上 下
157 / 214
結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

6日目⑤ 前日の夜…ジャスミン

しおりを挟む
「レースのカーテン…か。」

ジャスミンはレースのカーテンを触りながら、にっこり笑うとべールのように頭に被り
「ロザリー様は明日、こんなふうにベールを被り、好きな人の奥さんになるんだ。いいなぁ…。」

キャロルは微笑みながら
「ジャスミンさんも好きな人がいらっしゃるのですか?」

「いたら…その人は…ナダルとロイに殺されるかもしれません。口うるさい兄みたいなんです、あのふたりは…。」
苦笑気味に言いながら、ジャスミンはゆっくりと歩き出すと、頭に被っていたベールはまた、ただのレースのカーテンへと変わった。

「…妹を奪って行く男は許さん!って感じですね。」

ジャスミンは何度も頷きながら

「です!その通りです!」

そう言って、ため息をつくと
「俺を倒せるような奴じゃないと許さないとか言って…。なのに、私の周りに男性は近寄らせない!なんなの~って感じなんです。はぁ~結構、ナダルもロイも強いんですよ、あの二人より強いとなると…はぁ~頭に浮かぶのは…ルチアーノ…じゃない、ロザリー様しか…あぁ、カッコ良かったのになぁ…どうして女性なんだろう。」


キャロルはジャスミンの年相応のに姿に、ほんの少しホッとしていた。
詳しくはしらないが、ロザリーからこの少女はローラン王家の血筋の方で、その為に母親を含む大勢の人達が、目の前で殺されたのを目撃した少女だと聞いていたから、傷ついた心にどう接していいのかわからなかったが、今の様子を見て、ナダルとロイが、危ない男や少女の心も守ってきたんだと思った。

クスクスと笑いながらキャロルは
「残念でしたね。」

「ほんとに…半分、恋に落ちてましたから、かなり胸が痛いです。」

「確かに、ロザリー様ってカッコイイですものね。でもロザリー様は女性ですから、どうにもなりませんよ。」

「わかっているんですけど…ね。あまりにもロザリー様、カッコ良かったから…。」

「本当に半分、恋に落ちていたんですね。でも不思議です。大概の女性は…」

「大概の女性?」

「えぇ、大概の女性はルシアン殿下にひとめぼれなので…」

「確かに、ルシアン殿下もカッコイイけれど…。う~ん、そういうふうには見れなかったな。寧ろ…」

「寧ろ?」

「大好きなルチアーノを奪った恋敵。」

ジャスミンの思いがけない言葉にキャロルが大きな声で笑うと、ジャスミンは口を尖らせ
「はぁ~ロザリー様の男装をもう少し見たかったな。ロザリー様というより、ルチアーノに似ている男性って、どこかにいないかしら?」

「…ぁ!」

「どうしたんです、キャロルさん?」

「いえ、そう言えば…ロザリー様が(自分は父の若い頃に似ていると、よく母に言われている。)と仰っていたのを思い出して…」

思わず出た言葉に、ハッとしたキャロルは慌てて口を押さえたが、だが、時はすでに遅く、ジャスミンはキラキラと目を輝かせ


「えっ、そうなんですか?!ロザリー様のお父様って、男装されたロザリー様みたいなんですか?!」

「…いやぁ~、どうかなぁ。私は…それほど…」

「親子なら似てますよね!」

「ま、待ってください。ロザリー様のお父上は、ご結婚されておりますよ!」

キャロルの慌てように、ジャスミンはクスリと笑うと
「さすがに、親子ほど離れているから…そんな気持ちにはならないです。本やお芝居のヒーローみたいな感じで…どちらかというと憧れみたいなものです。でも…」

そう言って、一旦口を閉じたジャスミンだったが、その頬はだんだんと赤くなり

「ロザリー様のような綺麗な顔立ち、一流の剣の腕、女心がわかるあの繊細な物言い…そんな男性が存在するんだと思うと、ドキドキしますね。あぁ一度お会いしたいなぁ。」



キャロルは…後悔していた。



つい…言ってしまった。私の悪いところがまた…出てしまった。はぁ~どうしよう。

だいたいロザリー様は、お母さまのマーガレット様似だから綺麗な顔立ちなんだけどなぁ。

確かにウィンスレット侯爵様の剣の腕は一流だけど…女心は…わかっておいでだとは思えない。

真面目で優しい方ではあるけど…どちらかと言うと、ウィンスレット侯爵様は…剣で遊ぶのが大好きな…子供。

こ、困ったわ。とりあえずお茶を入れて、空気を変えないと…。


空気を変えるならこれだわ。


「ジャ、ジャスミンさん、スコーンはいかがですか?それにブラチフォード国から、バラのお茶を持ってきているんです。どうですか?」

「えっ?!素敵!!」


(よし!女の子は美味しいもの、可愛いもの、綺麗なものに弱い。これ定番。がんばれ私!)


「用意しますので、ここでお待ちください。」
キャロルは立ち上がると、少し間違った方向に行きそうな空気を変えるべく、お茶を入れるために慌てて部屋を出て行った。




そんなキャロルの背中を見ながら、ジャスミンは呟くように
「結婚か…憧れるなぁ。」

そう言って、ピンク色に頬を染め、またウェディングベールのようなレースのカーテンに目をやったが、一瞬にしてその顔はピンク色から色を無くしたように白くなり、そしてだんだんと青くなっていった。


なぜなら、そこには男がいたからだ。


盗賊のような姿の男が…。


男はにっこり笑い、ジャスミンに声を出さないように、右手の人差し指を口に当てると
「ジャスミン嬢、一緒に来ていただきたい。」


そう言って、ジャスミンへと手を差し出した。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おじさんは予防線にはなりません

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」 それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。 4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。 女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。 「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」 そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。 でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。 さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。 だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。 ……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。 羽坂詩乃 24歳、派遣社員 地味で堅実 真面目 一生懸命で応援してあげたくなる感じ × 池松和佳 38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長 気配り上手でLF部の良心 怒ると怖い 黒ラブ系眼鏡男子 ただし、既婚 × 宗正大河 28歳、アパレル総合商社LF部主任 可愛いのは実は計算? でももしかして根は真面目? ミニチュアダックス系男子 選ぶのはもちろん大河? それとも禁断の恋に手を出すの……? ****** 表紙 巴世里様 Twitter@parsley0129 ****** 毎日20:10更新

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにて先行更新中

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

処理中です...