上 下
249 / 291
十七章 三国会議 (選抜戦・1)

二百四十七話 考えて

しおりを挟む
 


『ローナ side』



「さぁ、どんと来い!!」
「行くぞっ、おらぁっ!!」

 私はソーラの振り下ろされる剣を横に避け、後ろに下がって様子を見る。

 現在、私たちは数日後に行われる三国会議の選抜戦にに向けて特訓していた。ソーラとカーズがそれぞれ武身流と化身流を発動して、それを私は対処する……お互い、合理的な特訓だ。

「ほら、遅いよソーラ!そんなんじゃ当たらないよ!!」
「分かってる、けど重い……!!」

 あまり詳しいことは分からないが、ソーラの魔法は武器、カーズは体が極端に重くなるようで、それも今回はさらに上の段階の魔法のせいであからさまに遅くなっており、2人相手でも難なく捌くことができていた。
 しかし……だからといって油断はできない。

「『水弾』!」
「うぉ、速っ!!?」

 かなり遠くに立っていたカーズが放ったは私の顔面スレスレを通り過ぎ……舞台の壁を簡単にひび割ってしまう。それを見た私はその威力の強化っぷりに震えながら斧を構える。

「……超級、超えてない?」
「かも、です…ねっ!!」
「よそ見すんなよっ!!」

 カーズがそう返事した瞬間に、ソーラが再び振り下ろしてくる。そして、今度はそれを斧で受け止めようとした所……その溢れる光に触れただけで弾かれ、完全に無防備な状態へとなってしまった。

(フ、『フレイムアーマー』!!)
「ぐっ…………!」
「くっ、おしい!」

 私は反射的に足だけ炎を包ませ、加速して何とか直撃を避けることに成功したが……武身流の余波がこちらを襲い、魔力防壁を傷付けさせる。

「つ、強すぎ……さすが英雄とウルスの魔法!」
「武身流、は俺の案、だぞ……はぁぁ、疲れる!!」
「立つのも、やっと、です……」

 2人は既に限界を迎えているのか、目に見えるほど動きのキレがほとんど無くなっていた。その証拠に、さっきのを避けれたのも、ソーラがへばって剣の落下に身を任せていたおかけだ…………これは、休憩したほうがいいかも?

「行くぞ……ローナ!」
「えっ、いけるのって聞いてる!?」
「ソ、ソーラ、焦ると調整が!」
「うぉぉぉっ!!!」

 なんて考えていると、ソーラはその場で水平に剣を斬ってきていた。炎が飛んでくる……と思考した次の瞬間には、今まで見たこともない紅炎の斬撃が私の腹に迫ってきていた。

「えっ、ちょうわぁぁっ!!?」
「ま、間違え、た……がはぁ。」
「ロ、ローナさん……ぐふっ。」

 私は壁に叩きつけられ、ソーラとカーズは力尽きてその場に倒れ込む。その景色はおそらく……死屍累々ししるいるいだ。


「ここまで、か……」
「…………3人とも、何やってるの?」













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

















『ローナ side』



「『フィーリング・ライト』……もう、無茶したらダメだよ?」
「ありがとございます……ライナ。」
「大体、ソーラくんとカーズくんも使いこなせてない魔法を人にぶつけないほうがいいよ? 特に強い魔法とかなら、魔力防壁も貫通しちゃうかも知れないし。」
「そ、そうだな……すまん。」
「まだ、1人で特訓したほうがよさそうですね……」

 ライナに光を見るだけで回復できる魔法を使ってもらい、軽く捻ってしまった足を治してもらう。また、ボロボロな私たちを見て彼女はため息を吐く。

「……まだ、三国会議の選抜戦があるだけなんだから、新しいことより今できることを鍛えたほうがいいよ? 時間もないし、今は目の前のことを見据えないと。」
「目の前……」

 ……そうなると、ベリルアーマーの更なる強化……結局、ウルスに完全上位互換の魔法をあっさり作られてたし、もっと何か…………

「……そういえば、ライナって武器変えた? あのチェンジブレード? はもう使わないの?」
「…………いや、大会で使った武器、ヘリオースは……今の私じゃ扱い切れない。だから、もうしばらくはチェンジブレードでやってみる。」
「へー、原点に戻るってやつ?」

 原点……私の原点って、なんだろう。フレイムアーマーはそうだとして、それを見直すのはもうとっくにやってしまってる。戦い以外で言えばユウ、もといウルスのことだけど……それを振り返っても強くなる情報はない。

「ねぇ、ソーラとカーズって原点はある?」
「? 話の流れで言うと……当然、原点はこの武器だ。」
「剣と盾……昔からこだわってましたね。」
「剣はともかく、『盾』って珍しいよね。魔法を使うのに邪魔だし、実際どうなの?」

 昔話ではよく出てくる騎士の武器だが、現実じゃあまり利点はない。魔力防壁の存在もあるし、何より手が1つ塞がることで魔法が非常に使いにくくなる。その分、良い所もあるのだろうが……使ってる人はほとんど見たことがない。

「どうって、昔からこれだから何も思うことはないぞ? むしろ、武身流を活かすにはこの構成が一番だ!」
「へぇ……カーズはどうなの?」
「僕は武器より魔法ですね、最初に初めて使ったのは……アクアアローでした。あの時の感動は未だに残っていますよ。」

 カーズは本当に覚えているのか、手のひらを閉じたり開いたりして嬉しそうに呟く。

「魔法は、僕に可能性を教えてくれた……そういう意味では、原点と言えますね。」
「魔法かぁ……人それぞれだね、当たり前だけど。」

 …………今のところ、ピンとくるものはない。それはつまり、今の私に広がる可能性は無いということ…………




『……………まだだぁぁっ!!!!!』
『ぐぅっ…………?』




 ……いや……まだ、

(あれは……偶然だったのかな? でも、だとしたらあの瞬間だけウルスが手を抜いたことに……それはないな。)

 ウルスは勝負に手を抜くことはあっても、情けをかけるような人間じゃない。それに加え、食らった時の顔は今までに見たことがないほどの驚愕っぷりだった……それはつまり、一瞬でも世界最強ウルスを上回ったってことだ。

「……原点っていうより、……かな?」
「ん? また何か考え事でも?」
「最近多いね、ローナさんの考えてるところ。凄い集中力……」
「大方、ウルスの真似じゃないのか? あいつが考えてる時もこんな感じだし。」
「かもね……ってか馬鹿にしてない?」





『…………あぁもうっ、頭が痛くなっちゃうよ!!! ウルスはいつもこんなことしてるの!?』


『……発動と形成……イメージと仕組み…………難しいなぁ。』




 ……最初は、ただの真似事で、まるで頭が追いついていなかったが……ようやく、まともに考えられる力が付いた気がする。



『かもな……でも事実だ。この5日間で分かったが、ローナは単純な魔法ならともかく、複雑な魔法となるとに全部頼ってしまう癖がある。』




(……ここからは、。ひたすらに……可能性そのものを。)


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...