異世界生活物語

花屋の息子

文字の大きさ
上 下
25 / 121

25エリザさんと魔法の時間

しおりを挟む
「それじゃ~、エドワードと二人で話をして来るわ~」

 そう言うと曾祖母が肩に手を置いた。その瞬間俺の目に映ったのは見知らぬ部屋だった。何とも言えない殺風景な部屋で、家具の類も置かれていない土造りの空き部屋といった印象の部屋に、俺は曾祖母と二人並んで立っていた。

「え、あ、え、あの、ここは?」
「魔法修練用に作った部屋よ~、転移魔法に興味があったみたいだから~連れてきてあげたの~」

 聞きたいところはそこじゃない。何でお茶の途中にこんな所に連れて来られたのかを教えて欲しいんだ。
 俺の手にはジュ-スが握られたままになっている。良くこの状況で落とさなかったと思うが、普通落とすよ!。いきなり転移させられたら。

「さあ。あなたの魔法を私に見せて~」

 ああ~そう言う事ですか。魔法を見るためにこんな所に連れてきたと。それなら言ってから連れて来いよ。って言ったら怒られるんだろうな~。

「何を使ったら良いんですか?」
「そうねぇ~、光が一番解りやすいから~、どれだけ長く使えるかやってみせてくれるかしら~」

 長くか。ここで見込み無しだと転移とか教えてくれないんだろうな~、もうばれてもLEDライトで俺スゲ~って処見せたら教えてくんないかな~。

「長くですね」
「そうよぉ~、部屋の明かりが消えたら始めなさい」

 曾祖母がゆっくりと腕を上げると部屋の明かりが消えていった。

「ではやります『光よ』」

 所詮はイメージ力の問題で詠唱などは補助でしかない訳で、やる事はどれだけの効率で魔法を使えるかの一点だけなのだから、今回のイメージは昔使っていたLED白色電球くらいか。
 暗い部屋が一気に明るくなる。やはり無駄なエネルギーを使わない分だけ少ない魔力をで発動可能だ。地球では少し暗いかと思う明かりでも、ロウソクより暗い灯明に馴れたこの世界では、かなり明るい物だと今更ながらに思う。
 曾祖母は何も言わず表情も変えない。もう少し驚いてくれるかと思ったが少し拍子抜けだ。まあ試算では10分はこっちも涼しい顔で出来るのだ、驚くのはそれからにしてもらおう。

「もう良いわよぉ~」

 12~3分たったあたりで曾祖母に声をかけられた。まだ余裕があったので不完全燃焼な感はあるが、まあ実力は解ってもらえただろう。

「まだやれますけど?」
「面白い魔法を使うわね~、明るさは良いけど~、あれだけ長く使ったら普通倒れるわよ~」

 そこまでは考えてなかった。母ですら1分でギブ、白熱電球なら2分まではやったが、LEDの効率は太陽光や白熱電球の比ではないのだ。やりすぎた。

「明るくする時にあったかい必要って無いなって思ったんで、明かりだけって思ったら出来るようになったんですよね~」

 お得意のすっとぼけである。工学関係は素人だが、LEDの明るさだけをイメージすれば良いなら俺にも出来るのだ。
 もしかすると基礎工学の部分がハッキリしていれば、もっと効率は上げられるのだろうけど、専門外な部分はどうしようもないのだ。

「エドワードちゃんあなたね~、結構とんでもない事言ってるけど~、熱を抜くってそんなに簡単な事じゃないのよ~」

 確かにとんでもない。ガスコンロでも焚き火でもいいのだが、火をつけて触ったら火傷する。ここまでは当然の結果だ。俺が言ったのはその火の中に手を入れられるようにしましたと言ったのだから、エリザさんに驚かれるのも無理は無い。

「出来ちゃったんですよ。あはははは」

 苦しい言い訳にしか聞こえないがLEDの説明など出来ないし、したとところで地球の事を話さなきゃいけなくなる。ここは笑っとくしかないのだ。

「まあ良いわ~、後は何か使えるのかしら~?」
「光以外は使えません。危ないので練習も出来ませんから。一つ聞いても良いですか?」
「何を聞きたいの~?」
「魔力の増やし方について教えて欲しいんです」

 魔力さえ増やせれば物理法則から抜け出た魔法も使うことが出来る。体力的問題も、身体強化のスタミナ増強なんて魔力ごり押し魔法で処理できるだろうし、魔法の大元である魔力が無ければ、やりたい事があってもスタート地点に立てないのだ。

「あら~?そんな事簡単よ~魔風穴から出る魔素を体を当てれば魔力の器が成長するわ~」

 魔風穴って何? ここに来てさらに聞いた事の無い単語が飛び出してきた。

「そうねぇ~ここから一番近い所だと北西にある山の麓だけど~毎回そこまで来なくても~東の草原の中に小さな魔風穴ならあるから行って見ると良いわ~、後で麓の魔風穴には連れていってあげるわね~」

 ウチから遠くない場所にもあるのは良いけど、その魔風穴って何なのさ。

「魔風穴って何ですか?」
「魔素を噴出している穴の事よ~、どこにでも魔素はあるの~、でもそれは多い訳じゃないから~、器は少しづつしか成長しないわ~。でも沢山の魔素を吸収すれば一気に大きくする事ができるの~、もちろんやりすぎはダメよ~、何もしなければ1魔風穴なら20くらいの感覚でやるのよ~」
「50とかやったりすると?」
「毎日でなければ良いのだけど~、やりすぎると冷や汗と吐き気が凄いわよ~、一度くらいならやってみると良いわ~、経験よ~」

 何か最後おっかない事言われた気がするが、魔力不足はこれで解決できそうだ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。

出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。 次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。 労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...