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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目㉝
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「ねぇ、侯爵。一斉に人に情報を与えるとしたら、やはり視覚より聴覚からよね。」
ミランダはそう言って、ウィンスレット侯爵を見た。
「では、近衛兵を動かす鍵は…音ということですか?」
「目からの情報は場所を選ぶ。ましてや大人数なら、必ず見過ごす者が出てくる。でも音なら、離れた場所にいても確実に…。」
ウィンスレット侯爵はハッとして
「ナ、ナダルも音楽が…と言っておりました!」
ミランダはニンマリと笑い
「ナダルを身近に置けないから、音…音楽だったわけね。なるほどね。」
「ミランダ姫?」
「きっと、ロザリーが剣を抜く前に、近衛師団を動かすはず。」
ミランダはそう言って、祭壇の前に歩みを進めるルシアンとロザリーを見た。
「…祭壇の前に二人が立ったら、一旦音楽は止まるのよね。」
「はい、一旦音楽が止まり、賛美歌をみんなで歌い、誓いの言葉が始まるのですが…。」
「侯爵、賛美歌…だわ。暗示のスイッチは賛美歌!すぐに賛美歌をやめるように!」
「は、はい!」
走り出したウィンスレット侯爵の背中を見ながら、ミランダはポツリと
「…近衛師団が賛美歌なら…おそらくロザリーは…誓いの言葉がスイッチだと思う。」
両手を握りしめ
「ごめんなさい侯爵。あなたにロザリーと叔父様の戦いは見せたくない。剣を抜いたロザリーを見たら、どんなに私が叔父様に任せてと言っても…侯爵はきっと目に涙を溜め、ロザリーに剣を抜く。人を殺める事に躊躇しないロザリーには…侯爵は勝てない。」
ミランダはウィンスレット侯爵の背中に、頭を下げた。
「…信じて。叔父様を…そしてロザリーを。ロザリーならきっと暗示を破れる。だって…」
緑色の瞳を潤ませて、祭壇へと向かうロザリーに
「だって、あんなに叔父様を愛しているロザリーだもの。きっと叔父様を斬れない」
だがそれは、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。
*****
剣を抜くのは、愛する人々を守るため。
だから、目の前の敵に後れを取ることなどなかった。この思いがある限り、どんな恐怖にも勝てる自信があった。
でも…
私は縋るような目で、ルシアン殿下を見た。
記憶がないまま動いていた私は、この先なにをするのかわからない。
自分の中に敵がいる。
どんな恐怖にも勝てる自信があったのに怖い。自分を信じられない事が堪らなく怖い。
私が私で無くなったら…
溢れそうになる涙を堪え俯くと、歩く度に揺れるウエディングドレスの裾が目に入った。
純白のウェディングドレス…。
白という色には「清楚」「純潔」「純粋」という意味があると同時に、穢れ、悪を払うという意味も込められていると聞いた。
もし…そうなら…私の中の邪悪なものを祓ってほしい。
「ロザリー…。」
ハッとして、顔を上げると、もうすでに祭壇の前にいた。
「すみません…。」
ルシアン殿下は苦笑され、私の眉間に手を伸ばされた。
「バウマン公爵を嵌めるための結婚式だが…一応、俺とおまえの結婚式だ。そんな厳しい顔をするな。笑ってくれ。」
唇が口角を上げようとするが、でも笑えない。
ルシアン殿下の手が、私の眉間から強張る口元へと触れられ、微笑まれた。
「愛している。何があっても、愛している。だから、心配するな。」
愛している…その言葉がすべてを語っていると思った。
それはきっと、愛しているから、もし私が操られてルシアン殿下に剣を抜くことことがあっても、私を斬るつもりはないということ。それは防戦のみをするということだ。
でも、もし人を殺めることに躊躇しない人間に、私がなっていたら…。
大きく息を吐いた。
もう、考える時間も、迷う時間もない。
なら、選ぶ道はひとつ。
「ルシアン殿下、私を愛してくださるのなら…」
「ロザリー?」
「人形のように操られ、ルシアン殿下に剣を抜いたら…どうか斬ってください。」
「…ロザリー!」
「ルシアン殿下!」
片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、淑女の礼をとると
「私は殿下の妻であり、そして…」
