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十七章 三国会議 (選抜戦・1)
二百五十七話 控え
しおりを挟む『カーズ=アイク side』
「はぁ、はぁ……きついな、流石に……」
「大丈夫ですか、ソーラ……すみません、あなたばかりに。」
僕たちの周りにいたすべての敵を倒し切り……特に、前線でずっと戦っていたソーラが息を切らして膝をつく。流石にこれほどの相手を一気にするのは、後衛の僕でもかなり疲れたが……これで一息つける。
「……もう、ほぼ知った顔しか残ってませんね。」
「17……人? まだ終わりじゃないのか? これ以上減ったら……」
「全員、一度耳を傾けてくれ!!」
その時、席から見ていた学院長が大きな声を出して舞台に降りてくる。 ……あの様子、もしかして…………
「現在、残っているのは18人! 今ここに残っている者が三国会議の出場選手となる!!」
「おっ……じゃあ、勝ったのか俺たち! やったなカーズ!!」
「ええ、これで僕たちも…………ん?」
ソーラの喜びを共感した僕だったが……ふと、学院長の言葉に引っかかる。
(……18人? ソーラは17人って……あれ、1人足りない?)
「だが、まだ喜ぶのは早い!! これは控えの3人を含めた人数であり、今回は15人になるまで……」
「『よそ見』するなよ、お二人さん。」
その言葉は、散々言われたものだった。
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『ライト=ガッラ side』
「がはぁっ……!??」
「ぐっ、ソーラ……!!」
(……無駄な一言だったな。)
大混戦の中、なるべく気配を消して俺は生き残ることに専念していた。俺の目印は2つの剣だけであったため、ボックスにしまって集団に紛れられたら一般人と変わらない……そして、ほぼ万全の状態でここまでこれた。
加えて、学院長の出現で油断し切った2人がいるってもんだ……ここで狙わないのは馬鹿だろう?
「ガッラ、さん……いつの間に……!?」
「……言っておくが、誰も『終了』とは言ってない。だから……これもアリだそうだ。」
一応、俺は学院長に目で確認を取ったが……どうやらお咎めはないようで、それはつまり俺の行動も作戦のうちってことだ。卑怯と言われればそこまでだが…………別に聖人気取りしているわけじゃないしな。
「くっそ……してやられた………!」
「悪く思うなよムルス、俺だってただ考えなしに狙ったわけじゃない……100人以上をぶっ倒すような奴らを見過ごせって方が無理だろ?」
「……仕方ないです、ソーラ。受け入れるしか……でも、代わりに僕が倒しますのでご安心を!」
「あ、安心ってお前……まあそうだな、頑張れよカーズ!! そのズル野郎を倒しちまえ!!」
「ふっ、酷い言い草だ。」
そんな捨て台詞を吐きながら、まともに受けたムルスはアイクを応援しながら去っていく。また、その言葉に押された彼は槍を今一度構え直し、俺の出方をじっくり観察していた。
「……にしても、よく反応できたな。我ながら完璧な一撃だと思ったんだが。」
「そりゃあ……何度もやられたらいい加減、学習しますよ。僕だって人間なんですから。」
「学習? ……なら、これも学んでいけ。『武装・ど「その前に予習しないかお前たち!!」……え?」
刹那、稲妻が僕たちの間に走っていく。そのあまりにも速すぎる雷光に揃って固まっていると……クルイさんは首につけている巻き物を口元まで上げて、電気を吐いた。
「……冬は、体に電気が溜まりやすいんだ。そろそろ習うから覚えとけ。」
「…………誰でも知ってますよ、それ。」
「俺は知らなかったけどな。」
「ほらな?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ワール=メイルド side』
「『ドラゴンブレス・シャイン』! ……はぁ!? ほんと避けるなお前!!」
「取り柄なので、ありがとうごさいます。」
「褒めてねぇよ!」
光のドラゴンを伸ばすが、それでもアンクル=ロードは最低限の動きで躱してくるため、流石に苛立ちが頭に昇ってきた。さっきから何をしても当たらない……でかい図体のくせに!
「めんどくさい奴だな、モテないだろお前!!」
「モテる? ……なら、手を抜く男が好みと? 意外と趣味が 貧相 なのですね。」
「あ? 喧嘩売ってんのかお前……これでも成長してんだよ!!」
『ツインドラゴンブレス・シャイン』
『貧相』という言葉が私の鶏冠に刺さったので、2つ目のドラゴンでさらに追い込んでいこうとしたが……それでもロードは顔色ひとつ変えず、こちらの切れ具合に疑問を浮かべていた。
「……怒ってますか? 確かに言い過ぎました、しかし勝負事に手を抜くような男を好くのは矮小というか、貧しい……あっ、これも駄目ですね。すみません。」
「わ、わざとだろお前……!! だからモテねぇんだよっ!!!」
「…………?」
……こいつ、許さん。あと2、3人だし……本気で潰してやる!!
『ドラゴンワーム』
「来いよ、大男。その体に女心って奴を叩き込んでやる!!」
「は、はぁ……よく分かりませんが、行かせてもらいます!」
私は2つのドラゴンを口では無く腕から発動し、とぐろを巻くようにグルグルと回していく。それに対しどこまでも分からないのか、ロードは背にかけていた薙刀を構えて突っ込んできた。
(直線的……意外と単調だ。)
「伸ばさないのなら、間合いはこちらが有利で、すっ!!」
「おっと……当たらないと意味ないだろ?」
ロードの突進を翻して回避し、私は拳を顔面目掛けて突き出す。すると、それでもこいつにとっては朝飯前なのか、ほんの少し頭を下げるだけでそれを空かさせていたが…………
「そちらこそ、さっきからいちげきぃがぁっ!?」
「……誰が伸ばさないって言ったんだ?」
ロードが煽り切る前に、拳から飛ばしていた光を反転させて後ろからぶっ飛ばしてやった。そして……私は堂々と言ってやった。
「まず一つ……体のことは指摘しない! 当たり前の話だろ!?」
「ぐっ…………えっ? い、言ってませんが……というか、あなたも私のことを大男だと」
「細かいところも減点だ!!」
「は、はい……?」
…………よし、すっきりした。
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