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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目㊻
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微笑みながら、ミランダがロザリーからバウマンへと視線を移し、言葉を発する前だった。
バウマンが慌てて
「わ、私も!ヒューゴに暗示を掛けられていたんだ!」
バウマンの悲痛な叫びに応えることはなくミランダは、バウマンではなくロイに言った。
「ロイ。悪いけど私を抱き上げて、バウマン公爵のところに連れて行ってちょうだい。」
「…御意」
ロイに抱き上げれたミランダはバウマンと同じ目線になると、にっこり笑い思いっきり、バウマンの頬を叩いた。
ミランダが叩いたくらいでは、たいした痛みもなかったバウマンだったが、突然叩かれたことに茫然とミランダを見ながら
「…な、何を…」
「先に私に手をあげたのはバウマン…あなたよ。本来なら処刑するところだわ。でもここはローラン国だから、裁きはローラン王の叔父様にお任せするわ。だから、私はこれぐらいで許してあげる。でもこの始末をヒューゴひとりにかぶせ、終わらせるのは許さないわ。そして…」
ナダルへと目をやり、ヒューゴを見た。
「このふたりの話をキチンと聞いて、許しを請うのね。」
ミランダが何を言っているのかわからないバウマンは、ナダルとヒューゴを交互に見ると、またミランダへと視線をやった。だがミランダは何も言わず、バウマンをただ黙って見ている。
「やはり、色が似ているのか?」
そう言ったルシアンの言葉に、いち早く反応したのはヒューゴだった。
ヒューゴは、クスクスと笑うと
「噂通り、ミランダ姫は異能の持ち主か…。じゃぁ、なにを言っても、みんなお見通しってわけか…。つまりここでジ・エンドということだな。あははは…」
「えぇ、だから、あなたとナダルは異母兄弟だということもわかるの。」
「異母兄弟…って、まさか…ヒューゴは?!」
バウマンは真っ青な顔で、ヒューゴを見た。
ヒューゴは口元を歪め、仰々しく
「父上。」
「…う、嘘だ!なんでおまえが…おまえの母親はブラチフォード国の者だと言っておったではないか…私はブラチフォード国の女など知らん、知らんぞ!」
「まぁ、ゴミ同然に扱われた女だったから、覚えているはずはないか…」
真っ青な顔で頭を横に振るバウマンに、ヒューゴはそう吐き捨て、ロザリーを見た。
「ローラン王家の男はバウマンのような男ばかりだぜ。ましてやあんたが惚れているルシアンは、イロにしか興味がないローラン王を父親に持った女と、王妃と王太后の操り人形だったブラチフォード王の子。わかっているのか、その意味を!最低な人間らの血が、あの体に入っているという事だ!そんな男を信じられるのか?」
「なぜ、血に拘るんです?!どういう人間の間に生まれたかなんて関係ない!そんなクダラナイものに縛られるなんて愚かな事です!人を評価したいのなら、その人自身を見るべきです!」
「…あんたは自分の足で立ち、自分の心で動くことが出来るからだ!自分というものを持っているから言えるんだ!だが、この時代の多くの女は、家の中で男の為に食事を作り、男の為に縫物をして、家の主である男に縋って生きていくことしかできない。だから…バウマンのような穢れた血を引いたとんでもない男に引っかかっても、逃げ方さえ知らないから子供を連れて、地獄に落ちて行くんだ!!」
興奮気味に話すヒューゴの支離滅裂な言葉に、ロザリーは茫然とした。
「…何を言っているのですか?…一体何を…。」
だが、ヒューゴは答えず、ロザリーの答えを待っているかのように、じっとロザリーを見ている。ロザリーは戸惑いながら、ルシアンを見ると
「答えてやってくれ。ヒューゴはおまえが思う愛を知りたいと言っているようだ。」
ロザリーは頷くと
「確かにあなたが言っているような不幸な女性達もいるでしょう。でも多くの女性は違うと思います。
食事を作り、縫物をする女は、みんな男に縋って生きている…と言われる事は違うと思います。
家族が少しでも楽しく、幸せに暮らせるようにと、健康を考え食事を作り、着心地の良い服を作る。
それのどこが男に縋って生きているというのですか?夫や子供の体や心を守っているではないですか?
愛の形はたくさんある。そう私は思っています。
あなたから見ると、男性に縋っているとように見える女性にも、その女性の愛の形があり…。そして剣で愛する方を守る私の愛の形がある。そしてそれは、どれも間違いではないと…。」
「命を懸け剣で戦うのと、縫物をすることが同じ愛だと?…そのほうが…わからない。」
ヒューゴの言葉に、ロザリーはルシアンの血で染まった白い手袋を見て
「私はただ…剣でしかこの思いを伝える手段しか知らなかったからです。でも、これからはいろんな形で思いを伝えたい。剣を使うのは…危険が迫った時だけですから…。」
そう言ってほんの少し微笑んだロザリーをヒューゴはじっと見ていたが、フッと口元を緩めると
「やっぱり、あんたは違うよ。」
ヒューゴはそう言うと、近づいてきたウィンスレット侯爵に両手を差し出した。
「早く連れて行ってくれ、あのバウマンと同じ場所にいたら殺したくなるので…。」
そんなヒューゴをミランダは見つめ、ポツリと言った。
「色が変わった。」と。
バウマンが慌てて
「わ、私も!ヒューゴに暗示を掛けられていたんだ!」
バウマンの悲痛な叫びに応えることはなくミランダは、バウマンではなくロイに言った。
「ロイ。悪いけど私を抱き上げて、バウマン公爵のところに連れて行ってちょうだい。」
「…御意」
ロイに抱き上げれたミランダはバウマンと同じ目線になると、にっこり笑い思いっきり、バウマンの頬を叩いた。
ミランダが叩いたくらいでは、たいした痛みもなかったバウマンだったが、突然叩かれたことに茫然とミランダを見ながら
「…な、何を…」
「先に私に手をあげたのはバウマン…あなたよ。本来なら処刑するところだわ。でもここはローラン国だから、裁きはローラン王の叔父様にお任せするわ。だから、私はこれぐらいで許してあげる。でもこの始末をヒューゴひとりにかぶせ、終わらせるのは許さないわ。そして…」
ナダルへと目をやり、ヒューゴを見た。
「このふたりの話をキチンと聞いて、許しを請うのね。」
ミランダが何を言っているのかわからないバウマンは、ナダルとヒューゴを交互に見ると、またミランダへと視線をやった。だがミランダは何も言わず、バウマンをただ黙って見ている。
「やはり、色が似ているのか?」
そう言ったルシアンの言葉に、いち早く反応したのはヒューゴだった。
ヒューゴは、クスクスと笑うと
「噂通り、ミランダ姫は異能の持ち主か…。じゃぁ、なにを言っても、みんなお見通しってわけか…。つまりここでジ・エンドということだな。あははは…」
「えぇ、だから、あなたとナダルは異母兄弟だということもわかるの。」
「異母兄弟…って、まさか…ヒューゴは?!」
バウマンは真っ青な顔で、ヒューゴを見た。
ヒューゴは口元を歪め、仰々しく
「父上。」
「…う、嘘だ!なんでおまえが…おまえの母親はブラチフォード国の者だと言っておったではないか…私はブラチフォード国の女など知らん、知らんぞ!」
「まぁ、ゴミ同然に扱われた女だったから、覚えているはずはないか…」
真っ青な顔で頭を横に振るバウマンに、ヒューゴはそう吐き捨て、ロザリーを見た。
「ローラン王家の男はバウマンのような男ばかりだぜ。ましてやあんたが惚れているルシアンは、イロにしか興味がないローラン王を父親に持った女と、王妃と王太后の操り人形だったブラチフォード王の子。わかっているのか、その意味を!最低な人間らの血が、あの体に入っているという事だ!そんな男を信じられるのか?」
「なぜ、血に拘るんです?!どういう人間の間に生まれたかなんて関係ない!そんなクダラナイものに縛られるなんて愚かな事です!人を評価したいのなら、その人自身を見るべきです!」
「…あんたは自分の足で立ち、自分の心で動くことが出来るからだ!自分というものを持っているから言えるんだ!だが、この時代の多くの女は、家の中で男の為に食事を作り、男の為に縫物をして、家の主である男に縋って生きていくことしかできない。だから…バウマンのような穢れた血を引いたとんでもない男に引っかかっても、逃げ方さえ知らないから子供を連れて、地獄に落ちて行くんだ!!」
興奮気味に話すヒューゴの支離滅裂な言葉に、ロザリーは茫然とした。
「…何を言っているのですか?…一体何を…。」
だが、ヒューゴは答えず、ロザリーの答えを待っているかのように、じっとロザリーを見ている。ロザリーは戸惑いながら、ルシアンを見ると
「答えてやってくれ。ヒューゴはおまえが思う愛を知りたいと言っているようだ。」
ロザリーは頷くと
「確かにあなたが言っているような不幸な女性達もいるでしょう。でも多くの女性は違うと思います。
食事を作り、縫物をする女は、みんな男に縋って生きている…と言われる事は違うと思います。
家族が少しでも楽しく、幸せに暮らせるようにと、健康を考え食事を作り、着心地の良い服を作る。
それのどこが男に縋って生きているというのですか?夫や子供の体や心を守っているではないですか?
愛の形はたくさんある。そう私は思っています。
あなたから見ると、男性に縋っているとように見える女性にも、その女性の愛の形があり…。そして剣で愛する方を守る私の愛の形がある。そしてそれは、どれも間違いではないと…。」
「命を懸け剣で戦うのと、縫物をすることが同じ愛だと?…そのほうが…わからない。」
ヒューゴの言葉に、ロザリーはルシアンの血で染まった白い手袋を見て
「私はただ…剣でしかこの思いを伝える手段しか知らなかったからです。でも、これからはいろんな形で思いを伝えたい。剣を使うのは…危険が迫った時だけですから…。」
そう言ってほんの少し微笑んだロザリーをヒューゴはじっと見ていたが、フッと口元を緩めると
「やっぱり、あんたは違うよ。」
ヒューゴはそう言うと、近づいてきたウィンスレット侯爵に両手を差し出した。
「早く連れて行ってくれ、あのバウマンと同じ場所にいたら殺したくなるので…。」
そんなヒューゴをミランダは見つめ、ポツリと言った。
「色が変わった。」と。
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