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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目③ ロザリーの決意
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体が…震える。
夜が明けたばかりだから、体がそう感じるのだろうか?
いや…違う。
それは…
「ロザリー様、これでいかがでしょうか?」
髪を、そして化粧を私に施してくれたキャロルさんの声に、閉じた瞼さえ開けられないほど体が震えているのは…そんな理由ではない。
ただ…
そう、ただ見たくないんだ。
殺意を持った自分の顔は見たくない。
どんなに人を切る覚悟があっても、目を開ければ鏡に映った私の青い瞳は、凍えるほど冷たく光っているだろうと思うと…自分の顔を見るのが怖い。
だから、目を開けることができない。
「不安ですよね。練り上げた計画ではなくて、急に決まった計画ですもの。」
不安…?
私は不安げな顔をしているのだろうか?
恐る恐る目を開けて、鏡に映る自分の姿を見ると、鏡の中の私の青い瞳は、冷たく光るどころか、不安気に瞳を揺らしてる。
【不安げな顔をして、本当に大丈夫?】
…これは…仮面舞踏会のあの日、見慣れない栗色の髪の鬘をつけ、青いドレスで泣きそうな顔で立っていた私?
剣を手にした頃のまだ幼かった私は、練習をすればするほど、強くなっていくことが嬉しくてたまらなかった。だから、将来騎士として生きて行くことに何の不安も疑問もなく、寧ろ国をそして民を守るために、剣を極めることが私を熱くさせていた。
でもある日、ふと思ってしまった。
国の為に、民の為に、そして家族の為に命をかける事はやぶさかではないが、たがこの手で人の命を奪う事は、敵である騎士のみならず、その人を愛する人達の心をも殺すことだと思ったら、たまらく怖くなってしまった。
だが…切らなければ反対に、自分の大切な人達の命を…心を殺すことにもなるかもしれない。
そのジレンマを断ち切るために、最後に女として舞踏会に出ようとした。
騎士になろうと覚悟を決めたのなら、侯爵令嬢の自分との決別の為の仮面舞踏会にするつもりだった。
だが、あの時鏡に映った私は、騎士にも侯爵令嬢にも、どちらにも迷いを残す18歳の私が映っていた。
鏡に映った私は、まだ女として生きて行く道に未練を残し、そして人を殺める覚悟もないのに騎士になろうとしていると思った。
そしてこの迷いが…守るべき人を危険にさらすのではないかと不安になって、思わず鏡に映った私に問いかけたんだった。
騎士の私は侯爵令嬢の私に…
侯爵令嬢の私は騎士の私に…
【不安げな顔をして、本当に大丈夫?】
その言葉の中には…
確かにドレスに、ダンス…好きだよね。
でも出来るのか?
国を守るためにそして民の為に極めた剣を捨てて、どこかの貴族の妻として生きて行けるのか?
…と言う騎士の私と。
騎士として、いやシリルという男としてやって行けるのは…恐らくあと数年。
どんなに剣の腕はあっても、女の体をそう長くは隠せない。もし男と偽っていたことがわかれば…侯爵家はおとり潰しになるかもしれないのよ。どうするの?
…ううん…問題はそれだけじゃない。一番は…
人を殺める覚悟がなくて、剣を抜くことができるの?
その迷いが自分の命を、いや大事な人の命を救う事ができないのではないの?
…と言う侯爵令嬢の私がいた。
クスッ…
「ロザリー様?」
そうだった。
あの時の私はそうだった。
でも私はその答えを見つけたじゃない。
あの…前ローラン王との戦いで…。
人を殺める事は怖くて当たり前だ。
それを当然のように思えたら、私は私でなくなる。
いや人間でもなくなる。化け物になるということを知ったじゃない。
人を殺めるという事を、私は一生悩むだろう。
それは人である限りずっと悩むことだ。
なら、悩むことで少しでも剣を抜くような状況を打開する努力を、ルシアン殿下とやって行くんだ。
でも…それでも…
悪意を持った者達を押さえきれない場合は剣を抜き……戦う。
クスッ…
「ロザリー様?」
騎士の私、侯爵令嬢の私…か、まるで別の人間のように考えるはやめだ。
どちらの私もあるから、私なんだ。
どちらの私もあるから、ルシアン殿下のその背中を守る事が出来ることも、そしてこの愛する思いでルシアン殿下の心を支えることができるんだ。
私は幸せだ。
「ロザリー様、どうなさったのです?」
「えっ?」
いけない。
鏡に映ったキャロルさんの顔が、心配そうに私を見ているじゃない。
キャロルさん…。
おしゃれで、美人で、優しいキャロルさんなら、縁談は引く手あまただったろうに…なのに…
生まれ育ったブラチフォード国を離れ、私について来てくれたキャロルさん。
いつも私を女として、より上のステージへと導いてくれるキャロルさん。
私を陰から支えてくれるキャロルさんを守りたい。
この思いが伝わったのだろうか、私の顔を見たキャロルさんが微笑んでくれる。
そうだ。
私は私を信じ、そしてルシアン殿下を信じついてきてくれる人たちを守り、幸せへと続く道を切り開きたい。
だから…
「キャロルさん!私…『鏡に映った自分に見とれてました。』」
へっ?!
ええっ~?!!
私の声に被さるように聞こえた…い、今の声は…
ひょっとしたら…いや、ひょっとしなくても
「ミ…ミランダ姫?」
ゆっくり後ろを振り向くと
ロイさんに抱っこされたミランダ姫がため息をつきながら
「確かに綺麗よ。でもね、自分の姿に見とれるのはどうかと思うわよ。ロザリー。」
「ど…どうしてここに?…じゃない!!!み、み、見とれてなどいません!!わ、私は!」
「いいじゃない。ホントに綺麗よ。ねぇ~キャロル。」
「はい。もともとお美しいロザリー様に、この美の伝道師キャロルの腕があればご本人であるロザリー様とて、うっとりして当然でございます。」
「あ、あの…確かにキャロルさんの腕があるから、ここまで綺麗にしてもらったのは間違いないですが、で、でも見とれていたのではなくて…私は…」
だけど、ミランダ姫は私の声を無視して
「ロイも、ロザリーは綺麗だと思うでしょう?」
ロイさんは満面の笑みを浮かべ
「御意!」
「ロイさん!!!」
ミランダ姫はケラケラと笑いだすと
「キャロルも、ロイもわかっているわよ。そんなことを思っていないことは。」
「ミランダ姫…。」
ミランダ姫は柔らかい笑みを口元に浮かべて、すべてを見透かすその瞳を揺らし
「心配…しなくてもいいみたいね。」
「…はい。」
私の声にただ頷いたミランダ姫だったが、突然ニンマリ笑われ
「こんなに綺麗なロザリーを見たら、日頃…威厳充分の叔父様の顔もデレ~となりそうね。」
そう言って下を向かれた。
「想像したら、可笑しくなっちゃった。」
「ミランダ姫~!!」
私の叫び声にクスクスを声を立てて笑われたミランダ姫だったが、だが、ゆっくりと顔をあげられたその顔は、だんだんと引き締まり
「でも叔父様には悪いけど…デレデレした顔は…もう少し待ってもらわなくはね。」
そう言われ、厳しい顔で
「だからロザリー。必ず生きて帰って来て、叔父様のデレ~とした顔を私に見せてよ。」
「ミランダ姫…」
ミランダ姫はそう言うと、顔を歪め小さな声で
「…死んだら……許さないから…」
その時、この部屋にいたキャロルさんもそしてロイさんも感じたのだろう。驚いたように目を見開きミランダ姫を見ていた。みんなの目に映ったミランダ姫はあの…そうあのミランダ姫ではなかった。
幼い少女の顔だった。
守りたい。
そう思った。この少女の命を、そして心を守りたいと。
「私は強いですよ。だから…」
そう言って私は笑いながら、少女を抱きしめようと大きく手を広げると、少女は堪え切れなかったのだろう。大粒の涙を零し、ロイさんの腕から飛び出すと私の腕の中に飛び込んできた。
あぁ…こんなに小さな体だったんだ。
いつも大人以上の気迫と、威厳を持つ少女は、こんなに小さかったんだ。
守る。
いや、必ず守って見せる。
「だから……任せてください。私はルシアン殿下の妻であり、そしてその背中を唯一守る事を許された騎士です。必ずこの手で、勝利を持ち帰ってきます。」
私の腕の中で少女が…ミランダ姫が頷いていた。
勝つ。
この戦いは必ず勝つ。
夜が明けたばかりだから、体がそう感じるのだろうか?
