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4章開幕 会議という名の敵キャラ紹介

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 ベルタエル王国から救援要請の使者が送られ来た頃、フローラ達、花ラプゲーム関係者と事件当事者は会議という名の事情聴取に集められていた。

「由々しき事態だな」

「ええ。報告を聞いた限りでは、結構前から潜入していたようです」

「なら転生者の可能性は少ないわね……」

「だとしても、敵将が自ら乗り込んでくるというのは、元々見つかった所で逃げおおせる自信があった、ということでしょう?」

「そんなキャラじゃなかったはずなんだがな」

「そうね……」

 等と、会議らしいことをやっています。ちなみにディレク皇子、サイモン、ジュリエッタ、グレイス、ミエ、エリの順で発言しております。ちなみにグレイス様は、皇子が会話に入っているため口調が丁寧になっております。ところでこの状況、どう見ます? 置物の喪女さーん。

(こちら置物でーす。早速ですが帰ってもよろしいでしょうか?)

 マジで約立たずだな。

(いや、私が呼ばれてる理由が本気で分かんない)

 言われたじゃん? 私刑事件の本当の首謀者が見つかったって。

(当時はシルバだったシルビアやサブリナも呼ばれてるしね。でも最大の被害者であるバモン君も居ないしー。私も別に要らなくね?)

 加害者側だった方の二人は、利用されたと聞いてか無表情でちょっと怖いけどな。

(自国の人間なら、良くはないにしても自滅は自分のせいって思えるけど、敵国のスパイに踊らされていたんならキレもするでしょうよ)

「フローラは何か気付いたこと無い?」

「ふぇっ!? 私!?」

 視線が集中する喪女。やったね! 視線にモテモテだ!

(要らねぇよ? ってか帰りたいって言ったからかしら?)

(『帰っちゃ駄目よ?』)

(あっ、はい)
「えっと、前作しか知らない私では、そのキャラがどういう性格なのかもわからないんですよね」

「バルバラ嬢はその人物の変身前の姿が見える特殊な魔眼持ちでな。性能自体であればメイリア嬢の魂まで見える魔眼の方が性能としては格上であるが、変装を見破る点に置いてはとても汎用性が高いのだ」

「逆に私の魔眼は色と形を伝えてくれるだけで、余程波長が合わないと見えないのです。そこは練度の差が大いに関係すると思います」

 言外に褒められたバルバラはドヤ顔である。

(なんかチョロそうな人ね)
「ほほぉ。で、その目で見てみた結果、イラストの一人に間違いない、と?」

「ええ、そうですわ」

 バルバラ様はフローラを見やると、軽く目礼してくる。

(あ、どーもと目礼を返しておく。っていうか、何で目礼されてるの? 私。シルバ絡みだったら敵視されてもおかしくないと思うんだけど……)
「で、ミエやエリさんは知ってる性格と違う、と?」

「ああ」「ええ」

「どんなキャラなんです?」

「ロドミナ・エンチェルケ。レアム首相麾下の十傑衆の一人、もう知ってると思うけど女性よ。あの国はゲーム開始時には王政が打倒されて共和国となったの。その実、共和制という名の独裁国で、王族や貴族は既に居ないけれど、実力が第一なんてものじゃなく全てって国ね。だから脳筋国家なんて揶揄されたりするんだけど、その中にあって割とトリッキーな部類の将官ね。戦花繚乱での能力は、敵部隊へのデバフだったわ。レジスト不能の……」

「うぇぇ、きっついな」

「最初は力押しキャラが目立っていたため地味な印象のキャラだったけど、地形効果が追加されてからはちょっと厄介な相手だったわ」

「川を渡る時はそもそも渡渉が低くなるのに、そこに更に渡渉デバフとか掛けられてみろ。その間に川上から木材を流すとかいうコンボとかは最悪だったな。他には火計とかな。何にせよ地形を活用することで無双できるキャラだった。まぁ部隊の能力をしっかりあげてないと意味をなさないから、結局事前の小細工以外にできるのは脳筋プレイだけどな」

「なるほど、そういう奴ね。……もしかしなくても、デバフ掛ける相手の部隊に弱み握られてる奴が居るとかで、事前に寝返らせている可能性があるって事ね」

「……そうか」「……そう、それがデバフの正体ね」

「急ぎ普段と違う行動を取っているものを洗い出す必要があるな。サイモン、頼めるか?」

「お任せを」

「他のキャラの特性も聞いておきたいんだけど……」

「ハルロネ・ウェバリア。この子も女性ね。特性は戦意高揚。どんな状況でもテンションをマックスまで引き上げれるの。こちらで言うとディレク様ね」

「俺か?」

「自国の皇子が率いて下さるのですから、御身のためと高ぶらない兵が何処に居るでしょう?」

 すんごいヨイショの叩き売りに、ディレク皇子のテンションも上げ上げだ!

(ちょろいディレク、ちょレク?)

(『流石にそれは可哀想だと思うの』)

「テンションに関しては、タイミングによっては兵力差も跳ね返す事がある。協力プレイの時は、ロドミナとの相性が良かった。ロドミナで戦意デバフかかってる所に、戦意マックスのオラオラ部隊。完封だってザラに見られたぞ」

「うわぁ」

「シュライラ・エッティンゲン。この子も女性。特性は補充。とにかく撃ちまくるイメージね」

「男共はこっちもあっちも力押しや防御タイプが多いんで、男共と組んでることが多い」

「鉄壁の後ろから無限の矢とか、最悪ですね……」

「その鉄壁として名高いのが、アルモ・ナイアルテ。男性で特性は鉄壁」

「一定火力以下の攻撃をカットするんだ」

「……それって攻撃できるユニットが限られてくるんじゃ?」

「そこを弓で狙い打ちにされるのよねぇ。攻めるのに必要なリアルの時間も兵の消耗も、どちらのコストが馬鹿にならないから嫌われてたわね」

「逆に言えば力押しで押しきれるキャラでもあるから、脅威ではなかった」

「人気無さそうね……」

「それがなぁ……ショタ枠だから人気はあった」

「……は?」

「次にヴェサリオ・ヴォイドマン。互いのバフを消す、ガチのぶつかり合い枠」

「ちょ、ショタ枠の説明!」

「無い、忘れろ。ヴェサリオはお互いどれだけ自分の部隊を鍛えてたかを見るのに使われてたな。こちらで言うとアーチボルド様タイプだが、性格がディレク様ってところか」

「暑苦しい俺様か……」

 遠くでショックを受けた顔をしているディレク、哀れなり。ちな、文句を言わないのはジュリエッタが釘を差すのを禁止しているからである。今回はジュリエッタも文句は言ってこない所を見ると、直して欲しい所だからのようだ。
 ついでですが、暑苦しい発言にアーチボルド至上主義なお二人の令嬢から冷たい視線も届いております。本人はケロッとしてんだけどね。

(やっべ、ついポロッと言っちまった)

 まぁ俺は面白いからもっとやれと言っておく。

(うるせえよ?)

「アルディモ・ルッケルス。男で特性は魔法不干渉」

「こちらのサイモン様枠だと思う。互いの魔法を干渉させずにお互いの陣に叩き込む。ノーガード戦法だな」

「え? それ速攻終わったりしないの?」

「すぐ終わるな。だから敵味方どちらにも人気があった。戦闘が早く終わるから、他の事に集中できるってね」

「割と戦争準備に手間がかかるから」

「そですか……」

 時は金なりなんですかねぇ?

(……いや手間がかかるってのは割と面倒だからね)

「サイモン様の場合は相殺無しで相手に魔法を叩き込む。ただ、その後の反動で敵の攻撃を一方的に受けるから、扱いに注意が必要だった」

「ふむ……確かに我が部隊は魔法兵で固めているし、相手の魔法を減衰させながら叩く事もできる。……というか、密かに開発中の戦術だったんだが……」

(一方的に責められる時間が存在するのは危険ねぇ)
「改良の余地がありそうですね」

「うむ」

「グレイス様の部隊をつけるとか?」

「にゅあっ!?」

 エリのハンカチが真っ赤に染まる! 喪女が噴けと、轟き叫ぶ!

(叫んでねえよ)

「ハイネリア・ヒューイック。男性で特性は一騎打ち」

「……一騎打ちってやっぱりあれですか? 『やぁやぁ我こそは~』って?」

「そうだな。断るとテンション下がるから大抵は受ける。なので、こいつも戦闘がすぐ終わる……んだが、アルディモの比では無く短いため、なんだか一発勝負感が酷くてな。じゃんけんで戦闘を終わらせる様で、一応は戦闘があるアルディモと比べて不人気だった。一騎打ちの様子がモニターされれば違ってたんだろうけどさ」

「同じ理由の枠なくせに随分と世知辛ぇな」

 何でも一番が良いとは限らない。

「アーチボルド様の場合、本人が敵陣で無双する形だったから、部隊より本人を鍛える方が強くなるという……ある意味ハイネリア殺しだった」

「ああ、その人の場合一騎打ちを断られたら、部隊戦でガチだもんね……。本人だけ鍛えるわけにはいかないわな」

「残るシークレット枠は2つだが、そっちは解禁前にこっち来たからな。わからん」

「シークレットも含めて9人しか居ない十傑衆だけど、最後の一人は多分、代表よね」

「間違いないな」

「麾下って言っといて実は自分もその十人でした、みたいな? それだけで顔も出てきてないのに間違いないの?」

「理由は……」「そりゃあよぉ……」

「「シルエットの変な髪型が一緒」だもんよ」

「ああ……。じゃあ特殊な例を除いて同一人物か」

「特殊な例?」

「影武者・双子・ハリボテ」

「前二つは良いとして、ハリボテって何だよ?」

「本当は居ないけど、居るかのように見せてる」

「意味あるの?」

「実際9人しか居ないけど『十傑衆は倒しきったぞ!』 と、10人居るかも? で『9人しか倒せてないぞ! 後一人は何処だ!?』となるのとでは違うでしょ?」

「……戦争に置いて一人が戦況を左右することはないだろうに。何処かの白い奴じゃあるまいし」

「……まぁこの国にもイレギュラーは居たけどね」

「イレギュラー?」

「魔王……って言ったら良いのかな?」

「「ああ……」」

 そう言えば、といった表情で宙を眺める二人。

「確かにあんなもんが出てきたら、ひっくり返るわな」

「でも仮に出せても制御できるものでもないのでしょう?」

「魔王はともかく、魔族一人が出てきたってひっくり返ると思うのよ」

「黒繭があるうちは大丈夫なんじゃないの?」

「その大丈夫って情報自体、ゲームの情報や勇者の……あん野郎の話でしか知らないじゃない?」

「ぉぅ……なんだよフローラ、勇者に恨みでもあんのか?」

「恨みはないけど、許せはしないかな……」

 勇者さん、帰ってくるかな?

(次なんか不始末見つけたら、片方潰してやる……!)

 うええ、おっかねえな……。

<フローラちゃん、コワーイ>

(『んもう……程々にね?』)

 え? 片方潰す発言は止めない方向なんですか? 程々=片方? ……まぁ結局、この会議では大したことは決まらなかったよ……。
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