二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N

文字の大きさ
上 下
276 / 291
十八章 分解した心 (学園編・1)

二百七十四話 〈精〉

しおりを挟む



「……今度はあんたが相手? いいわよ、私が相手に……」
「私? ……何言ってるんだ? お前たちはチームだ、でかかってきてもらう……そうでもしないと話にならない。」
「「「「…………!?」」」」
(……本気か、ウルス?)

 ウルスが言った挑発的な勝負内容に、精霊族の4人が固まる。それも無理はない、何せ今のウルスのステータスは僕の倍程度……1対1ならともかく、4人を相手するには難しいに違いない。




名前・ウルス
種族・人族
年齢・16歳

能力ランク
体力・245
筋力…腕・231 体・274 足・288
魔力・250

魔法・18
付属…なし
称号…なし





(ステータスすら操る……恐ろしい奴だ。)

 彼曰く、神界魔法を使わずとも体の魔力と力を操る? ことで他人から見えるステータスを操作できるだけではなく、実際にその見える能力に準じた身体になるとか……次元が違いすぎる話なのでよく分からないが、つまりウルスはこのステータスで彼女らと戦うつもりだろう。

「な、舐めてるの!? この私たち4人があんた1人負けるとでも、本気で!!?」
「4人じゃない……マルク、お前を含めた5だ。顔合わせを兼ねた擦り合わせってところだ。」
「ぼ、僕も……?」
「さ……流石にそれは無茶じゃない? えっと……ウルス? 私たちって結構強いってここじゃ有名なんだけど、試合にならないよ?」

 強気過ぎる提案に、エルサ=ミラストだけでなく蜜柑色の髪をした女の子も苦言をていする。その感想は至って当然で、いくらウルスがステータス以上の力を持っていたとしても、複数相手に勝てるわけがない……そう思っていたが、どうやら彼はその壁すら生ぬるいようだった。

「なら、こうしよう…………3でいいか。」
「ん? ……円を書いてどうした? というか何でボックスに墨汁が……」

 すると、ウルスは急にボックスから墨のような液体を取り出し、自身が突き刺した剣を中心に円を描く。その大きさは何とも言えない微妙なもので……しかし、舞台の広さと比べればとてもとは呼べない範囲だった。

(……まさか……!?)
「……っ、そこから出ない……!?」
「察しがいいな……リリー=ミラスト。戦いの最中、俺はこの半径約3メートルの円の外に出ない。出た時点で俺の負け……これでやっとちょうどいいハンデになるな。」
「ど……どこまでつけ上がれば気が……! 大体、この男と組むなんて私は……」
「イレギュラーの一つや二つ、乗り越えられないようじゃ三国会議で勝てるわけもない……それとも、自信がないのか?」
「っ……!」

 ウルスの攻撃的な発言に、ついにエルサ=ミラストは押し黙ってしまう。これが圧倒的な力を持つ者の自信…………しかし、どこか





『止めてやる、お前を。』


『……その程度か、世界を救った英雄は。』





(……言葉が、以前より強い。変わったのか、ウルスも……?)


 ……思えば、彼は学院のことをどう整理させたのか。あの仲間たちの誰も連れて来ず、わざわざ僕を選んで……それに、表情も前より堅い。一体何があったのか……

「それで、どうする? 勝つ見込みが無さそうなら戦わなくても……」
「やるわよ……やればいいんでしょ!! でもその代わりあんたが負けたらその指導者ってやらを辞退してもらうから! いい!?」
「……いいのですか、ウルス?」
「はい……それじゃ、時間をやる。作戦でも立ててこい。」
「言われなくても、ほらみんな!」
「……あの、あなたも。」
「あ、あぁ……」

 勢い任せな流れに呆然としていると、エルサ=ミラストの妹らしき白銀の少女に促され、彼女らの跡をついていく。そして、ウルスに聞かれないように縮こまりながら作戦会議を始めた。

「じゃあ作戦だけど、いつもの陣形で……」
「ちょっとちょっと、その前にこの人のことをちゃんと聞かないと! っていうか私たちの自己紹介もしておかないとね!」
「た、頼む。」

 元気いっぱいな蜜柑色の少女の提案により、まずはその彼氏? である灰色髪の男が喋り始めた。

「俺はイルア、両手剣使いで得意属性は土、がっつり近接型だ。よろしくな。」
「かっこいい、イル……」
「いいや、君の方が可愛いよナル……」
「「「…………」」」

 身長は僕よりやや高め、少し長い前髪をサラッと流す男前なイルアにナルと呼ばれた蜜柑色がまたもや灼熱の愛情劇を見せる。こんな人前でイチャつけるなんて……ある意味大物な2人なんだろうか。

「ねぇ、あんたが言い出したんでしょナルミ、そういうのは後にして!」
「あっ、ごめんごめんエルサ、ついうっかり……で、私の名前は盾使いのナルミ! 見ての通り私とイルは血よりも濃い縁で繋がってるから、よろしくね!」
「……何がよろしくなんだ……?」
「彼女なりの挨拶です……暖かく見守ってあげてください……」

 何をどう反応していいのか分からずボヤくと、こちらもなんとも言えない表情で白銀の少女が擁護していた。こんな暑さをこれから毎日見せられるとなると……気が重い。

「……次は私ですね。リリー=ミラスト、そこのエルサ=ミラストの双子の妹です。武器はレイピア、光属性が得意です……これからよろしくお願いしますね。」

 白銀の少女……リリー=ミラストは温和な優しい笑顔で僕に小さくお辞儀をする。姉よりも小さな体であるものの、そのお淑やかさと可憐さは別の美しさを持ち合わせており……正直、とても彼女の妹とは思えないほどの可愛らしい人だった。

