131 / 214
結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
3日目⑤
しおりを挟む
「なんか言えよ!」
苛立ったナダルは、近くの椅子を蹴り、私へ一歩近づくと
「なぜ、あいつに城へ行けと言って、逃がしたんだ!それは、あいつを殺さなかったことより重大なことだぜ。」
ナダルの目は、私にキチンとして答えを求めている。
なぜ、城へ行けと言ったのか…その答え…。
それはひとつ。
守りたい。
私の大切な人達を守りたい。
それだけ…。そう、それだけしかない。
その為に私は動いている。
だから、答えは…
「ただ…守りたかっただけ…。」
私の口から出た言葉に、ナダルは訝しげに眉を顰め
「なにを言ってんだ?!」
だからここで私が疑われることで、その為に大切な人達に、累が及ぶことだけは避けたい。
お父様、ミランダ姫、そしてルシアン殿下を……
守る。
さぁて、ここで一芝居やらなくてはならないみたい。拍手喝采で終わるかな。
私は口元に笑みを浮かべた。幸せで堪らないという微笑みを…そして…
「あの刺繍を見て思ったのは…下手だった。ということだけですか?」
「はぁ…?」
「ルチアーノ&ロザリー…。」
私の言葉に、ロイに変装しているルシアン殿下の手が、力が抜けたようにあの男から離れた。
せき込みながら倒れた男を、目の端で見ながら…私は言った。
「ロザリーは…ルシアン次期ローラン国王の婚約者。」
「ちょっと…待て!いいから待て!」
ナダルが頭の中で、いろいろ整理したいのだろうとわかっているが、考える時間を取らせたくない。
だから畳みかけるように
「城にいる愛しい人に、私の行方が分からなくなって、不安にならないようにしたかった。大丈夫だと伝えるために、あの男に頼んだんだ。あの刺繍が入った手袋を、彼女の侍女キャロルに渡して欲しいと…。」
「……それって…ルシアンの婚約者がおまえの女だと言うのか?」
私は…ただ微笑んだ。
これ以上は言えない想像してくれと言わんばかり、ただにっこりと…。
全部、本当の事。
キャロルさんが侍女だということも、私の行方が分からなくなって、城のみんなが不安にならないようにしたかった事も本当だし、そして…ルシアン殿下に大丈夫だと伝えたかったのも…本当の事。
本当の事だが…
だが…相手に勘違いさせるようにしていることは…やはり嘘をつくことと、変わらない。
だから…短い言葉で印象付けするだけのほうが効果的だ。あまり詳しく話すとボロがでる。
だから…ナダルの言葉には微笑むだけ。
ナダルは思い出そうとしているのだろう。
途切れ途切れに、言葉を絞り出しながら
「でも、どこで知り合うんだ?!相手はあの侯爵の娘だぞ!簡単に娘に、男を近づけさせることなどさせるはずはない。それに確か…双子で…体が弱くて、田舎で療養生活を送っていたと聞いたことがある。…田舎で療養生活…ぁ…その時におまえは、ルシアンの婚約者ロザリーと知り合ったのか?」
私は微笑んだ。
嘘とも本当とも…言わない。
「恋敵なのか…。確かにロザリーはウィンスレット侯爵の娘、そしてルシアンの婚約者という事は、簡単には話せないだろうが…だが…。」
まだ…納得できないナダルに、アストンが
「恋敵か…そりゃ、ルシアンを殺したいよな。そのチャンスがあるから、ここに来たのか?」
そしてお父様が
「…という事は、金を貰ってロザリーと駆け落ちでもするつもりだったのか?」
私以上に、話を盛ってくるふたりに、ミランダ姫がニヤ~と笑いながら、私に近づいてこられ…小さな声で
「…刺繍、どんだけ下手なの。」
「でも…それが幸いしました。」
ブスッとした私の返事に、ミランダ姫はクスッと笑い、私からアストンと侯爵に囲まれたナダルに、視線を移されたが…口元に浮かんでいた笑みが消えた。
私の上着の裾を握りしめると、厳しい顔で
「ねぇ…ロザリー。」
「…は、はい。」
「あの男は…誰?」
「えっ?…ナダルの事ですか?」
ミランダ姫は頷くと
「先々代のローラン王の子だと聞いていたけど…あの男は違うわ。」
「えっ?」
「纏う色が違う。ローラン王家の血を持つ者なら…あんな色は出ない。」
苛立ったナダルは、近くの椅子を蹴り、私へ一歩近づくと
「なぜ、あいつに城へ行けと言って、逃がしたんだ!それは、あいつを殺さなかったことより重大なことだぜ。」
ナダルの目は、私にキチンとして答えを求めている。
なぜ、城へ行けと言ったのか…その答え…。
それはひとつ。
守りたい。
私の大切な人達を守りたい。
それだけ…。そう、それだけしかない。
その為に私は動いている。
だから、答えは…
「ただ…守りたかっただけ…。」
私の口から出た言葉に、ナダルは訝しげに眉を顰め
「なにを言ってんだ?!」
だからここで私が疑われることで、その為に大切な人達に、累が及ぶことだけは避けたい。
お父様、ミランダ姫、そしてルシアン殿下を……
守る。
さぁて、ここで一芝居やらなくてはならないみたい。拍手喝采で終わるかな。
私は口元に笑みを浮かべた。幸せで堪らないという微笑みを…そして…
「あの刺繍を見て思ったのは…下手だった。ということだけですか?」
「はぁ…?」
「ルチアーノ&ロザリー…。」
私の言葉に、ロイに変装しているルシアン殿下の手が、力が抜けたようにあの男から離れた。
せき込みながら倒れた男を、目の端で見ながら…私は言った。
「ロザリーは…ルシアン次期ローラン国王の婚約者。」
「ちょっと…待て!いいから待て!」
ナダルが頭の中で、いろいろ整理したいのだろうとわかっているが、考える時間を取らせたくない。
だから畳みかけるように
「城にいる愛しい人に、私の行方が分からなくなって、不安にならないようにしたかった。大丈夫だと伝えるために、あの男に頼んだんだ。あの刺繍が入った手袋を、彼女の侍女キャロルに渡して欲しいと…。」
「……それって…ルシアンの婚約者がおまえの女だと言うのか?」
私は…ただ微笑んだ。
これ以上は言えない想像してくれと言わんばかり、ただにっこりと…。
全部、本当の事。
キャロルさんが侍女だということも、私の行方が分からなくなって、城のみんなが不安にならないようにしたかった事も本当だし、そして…ルシアン殿下に大丈夫だと伝えたかったのも…本当の事。
本当の事だが…
だが…相手に勘違いさせるようにしていることは…やはり嘘をつくことと、変わらない。
だから…短い言葉で印象付けするだけのほうが効果的だ。あまり詳しく話すとボロがでる。
だから…ナダルの言葉には微笑むだけ。
ナダルは思い出そうとしているのだろう。
途切れ途切れに、言葉を絞り出しながら
「でも、どこで知り合うんだ?!相手はあの侯爵の娘だぞ!簡単に娘に、男を近づけさせることなどさせるはずはない。それに確か…双子で…体が弱くて、田舎で療養生活を送っていたと聞いたことがある。…田舎で療養生活…ぁ…その時におまえは、ルシアンの婚約者ロザリーと知り合ったのか?」
私は微笑んだ。
嘘とも本当とも…言わない。
「恋敵なのか…。確かにロザリーはウィンスレット侯爵の娘、そしてルシアンの婚約者という事は、簡単には話せないだろうが…だが…。」
まだ…納得できないナダルに、アストンが
「恋敵か…そりゃ、ルシアンを殺したいよな。そのチャンスがあるから、ここに来たのか?」
そしてお父様が
「…という事は、金を貰ってロザリーと駆け落ちでもするつもりだったのか?」
私以上に、話を盛ってくるふたりに、ミランダ姫がニヤ~と笑いながら、私に近づいてこられ…小さな声で
「…刺繍、どんだけ下手なの。」
「でも…それが幸いしました。」
ブスッとした私の返事に、ミランダ姫はクスッと笑い、私からアストンと侯爵に囲まれたナダルに、視線を移されたが…口元に浮かんでいた笑みが消えた。
私の上着の裾を握りしめると、厳しい顔で
「ねぇ…ロザリー。」
「…は、はい。」
「あの男は…誰?」
「えっ?…ナダルの事ですか?」
ミランダ姫は頷くと
「先々代のローラン王の子だと聞いていたけど…あの男は違うわ。」
「えっ?」
「纏う色が違う。ローラン王家の血を持つ者なら…あんな色は出ない。」
0
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる