなし! 見てろ、霞幽!」
皇帝が啖呵を切った時、騎馬民族国家の石王が舞台に上がった。
「結界が解けたんですねえ! いやー、王が舞いを捧げる儀式っていうなら、俺だって仲間に入れてもらわにゃ。一応、王なんで」
『石王』石苞はそう言って皇帝の味方をし始めた。
武輪は威勢がよかったが、一対二となって追い詰められ――膝を折り、剣を手から叩き落され、敗北を喫したのであった。
「次に城内で剣を抜かれた際は、我が国に敵対したとみなします――と、我が国の先見の公子が警告していたはずだな、岳武輪よ」
武輪の喉元に青釭剣の切っ先を突きつけたとき。
「さて、これにて剣舞の奉納、清明節の祀り事、神事は完了でございます」
会場に、凛とした少女の声が響いた。
「天上の西王母様は、ただいまの神事を見ておられました」
視線が集まる先には、狐のお面をつけた傾城がいた。
傍らには先見の公子がいて、二人の背後には三人の宮女と、頭に帽子をかぶった羊のめえこと、巨大な妖狐がいる。尾が八つの、恐ろしい妖狐だ。
妖狐は、辟邪(魔除け)の刺繍がされた布を纏っていた。
辟邪の布を纏って平然としているということは、邪悪な生き物ではないということになる。人々ははらはらしながら視線を交わした。
「……ここにいるのは、九尾の狐です。羊は、獬豸です」
傾城は、厳かに言った。
九? 尾は八つでは?
そう思った人々は、次の瞬間、目を擦った。
妖狐の八つの尾がゆらりと揺れて、九尾になったからだ。
それが幻惑の術による思い込みだと気付いた者は、宝石商人と皇帝しかいなかった。
「皆さんご存じのとおり、九尾の狐も獬豸も、瑞獣です」
傾城の手がお面を掴み、素顔をさらけ出す。
友人たちに手伝ってもらって「美しさをより魅せられるよう」化粧をしたかんばせは、可憐だった。
老若男女問わず目を奪われ、感嘆の吐息を零すほどに美しかった。
「……えっ? 傾城様? でも、あれって紺紺では?」
中には紺紺と同一人物だと気付いて驚く者もいる。彰鈴妃などは珠簾から顔を出してしまったほどだ。
「朝には雨が降っていましたが、我らの真摯な式典が天に伝わり、このように快晴となっています。ただいま、先見の公子が仕上げの祝詞を謡いましょう」
傾城の言葉を受けて、先見の公子が十年前から本日までの罪人たちの罪を列挙する。
「水鏡老師を名乗る隣国の地仙、諸葛老師は、正晋国の岳不群将軍を焚きつけ、当時の王の悪評を広めて、国を滅ぼしました。その際、我が国の黒家が協力関係にあり、西王母より使命を受けて地上の善悪を測っていた妖狐の令息を人質に取って脅し、玄武の珠に妖術をこめさせました。黒貴妃は地仙の力と玄武の珠の妖術を悪用し、東宮の母君を暗殺。主上を誘惑し、寵姫に成り上がりました」
人々は仰天した。とんでもない祝詞だ。
「清明節は、先祖の墓を掃除し、霊を慰める祀り事。我々は本日、この真実を明るみにして罪人たちを処刑することにより、長く不名誉をこうむっていた英霊をお慰めします」
先見の公子は空を夕暮れの色に染める太陽を背負うようにして、神々しく宣言した。
「そして、そこにおられる宝石商人――隣国の正統な王族である紫玄王子をお助けし、正晋国という国号を取り戻すお手伝いをいたす決意を表明します」
……ん? 今なんて?
紺紺はその言葉に首をかしげ、宝石商人を見て、「あ!」と思い至った。
めい、めいと呼ぶと思っていたが、あれは「妹」だった……?
「えっ、……おにいさま?」
ぜんぜん気づいてなかったので、紺紺は心の底から驚いた。
しかも、宝石商人の隣にはどう見ても石苞にしか見えない『石王』が近づいて、「おおっ。殿下だったのですか。見覚えがあるなあと思っていたんですよ」なんて声をかけている。
「石苞がなんで王様になってるのっ?」
驚きが続きすぎて、紺紺は目が回りそうになった。
13
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
後宮の臨時画家は陰陽を描く〜その画家は崑崙山を追い出された道士につき、はかりごとの際は要注意を〜
だるま
キャラ文芸
都で評判の画家である菜春菊は幼い時に父親に捨てられ、道士に育てられた。しかし、その経験のおかげでいくつかの仙術を扱える。
皇帝の従兄弟にその特殊な才を見込まれ、国の支配者である朱氏が住む静水城で働くこととなった。
皇帝やその妃達の求めに応じて画を描くことにより、臨時画家の立場でありながらも静水城になくてはならない人物となるのだった。
本作の無断転載・加工・設定・内容&タイトルパクリ&AI学習ツールの使用は固く禁じております(悪質性に応じて対処します)。
Reproduction is prohibited.
禁止私自轉載、加工
복제 금지.
カクヨムにも同作品を掲載しております。
魔法使いと子猫の京ドーナツ~謎解き風味でめしあがれ~
橘花やよい
キャラ文芸
京都嵐山には、魔法使い(四分の一)と、化け猫の少年が出迎えるドーナツ屋がある。おひとよしな魔法使いの、ほっこりじんわり物語。
☆☆☆
三上快はイギリスと日本のクォーター、かつ、魔法使いと人間のクォーター。ある日、経営するドーナツ屋の前に捨てられていた少年(化け猫)を拾う。妙になつかれてしまった快は少年とともに、客の悩みに触れていく。人とあやかし、一筋縄ではいかないのだが。
☆☆☆
あやかし×お仕事(ドーナツ屋)×ご当地(京都)×ちょっと謎解き×グルメと、よくばりなお話、完結しました!楽しんでいただければ幸いです。
感想は基本的に全体公開にしてあるので、ネタバレ注意です。
神様のひとさじ
いんげん
キャラ文芸
ラブコメから始まる、各要素もりもり恋愛中心の小説。
人類は、一度絶滅した。
神様に再び作られた、アダムとイブ。
地下のコロニーでAIに作られた人間、ヘビ。
イブは、ヘビを運命の相手だと勘違いして、猛アタックを開始。しかし、本当のアダムと出会って。
「え? あれ? 間違ってかも」
その気になりかけていた、ヘビはモヤモヤする。
イブこと、ラブも、唯一の食事を提供してくれる、将来が想像出来るアダムと、心動かされたヘビとの間で揺れる。
ある日、コロニーで行方不明者が出て、彼を探すコロニーのメンバーだったが、AIが彼の死した映像を映し出す。彼は、誰かに殺されたのか、獣に襲われたのか、遺体が消え真相は分からず。
しかし、彼は帰ってきた。そして、コロニーに獣を引き入れ、襲撃を開始した。
変わり果てた彼の姿に、一同は困惑し、対立が始まる。
やがてコロニーの一部の人間は、外の楽園へと旅立つアダムとラブに着いていく事に。
その楽園では、神の作り出した、新たな世を創造していくシステムが根付いていた。
偽物の人間達の排除が始まる。
黄龍国仙星譚 ~仙の絵師は遙かな運命に巡り逢う~
神原オホカミ【書籍発売中】
キャラ文芸
黄龍国に住む莉美は、絵師として致命的な欠陥を持っている。
それは、右手で描いた絵が生命を持って抜け出してしまうというものだ。
そんなある日、住み込み先で思いを寄せていた若旦那が、莉美に優しい理由を金儲けの道具だからだと思っていることを知る。
悔しくてがむしゃらに走っているうちに、ひょんなことから手に持っていた絵から化け物が生まれてしまい、それが街を襲ってしまう。
その化け物をたった一本の矢で倒したのは、城主のぼんくらと呼ばれる息子で――。
悩みを抱える少女×秘密をもった青年が
国をも動かしていく幻想中華風物語。
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆大変申し訳ありませんが、予告なく非公開にすることがあります。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆アルファポリスさん/エブリスタさん/カクヨムさん/なろうさんで掲載してます。
〇構想執筆:2022年、改稿投稿:2024年
浮遊霊は山カフェに辿り着く ~アロマとハーブティーで成仏を~
成木沢ヨウ
キャラ文芸
高校二年生の死にたがり、丸井 恵那(まるい えな)は、授業中に遺書を書き上げた。
この授業が終わったら、恵那は自殺しようと計画していたのだった。
闇サイトに載っていた自殺スポット『一ノ瀬山の断崖絶壁』へと向かった恵那は、その場所で不思議な山小屋を発見する。
中から出てきたのは、ホストのような風貌をした背の高い男で、藤沢 椋野(ふじさわ りょうの)と名乗った。
最初は恵那のことを邪険に扱うも、ひょんなことから、恵那はこのお店を手伝わなければいけなくなってしまう。
この山小屋は、浮遊霊が行き着く不思議な山カフェで、藤沢は浮遊霊に対して、アロマの香りとハーブティーの力で成仏させてあげるという、謎の霊能者だったのだ。
浮遊霊と交流することによって、心が変化していく恵那。
そして、全く謎に包まれている藤沢の、衝撃的な過去。
アロマとハーブティーが、浮遊霊と人を支える、心温まる現代ファンタジー。
神の声は聴こえない! ポンコツ巫女の私がこの手でひらく未来は ~予言ができない私の天啓スキルは制御不能なタイムトラベルでした。
松ノ木るな
キャラ文芸
主人公がタイムスリップした先で人助けをしながら、情報・人材・アイテムを手に入れ自身の夢を叶える、冒険ロマンファンタジー長編物語です。・:*ೄ⋆*