「はい、私はエルサ=ミラスト……これでいいわよね?」
「姉さん、まだ彼の自己紹介がまだですよ。」
「名前はさっき聞いたでしょ、時間の無駄よ。」
「まあまあ、エルサは顔見知りらしいけど私たちは何も知らないし……それに、何が得意か聞いといた方が作戦も立てやすいでしょ? 無駄じゃないって。」
「っ……なら手短に話して。」
(……忙しないな。)

 ……本人を目の前にここまで嫌悪感をあらわにされると、逆に何も感じなくなるものだ。それも周りは理解しているようだし……今さら変えられるものでもないのだろう。それこそ気にするだけ無駄だ。

「……改めて。僕はマルク=アースト、片手剣で得意な属性とかは無いかな。近接でも後衛でも大丈夫だけど……」
「だけど?」
「…………言わせてもらうけど多分、今から考える作戦ってのもあんまり意味を成さないと思うよ。」
「……どういう意味だ、アースト。」

 



名前・イルア
種族・精霊族
年齢・16歳

能力ランク
体力・181
筋力…腕・174 体・166 足・182
魔力・149

魔法・16
付属…なし
称号…【力の才】
   



名前・ナルミ
種族・精霊族
年齢・15歳

能力ランク
体力・150
筋力…腕・180 体・177 足・161
魔力・141

魔法・15
付属…なし
称号…【守護者しゅごしゃ】(発動時、自身の耐久力、持久力を上昇させる)



名前・リリー=ミラスト
種族・精霊族
年齢・16歳

能力ランク
体力・171
筋力…腕・166 体・163 足・179
魔力・178

魔法・17
付属…なし
称号…【力の才】
   【魔法の才】
   【能力のうりょく受諾者じゅだくしゃ】 (効果的な付加魔法を受ける時、その恩恵を増加させることができる。また、そういった付加魔法を受けることを認否できる。)





「君たちのステータスは確かに高い……本来なら、ウルスくらいの実力者も簡単に倒せるかもしれない。」
「なに、ステータスで測ってるのあなた? あの程度人数差でいくらでも……」
「いや、そういう問題じゃない……ウルスとの戦いで、んだ。」
「……え?」

 


『何だ、自覚がないのか? お前はその……いや、の力を自分の力だと思い込んでいるだろ? それはいくら何でも都合が良すぎるとは考えないのか。』




 ……あの言葉も、今となっては耳が痛い。


「あいつの前では、どれだけ力が強かったり、魔法が優れていて、武器が業物であっても……何一つ、意味がない。常にこちらの裏を取って予想外の動きを見せる……絶体絶命な状況を、路上の小石を転がすだけでひっくり返せる才能がある。」
「は……? 結局何が言いたいの、あなたは?」
「最初にも言った通り、今から作戦を緻密に練っても確実に潰される。だから考えるのは誰が何をするか……簡単な役割だけにした方がいい。崩された時が怖いしね。」
「……とてもそんな風には見えないが……どうする、エルサ?」

 イルアの懐疑的な雰囲気に、エルサは複雑な表情をしながらも思考する素振りを見せる。てっきりこれも頭ごなしに否定してくると思ったが……そこまで非合理な女ではないらしい。これで聞く耳を持たれなかったら流石にきつかったな。

「……だったら、これだけ。イルアとナルミは前衛、リリーは中盤、私と……あなたは後衛。これだけを頭に入れて後は臨機応変に、いい?」
「分かった。」「うん!」「はい。」
「あと、最後に言っておくけど……くれぐれも足手纏いにはならないでね、あなた。私が邪魔だと判断したら一切動かないで。」
「ちなみに、俺たちは一年でも学園最強……周りからは『超新星スーパールーキー』って呼ばれてるんだ。足手纏いかはともかく、置いてかれないように頼むぞ?」
「……善処するよ。」


 イルアの自慢? に僕が返事をしたところ、相変わらず苦虫を噛み潰したような似合わない顔で彼女……エルサは、暇そうに空を眺めていたウルスに声をかける。

「できたわよ、準備……そっちこそ、覚悟はできた?」
「……いつでも、覚悟はできてる。動揺を隠せてないお前よりはな。」
「減らず口を……!」
「では、この試合は私が見届けます……両チーム、配置に!」

 またもや喧嘩が繰り広げられると思ったところ、ハーミア=フレッドが両者の間に入って試合開始を促す。そして、お互いに戦闘体制を取り……早々に、合図は切られた。



「それでは……勝負、始め!!」

「どいつもこいつも……人族のくせに!!」



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

プリズム―黒と白と七色の冒険譚―

Kyon*03
ファンタジー
『ブラックホール!』……とメイド服を着た銀髪の女性が言い放ち、主人公タリムは“赤のオーラ”が使えなくなってしまった。 赤のオーラが使えなくなったタリムは、オーラを取り戻すため、幼馴染のオペラとともに旅に出るのだが……。 ※小説イラストは「すぐつかレルンさん」に描いてもらいました! X(旧:Twitter)⇒ @Sugutsuka_Rerun

第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門
ファンタジー
宇宙の崩壊と共に、別宇宙の神々によって魂の選別(ドラフト)が行われた。 野球ゲームの育成モードで遊ぶことしか趣味がなかった底辺労働者の男は、野球によって世界の覇権が決定される宇宙へと記憶を保ったまま転生させられる。 その宇宙の神は、自分の趣味を優先して伝説的大リーガーの魂をかき集めた後で、国家間のバランスが完全崩壊する未来しかないことに気づいて焦っていた。野球狂いのその神は、世界の均衡を保つため、ステータスのマニュアル操作などの特典を主人公に与えて送り出したのだが……。 果たして運動不足の野球ゲーマーは、マニュアル育成の力で世界最強のベースボールチームに打ち勝つことができるのか!? ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...