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十五章 勝ち取るもの 『certify』
二百十三話 大嫌いなんだ
しおりを挟む「オラァァッ!!」
「…………ッ!!!」
カリストの振るわれた縦筋の大剣は、こちらの剣で滑らせて流そうとするが…………解放特有の機微で繊細な力の使い方によって、ベクトルが横に変化し一気に吹き飛ばされそうになる。
だが、1人未来を行くように俺は剣を上手く手放すと同時にしゃがみ込み、それを回避した。
「……まだダァ!!」
「知ってんだよッ!!」
カリストはこちらが攻撃を仕掛ける前に、そのまま回転して回し蹴りを繰り出すが……それも俺は地面を這うことで空かさせ、その体勢からブレイクダンスの要領で彼の足を刈り、姿勢を軽く崩させる。
そして、遠心力のまま両足でちょうど上空へ浮かんでいたC・ブレードを掴み、横に倒れながら手中に収めて腹を狙った。
「キメェな……おい!!!」
「ガッ……ふン!!!」
しかし、カリストは臆することなく俺の斬撃を反って回避、続け様にこちらの剣に大剣を当て、不安定な俺を壁まで吹き飛ばした。
このまま激突すれば魔力防壁が壊れてしまうので、剣を地面に突き立てて吹き飛ぶ方向を上に変えてから、転がるように着地して衝撃を抑える。
「…………時間は稼げた。」
「はぁ……? 今度はなんだ!!」
「界晴で、最後の魔法が溜まったってことだ。これで……逃げ場はないぞ。」
『オーバージェット』
超スピードで空を昇っていき、やがて会場全体が小さな塊として見えるくらいまでの高さに到達する。そして、剣を今一度構え…………隕石のように落下した。
『メテオジェット』
「勝つのは…………俺だ。」
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「……これで、全ての決着が付く。」
空高く飛翔したウルスは、おそらく落下攻撃を仕掛けてくる。それも……これまでとは比にならない程の威力で。
(避けるのは……無理だな。この魔力防壁じゃ衝撃波で壊れてもおかしくない。)
できる手は一つ、あいつの攻撃を受け止めて吹き飛ばす。一見、ステータスだけを考えれば簡単に思えるが……そういうものじゃないことは散々思い知らされている、いまさら油断はできない。
「…………来い。」
……最初は、下らない喧嘩だった。いや、ウルスからすれば喧嘩にもならない戯れだっただろうな。
適当にふっかけた相手……そんな奴にボコボコに負け、俺の人生は変わった。自分より小さい、熱も感じないクズ野郎に、俺は勝ちたいと。
追いかけるたびに、その背中の大きさに驚くばかりだった。『世界最強』と呼ばれる男の実力…………そして、その裏に隠された地獄のような執念。俺にはとても真似できない、無縁な話だ。
「…………やっぱり、分かり合えないな。」
そんな奴、周りの奴らに絆されるような感覚……死ぬほど痒かったが、抵抗するのも飽きてきた所に…………彼女が現れた。
自由奔放、自己中心的で人を苛立たせる天才……だが、決して能無しではなく、彼女なりの感情と信念……思いは、最近何となく汲み取れるようになってきた。
だからこそ……嫌いだ。具体性のない抽象的なその考えが…………大嫌いなんだ。
「カリストォッ!!!」
「ウルスゥゥッッ!!!!!」
…………ならば、証明するしかない。俺の強さ、意志を……マグアの瞳に!!!!
「グォアァ、あぁぁっ!!!!?」
「潰れろ……カリスト!!!」
剣がぶつかり合い、その勢いは地面を抉り始める。また、ウルスの鬼気迫る表情はあまりにも迫力があり、その威力と共に俺の膝を付かせてしまう。
必死に、大剣を押し返そうとするが……とっくに超えた体力の限界が、腕と足を緩ませてくる。
(踏ん張れや……証明するんだろ? 俺の強さをこいつに……あいつに…………!!)
『………………勝ってぇ、タールくーんっ!!!!!』
「ちっ…………!!」
脳裏にチラつくあの言葉が、俺の意識を明確にさせる。
「分かってんだよ……当たり前だ。わざわざ口に出さなくても…………なっ……!!!!」
「…………!?」
……………………けど。
「…………ありがとな。」
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「「「「「…………………」」」」」
誰もが息を呑み、その結果を知ろうと前のめりになる。火花が、稲妻が走って砂埃を上げ…………隠された決着のために。
「…………おい、あれは………」
(…………!!)
……正直、無理だと思っていた。彼には悪いけど……『強さ』というものをこの身で知ったばかりだから。それに挑む恐怖も…………でも………………
『……そ、そこまで!! 勝者は、タール=カリスト!!! よって、冬の大会1年の部本戦、優勝者は…………タール=カリストぉっ!!!!!』
…………僕は、証明されたんだ。
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