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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
6日目⑧
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「それにしても…」
そう言って、リドリー伯爵は零れる笑いを右手で押さえながら
「ウィンスレット侯爵は、何故そのような恰好でいらっしゃるのですか?」
自分の恰好が笑われていたことに、ようやく気が付いたウィンスレット侯爵は真っ赤になった顔で気まずそうに
「…ぁ…これは…敵方の中に入り込むための変装なんですが…やっぱり、やりすぎ感…ありますかね?」
ウィンスレット侯爵に、そんな顔をさせるつもりではなかったリドリー伯爵は慌てて
「ウィンスレット侯爵…あ、あの…」
だが、ウィンスレット侯爵はリドリー伯爵に穏やかな笑みを浮かべ
「このような恰好ではありますが…心は騎士のまま。今回ルシアン殿下に命ぜられたことはも、抜かりなくやってまいりました。」
そう言って、俺を見た。
その自信にあふれた顔に、リドリー伯爵はホッとした顔で、そして俺はいつも通りに言った。
「ご苦労だった。」
ウィンスレット侯爵は満面の笑顔だったが、俺の顔を見て瞳を揺らし心配そうに
「しかし、ルシアン殿下。これからどうなさるのですか?命ぜられた通りに、ジャスミン嬢を安全な場所へとお連れはしましたが…バウマン公爵の動きはかなり巧妙になっており…我々は後手に回っているように思えます。」
そう問うウィンスレット侯爵の声に、リドリー伯爵も俺を見た。
無茶な計画だとは重々わかっている。
バウマン公爵らを一掃し、何食わぬ顔で戴冠式と結婚式をやるなんて、そんな計画に不安を持たない者はいないだろう。ましてや招待客には知られてはならないのだから…無茶な話だ。
だが、これからのローラン国の事を考えると、そうしなければならない。
なぜなら、ローラン国はスムーズに王位を俺に移したことを内外に…いや、特に他国に見せなければならないからだ。
先代王は化け物だったという話は、ローラン国を揺るがし、そんなローラン国を周辺の国はほくそ笑み、様子をうかがっている。
もし今回の事が、いつでも牙をむこうとする国に知られたら、内乱にまきこまれたと言って、救出と言う言葉を叫びながら、堂々と兵を進めるやもしれない
これは…バウマン公爵との戦いだけではない。
それをわかっているから、どんなに準備を整えても不安はなかなか取り除けない。
簡単ではないのはわかっている。
だが…隠密にそして素早く片付けたい。
「ルシアン殿下…」
リドリー伯爵が俺の名を呼び、ウィンスレット侯爵が微笑んで
「リドリー伯爵も、私も、すでに腹を括っております。どうぞ何なりとご命令ください。」
そうだ。ひとりで戦っているわけじゃない。
俺は両手に握りこぶしを作り
「万全を喫して、明日は8時に招待客を大聖堂に移し、入れ違いに罠を仕掛けた城内にバウマン公爵らを引き込む。その為には…」
そう言って、ウィンスレット侯爵を見た。
勝ちたい。
その言葉が頭を過った。
いや、勝つんだ。
ウィンスレット侯爵の声が力強く
「どんなご命令ですか?」
「この大陸一、著名な騎士である、ブラチフォード国ウィンスレット侯爵に頼みたい。」
ウィンスレット侯爵の顔が変わった。
その顔を見つめながら
「襲ってくるであろう、ヒューゴ率いる近衛師団の力を削ぐために、近衛師団の兵を…ひとりでも多くこちらに引き込んでもらいたい。」
戦闘モードに変わったウィンスレット侯爵の顔に、リドリー伯爵の体がビクンと動いたのが目の端で見えた。
リドリー伯爵もようやく気付いてくれただろうな。
日頃、頼りなさそうに見えるのは仮の姿、今目にしている姿こそが、本当のウィンスレット侯爵の姿だと。
戦闘モードに入った侯爵は…怖いんだ。
そう思いながら、ウィンスレット侯爵を見ると、それは嬉しそうに
「では…久しぶりにローラン国の酒場に足を運びましょうか。」