いや…違う。
それは…
「ロザリー様、これでいかがでしょうか?」
髪を、そして化粧を私に施してくれたキャロルさんの声に、閉じた瞼さえ開けられないほど体が震えているのは…そんな理由ではない。
ただ…
そう、ただ見たくないんだ。
殺意を持った自分の顔は見たくない。
どんなに人を切る覚悟があっても、目を開ければ鏡に映った私の青い瞳は、凍えるほど冷たく光っているだろうと思うと…自分の顔を見るのが怖い。
だから、目を開けることができない。
「不安ですよね。練り上げた計画ではなくて、急に決まった計画ですもの。」
不安…?
私は不安げな顔をしているのだろうか?
恐る恐る目を開けて、鏡に映る自分の姿を見ると、鏡の中の私の青い瞳は、冷たく光るどころか、不安気に瞳を揺らしてる。
【不安げな顔をして、本当に大丈夫?】
…これは…仮面舞踏会のあの日、見慣れない栗色の髪の鬘をつけ、青いドレスで泣きそうな顔で立っていた私?
剣を手にした頃のまだ幼かった私は、練習をすればするほど、強くなっていくことが嬉しくてたまらなかった。だから、将来騎士として生きて行くことに何の不安も疑問もなく、寧ろ国をそして民を守るために、剣を極めることが私を熱くさせていた。
でもある日、ふと思ってしまった。
国の為に、民の為に、そして家族の為に命をかける事はやぶさかではないが、たがこの手で人の命を奪う事は、敵である騎士のみならず、その人を愛する人達の心をも殺すことだと思ったら、たまらく怖くなってしまった。
だが…切らなければ反対に、自分の大切な人達の命を…心を殺すことにもなるかもしれない。
そのジレンマを断ち切るために、最後に女として舞踏会に出ようとした。
騎士になろうと覚悟を決めたのなら、侯爵令嬢の自分との決別の為の仮面舞踏会にするつもりだった。
だが、あの時鏡に映った私は、騎士にも侯爵令嬢にも、どちらにも迷いを残す18歳の私が映っていた。
鏡に映った私は、まだ女として生きて行く道に未練を残し、そして人を殺める覚悟もないのに騎士になろうとしていると思った。
そしてこの迷いが…守るべき人を危険にさらすのではないかと不安になって、思わず鏡に映った私に問いかけたんだった。
騎士の私は侯爵令嬢の私に…
侯爵令嬢の私は騎士の私に…
【不安げな顔をして、本当に大丈夫?】
その言葉の中には…
確かにドレスに、ダンス…好きだよね。
でも出来るのか?
国を守るためにそして民の為に極めた剣を捨てて、どこかの貴族の妻として生きて行けるのか?
…と言う騎士の私と。
騎士として、いやシリルという男としてやって行けるのは…恐らくあと数年。
どんなに剣の腕はあっても、女の体をそう長くは隠せない。もし男と偽っていたことがわかれば…侯爵家はおとり潰しになるかもしれないのよ。どうするの?
…ううん…問題はそれだけじゃない。一番は…
人を殺める覚悟がなくて、剣を抜くことができるの?
その迷いが自分の命を、いや大事な人の命を救う事ができないのではないの?
…と言う侯爵令嬢の私がいた。
クスッ…
「ロザリー様?」
そうだった。
あの時の私はそうだった。
でも私はその答えを見つけたじゃない。
あの…前ローラン王との戦いで…。
人を殺める事は怖くて当たり前だ。
それを当然のように思えたら、私は私でなくなる。
いや人間でもなくなる。化け物になるということを知ったじゃない。
人を殺めるという事を、私は一生悩むだろう。
それは人である限りずっと悩むことだ。
なら、悩むことで少しでも剣を抜くような状況を打開する努力を、ルシアン殿下とやって行くんだ。
でも…それでも…
悪意を持った者達を押さえきれない場合は剣を抜き……戦う。
クスッ…
「ロザリー様?」
騎士の私、侯爵令嬢の私…か、まるで別の人間のように考えるはやめだ。
どちらの私もあるから、私なんだ。
どちらの私もあるから、ルシアン殿下のその背中を守る事が出来ることも、そしてこの愛する思いでルシアン殿下の心を支えることができるんだ。
私は幸せだ。
「ロザリー様、どうなさったのです?」
「えっ?」
いけない。
鏡に映ったキャロルさんの顔が、心配そうに私を見ているじゃない。
キャロルさん…。
おしゃれで、美人で、優しいキャロルさんなら、縁談は引く手あまただったろうに…なのに…
生まれ育ったブラチフォード国を離れ、私について来てくれたキャロルさん。
いつも私を女として、より上のステージへと導いてくれるキャロルさん。
私を陰から支えてくれるキャロルさんを守りたい。
この思いが伝わったのだろうか、私の顔を見たキャロルさんが微笑んでくれる。
そうだ。
私は私を信じ、そしてルシアン殿下を信じついてきてくれる人たちを守り、幸せへと続く道を切り開きたい。
だから…
「キャロルさん!私…『鏡に映った自分に見とれてました。』」
へっ?!
