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第1章 幼少期(7歳)

31 ★テッド視点

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「ありがとう、兄さま。レイオス殿下を説得してくれて」
「決めたのは殿下だ。礼なら殿下に――――」 
「あの顔は9割嫌がってたわよ。私の祖先のことも問題でしょうけど、私がお嬢様の傍に居ること自体嫌がってたでしょう」
「それは、まあ……そうだな」
 
 ミカエラの先祖返りがほぼ確定し、種族も判明した。
 そう報告した時は、殿下も我が事のように喜んでくれた。
 が、特定の経緯と内容を詳しく説明した途端、分かりやすく機嫌が落ちた。
 そして、ミカエラはシュベーフェル嬢の侍女としては解任し、殿下の従者として迎える、と言い出した。
 殿下の婚約者の侍女から殿下の従者になる。一般的には栄進だ。名誉なことだ。
 ミカエラが年齢の割に優秀なことは殿下もよく知っているし、手元に置いた方が都合がいいと考えたのだろう。
 だがミカエラはそれを断り、シュベーフェル嬢に仕えたい、と希望したのだ。
 その時の殿下の顔は……苦虫を噛み潰した、レベルではなかったな。うん。
 普段周囲に仮面ばかり見せて感情を表に出さない殿下らしくない、素の表情だった。
 相手が俺達だから、ということはあるだろうが。
 多分忙しくて気が緩んでうっかり出てしまったんだろうな。すぐ取り繕ってたが遅いぞ流石に。
 まあ気持ちは分かるんだ。未婚の女性、それも婚約者の傍に同年代の男?を置きたくないのは当たり前だ。
 だが、ミカエラだぞ?
 女として育てられ、俺達にとっては妹分として過ごしてきたんだぞ?
 あとシュベーフェル嬢、まだ7歳。
 だから、今から探しても基準を満たした令嬢が見つからない以上、専属の護衛兼監視役としてミカエラを置いた方がいいと進言した。
 最終的には仕方ない、となったが……
 
「私、レイオス殿下はお嬢様のこと、使える手駒くらいにしか考えていないと思っていたけど、違ったのね。私に嫉妬するくらいだもの」
「……は?」
「あら兄さまったら、分からなかった?レイオス殿下は私に男性性もあるから嫌がったのよ。貴族の常識として、ならあんな顔はしないわ。きっと私がお嬢様に救われたから、特別な感情を持つと考えたのね。分かるわ。でも恩は感じてもそれはないわ。気の強い顔立ちより可愛らしい方が好みだし、ちょっとお馬鹿で甘えたなくらいがいいわ、こう、扱いやすいタイプ?お嬢様は真逆よね」
「突っ込みどころがあり過ぎるがとりあえずお前の好みは聞いてない」
 
 嫉妬。
 嫉妬?レイが?ミカエラに?シュベーフェル嬢のことで?
 気に入ったようだが利用する気満々で動いているのに?
 ミカエラに靡かれると面倒だからという方が納得できるんだが????
 
「あ。そうだ兄さま」
「なんだ」
「さっきの嫉妬云々の話だけど、レイオス殿下には一切!自覚がないみたいだから、まだ放っておいて。面白いから」
「………………。そうか」
 
 放っておこう。
 面倒だから。
 いや俺には介入できない部分の話だから当人の自主性に任せよう。うん。
 
 あとミカエラ、お前、自分の種族を自覚したせいか無自覚に特性発揮してないか?
 二人とも面倒くさいな、おい!
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