ゆっくりと両ひざを地面につけると、左膝を立て、右膝をつけて騎士の礼をとった。
「殿下の騎士です。どうか主君に刃を向けた時はお斬りください。」
ミランダはそう言って、ウィンスレット侯爵を見た。
「では、近衛兵を動かす鍵は…音ということですか?」
「目からの情報は場所を選ぶ。ましてや大人数なら、必ず見過ごす者が出てくる。でも音なら、離れた場所にいても確実に…。」
ウィンスレット侯爵はハッとして
「ナ、ナダルも音楽が…と言っておりました!」
ミランダはニンマリと笑い
「ナダルを身近に置けないから、音…音楽だったわけね。なるほどね。」
「ミランダ姫?」
「きっと、ロザリーが剣を抜く前に、近衛師団を動かすはず。」
ミランダはそう言って、祭壇の前に歩みを進めるルシアンとロザリーを見た。
「…祭壇の前に二人が立ったら、一旦音楽は止まるのよね。」
「はい、一旦音楽が止まり、賛美歌をみんなで歌い、誓いの言葉が始まるのですが…。」
「侯爵、賛美歌…だわ。暗示のスイッチは賛美歌!すぐに賛美歌をやめるように!」
「は、はい!」
走り出したウィンスレット侯爵の背中を見ながら、ミランダはポツリと
「…近衛師団が賛美歌なら…おそらくロザリーは…誓いの言葉がスイッチだと思う。」
両手を握りしめ
「ごめんなさい侯爵。あなたにロザリーと叔父様の戦いは見せたくない。剣を抜いたロザリーを見たら、どんなに私が叔父様に任せてと言っても…侯爵はきっと目に涙を溜め、ロザリーに剣を抜く。人を殺める事に躊躇しないロザリーには…侯爵は勝てない。」
ミランダはウィンスレット侯爵の背中に、頭を下げた。
「…信じて。叔父様を…そしてロザリーを。ロザリーならきっと暗示を破れる。だって…」
緑色の瞳を潤ませて、祭壇へと向かうロザリーに
「だって、あんなに叔父様を愛しているロザリーだもの。きっと叔父様を斬れない」
だがそれは、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。
*****
剣を抜くのは、愛する人々を守るため。
だから、目の前の敵に後れを取ることなどなかった。この思いがある限り、どんな恐怖にも勝てる自信があった。
でも…
私は縋るような目で、ルシアン殿下を見た。
記憶がないまま動いていた私は、この先なにをするのかわからない。
自分の中に敵がいる。
どんな恐怖にも勝てる自信があったのに怖い。自分を信じられない事が堪らなく怖い。
私が私で無くなったら…
溢れそうになる涙を堪え俯くと、歩く度に揺れるウエディングドレスの裾が目に入った。
純白のウェディングドレス…。
白という色には「清楚」「純潔」「純粋」という意味があると同時に、穢れ、悪を払うという意味も込められていると聞いた。
もし…そうなら…私の中の邪悪なものを祓ってほしい。
「ロザリー…。」
ハッとして、顔を上げると、もうすでに祭壇の前にいた。
「すみません…。」
ルシアン殿下は苦笑され、私の眉間に手を伸ばされた。
「バウマン公爵を嵌めるための結婚式だが…一応、俺とおまえの結婚式だ。そんな厳しい顔をするな。笑ってくれ。」
唇が口角を上げようとするが、でも笑えない。
ルシアン殿下の手が、私の眉間から強張る口元へと触れられ、微笑まれた。
「愛している。何があっても、愛している。だから、心配するな。」
愛している…その言葉がすべてを語っていると思った。
それはきっと、愛しているから、もし私が操られてルシアン殿下に剣を抜くことことがあっても、私を斬るつもりはないということ。それは防戦のみをするということだ。
でも、もし人を殺めることに躊躇しない人間に、私がなっていたら…。
大きく息を吐いた。
もう、考える時間も、迷う時間もない。
なら、選ぶ道はひとつ。
「ルシアン殿下、私を愛してくださるのなら…」
「ロザリー?」
「人形のように操られ、ルシアン殿下に剣を抜いたら…どうか斬ってください。」
「…ロザリー!」
「ルシアン殿下!」
片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、淑女の礼をとると
「私は殿下の妻であり、そして…」
ゆっくりと両ひざを地面につけると、左膝を立て、右膝をつけて騎士の礼をとった。
「殿下の騎士です。どうか主君に刃を向けた時はお斬りください。」
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