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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

7日目 ロザリー①

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「叔父様の人たらし~!そうやって、私の優秀な人材を奪おうとする!渡さないんだから!」

ミランダ姫の声にルシアン様が楽しそうに…本当に楽しそうに笑っておられる、その笑顔につられるように私の口元も笑みを作ろうとしたが、目が…ルシアン様の血が滲んだ手袋を見て、口元の笑みが消えた。


私が…

ルシアン様に剣を向けた。


『あのルシアン様をも、あそこまで追い込んだロザリー様の剣は素晴らしい!』
ヒューゴが言った言葉が、まだ私を縛る。


「ミランダが一番そばにいて欲しいロザリーを貰ったのだから、残念ながら他の人材は諦める。」
「そうよ!!まぁ…ロザリーは私の…お、お……なるんだから、それはそれでいいんだけど。」
「お?お…ってなんだ?なるって…何になるんだ?」
「わ、、わかるでしょう!私が何を言いたのか!」
「…いや?さっぱり。」
「…嘘。ほんとに?」

ミランダ様の呆れたような顔に、ルシアン様が笑われ、そして私を見られた。だが何か感じられたのだろうか、突然言われた。

「ロザリー?大丈夫か?」
「…はい。」

【はい】と言ったのに、でも…まだルシアン様の赤い瞳が私を見ている。


『聞くな!ヒューゴの言葉なんか聞くな!』
『あいつは剣ではなく言葉で、人を追い詰め、操るんだ。だから聞くな。今は俺の言葉だけを信じろ。』


信じたい。信じないとお側にいられない。

それにミランダ様は仰ったじゃない。
『暗示は本来、その人が望まないことはかからない。ましてやロザリーのような精神力が強い者には無理。だからヒューゴあなたは、複雑な暗示を掛けざる得なかった。それはロザリーに叔父様を前ローラン王だと思わせ、前ローラン王がブラチフォードに侵攻し、大切な人達を殺めたと信じ込ませた。だからロザリーは暗示にかかってしまった、どう?この推理は?

でも、こんな複雑な暗示をかけながら、また一週間後、一か月後、一年後に同じようにロザリーが叔父様を襲うように暗示をかけるなど到底無理。そして何より、ロザリーは自分であなたの暗示を解いた。そんな精神力のロザリーなら、もう暗示にはかからないわ。』…と。

私はもう…大丈夫だと。でも本当に私はもうルシアン様に剣を向けないだろうか?
…違う。それだけじゃない。暗示にかかっていたとはいえ、私はルシアン様に剣を向けた自分が許せない。


小さな手が私の頬に触れた。
「大丈夫よ。何の心配もいらない。」

「…ミランダ様」

「ヒューゴは新たな暗示をロザリーに掛けてはいないわ。」

「…はい。」

ミランダ姫はクスリと笑うと
「納得できないようね。ロザリー…あなたは人を殺める事を迷いながら剣を握っていた、そこでヒューゴは一つ仕掛けた、そしてあなたに叔父様を殺めさせるのには叔父様を…別の誰かにしなければならなかった。そこで二つ目を仕掛けた。そんな複雑な暗示をかける事ができたヒューゴは確かに凄腕だわ、でもね。その複雑な暗示をロザリーは自ら…解いたのよ。その時点がロザリーは勝ったの。もう暗示は効かない。」

そう言われても不安気な顔だったのだろう、ミランダ姫は
「もう一つ…」と言って、私の髪を撫で

「ヒューゴの色が変わっていたわ。ロザリーや叔父様ほどじゃないけれど…まぁ明るい色になっていたわ。だから三つ目を仕掛けてはいない。心に疚しい思いがあるのなら、色はあれほど変わらないから。それに私とマクドナルド医師がちゃんとロザリーを見るわ。第一人者がみるんだから、もう心配しないの。」

ミランダ姫の言葉に、体を縛る鎖が一つ外れた。
だが、まだ私を縛る鎖が残っている。
それはルシアン様に剣を向け、ケガをさせてしまった事実。

それは変わらない。

ミランダ姫の顔が曇り
「あとは…叔父様しかロザリーの心にある辛さを祓えないようね。」

「私…」

「いいのよ。でも、こうなることを予想していても、これしかなかった叔父様の気持ちもほんの少しでいいから、感じながら聞いてあげてね。」
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