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守りたいもの。
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人を殺める覚悟など、簡単にできるものではない。きっと、その場にならないと決心がつかないだろう。いや…そうなったとしても…わからない。
でも守りたい。それは、命をかけてでもやりたい。
だから私は…ルシアン王子とミランダ姫の前に跪き
「私は殿下の剣でもありますが…盾であることも、それは騎士の務め、そのようなご心配は御無用でございます。」
赤い瞳は一瞬眼を細められ
「頑固だな…主君が命じてもそう言い張るか。」
「主君が命じられることは、最優先ではごさいますが、それは…時と場合によっては…。」
「出来ぬと言うのか。」
「何よりも主君の御命が、いちばんだと教えられました。それは主君の命じられることよりも…でございます。」
「シリル…!」
私を呼ぶ、ルシアン王子の硬い声に、涙声が被ってきた。
「私が!私が…ふたりを守る。恐いものから守るから!」
「ミランダ!」
「姫!」
「だから、ふたりとも死んじゃうようなことを言わないで…。」
「…そうだな。まだこれからなのに…。不安にさせた。」
ルシアン王子はそう言われ、ミランダ姫を抱き上げ
「ミランダ、すまない。」
ミランダ姫は、何度も頷かれ、ルシアン王子の首に手を回すと
「ひとりぼっちにしないで…」
ミランダ姫のその力は、今この国のためには、必要なものかもしれないが…その為にミランダ姫が失ったものは大きい。幼い姫の泣き声に、私はただ黙って、その場に跪いていた。
・
・
・
ミランダ姫の泣き声が、静かな寝息になったのは…もう日が傾き、日差しが部屋の奥まで入り込むようになった頃だった。
「シリル。」
「はい、殿下。」
「ミランダは、人の心根を色として見ている。
だから…心がある以上、必ず見えるものだ。
だが、王大后と王妃にあるはずの……その色が見えないらしい。」
「それは、どういうことなのですか?」
「なにものかに、操られているのか…あるいは…」
そう言われると、眠っているミランダ姫をしっかりと抱きしめると
「もうすでに…人であらざるものになられたかも知れない。」
「……人であらざるもの?!」
「もしそうであれば…シリル。ミランダを頼む。」
「殿下…。」
「これより、お前の主君はミランダだ。」
「えっ?」
ルシアン王子は、ベットにミランダ姫を横にすると
「お前が守るべきはミランダということだ。」
「殿下!」
「…頼む。ミランダがあれほど慕っている者を俺は見たことがない。だから、お前に頼みたいのだ。」
「嫌です!私はおふたりを守ります!ルシアン王子もミランダ姫も…おふたりを必ず!…」
ルシアン王子は、私の肩に両手を置くと
「俺と、ミランダのふたりをどうやって守る。」
「そ、それは…」
「…自分の命をかけてか…」
ガタン!!
ルシアン王子が私の肩に置いた手に力を入れられ、私は壁に押し付けられた。
「…うっ…」
「お前が守るべきは…ミランダだ。頼む…頷いてくれ。」
「で、でも…殿下にもしもの事があれば…」
「俺の腕もさっき見ただろう。そう簡単にはやられはしない。だがミランダはようやく4歳になる子供だ。ミランダを守る騎士は、ミランダが気に入り、そしてミランダの力を知る者じゃないと勤まらない。それはお前しかいない。ましてやその腕は一流だ。」
眼の前のルシアン王子の顔は、苦しそうだった。
私は下を向いた。もう見れなかった。
この方は…人を殺める覚悟も、そして死ぬ覚悟も出来ている。
そんな覚悟を決めた方に、私は…もう頷くしかない。
私の思っている事を見通すように、
「シリル。俺はそう簡単には死ぬつもりはない。いや…まだ死ぬわけには行かない。シリル…力を貸してくれ。」
「……はい。」
私の言葉に、笑みを浮かべ
「お前を信じている。」
それは綺麗な微笑みだった。
私の両肩に置かれた手は大きくて、そして温かった。
やっぱり、この方を守りたい。
私は…おふたりをやっぱり守りたい。
でも守りたい。それは、命をかけてでもやりたい。
だから私は…ルシアン王子とミランダ姫の前に跪き
「私は殿下の剣でもありますが…盾であることも、それは騎士の務め、そのようなご心配は御無用でございます。」
赤い瞳は一瞬眼を細められ
「頑固だな…主君が命じてもそう言い張るか。」
「主君が命じられることは、最優先ではごさいますが、それは…時と場合によっては…。」
「出来ぬと言うのか。」
「何よりも主君の御命が、いちばんだと教えられました。それは主君の命じられることよりも…でございます。」
「シリル…!」
私を呼ぶ、ルシアン王子の硬い声に、涙声が被ってきた。
「私が!私が…ふたりを守る。恐いものから守るから!」
「ミランダ!」
「姫!」
「だから、ふたりとも死んじゃうようなことを言わないで…。」
「…そうだな。まだこれからなのに…。不安にさせた。」
ルシアン王子はそう言われ、ミランダ姫を抱き上げ
「ミランダ、すまない。」
ミランダ姫は、何度も頷かれ、ルシアン王子の首に手を回すと
「ひとりぼっちにしないで…」
ミランダ姫のその力は、今この国のためには、必要なものかもしれないが…その為にミランダ姫が失ったものは大きい。幼い姫の泣き声に、私はただ黙って、その場に跪いていた。
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「シリル。」
「はい、殿下。」
「ミランダは、人の心根を色として見ている。
だから…心がある以上、必ず見えるものだ。
だが、王大后と王妃にあるはずの……その色が見えないらしい。」
「それは、どういうことなのですか?」
「なにものかに、操られているのか…あるいは…」
そう言われると、眠っているミランダ姫をしっかりと抱きしめると
「もうすでに…人であらざるものになられたかも知れない。」
「……人であらざるもの?!」
「もしそうであれば…シリル。ミランダを頼む。」
「殿下…。」
「これより、お前の主君はミランダだ。」
「えっ?」
ルシアン王子は、ベットにミランダ姫を横にすると
「お前が守るべきはミランダということだ。」
「殿下!」
「…頼む。ミランダがあれほど慕っている者を俺は見たことがない。だから、お前に頼みたいのだ。」
「嫌です!私はおふたりを守ります!ルシアン王子もミランダ姫も…おふたりを必ず!…」
ルシアン王子は、私の肩に両手を置くと
「俺と、ミランダのふたりをどうやって守る。」
「そ、それは…」
「…自分の命をかけてか…」
ガタン!!
ルシアン王子が私の肩に置いた手に力を入れられ、私は壁に押し付けられた。
「…うっ…」
「お前が守るべきは…ミランダだ。頼む…頷いてくれ。」
「で、でも…殿下にもしもの事があれば…」
「俺の腕もさっき見ただろう。そう簡単にはやられはしない。だがミランダはようやく4歳になる子供だ。ミランダを守る騎士は、ミランダが気に入り、そしてミランダの力を知る者じゃないと勤まらない。それはお前しかいない。ましてやその腕は一流だ。」
眼の前のルシアン王子の顔は、苦しそうだった。
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そんな覚悟を決めた方に、私は…もう頷くしかない。
私の思っている事を見通すように、
「シリル。俺はそう簡単には死ぬつもりはない。いや…まだ死ぬわけには行かない。シリル…力を貸してくれ。」
「……はい。」
私の言葉に、笑みを浮かべ
「お前を信じている。」
それは綺麗な微笑みだった。
私の両肩に置かれた手は大きくて、そして温かった。
やっぱり、この方を守りたい。
私は…おふたりをやっぱり守りたい。
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