ええっ~?!!
私の声に被さるように聞こえた…い、今の声は…
ひょっとしたら…いや、ひょっとしなくても
「ミ…ミランダ姫?」
ゆっくり後ろを振り向くと
ロイさんに抱っこされたミランダ姫がため息をつきながら
「確かに綺麗よ。でもね、自分の姿に見とれるのはどうかと思うわよ。ロザリー。」
「ど…どうしてここに?…じゃない!!!み、み、見とれてなどいません!!わ、私は!」
「いいじゃない。ホントに綺麗よ。ねぇ~キャロル。」
「はい。もともとお美しいロザリー様に、この美の伝道師キャロルの腕があればご本人であるロザリー様とて、うっとりして当然でございます。」
「あ、あの…確かにキャロルさんの腕があるから、ここまで綺麗にしてもらったのは間違いないですが、で、でも見とれていたのではなくて…私は…」
だけど、ミランダ姫は私の声を無視して
「ロイも、ロザリーは綺麗だと思うでしょう?」
ロイさんは満面の笑みを浮かべ
「御意!」
「ロイさん!!!」
ミランダ姫はケラケラと笑いだすと
「キャロルも、ロイもわかっているわよ。そんなことを思っていないことは。」
「ミランダ姫…。」
ミランダ姫は柔らかい笑みを口元に浮かべて、すべてを見透かすその瞳を揺らし
「心配…しなくてもいいみたいね。」
「…はい。」
私の声にただ頷いたミランダ姫だったが、突然ニンマリ笑われ
「こんなに綺麗なロザリーを見たら、日頃…威厳充分の叔父様の顔もデレ~となりそうね。」
そう言って下を向かれた。
「想像したら、可笑しくなっちゃった。」
「ミランダ姫~!!」
私の叫び声にクスクスを声を立てて笑われたミランダ姫だったが、だが、ゆっくりと顔をあげられたその顔は、だんだんと引き締まり
「でも叔父様には悪いけど…デレデレした顔は…もう少し待ってもらわなくはね。」
そう言われ、厳しい顔で
「だからロザリー。必ず生きて帰って来て、叔父様のデレ~とした顔を私に見せてよ。」
「ミランダ姫…」
ミランダ姫はそう言うと、顔を歪め小さな声で
「…死んだら……許さないから…」
その時、この部屋にいたキャロルさんもそしてロイさんも感じたのだろう。驚いたように目を見開きミランダ姫を見ていた。みんなの目に映ったミランダ姫はあの…そうあのミランダ姫ではなかった。
幼い少女の顔だった。
守りたい。
そう思った。この少女の命を、そして心を守りたいと。
「私は強いですよ。だから…」
そう言って私は笑いながら、少女を抱きしめようと大きく手を広げると、少女は堪え切れなかったのだろう。大粒の涙を零し、ロイさんの腕から飛び出すと私の腕の中に飛び込んできた。
あぁ…こんなに小さな体だったんだ。
いつも大人以上の気迫と、威厳を持つ少女は、こんなに小さかったんだ。
守る。
いや、必ず守って見せる。
「だから……任せてください。私はルシアン殿下の妻であり、そしてその背中を唯一守る事を許された騎士です。必ずこの手で、勝利を持ち帰ってきます。」
私の腕の中で少女が…ミランダ姫が頷いていた。
勝つ。
この戦いは必ず勝つ。
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