7 / 121
07夏の暑さ、灰の煙さ
しおりを挟む
初夏と言っても日中の日差しは完全に真夏と変わらない。はっきり言ってめちゃくちゃ暑い。そんな中を父と祖父は昨日収穫が終わった畑を鋤で起こす作業をしている。
牛馬に引かせるでも無く、多分青銅製だろう金属が先端に付いた土木スコップの原始タイプのような物で、畑の土をせっせと天地返ししている様を見ると初期型農業の苛酷さを感じてしまう。
前世では田舎に住んでいたので田畑付きの家だった。素人ながらに家庭菜園と米は作った経験があるが、その時御世話になったのが備中鍬と三角ホーと言う道具だ。
この二つがあれば鋤や鍬などもう要らない。備中鍬で起こして砕いたら三角ホーで畝を立てて立派な畑が出来る。鍬の方が効率は良いのだろうが素人が使うには「腰が入ってない」と言われるだろう。
父も祖父も農業経験は豊富だが、鋤で慣れているのだ鍬とでは使い勝手が違う、素人の俺が使えた道具で慣らしてからの方が効率が上がるだろう。
家畜も居ないのだから、犂も使えない魔物とかテイム出来ないかな。遊び開発してないで、この辺りの開発を急がないと祖父の寿命が縮まるわ。
俺はと言うと、父たちが起こす先にカマドの灰を散布している。
灰はカイバクを播く時に散布する為に半年間溜に貯めている。所詮灰なので軽いのだが風下に向けて散布しても時折の逆風で自分にも掛かる。これがまた鼻や口に入って何とも言えない味と香りが広がる訳です。
日差しの強さと四歳児の体力で、体ににじむ汗と灰が合わさって不快な事この上ない作業をこなしながら、同じ作業をもくもくと行っている姉や、そこに重労働を加算した父たちを前に文句も言えず、重機や農機具に助けられていた現代農業しか知らない俺からすると本当に昔の人には頭が下がる思いだ。
この灰を撒く作業だが、この辺りの川の水は弱酸性の水のようで、そのまま飲む分には普通なのだが、コップなどに溜めてしばらくしてから飲むと、薄い味だがすっぱい水に変わってしまう。
そんな水を畑に引き入れているのだから、灰などで中和させてあげないと酸性土壌に傾いて作物が育ち辛い土に変わってしまう。それを防止する為に撒いているのだ。
最初は畑に灰を捨てていただけなんだろうが、そこが生育が良いと気付いた人は大したもんだな。
「お~いリース、エド、休憩するぞ~」
「「は~い」」どっかり腰を下ろしている祖父の元に集まって休憩だ、お茶やお菓子がある訳ではない。小型の桶に水が張ってある、これで咽を潤すだけだ。
井戸の水は真水なので汲み置きしても味が変わる事無く美味しく飲める。肉体労働をした後と言う事も合わさってただの水が大変美味しく感じる。年寄り臭く言うなら「甘露甘露」と言いたいところだか、俺がそんな事を言うと全員の頭に???と浮かびそうなのでやめて置こう。
灰は撒いたが肥料は撒かないのか、と言われそうだがここでは撒かない。理由は解らないがどの作物も追肥の形で生育中期にしか肥料を与えないのだ。この辺りも地球での農業とはやり方が違うなと感じた。
「エド疲れたか?」
考え事顔をしていたのが父から見ると疲れ顔に映ったのか、心配されてしまった。
「ううん、大丈夫だよ、何で最初に肥料撒かないのかな?って思ってたの」
ここは疑問解消させてもらおう。
「小さいのに変な事に疑問を持つ子だな~」
父はそう言ったが、祖父が説明してくれた。
「エド、よく覚えておくんだぞ、最初に肥料を入れてしまうと草が大きく育って、麦も野菜も育たんのだ、だから芽が出て少し育った頃に草を取って肥料を撒く、そうすると草は無いから横取りされんと作物が良く育つんだ」
たしかにこの辺りの草原は、ヨシ原かよと言いたくなるほど雑草の背丈が旺盛で、子供くらいなら中に入ってしまうと見えなくなってしまう。草原なんかは雨季の初めに雑草の芽が出たらあっという間に大きくなっていってしまう。地球時代ですら雑草の生長に悩まされたが、異世界の雑草は格が違うとかでは済まされないレベルで、青葉マークとF1レーサーくらいは差があるだろう。そんなのと生存競争させてしまったら、作物は普通の生育しかしないのだから負けてしまうのか。うん俺の観察が足りなかった。
「さあエドも良いか、そろそろ始めよう」
父に促されて作業再会だ。話していなかったがウチの畑は全部で三枚ある。一枚の面積は30アール程度で統一され、この土地は先祖代々の土地ではなく荒地を祖父が開墾したものだそうだ。
この町に限った事なのかは解らないが、荒地の開墾は結構自由に出来るみたいで跡継ぎ以外がある程度大きくなるまで生き残っていた場合に、祖父、父、兄弟の協力を得ながら開墾を進め結婚と同時に開墾地に分家に出るのが一般的みたいだ。
ウチは叔父と呼ばれる人はみな小さい頃に病気で死んでしまった為に分家は存在しない。ちなみに曾じいちゃん家はあって曾じいちゃんも53歳でいまだ健在だ。今は父の従兄が家長をしている。
他の二枚の畑は来週と再来週に刈り入れ予定になっている。なのでこの畑は後五日で起こして種蒔きまで済ませ次の畑に移る。うん忙しい。
牛馬に引かせるでも無く、多分青銅製だろう金属が先端に付いた土木スコップの原始タイプのような物で、畑の土をせっせと天地返ししている様を見ると初期型農業の苛酷さを感じてしまう。
前世では田舎に住んでいたので田畑付きの家だった。素人ながらに家庭菜園と米は作った経験があるが、その時御世話になったのが備中鍬と三角ホーと言う道具だ。
この二つがあれば鋤や鍬などもう要らない。備中鍬で起こして砕いたら三角ホーで畝を立てて立派な畑が出来る。鍬の方が効率は良いのだろうが素人が使うには「腰が入ってない」と言われるだろう。
父も祖父も農業経験は豊富だが、鋤で慣れているのだ鍬とでは使い勝手が違う、素人の俺が使えた道具で慣らしてからの方が効率が上がるだろう。
家畜も居ないのだから、犂も使えない魔物とかテイム出来ないかな。遊び開発してないで、この辺りの開発を急がないと祖父の寿命が縮まるわ。
俺はと言うと、父たちが起こす先にカマドの灰を散布している。
灰はカイバクを播く時に散布する為に半年間溜に貯めている。所詮灰なので軽いのだが風下に向けて散布しても時折の逆風で自分にも掛かる。これがまた鼻や口に入って何とも言えない味と香りが広がる訳です。
日差しの強さと四歳児の体力で、体ににじむ汗と灰が合わさって不快な事この上ない作業をこなしながら、同じ作業をもくもくと行っている姉や、そこに重労働を加算した父たちを前に文句も言えず、重機や農機具に助けられていた現代農業しか知らない俺からすると本当に昔の人には頭が下がる思いだ。
この灰を撒く作業だが、この辺りの川の水は弱酸性の水のようで、そのまま飲む分には普通なのだが、コップなどに溜めてしばらくしてから飲むと、薄い味だがすっぱい水に変わってしまう。
そんな水を畑に引き入れているのだから、灰などで中和させてあげないと酸性土壌に傾いて作物が育ち辛い土に変わってしまう。それを防止する為に撒いているのだ。
最初は畑に灰を捨てていただけなんだろうが、そこが生育が良いと気付いた人は大したもんだな。
「お~いリース、エド、休憩するぞ~」
「「は~い」」どっかり腰を下ろしている祖父の元に集まって休憩だ、お茶やお菓子がある訳ではない。小型の桶に水が張ってある、これで咽を潤すだけだ。
井戸の水は真水なので汲み置きしても味が変わる事無く美味しく飲める。肉体労働をした後と言う事も合わさってただの水が大変美味しく感じる。年寄り臭く言うなら「甘露甘露」と言いたいところだか、俺がそんな事を言うと全員の頭に???と浮かびそうなのでやめて置こう。
灰は撒いたが肥料は撒かないのか、と言われそうだがここでは撒かない。理由は解らないがどの作物も追肥の形で生育中期にしか肥料を与えないのだ。この辺りも地球での農業とはやり方が違うなと感じた。
「エド疲れたか?」
考え事顔をしていたのが父から見ると疲れ顔に映ったのか、心配されてしまった。
「ううん、大丈夫だよ、何で最初に肥料撒かないのかな?って思ってたの」
ここは疑問解消させてもらおう。
「小さいのに変な事に疑問を持つ子だな~」
父はそう言ったが、祖父が説明してくれた。
「エド、よく覚えておくんだぞ、最初に肥料を入れてしまうと草が大きく育って、麦も野菜も育たんのだ、だから芽が出て少し育った頃に草を取って肥料を撒く、そうすると草は無いから横取りされんと作物が良く育つんだ」
たしかにこの辺りの草原は、ヨシ原かよと言いたくなるほど雑草の背丈が旺盛で、子供くらいなら中に入ってしまうと見えなくなってしまう。草原なんかは雨季の初めに雑草の芽が出たらあっという間に大きくなっていってしまう。地球時代ですら雑草の生長に悩まされたが、異世界の雑草は格が違うとかでは済まされないレベルで、青葉マークとF1レーサーくらいは差があるだろう。そんなのと生存競争させてしまったら、作物は普通の生育しかしないのだから負けてしまうのか。うん俺の観察が足りなかった。
「さあエドも良いか、そろそろ始めよう」
父に促されて作業再会だ。話していなかったがウチの畑は全部で三枚ある。一枚の面積は30アール程度で統一され、この土地は先祖代々の土地ではなく荒地を祖父が開墾したものだそうだ。
この町に限った事なのかは解らないが、荒地の開墾は結構自由に出来るみたいで跡継ぎ以外がある程度大きくなるまで生き残っていた場合に、祖父、父、兄弟の協力を得ながら開墾を進め結婚と同時に開墾地に分家に出るのが一般的みたいだ。
ウチは叔父と呼ばれる人はみな小さい頃に病気で死んでしまった為に分家は存在しない。ちなみに曾じいちゃん家はあって曾じいちゃんも53歳でいまだ健在だ。今は父の従兄が家長をしている。
他の二枚の畑は来週と再来週に刈り入れ予定になっている。なのでこの畑は後五日で起こして種蒔きまで済ませ次の畑に移る。うん忙しい。
2
お気に入りに追加
1,419
あなたにおすすめの小説
異世界物語 ~転生チート王子と愉快なスローライフ?~
星鹿カナン
ファンタジー
目が覚めるとそこは、ファンタジーのような異世界で、僕はよくあるように、赤ちゃんだった。前世の記憶は、朧気であるものの神様との話は、よく覚えていた・・・・・・
転生王子の異世界チートスローライフ?
スローライフ要素は3章~4章まで殆ど無いかもしれません。
人名のスペルは、英検4級すら受からない作者が、それっぽい音になりそうな綴りを書いているだけなので、鵜呑みにして、参考にする様なことはしないでください。特に深い意味がある訳でもありません。
地図等、自作していますが、絵はかなり苦手なので、大まかなイメージを掴むための参考程度にしてください。
その他、物語の解説などには、地球上の仕組みの中に、実在するものと実在しないものが、混ざっています。これらは、異世界感を演出するためのものなので、ご注意ください。
R指定は特に出していませんが、怪しい部分が多いので、気になる方は、自主規制をお願いします。
現在最新話まで、本編のための前日譚のような外伝ストーリーです。
本編の時間軸に辿り着くまでの長い前日譚もお付き合いいただけると幸いです。
最終更新日:4月15日
更新話:3-027
次回更新予定日: 4月20日
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
ファンタジー
☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞しました!☆
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様にて先行公開しております。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界ビール園づくりを駄女神と!
kaede7
ファンタジー
ビール醸造マイスターの称号を得、帰国中のシズクは、不可解な飛行機事故で命を落とす。目覚めるとそこは天界。事故の責任を深謝する女神の姿があった。
ところが、シズクの記憶を読むと女神は豹変。シズクは拘束され、女神が治める酒の国へと強制転移させられてしまう。
強引な女神に呆れつつも、大好きな「お酒」を冠する異世界に胸をときめかせるシズク。しかし、彼の国の酒造文化は、女神の愚行によって、遥か昔に滅亡していた。
素材も、設備も何も無い。マイナスからのスタート。
それでもシズクは夢を追い、異世界ビールの復刻を決意する――
※カクヨムにて、SSを公開中です。
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる