167 / 214
結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目⑤
しおりを挟む
アストンはフッと鼻で笑うと
「前ローラン王、そしてアデリーナは悪魔に魂を売り渡し、ブラチフォード国を地獄へと陥れようとしたが、ローラン国で、それは知っているのは貴族のそれも、かなり上位の貴族のみだ。あんたを王を担ぎ上げた貴族らも、そして王になりたいバウマンも…クッツツ…そりゃぁ、バウマンも言えねぇよな。
魂を悪魔に売ったのは前ローラン王個人の話だが、そうはいかない。それは前ローラン王のみならず、ローラン王家自体のイメージが悪くなる。
だから、あのバウマンも口を閉ざした。
なんたって、バウマンのあの赤い瞳は、ローラン王家の血が入ってますと言ってるようなもんだからな。
だが一番は…
前ローラン王は、国を豊かな国へと導いたおかげで、ローラン王家は嫌いだが、前ローラン王だけは違うと言って慕う国民が多かったからだ。
前ローラン王の人気を取り込もうと考えていた輩には、そこは大事な事だったんだろう?
だからローラン王が悪魔に魂を売り渡した事は言えなかった。
でも大変だったろうな。つじつまを合わせるのは…
なんたって、ローラン王がブラチフォード国に入国した途端、あの化け物騒ぎだ。
そこで考えられたのは、前ローラン王、アデリーナのふたりはブラチフォード国に入国した直後に、悪魔に魅入られた者達に襲われ、果敢に戦ったが、相手は化け物、残念なことに亡くなった。
…と、こんな感じにしたんだろう?
だが笑えるぜ。
まぁ…前ローラン王の手先のひとりだった俺が言うのもおこがましいが、張本人の前ローラン王を被害者にして、いや英雄のように祭り上げたことで、その勇敢さを自国ローラン国に示すことになり、ブラチフォード国では、甥であるあんたの人気をあげることになった、そしてなにより…あんたがローラン王となる布石にもなった訳だ。まぁ、そこだけはバウマンの誤算だったろうがな。」
そう言って、アストンは俺を見ると
「もちろん、この経緯は知ってるよな。ローラン国からの申し出を認めたひとりが…あんただからな。だがそれを批判する気はない。それも戦略のひとつだからな。」
確かにそうだった。
俺が何れ、ローラン国を纏めるためには、その事実を隠すのが得策だと、父上や、ミランダ、ウィンスレット侯爵、そしてロザリーとで、そう判断したからだ。
いくら慕われていた前ローラン王だったとしても、悪魔に魂を売り渡したことが民に知られれば…ローラン王家を拒絶するだろう。そして王家の拒絶は…新たな王となる俺へと向けられ、国は乱れると判断したから、だから…ローラン国の申し出に頷いた。
アストンは口元に苦笑を浮かべ
「でも、あんたら高貴な方々が考えた話より、ローラン国の国民の間には、違う話のほうが盛り上がっていたんだ。」
アストンはそう言って、苦笑すると
「王子様の悲恋の話が…。」
「悲恋?…どういう意味だ?」
「あんたがアデリーナに一目ぼれをして、ブラチフォード国を捨て、ローラン国に行きたいと前ローラン王に頼み込んだ、だが結ばれることなく、愛したアデリーナ嬢は化け物に殺された…と言う話さ。」
「えっ?…俺がローラン国に行きたいと言ったのは…!!」
「知ってるさ。当時のあんたの事情を知ってる。ブラチフォード国に自分がいない方が、国が纏まると思ったんだろう。だが王家の人間が他国に行くとなると、相当な理由が必要だ。まぁ犬や猫じゃないからな。そのひとつが婚姻だ。
でも、国民の大半は王家に対して夢を抱く。ましてや裏事情なんぞしらねぇんだ。だからロマンティックな話にだんだんと国民の間で変わって行くのが常だぜ。確かに一目惚れをして国を捨ててくる色男の王子様のほうがうけるよな。それが今やその話が、ローラン国では事実となっている。
そんな話は、ロザリーとあんたのふたりを見たら何れ消えるだろうよ。
だがなぁ…
それを…ヒューゴに利用された。それも少し…話をドロドロにしてな。」
顔を歪めたアストンは吐き捨てるように言った。
「前ローラン王、そしてアデリーナは悪魔に魂を売り渡し、ブラチフォード国を地獄へと陥れようとしたが、ローラン国で、それは知っているのは貴族のそれも、かなり上位の貴族のみだ。あんたを王を担ぎ上げた貴族らも、そして王になりたいバウマンも…クッツツ…そりゃぁ、バウマンも言えねぇよな。
魂を悪魔に売ったのは前ローラン王個人の話だが、そうはいかない。それは前ローラン王のみならず、ローラン王家自体のイメージが悪くなる。
だから、あのバウマンも口を閉ざした。
なんたって、バウマンのあの赤い瞳は、ローラン王家の血が入ってますと言ってるようなもんだからな。
だが一番は…
前ローラン王は、国を豊かな国へと導いたおかげで、ローラン王家は嫌いだが、前ローラン王だけは違うと言って慕う国民が多かったからだ。
前ローラン王の人気を取り込もうと考えていた輩には、そこは大事な事だったんだろう?
だからローラン王が悪魔に魂を売り渡した事は言えなかった。
でも大変だったろうな。つじつまを合わせるのは…
なんたって、ローラン王がブラチフォード国に入国した途端、あの化け物騒ぎだ。
そこで考えられたのは、前ローラン王、アデリーナのふたりはブラチフォード国に入国した直後に、悪魔に魅入られた者達に襲われ、果敢に戦ったが、相手は化け物、残念なことに亡くなった。
…と、こんな感じにしたんだろう?
だが笑えるぜ。
まぁ…前ローラン王の手先のひとりだった俺が言うのもおこがましいが、張本人の前ローラン王を被害者にして、いや英雄のように祭り上げたことで、その勇敢さを自国ローラン国に示すことになり、ブラチフォード国では、甥であるあんたの人気をあげることになった、そしてなにより…あんたがローラン王となる布石にもなった訳だ。まぁ、そこだけはバウマンの誤算だったろうがな。」
そう言って、アストンは俺を見ると
「もちろん、この経緯は知ってるよな。ローラン国からの申し出を認めたひとりが…あんただからな。だがそれを批判する気はない。それも戦略のひとつだからな。」
確かにそうだった。
俺が何れ、ローラン国を纏めるためには、その事実を隠すのが得策だと、父上や、ミランダ、ウィンスレット侯爵、そしてロザリーとで、そう判断したからだ。
いくら慕われていた前ローラン王だったとしても、悪魔に魂を売り渡したことが民に知られれば…ローラン王家を拒絶するだろう。そして王家の拒絶は…新たな王となる俺へと向けられ、国は乱れると判断したから、だから…ローラン国の申し出に頷いた。
アストンは口元に苦笑を浮かべ
「でも、あんたら高貴な方々が考えた話より、ローラン国の国民の間には、違う話のほうが盛り上がっていたんだ。」
アストンはそう言って、苦笑すると
「王子様の悲恋の話が…。」
「悲恋?…どういう意味だ?」
「あんたがアデリーナに一目ぼれをして、ブラチフォード国を捨て、ローラン国に行きたいと前ローラン王に頼み込んだ、だが結ばれることなく、愛したアデリーナ嬢は化け物に殺された…と言う話さ。」
「えっ?…俺がローラン国に行きたいと言ったのは…!!」
「知ってるさ。当時のあんたの事情を知ってる。ブラチフォード国に自分がいない方が、国が纏まると思ったんだろう。だが王家の人間が他国に行くとなると、相当な理由が必要だ。まぁ犬や猫じゃないからな。そのひとつが婚姻だ。
でも、国民の大半は王家に対して夢を抱く。ましてや裏事情なんぞしらねぇんだ。だからロマンティックな話にだんだんと国民の間で変わって行くのが常だぜ。確かに一目惚れをして国を捨ててくる色男の王子様のほうがうけるよな。それが今やその話が、ローラン国では事実となっている。
そんな話は、ロザリーとあんたのふたりを見たら何れ消えるだろうよ。
だがなぁ…
それを…ヒューゴに利用された。それも少し…話をドロドロにしてな。」
顔を歪めたアストンは吐き捨てるように言った。
0
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
きみの愛なら疑わない
秋葉なな
恋愛
花嫁が消えたバージンロードで虚ろな顔したあなたに私はどう償えばいいのでしょう
花嫁の共犯者 × 結婚式で花嫁に逃げられた男
「僕を愛さない女に興味はないよ」
「私はあなたの前から消えたりしない」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる