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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目⑭
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「先生…。」
私の不安気な声に、マクドナル医師は白い髭に手をやりながら
「どこかがお悪いと言うわけでは無いようですね……おそらくお忙しい一週間でしたので、お疲れだったのだと思われます。今日が終われば、少し長い休養をお取りなられてください。」
「…わかりました。」
私の力のない声にマクドナルド医師は微笑まれると
「では、式の前までゆっくりとなさいませ。」
そう言われ、看護師と一緒に部屋を出て行かれた。
.
.
シーンとした部屋に、私の力のない声が響いた。
「…大事な時に、倒れるって…情けないと思われたよね。ルシアン殿下はもう私に、背中を預けてくださらないかも…」
横になって、天井画の天使に問いかけるように言うと、より情けなくなり、左手で枕を掴むと顔を覆った。
目頭がなんとなく熱い。
…ダメだ。
これじゃダメだ!
「しっかりしろ!」
気合を入れた言った言葉だったが、顔を覆った枕のせいでこもった声が、自信なく聞こえた。
なんなの…その声は…。
しっかりしないと、こんな気持ちじゃ、ルシアン殿下の足の引っ張ることになるかもしれない。
ほんとにしっかりしないと、私はルシアン殿下の背中を守ることを外される。
必要ないと言われる。
私がルシアン殿下にできることは、剣でお守りすることしかないできないのに、私にはそれしかないのに…。
もし、背中を守る事を外されたら…私は…。
生きる価値がない。
……いけない…。
負のスパイラルに陥ってしまったみたい。
生きる価値がない…などと…
悲劇のヒロイン気取りで…
…ぁ…
…悲劇。
…ヒロイン。
その言葉が頭の中で何度もリフレインしだし、キーンと耳の奥で高い音が響いた。
痛い。
両耳を押さえ、その音から逃げようとした時、突然顔を覆っている枕が、男の大きな手に感じ、慌てて枕を払った。
……なに?これは…。
さっきもこんな感じだった。
「…本当にしっかりしないと…危ない。今は勝つ事だけ考えないと…それ以外の事で心を囚われたら…自分の命どころか、ルシアン殿下の命さえも危険にさらす。しっかりしろ!」
両手で顔を叩き、深呼吸をした。
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐いていく。
落ちつけ。
今何をすべきか、何のために、私がここにいるか、考えろ!
そう、全てはルシアン殿下とこの国の為だ。
倒れた私を、情けないとルシアン殿下が思われたのなら、挽回するのみ。
気合いを入れ、ベットから起き上がろうとした時、突然感じた気配に私はゆっくりとベットサイドから短剣を出した。
扉の近くまで、気配を全く感じさせなかった。
バカな考えに囚われていたからだろうか?
それともかなりの剣の使い手か?
いや…殺気はない。
この気配は…
うまく言葉では言い表せない。
そんな気配に、ゴクンと唾を飲み込むと扉を開けた。
開いた扉の前にいたのは、キャロルさん。
…違う。この気配はキャロルさんではない。
「…誰?あなたは…?」
だが絞り出した私の声は、キャロルさんの腹部か流れる血に言葉を失った。
いつものキャロルさんとは違う気配を持つ女性は、にっこり笑うと腹部に刺した短剣に手をやり、より深く刺しながら
「2つ目のスイッチ。」
そう言って崩れ落ちていった。
私の不安気な声に、マクドナル医師は白い髭に手をやりながら
「どこかがお悪いと言うわけでは無いようですね……おそらくお忙しい一週間でしたので、お疲れだったのだと思われます。今日が終われば、少し長い休養をお取りなられてください。」
「…わかりました。」
私の力のない声にマクドナルド医師は微笑まれると
「では、式の前までゆっくりとなさいませ。」
そう言われ、看護師と一緒に部屋を出て行かれた。
.
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シーンとした部屋に、私の力のない声が響いた。
「…大事な時に、倒れるって…情けないと思われたよね。ルシアン殿下はもう私に、背中を預けてくださらないかも…」
横になって、天井画の天使に問いかけるように言うと、より情けなくなり、左手で枕を掴むと顔を覆った。
目頭がなんとなく熱い。
…ダメだ。
これじゃダメだ!
「しっかりしろ!」
気合を入れた言った言葉だったが、顔を覆った枕のせいでこもった声が、自信なく聞こえた。
なんなの…その声は…。
しっかりしないと、こんな気持ちじゃ、ルシアン殿下の足の引っ張ることになるかもしれない。
ほんとにしっかりしないと、私はルシアン殿下の背中を守ることを外される。
必要ないと言われる。
私がルシアン殿下にできることは、剣でお守りすることしかないできないのに、私にはそれしかないのに…。
もし、背中を守る事を外されたら…私は…。
生きる価値がない。
……いけない…。
負のスパイラルに陥ってしまったみたい。
生きる価値がない…などと…
悲劇のヒロイン気取りで…
…ぁ…
…悲劇。
…ヒロイン。
その言葉が頭の中で何度もリフレインしだし、キーンと耳の奥で高い音が響いた。
痛い。
両耳を押さえ、その音から逃げようとした時、突然顔を覆っている枕が、男の大きな手に感じ、慌てて枕を払った。
……なに?これは…。
さっきもこんな感じだった。
「…本当にしっかりしないと…危ない。今は勝つ事だけ考えないと…それ以外の事で心を囚われたら…自分の命どころか、ルシアン殿下の命さえも危険にさらす。しっかりしろ!」
両手で顔を叩き、深呼吸をした。
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐いていく。
落ちつけ。
今何をすべきか、何のために、私がここにいるか、考えろ!
そう、全てはルシアン殿下とこの国の為だ。
倒れた私を、情けないとルシアン殿下が思われたのなら、挽回するのみ。
気合いを入れ、ベットから起き上がろうとした時、突然感じた気配に私はゆっくりとベットサイドから短剣を出した。
扉の近くまで、気配を全く感じさせなかった。
バカな考えに囚われていたからだろうか?
それともかなりの剣の使い手か?
いや…殺気はない。
この気配は…
うまく言葉では言い表せない。
そんな気配に、ゴクンと唾を飲み込むと扉を開けた。
開いた扉の前にいたのは、キャロルさん。
…違う。この気配はキャロルさんではない。
「…誰?あなたは…?」
だが絞り出した私の声は、キャロルさんの腹部か流れる血に言葉を失った。
いつものキャロルさんとは違う気配を持つ女性は、にっこり笑うと腹部に刺した短剣に手をやり、より深く刺しながら
「2つ目のスイッチ。」
そう言って崩れ落ちていった。
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