ウィンスレット侯爵はゆっくりと俺の前に跪き
「明日は二日酔いでもどうぞご容赦くださいませ。」と言ってニヤリと笑った。
そう言って、リドリー伯爵は零れる笑いを右手で押さえながら
「ウィンスレット侯爵は、何故そのような恰好でいらっしゃるのですか?」
自分の恰好が笑われていたことに、ようやく気が付いたウィンスレット侯爵は真っ赤になった顔で気まずそうに
「…ぁ…これは…敵方の中に入り込むための変装なんですが…やっぱり、やりすぎ感…ありますかね?」
ウィンスレット侯爵に、そんな顔をさせるつもりではなかったリドリー伯爵は慌てて
「ウィンスレット侯爵…あ、あの…」
だが、ウィンスレット侯爵はリドリー伯爵に穏やかな笑みを浮かべ
「このような恰好ではありますが…心は騎士のまま。今回ルシアン殿下に命ぜられたことはも、抜かりなくやってまいりました。」
そう言って、俺を見た。
その自信にあふれた顔に、リドリー伯爵はホッとした顔で、そして俺はいつも通りに言った。
「ご苦労だった。」
ウィンスレット侯爵は満面の笑顔だったが、俺の顔を見て瞳を揺らし心配そうに
「しかし、ルシアン殿下。これからどうなさるのですか?命ぜられた通りに、ジャスミン嬢を安全な場所へとお連れはしましたが…バウマン公爵の動きはかなり巧妙になっており…我々は後手に回っているように思えます。」
そう問うウィンスレット侯爵の声に、リドリー伯爵も俺を見た。
無茶な計画だとは重々わかっている。
バウマン公爵らを一掃し、何食わぬ顔で戴冠式と結婚式をやるなんて、そんな計画に不安を持たない者はいないだろう。ましてや招待客には知られてはならないのだから…無茶な話だ。
だが、これからのローラン国の事を考えると、そうしなければならない。
なぜなら、ローラン国はスムーズに王位を俺に移したことを内外に…いや、特に他国に見せなければならないからだ。
先代王は化け物だったという話は、ローラン国を揺るがし、そんなローラン国を周辺の国はほくそ笑み、様子をうかがっている。
もし今回の事が、いつでも牙をむこうとする国に知られたら、内乱にまきこまれたと言って、救出と言う言葉を叫びながら、堂々と兵を進めるやもしれない
これは…バウマン公爵との戦いだけではない。
それをわかっているから、どんなに準備を整えても不安はなかなか取り除けない。
簡単ではないのはわかっている。
だが…隠密にそして素早く片付けたい。
「ルシアン殿下…」
リドリー伯爵が俺の名を呼び、ウィンスレット侯爵が微笑んで
「リドリー伯爵も、私も、すでに腹を括っております。どうぞ何なりとご命令ください。」
そうだ。ひとりで戦っているわけじゃない。
俺は両手に握りこぶしを作り
「万全を喫して、明日は8時に招待客を大聖堂に移し、入れ違いに罠を仕掛けた城内にバウマン公爵らを引き込む。その為には…」
そう言って、ウィンスレット侯爵を見た。
勝ちたい。
その言葉が頭を過った。
いや、勝つんだ。
ウィンスレット侯爵の声が力強く
「どんなご命令ですか?」
「この大陸一、著名な騎士である、ブラチフォード国ウィンスレット侯爵に頼みたい。」
ウィンスレット侯爵の顔が変わった。
その顔を見つめながら
「襲ってくるであろう、ヒューゴ率いる近衛師団の力を削ぐために、近衛師団の兵を…ひとりでも多くこちらに引き込んでもらいたい。」
戦闘モードに変わったウィンスレット侯爵の顔に、リドリー伯爵の体がビクンと動いたのが目の端で見えた。
リドリー伯爵もようやく気付いてくれただろうな。
日頃、頼りなさそうに見えるのは仮の姿、今目にしている姿こそが、本当のウィンスレット侯爵の姿だと。
戦闘モードに入った侯爵は…怖いんだ。
そう思いながら、ウィンスレット侯爵を見ると、それは嬉しそうに
「では…久しぶりにローラン国の酒場に足を運びましょうか。」
ウィンスレット侯爵はゆっくりと俺の前に跪き
「明日は二日酔いでもどうぞご容赦くださいませ。」と言ってニヤリと笑った。
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