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十七章 三国会議 (選抜戦・1)
二百四十七話 考えて
しおりを挟む『ローナ side』
「さぁ、どんと来い!!」
「行くぞっ、おらぁっ!!」
私はソーラの振り下ろされる剣を横に避け、後ろに下がって様子を見る。
現在、私たちは数日後に行われる三国会議の選抜戦にに向けて特訓していた。ソーラとカーズがそれぞれ武身流と化身流を発動して、それを私は対処する……お互い、合理的な特訓だ。
「ほら、遅いよソーラ!そんなんじゃ当たらないよ!!」
「分かってる、けど重い……!!」
あまり詳しいことは分からないが、ソーラの魔法は武器、カーズは体が極端に重くなるようで、それも今回はさらに上の段階の魔法のせいであからさまに遅くなっており、2人相手でも難なく捌くことができていた。
しかし……だからといって油断はできない。
「『水弾』!」
「うぉ、速っ!!?」
かなり遠くに立っていたカーズが放った初級魔法は私の顔面スレスレを通り過ぎ……舞台の壁を簡単にひび割ってしまう。それを見た私はその威力の強化っぷりに震えながら斧を構える。
「……超級、超えてない?」
「かも、です…ねっ!!」
「よそ見すんなよっ!!」
カーズがそう返事した瞬間に、ソーラが再び振り下ろしてくる。そして、今度はそれを斧で受け止めようとした所……その溢れる光に触れただけで弾かれ、完全に無防備な状態へとなってしまった。
(フ、『フレイムアーマー』!!)
「ぐっ…………!」
「くっ、おしい!」
私は反射的に足だけ炎を包ませ、加速して何とか直撃を避けることに成功したが……武身流の余波がこちらを襲い、魔力防壁を傷付けさせる。
「つ、強すぎ……さすが英雄とウルスの魔法!」
「武身流、は俺の案、だぞ……はぁぁ、疲れる!!」
「立つのも、やっと、です……」
2人は既に限界を迎えているのか、目に見えるほど動きのキレがほとんど無くなっていた。その証拠に、さっきのを避けれたのも、ソーラがへばって剣の落下に身を任せていたおかけだ…………これは、休憩したほうがいいかも?
「行くぞ……ローナ!」
「えっ、いけるのって聞いてる!?」
「ソ、ソーラ、焦ると調整が!」
「うぉぉぉっ!!!」
なんて考えていると、ソーラはその場で水平に剣を斬ってきていた。炎が飛んでくる……と思考した次の瞬間には、今まで見たこともない紅炎の斬撃が私の腹に迫ってきていた。
「えっ、ちょうわぁぁっ!!?」
「ま、間違え、た……がはぁ。」
「ロ、ローナさん……ぐふっ。」
私は壁に叩きつけられ、ソーラとカーズは力尽きてその場に倒れ込む。その景色はおそらく……死屍累々だ。
「ここまで、か……」
「…………3人とも、何やってるの?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ローナ side』
「『フィーリング・ライト』……もう、無茶したらダメだよ?」
「ありがとございます……ライナ。」
「大体、ソーラくんとカーズくんも使いこなせてない魔法を人にぶつけないほうがいいよ? 特に強い魔法とかなら、魔力防壁も貫通しちゃうかも知れないし。」
「そ、そうだな……すまん。」
「まだ、1人で特訓したほうがよさそうですね……」
ライナに光を見るだけで回復できる魔法を使ってもらい、軽く捻ってしまった足を治してもらう。また、ボロボロな私たちを見て彼女はため息を吐く。
「……まだ、三国会議の選抜戦があるだけなんだから、新しいことより今できることを鍛えたほうがいいよ? 時間もないし、今は目の前のことを見据えないと。」
「目の前……」
……そうなると、ベリルアーマーの更なる強化……結局、ウルスに完全上位互換の魔法をあっさり作られてたし、もっと何か…………
「……そういえば、ライナって武器変えた? あのチェンジブレード? はもう使わないの?」
「…………いや、大会で使った武器、ヘリオースは……今の私じゃ扱い切れない。だから、もうしばらくはチェンジブレードでやってみる。」
「へー、原点に戻るってやつ?」
原点……私の原点って、なんだろう。フレイムアーマーはそうだとして、それを見直すのはもうとっくにやってしまってる。戦い以外で言えばユウ、もといウルスのことだけど……それを振り返っても強くなる情報はない。
「ねぇ、ソーラとカーズって原点はある?」
「? 話の流れで言うと……当然、原点はこの武器だ。」
「剣と盾……昔からこだわってましたね。」
「剣はともかく、『盾』って珍しいよね。魔法を使うのに邪魔だし、実際どうなの?」
昔話ではよく出てくる騎士の武器だが、現実じゃあまり利点はない。魔力防壁の存在もあるし、何より手が1つ塞がることで魔法が非常に使いにくくなる。その分、良い所もあるのだろうが……使ってる人はほとんど見たことがない。
「どうって、昔からこれだから何も思うことはないぞ? むしろ、武身流を活かすにはこの構成が一番だ!」
「へぇ……カーズはどうなの?」
「僕は武器より魔法ですね、最初に初めて使ったのは……アクアアローでした。あの時の感動は未だに残っていますよ。」
カーズは本当に覚えているのか、手のひらを閉じたり開いたりして嬉しそうに呟く。
「魔法は、僕に可能性を教えてくれた……そういう意味では、原点と言えますね。」
「魔法かぁ……人それぞれだね、当たり前だけど。」
…………今のところ、ピンとくるものはない。それはつまり、今の私に広がる可能性は無いということ…………
『……………まだだぁぁっ!!!!!』
『ぐぅっ…………?』
……いや……まだ、あった。
(あれは……偶然だったのかな? でも、だとしたらあの瞬間だけウルスが手を抜いたことに……それはないな。)
ウルスは勝負に手を抜くことはあっても、情けをかけるような人間じゃない。それに加え、食らった時の顔は今までに見たことがないほどの驚愕っぷりだった……それはつまり、一瞬でも世界最強を上回ったってことだ。
「……原点っていうより、変化点……かな?」
「ん? また何か考え事でも?」
「最近多いね、ローナさんの考えてるところ。凄い集中力……」
「大方、ウルスの真似じゃないのか? あいつが考えてる時もこんな感じだし。」
「かもね……ってか馬鹿にしてない?」
『…………あぁもうっ、頭が痛くなっちゃうよ!!! ウルスはいつもこんなことしてるの!?』
『……発動と形成……イメージと仕組み…………難しいなぁ。』
……最初は、ただの真似事で、まるで頭が追いついていなかったが……ようやく、まともに考えられる力が付いた気がする。
『かもな……でも事実だ。この5日間で分かったが、ローナは単純な魔法ならともかく、複雑な魔法となると感覚に全部頼ってしまう癖がある。』
(……ここからは、考えてみよう。ひたすらに……可能性そのものを。)
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