異世界生活物語

花屋の息子

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120完成とため息

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 断熱材投入は親方衆のみで行なう。流石に連日梃子衆を軟膏業務から外すと通常営業が出来ないので、彼らは軟膏業務に付けて親方衆だけでの作業にした。投入自体は特別な事をしないので見てもらう必要はないので重要事項ではないからだ。

「壁と壁の隙間が埋るまで入れてくださいね~きっちり埋ったら完成ですから~」

 サラサラと言うかパラパラと言うか小気味良い音が流れて作業が進む。軽量物なので持ち上げるのも楽で作業が進む速度は通常の作業と違って早い。黒い粉塵が舞い上がるが粒子が大きい事もあって苦になるほどではないのも助かる。

「マスクみたいな物があった方が良いかな?まぁ今回程度の舞い上がりならいらないか?」

 舞い上がらない訳ではないから口と鼻を覆う布くらいは巻いた方が良いなと反省点を洗っておいた。なにやら前回の時に気が付けと言われそうな話でもあるが、前回の下から順々に作り上げているのと違い、今回は隙間を空けた壁に一気に投入しているので舞い上がる量も多いのだ。
 これが長時間滞留するほどであれば、前回一回でも労働基準監督署が跳んできそうな環境ではあったのだ。

「かと言ってこっちの布をマスクみたいに使うと地が厚すぎて息苦しくなるしな。薄手の布が作れるか今度相談してみよ」

 壁の隙間がクン炭で埋め尽くされると天井を張る。この時に加重用の大柱を数本天井に乗せて壁に隙間が開かないようにしているのも工夫の一つだ。
 家の中央に点検口一点を開けてすべて天井を張り終える頃には梃子衆が軟膏の手伝いを終えて合流した。

「入れる所見たかったっす」何って言われたが、大した事ではないので諦めてもらった。

 天井面にもクン炭を敷き詰める訳だが、加重用の柱と点検口にはクン炭を乗せないように注意しておいた。管理面で必要だからね。
 
「これが最後の部材ね」
「これで完成か?」
「そうだよ。おつかれさま」
「「お~!!出来た~!!」」

 点検口の蓋を乗せる事で飯場は完成した。サイズがサイズだけに一軒家に比べると時間が掛かってしまったが、快適性は既存の住宅に比べると格段に向上しているので、これからはその違いを感じて生活できる事だろう。

「出来たと言ってもこれが基本になるだけだからね。これに水場とか壁塗りなんかをして向こうの家のような家を作るのが目標だから」
「それでも嬉しいってもんよ」
「そうだな。おい!酒だ。納屋の奥に持って来て置いたヤツが飲み頃だろ今日は飲むぞ~」
「「うぉ~~」」
「まだ寝床の準備もしてないのに酒かよ!?」
「この時期なら外で寝ても問題ないじゃろ。完成祝いじゃわ」

 大人はうれしい事がありました悲しい事がありました、何かあればちょっと一杯って名句をどこかで聞いたけど、本当にそれだなとため息が出た。ちなみに日の感じから言ってまだ15時くらい。一杯やるには早いよな~
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