上 下
259 / 291
十七章 三国会議 (選抜戦・1)

二百五十七話 控え

しおりを挟む



『カーズ=アイク side』



「はぁ、はぁ……きついな、流石に……」
「大丈夫ですか、ソーラ……すみません、あなたばかりに。」

 僕たちの周りにいたすべての敵を倒し切り……特に、前線でずっと戦っていたソーラが息を切らして膝をつく。流石にの相手を一気にするのは、後衛の僕でもかなり疲れたが……これで一息つける。

「……もう、ほぼ知った顔しか残ってませんね。」
「17……人? まだ終わりじゃないのか? これ以上減ったら……」
「全員、一度!!」


 その時、席から見ていた学院長が大きな声を出して舞台に降りてくる。 ……あの様子、もしかして…………


「現在、残っているのは18人! 今ここに残っている者が三国会議の出場選手となる!!」
「おっ……じゃあ、勝ったのか俺たち! やったなカーズ!!」
「ええ、これで僕たちも…………ん?」

 ソーラの喜びを共感した僕だったが……ふと、学院長の言葉に引っかかる。

(……18人? ソーラは17人って……あれ、1人足りない?)
「だが、まだ喜ぶのは早い!! これは控えの3人を含めた人数であり、今回は15人になるまで……」













「『よそ見』するなよ、お二人さん。」



 その言葉は、散々言われたものだった。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 











『ライト=ガッラ side』



「がはぁっ……!??」
「ぐっ、ソーラ……!!」
(……無駄な一言だったな。)

 大混戦の中、なるべく気配を消して俺は生き残ることに専念していた。俺の目印は2つの剣だけであったため、ボックスにしまって集団に紛れられたら一般人と変わらない……そして、ほぼ万全の状態でここまでこれた。
 加えて、学院長の出現で油断し切った2人がいるってもんだ……ここで狙わないのは馬鹿だろう?

「ガッラ、さん……いつの間に……!?」
「……言っておくが、誰も『終了』とは言ってない。だから……これもアリだそうだ。」

 一応、俺は学院長に目で確認を取ったが……どうやらお咎めはないようで、それはつまり俺の行動も作戦のうちってことだ。卑怯と言われればそこまでだが…………別に聖人気取りしているわけじゃないしな。

「くっそ……してやられた………!」
「悪く思うなよムルス、俺だってただ考えなしに狙ったわけじゃない……100をぶっ倒すような奴らを見過ごせって方が無理だろ?」
「……仕方ないです、ソーラ。受け入れるしか……でも、代わりに僕が倒しますのでご安心を!」
「あ、安心ってお前……まあそうだな、頑張れよカーズ!! そのズル野郎を倒しちまえ!!」
「ふっ、酷い言い草だ。」

 そんな捨て台詞を吐きながら、まともに受けたムルスはアイクを応援しながら去っていく。また、その言葉に押された彼は槍を今一度構え直し、俺の出方をじっくり観察していた。

「……にしても、よく反応できたな。我ながら完璧な一撃だと思ったんだが。」
「そりゃあ……何度もやられたらいい加減、学習しますよ。僕だって人間なんですから。」
「学習? ……なら、これも学んでいけ。『武装・ど「その前に予習しないかお前たち!!」……え?」


 刹那、稲妻が僕たちの間に走っていく。そのあまりにも速すぎる雷光に揃って固まっていると……クルイさんは首につけている巻き物を口元まで上げて、電気を吐いた。


「……冬は、体に電気が溜まりやすいんだ。そろそろ習うから覚えとけ。」
「…………誰でも知ってますよ、それ。」
「俺は知らなかったけどな。」
「ほらな?」












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


















『ワール=メイルド side』



「『ドラゴンブレス・シャイン』! ……はぁ!? ほんと避けるなお前!!」
取り柄と えなので、ありがとうごさいます。」
「褒めてねぇよ!」

 光のドラゴンを伸ばすが、それでもアンクル=ロードは最低限の動きで躱してくるため、流石に苛立ちが頭に昇ってきた。さっきから何をしても当たらない……でかい図体のくせに!

「めんどくさい奴だな、モテないだろお前!!」
「モテる? ……なら、手を抜く男が好みと? 意外と趣味が 貧相 なのですね。」
「あ? 喧嘩売ってんのかお前……これでも成長してんだよ!!」
『ツインドラゴンブレス・シャイン』

 『貧相』という言葉が私の鶏冠とさかに刺さったので、2つ目のドラゴンでさらに追い込んでいこうとしたが……それでもロードは顔色ひとつ変えず、こちらの切れ具合に疑問を浮かべていた。

「……怒ってますか? 確かに言い過ぎました、しかし勝負事に手を抜くような男をくのは矮小わいしょうというか、まずしい……あっ、これも駄目ですね。すみません。」
「わ、わざとだろお前……!! だからモテねぇんだよっ!!!」
「…………?」

 ……こいつ、許さん。あと2、3人だし……本気で潰してやる!!

『ドラゴンワーム』
「来いよ、大男。その体に女心って奴を叩き込んでやる!!」
「は、はぁ……よく分かりませんが、行かせてもらいます!」

 私は2つのドラゴンを口では無く腕から発動し、とぐろを巻くようにグルグルと回していく。それに対しどこまでも分からないのか、ロードは背にかけていた薙刀を構えて突っ込んできた。

(直線的……意外と単調だ。)
「伸ばさないのなら、間合いはこちらが有利で、すっ!!」
「おっと……当たらないと意味ないだろ?」

 ロードの突進を翻して回避し、私は拳を顔面目掛けて突き出す。すると、それでもこいつにとっては朝飯前なのか、ほんの少し頭を下げるだけでそれを空かさせていたが…………


「そちらこそ、さっきからいちげきぃがぁっ!?」
「……誰が伸ばさないって言ったんだ?」

 ロードが煽り切る前に、拳から飛ばしていた光を反転させて後ろからぶっ飛ばしてやった。そして……私は堂々と言ってやった。




「まず一つ……体のことは指摘しない! 当たり前の話だろ!?」
「ぐっ…………えっ? い、言ってませんが……というか、あなたも私のことを大男だと」
「細かいところも減点だ!!」
「は、はい……?」


 …………よし、すっきりした。



 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる
ファンタジー
目覚めるとそこは地球とは違う世界だった。 怒る女神にブサイク認定され地上に落とされる俺はこの先生きのこることができるのか? 初投稿でのんびり書きます。 ※23年6月20日追記 本作品、及び当作者の作品の名称(モンスター及び生き物名、都市名、異世界人名など作者が作った名称)を盗用したり真似たりするのはやめてください。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...