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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

6日目②

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「ロザリー様、お初にお目にかかります。」

そう言われ、跪かれた初老の紳士に私は慌てて頭を下げた。

「す、すみません!私…あの、気が付かなくて」

私の戸惑う声に、ミランダ姫が呆れたように
「ロザリーは猪突猛進だものね。」

「…いろいろあって、一杯一杯で…それでミランダ姫にお話をと思って…」

しどろもどろの私に、クスリと笑いミランダ姫は

「なにがあったの?いろいろって…?」

「はい、先ほどロイさんが、国への愛に溢れた瞳で忠誠を誓ってくださったんです。私…あの方の境遇を考えると胸がいっぱいになって…」


「…会いに来たの?」

「いえ、偶然お会いして…」

「そう…今は城内にいるの。」

一言そう言われたミランダ姫は顔を歪められ、リドリー伯爵へと視線を移し
「彼は…大丈夫なの?」

「はい、ご自分から率先されて働いておいでです。」

ミランダ姫は目を細め
「伯爵から見て、彼はどうなの?」

「純粋な方だとお見受けしました。ただ…」

「ただ?それはどういう意味?」

「はい。ただ…ジャスミン嬢とナダル殿が絡むと」

「…周りが見えなくなるということ?」

「ロイ殿にとっては、ジャスミン嬢とナダル殿が何よりも大事。自分の命より…と思えます。」

ミランダ姫はふう~と息を吐かれ
「ジャスミンとナダル、そしてロイ。この三人の結びつきは良いようで…最悪かもね。」

リドリー伯爵は黙って俯かれ、私はゴクンと息を呑んだ。

「リドリー伯爵、三人だけで戦うんじゃないという事をちゃんと彼らに言ってて、三人の結びつきを利用されるかもしれないから」

ミランダ姫はロイさんに不信感を持たれておいでなんだ。
私にはロイさんの態度に何の思惑も感じなかったが、なにかあるのだろうか?

でも私には悪い人には見えなかった…。

「ミランダ姫、私には…ナダルもジャスミンも、そしてロイさんも良い方…」

「ロザリー!」

ミランダ姫は私の名を大きな声で呼び、私の言葉を遮ると
「ロザリーが言う通り、ロイもジャスミンもナダルも良い人なのでしょうね。
彼に会った人は皆、(真面目)(純粋)だと言っているものね。でもね、私がローラン国の王宮に入ると、入れ替わるように出ていくのよ。まるで私と会うことを避けているように見えるわ。私は会いたいと叔父様にも、リドリー伯爵にも言っているのに…。」

そう言ってクスリと笑われると
「私が子供だから、舐めているのかしら?それとも…」


ミランダ姫はリドリー伯爵を見て、そして私を見られ

「私に心を見られるのが怖いのかしら?」



確かに…なにかまだあるのかもしれない。私達が知らない何かが…。

ミランダ姫が会いたいと仰っているのに、謁見を願い出ないロイさん。
そして、ナダル本人は知ってはいないが、彼は…バウマン公爵の子供。


この計画は時期早々だったのだろうか…。

いや…ここしかない。

ここで一網打尽にしないと、まだまだ基盤がしっかりとしていないローラン国だから、バウマン公爵に地下に潜られてしまっては後々面倒だ。ここで逃がしたら、国がいつまでたっても安定しないだろう。

それに、王位をルシアン殿下に渡したくないバウマン公爵にとっても、これが最後のチャンス。


ここしかない!


だか…明日に迫った式典の前に、こんな不安材用があったとは…。







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