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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

1日目②

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大会にエントリーをしてくると言って、なかなか戻ってこないお父様にヤキモキしながら、手にもっていたチラシにまた目を通した。



******

最強剣士トーナメント戦!ローラン国に於いてついに開催!!

来たれ!勇気ある者よ!
己の力を試してみよ!

賞金 $10,000,000

月日   1月10日 

時間   午後13時 

場所   ローラン国記念競技場

応募条件  剣に自信がある者。

******

この大会は世界各地で、興行されるほどの人気のイベントだったが、なぜだかブラチフォード国では、ここ20数年開催されたことがなかった。

腕自慢が集まる大会だから、一度は出てみたいと思ったこともあったが、開催されるのは国外、そしてなにより賞金がかかる大会に、騎士が出る事は差し障りがあった。

でも今回は、ただの剣士。
出場はできる…そう思っただけで口元が緩んだ。

「あぁ、早くお父様が戻ってこられないかな。競技場の隣で参加を受け付けていると仰っていたけど…遅いな。」

お父様を待ちきれず歩き出した私の足だったが、数歩歩くと……止まった。




女性の悲鳴…どこだ?

・・!

そう思った瞬間、体は動いていた。



そこは粗末な建物だった。
となりが競技場だから、おそらくここは馬小屋。いや馬小屋だったのだろう。
扉の前に、1本の丸太をくり貫いて作られた飼い葉桶が、無造作に転がっている。

そして…その扉の向こうから男女の声が

「いや!離してよ!しつこいとお兄ちゃんに言うわよ!」

「なに、照れてんだよ。俺に気があるくせに。」

「バカじゃない?!なんであたしがあんたなんかに!」

「バカだと?」

「やめて…よ。こっちに来ないで…いや…やめて~!!」



コンコン・・

「すみません…。」

扉を開け、中を覗きにっこりと笑い
「最強剣士トーナメント戦の受付ってどこでしょうか?」

突然現れた私を茫然と見ていた男だったが、舌打ちをすると、ゆっくりと覆いかぶさっていた女性から離れ

「おいおい、ガキとはいえ、お前だって男の端くれ…この状況がわからないのか?」

「嫌がる女性を押し倒している状況のことですか?」

笑顔でそう答えながら、 周りを見渡し、現状を把握。
(10代の女性ひとり、20代前半、小太りの男性ひとり、女性は無事。武器はサーベル。)

男は舌打ちをすると、放りなげていたサーベルを手に取り
「早く行け!」

私を追い立てる男の声に、女性の震える声が小さく「ぁ……」と聞こえたが、声が出てこないようで、顔をくしゃくしゃにして、私を見ると大きな目から涙を零した。

この男、一発では許せない!

「腹がダブついた男と、女性に無理強いする男は…モテませんよ。」

私の言葉に男は顔を赤くし
「いい加減にしろよ。ガキ!!殺すぞ!」

「最強剣士トーナメント戦に出場するので、殺されるつもりはありません。」

と、言い終わらないうちに男の手を捻り、サーベルを男の手から落とすと、頭を掴み、ダブついている腹を蹴り上げ、手を首に回し大きな弧を描いて投げ飛ばした。



転げまわる男を一瞥して、女性へと視線を向け
「大丈夫?」

と言いながら近寄って行くと、女性は茫然とした顔で、
「…強い。フレッドもお兄ちゃんの次ぐらい強かったのに…すごい。」

そう言うと、満面の笑顔を浮かべると、私の腕の中に飛び込んできて

「見つけた!理想の恋人を見つけた!」



えっ?恋人?…誰が誰の?



「助けてくれてありがとう。私、ジャスミン。あなたは?」

早口で喋りだした女性のペースについて行けず、言葉が出てこない私の代わりに、誰かの声が聞こえた。

「…ルチアーノ…と呼ぶのか?」

「えっ?」

その低い声に振り返ると、大柄の男が扉に凭れ、私を見ている。

「ジャスミン、この坊主はやめとけ。ロザリーという女がいる。」

男はゆっくりと近づくと、ジャスミンという名の女性を私から引き離し

「妹を助けてくれてありがとう。だが…見かけによらず、おまえ強いな。」
そう言って、ニヤリと笑うと、小指を上げ

「こっちも見かけによらず…だな。持ち物に刺繍をさせる女がいるとは驚きだ。」

そう言って、私に白い手袋を握らせ
「落ちてたぜ。」



…ぁ……



「しかし、ロザリーという女は不器用だな。ミミズのような刺繍だったから、ルチアーノと読むのにずいぶん頭をつかったぞ。」


ミミズ…
第三者から見たら…ミミズ。


やっぱり…やっぱり…ルシアン殿下にはあげられない~!!!






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