今は昔、神と言葉を交わすふしぎな力を持つ巫女が、その力でもって平和をもたらす女王に君臨する、というしきたりの国があった。
民衆が崇めるその「予言の力」は、異性と交わると消えてしまうものらしい。
したがって女王は生涯独身を貫き、国の平和と発展に努める。
跡を継ぐ娘は女王の持つ“神の目”により見出され、それを繰り返し百数十年、国の平穏は続いていた。
しかし、このたびの次期女王・王女ユウナギは、いつまでたっても予言の力に目覚めない。
ユウナギは幼い頃から恋をしている。
国の女王にはひとりの男が補佐に就く。
実質、この男とその一族が為政者の立場だが、一応、女王の伝える神の声を聴いて政治は行われている。
彼女の恋のお相手は、いつか自分の補佐役に就くだろう、子どもの頃から面倒見てくれて“兄”と慕う人。受け入れてもらえるわけもない、永遠の片思い。
恋は諦めているけれど、せめて王女として、民の平穏をまもりたい。
しかし、近年台頭してきた勢力がこの国を取り込もうと迫りくる。
「私は神通力が使えない、役立たずの王女……」
なんて言ってたら神隠しに遭っちゃった!? ここは過去? 未来?
ここで見知ったことを、国に持ち帰って役立てることができたなら。
運命はきっと変えられる!
国固有の文字はない、暦もない。トイレは川に小屋、医療は眉唾、紙は超貴重、家は竪穴住居か高床式。鍵はない、コンパスない、椅子もない、賭け事の概念まだない、ここはないないだらけの社会。
希望が見出せない日々にもがく思春期まっただ中の、血縁的には天涯孤独な娘が、日常の中で、冒険の先で、人と触れ合い成長していく。
そして彼女が女王に即位した時、その国の辿る運命は──。そんな長編物語です。
プロイラストレーターのYOHJI様に、表紙のイラストを依頼させていただきました。
YOHJI様のXはこちらです⇩
https://x.com/YOHJI_fanart
商業のご依頼は https://coconala.com/services/3373839 こちらからぜひ(#^.^#)
視える宮廷女官 ―霊能力で後宮の事件を解決します!―
島崎 紗都子
キャラ文芸
父の手伝いで薬を売るかたわら 生まれ持った霊能力で占いをしながら日々の生活費を稼ぐ蓮花。ある日 突然襲ってきた賊に両親を殺され 自分も命を狙われそうになったところを 景安国の将軍 一颯に助けられ成り行きで後宮の女官に! 持ち前の明るさと霊能力で 後宮の事件を解決していくうちに 蓮花は母の秘密を知ることに――。
【完結】いただきます ごちそうさま ――美味しいアプリの小さな奇跡
加藤伊織
キャラ文芸
大学に入学するために上京した速水悠(はやみ はるか)は、従姉の理彩からアルバイトを斡旋される。
それは「料理が全くできない人を探している」という、少し変わった条件のものだった。
「楽しく作れて、どんどん料理がうまくなる」レシピアプリ・クレインマジック。そのアプリをリリース予定の会社が理彩の勤務先であり、初心者でも本当にレシピを再現できるのかを検証するための人材として悠に白羽の矢が立ったのだ。
面接時に見事にとんでもない玉子焼きを作り、周囲を驚かせた悠。そんな彼に「玉子焼きの作り方、実際に見せてあげるよ」と料理担当の四本夏生(よつもと なつき)が作って見せた玉子焼きは、人生の中で一番美味しい玉子焼きだった。
四本の料理が食べられることに釣られてアルバイトを始めた悠は、普段は無愛想でありながらも美味しそうに食べて率直に褒めるところを四本に気に入られ、四本のアシスタントもすることになる。
そして四本が自分のモチベーション維持のためと撮り溜めた悠の試食動画は、リリース時にクレインマジックのCMに使われることに。同時に、楽しそうに料理を作る四本の姿もCMで放映された。
ビジュアルが良いふたりの姿はSNSで爆発的に反響を呼び、クレインマジックは順調なスタートを切ったが、その一方で悠の身元や住所がSNSに晒されるという事件も引き起こす。
四本と悠の安全を重視した社長の決断により、ふたりは会社が入っているマンションの別の一室を「社員寮」として提供されることになった。
同居生活を送るうちに、悠と四本は歳の離れた友人として心を通わせることになる。
しかし、四本にはどうしても再現できない思い出の料理があり、料亭である実家を離れた深い理由があって――。
※表紙画像にAI生成イラストを使用しております。 小説家になろう様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる