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信じてお使えするのみ。
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コンコン・・
「入れ。」
扉を開けると、白いシャツを羽織られたルシアン王子の広い背中があった。
窓の外を見てあるようだったが、私やミランダ姫が部屋に入っても、広い背中を私達に見せたまま、振り向いては下さらず、ポツリと…独り言のように口を開かれた。
「ミランダ…俺は何色に見える?」
ルシアン王子の突然の問いに、私は頭を傾げると、隣に立つミランダ姫がゴックンと飲み込む音を立てられ
「…綺麗な湖みたいな透き通る青。」
……綺麗な湖みたいな透き通る青?
「ウィンスレット侯爵は?」
「ピンクや黄色に変わるけど、柔らかい色。」
なに?いったい何をおふたりは言っておいでなの?
「では…シリルはどうだ?」
わ、わたし?!私が何?
キョトンとした私と、ミランダ姫の視線が合ったが、すぐにミランダ姫は俯かれ、私の手をより強く握ると
「白…。シリルの色は雪みたいに真っ白なの。それからね。それから…シリルがそばにいると、他の人のくすんだ色が、だんだんと色が綺麗になって行くの。」
「あ、あの…」
「何を言っているのか、さっぱりだろう?」
「は、はい。」
ルシアン王子は振り返り、私を見ると
「ひとつ聞いて良いか?」
「はい。」
そう言われて、私を見ていらしたが…頭を軽く横に振り
「いや良い。ミランダがそれほど慕っているのだ。なにも聞く事はない。」
私とミランダ姫が繋いでいる手へと、視線を動かされ
「ミランダ、いいか?」
ミランダ姫は微かに頷かれたが、顔を上げられず、そんなミランダ姫に、ルシアン王子は
「信じているのなら、ちゃんとシリルを見ろ。お前が信じているのなら間違いない。」
「叔父様…。でも、気味が悪いって…お父様やお母様のように、思われたら…」
「他の人のくすんだ色さえも、浄化してしまうような、雪のように真っ白なんだろう。そんな色なら…きっとお前を受け入れてくれるはずだ。」
「……うん。」
それって…まさか…。
「…人に…色があるんですか?それが…姫は…見えるんですか?」
私の声に、ミランダ姫は顔を歪められたが、ルシアン王子は頷かれると
「詳しいことは、父上しかわからない。その父上も…あの容態だ。」
苦しそうに眉を寄せられたルシアン王子は、ミランダ姫の頭を撫で
「王家には、王となる者の子供に、時折、生まれるのそうだ。
人の考えが色となって見える者が…。だがどうして、王となる者の子だけなのかはわからないらしい。言い伝えだが、王となる者が、民を導く道を間違えないように、神が道を外れそうになった王や王太子に、真の道を示す為に使徒を遣わしたと言われている。その使徒と言われる者が、人の心を色として見える者…ミランダや父上のような力を持つ者だということらしい。
シリル…これを知ってどう思う。それでも、俺に…ミランダに仕える事が出来るか?」
なんて言ったらいいのか、まったくわからず、ただ…ルシアン王子を見ていた。
どれくらいたっただろうか…。
小さな声が…私の名を呼んでいた。
私の左手の中で…小さな手が震えていた。
あぁ…何をぼんやりしているの。
ミランダ姫が背負っている物は、とてつもなく、大きくて、苦しくて、辛いものだとわかっていたじゃない!その大きな物を私の力で支える事が出来るのなら…守って差し上げたいと思っていたのに…なぜぼんやりとしているの!
この幼い王女を…そして…ルシアン王子を守る!
にっこりしなくちゃ!そう…微笑むの!
「私は騎士です。主君である殿下と、ミランダ姫を信じてお使えするのみです。」
「シリル!」
ミランダ姫がそう叫ぶと、私に抱きつき大きな声で泣かれた。
その頭を撫でながら、視線をルシアン王子に移すと…
ルシアン王子は厳しい顔で
「…剣を抜くことになるかもしれん。」
やはり、ルシアン王子には見抜かれていた。私の迷いを…
「だがシリル…盾になることは断じて許さん。」
「殿下…。」
赤い瞳は、私の青い瞳に…有無を言わせなかった。
「入れ。」
扉を開けると、白いシャツを羽織られたルシアン王子の広い背中があった。
窓の外を見てあるようだったが、私やミランダ姫が部屋に入っても、広い背中を私達に見せたまま、振り向いては下さらず、ポツリと…独り言のように口を開かれた。
「ミランダ…俺は何色に見える?」
ルシアン王子の突然の問いに、私は頭を傾げると、隣に立つミランダ姫がゴックンと飲み込む音を立てられ
「…綺麗な湖みたいな透き通る青。」
……綺麗な湖みたいな透き通る青?
「ウィンスレット侯爵は?」
「ピンクや黄色に変わるけど、柔らかい色。」
なに?いったい何をおふたりは言っておいでなの?
「では…シリルはどうだ?」
わ、わたし?!私が何?
キョトンとした私と、ミランダ姫の視線が合ったが、すぐにミランダ姫は俯かれ、私の手をより強く握ると
「白…。シリルの色は雪みたいに真っ白なの。それからね。それから…シリルがそばにいると、他の人のくすんだ色が、だんだんと色が綺麗になって行くの。」
「あ、あの…」
「何を言っているのか、さっぱりだろう?」
「は、はい。」
ルシアン王子は振り返り、私を見ると
「ひとつ聞いて良いか?」
「はい。」
そう言われて、私を見ていらしたが…頭を軽く横に振り
「いや良い。ミランダがそれほど慕っているのだ。なにも聞く事はない。」
私とミランダ姫が繋いでいる手へと、視線を動かされ
「ミランダ、いいか?」
ミランダ姫は微かに頷かれたが、顔を上げられず、そんなミランダ姫に、ルシアン王子は
「信じているのなら、ちゃんとシリルを見ろ。お前が信じているのなら間違いない。」
「叔父様…。でも、気味が悪いって…お父様やお母様のように、思われたら…」
「他の人のくすんだ色さえも、浄化してしまうような、雪のように真っ白なんだろう。そんな色なら…きっとお前を受け入れてくれるはずだ。」
「……うん。」
それって…まさか…。
「…人に…色があるんですか?それが…姫は…見えるんですか?」
私の声に、ミランダ姫は顔を歪められたが、ルシアン王子は頷かれると
「詳しいことは、父上しかわからない。その父上も…あの容態だ。」
苦しそうに眉を寄せられたルシアン王子は、ミランダ姫の頭を撫で
「王家には、王となる者の子供に、時折、生まれるのそうだ。
人の考えが色となって見える者が…。だがどうして、王となる者の子だけなのかはわからないらしい。言い伝えだが、王となる者が、民を導く道を間違えないように、神が道を外れそうになった王や王太子に、真の道を示す為に使徒を遣わしたと言われている。その使徒と言われる者が、人の心を色として見える者…ミランダや父上のような力を持つ者だということらしい。
シリル…これを知ってどう思う。それでも、俺に…ミランダに仕える事が出来るか?」
なんて言ったらいいのか、まったくわからず、ただ…ルシアン王子を見ていた。
どれくらいたっただろうか…。
小さな声が…私の名を呼んでいた。
私の左手の中で…小さな手が震えていた。
あぁ…何をぼんやりしているの。
ミランダ姫が背負っている物は、とてつもなく、大きくて、苦しくて、辛いものだとわかっていたじゃない!その大きな物を私の力で支える事が出来るのなら…守って差し上げたいと思っていたのに…なぜぼんやりとしているの!
この幼い王女を…そして…ルシアン王子を守る!
にっこりしなくちゃ!そう…微笑むの!
「私は騎士です。主君である殿下と、ミランダ姫を信じてお使えするのみです。」
「シリル!」
ミランダ姫がそう叫ぶと、私に抱きつき大きな声で泣かれた。
その頭を撫でながら、視線をルシアン王子に移すと…
ルシアン王子は厳しい顔で
「…剣を抜くことになるかもしれん。」
やはり、ルシアン王子には見抜かれていた。私の迷いを…
「だがシリル…盾になることは断じて許さん。」
「殿下…。」
赤い瞳は、私の青い瞳に…有無を言わせなかった。
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