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プロローグ

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 ゆっくりと暗い方へと落ちていく。

 目を開けているのか、閉じているのか。

 分からないけれどきっとこれは良いことではない。

 だって私、断頭台で首を落とされて死んだはずなのだもの。
 たった17歳の若さで。

 私自身には何の罪もないのに。ないはずなのに。
 それとも気付かなかったことが罪なのかしら。負けてしまったことが、罪なのかしら。

 あの女、忌々しい平民の、血の繋がりなんて一滴もないのに異母妹を名乗って出てきた卑しい女!

 何が私は貴方の娘です、よ!ただ髪色が、瞳の色がお父様によく似ていただけのくせに!顔立ちも似ていたけれどただの偶然だわ!そうじゃなければ魔法よ!仕事ばかりで厳格でお母様を顧みなかったお父様に私以外の子供がいるはずがない!

 いない、はずなの。
 いてはならないの。

 なのに、どうして。

 どうしてその女には笑いかけるの?どうしてその女の頭を撫でるの?どうしてその女は傍に置くの?
 私には笑いかけてくれないのに。褒めてくれないのに。撫でてくれないのに。遠ざけているのに。

 どうして?どうして?どうして?

 どうして!!

 私はお父様の娘として恥ずかしくないよう礼儀も作法も勉学も立ち居振る舞いも言われたことはなんだって頑張ってきたのに! 
 どうして、貴族としての振る舞いも何もできないその女を可愛がるの!?
 私とその女は一体何が違うというの!!


 私はただお父様の――貴方の一番になりたかっただけなのに。

 だから貴方に相応しくない思い上がった平民を、邪魔なその女を消そうとした――それだけだったのに。


 どうして、誰も分かってくれないの。
 悪いのは私ではなく、私を凶行に走らせたその女なのよ。

 ああ、落ちる、落ちていく。きっと天の国ではなく地の国へ。
 ただ落ちるに身を任せ、何をすることもかなわない。



 どうして私がこんな目に合うの?どうして?

 こんなこと、わたしは、望んでいなかったのに。






 だって、だってわたし、おとうさまのこと――――――――こわくて、きらいだったはずなのに。







 ――――――その時、光が弾けた。




 闇の中でもはっきりと見える、不思議な色の光。

 私はこの光を知っている。だって小さな頃はいつも見えていたんだもの。
 一人ぼっちの私にずっと優しく寄り添ってくれていた。
 だけどお母様がそのことは誰にも話してはいけない、見ないふりをしなさいって。だからずっと見えないふりをしていたの。そしてお母様が亡くなってからは本当に見えなくなってしまった。

 もしかしてこの光は、本当はずっとわたしの傍にいてくれたのかしら。
 ずっとずっと、一緒にいてくれたの?こんなところにまで。


 あなたはずっと、わたしといてくれるの?

 そうなのね。


 じゃあ、一緒にいきましょう。ずっと地の国の果てまで。

 あなたと一緒ならきっとわたし、ひとりぼっちもさびしくないわ。
 


 ――――――いっしょにいこう


 
 2つが重なる。

 そしてそのまま、落ちていく。

 でももう怖くない。
 この先にどんなことが待ち受けていようと、一緒ならきっと大丈夫だと思えたから。

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