74 / 132
勇者と冥王のママは暁を魔王様と
第七章・勇者の左腕奪還大作戦16
しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆
現在、イスラは精霊界から冥界へと転移していた。
教団が調合した薬を調査し、解毒剤を作る為の原材料を探して採取しているのである。
今イスラの目的は一つ、人間界を救うこと。
真に人間界を救うには、国ではなく人間を救わなくてはならない。それには人間一人ひとりを救うための解毒剤が必要だと考えたのだ。
解毒剤の原材料を採取することは簡単なことではなかったが大きなヒントがイスラを助けた。それは以前ブレイラが教えてくれた『薬草の中には対になって生息しているものがある』という言葉である。
イスラは即急に教団が開発した薬の原材料を解明し、それの対になっている薬草を重点的に調べたのだ。
イスラはまず人間界で薬草の採取と精査を行なった。続いて魔界に生息する薬草も必要になったが、その採取と精査はフェリクトールに任せることができた。
そして精霊界の薬草は精霊王に直接要請したのである。
イスラが一人で精霊界に転移すると精霊界はちょっとした騒ぎになったが、精霊王フェルベオはイスラが転移してくると分かっていたようだった。
フェルベオは今までのことをすべて把握していたようで、精霊界の薬草の採取と精査を引き受けてくれた。ついでに。
「勇者殿、母君との休暇はどうだった。たっぷり甘やかしてもらったのか」
「ああ、楽しかった。俺はブレイラの王様になったんだ。他にもブレイラと」
「もういい分かった。それ以上は話さなくていい」
「あんたが聞いたんだろ」
「……からかったつもりだったんだが」
「なんだと?」
イスラはイラッとしたが、勇者対精霊王の一騎打ちをしている場合ではない。
フェルベオは呆れた顔をしていたが、最後に同格の王としてイスラを試す。
「王ならば、人間界の騒乱を止めてみせろ」
精霊王フェルベオはそう言い放つと、「高みの見物をさせてもらう」と楽しげに笑った。
こうしてイスラはフェルベオに見送られ、精霊界から次は冥界へと転移したのだ。
冥界に転移したイスラは周囲を見回した。
イスラの顔付きが険しいものになる。
「……まずいな。もう影響が出てきたか」
目の前に広がる景色は、一見、以前ブレイラ達と訪れた時と変わらないように見えた。
だがよく見ると、所どころに萎れた花や朽ちた草木がある。以前より森全体から生気が薄れているような気がした。
やはり冥界は厄介だ。
『冥界』は四界のなかで最も取り扱いが難しい世界だといえる。なぜなら現在の冥界は創世期、良くも悪くも無垢な世界だ。
しかも冥界の王はゼロス。まだ幼い王だった。
創世期の未熟な世界と未熟な王、組み合わせは最悪だ。四界において冥界は最も守護の弱い世界といえるだろう。それは外部からの影響や、力の波及を受けやすいという事である。
「急ごう」
イスラは薬草を探して足早に冥界の森を進んだ。
早くしなければ以前は群生していた薬草が枯れてしまう。そうなる前に必要な薬草を採取しなければならなかった。
◆◆◆◆◆◆
現在、イスラは精霊界から冥界へと転移していた。
教団が調合した薬を調査し、解毒剤を作る為の原材料を探して採取しているのである。
今イスラの目的は一つ、人間界を救うこと。
真に人間界を救うには、国ではなく人間を救わなくてはならない。それには人間一人ひとりを救うための解毒剤が必要だと考えたのだ。
解毒剤の原材料を採取することは簡単なことではなかったが大きなヒントがイスラを助けた。それは以前ブレイラが教えてくれた『薬草の中には対になって生息しているものがある』という言葉である。
イスラは即急に教団が開発した薬の原材料を解明し、それの対になっている薬草を重点的に調べたのだ。
イスラはまず人間界で薬草の採取と精査を行なった。続いて魔界に生息する薬草も必要になったが、その採取と精査はフェリクトールに任せることができた。
そして精霊界の薬草は精霊王に直接要請したのである。
イスラが一人で精霊界に転移すると精霊界はちょっとした騒ぎになったが、精霊王フェルベオはイスラが転移してくると分かっていたようだった。
フェルベオは今までのことをすべて把握していたようで、精霊界の薬草の採取と精査を引き受けてくれた。ついでに。
「勇者殿、母君との休暇はどうだった。たっぷり甘やかしてもらったのか」
「ああ、楽しかった。俺はブレイラの王様になったんだ。他にもブレイラと」
「もういい分かった。それ以上は話さなくていい」
「あんたが聞いたんだろ」
「……からかったつもりだったんだが」
「なんだと?」
イスラはイラッとしたが、勇者対精霊王の一騎打ちをしている場合ではない。
フェルベオは呆れた顔をしていたが、最後に同格の王としてイスラを試す。
「王ならば、人間界の騒乱を止めてみせろ」
精霊王フェルベオはそう言い放つと、「高みの見物をさせてもらう」と楽しげに笑った。
こうしてイスラはフェルベオに見送られ、精霊界から次は冥界へと転移したのだ。
冥界に転移したイスラは周囲を見回した。
イスラの顔付きが険しいものになる。
「……まずいな。もう影響が出てきたか」
目の前に広がる景色は、一見、以前ブレイラ達と訪れた時と変わらないように見えた。
だがよく見ると、所どころに萎れた花や朽ちた草木がある。以前より森全体から生気が薄れているような気がした。
やはり冥界は厄介だ。
『冥界』は四界のなかで最も取り扱いが難しい世界だといえる。なぜなら現在の冥界は創世期、良くも悪くも無垢な世界だ。
しかも冥界の王はゼロス。まだ幼い王だった。
創世期の未熟な世界と未熟な王、組み合わせは最悪だ。四界において冥界は最も守護の弱い世界といえるだろう。それは外部からの影響や、力の波及を受けやすいという事である。
「急ごう」
イスラは薬草を探して足早に冥界の森を進んだ。
早くしなければ以前は群生していた薬草が枯れてしまう。そうなる前に必要な薬草を採取しなければならなかった。
◆◆◆◆◆◆
20
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる