二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

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十五章 息吹く気持ち 『face』(冬の大会編)

百九十六話 味

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「はぁー……ふぅ………えっと、二刀流の人だよね、よろしく!」
「……ローナだったか、武闘祭でキールを倒してた……どこまでの実力か、試させてもらおう。」

 本戦の1回戦、早々に第3席であるライト=ガッラと当たってしまう。以前までなら、まず間違いなく勝てない相手だったが…………


 



名前・ローナ
種族・人族
年齢・16歳

能力ランク
体力・75
筋力…腕・54 体・60 足・68
魔力・74

魔法・11
付属…なし
称号…なし


名前・ライト=ガッラ
種族・人族
年齢・16歳

能力ランク
体力・96
筋力…腕・91 体・88 足・84
魔力・111

魔法・12
付属…なし
称号…なし


 ステータス差はある……が、状況次第でどうとでもなるくらいだ。フレイムアーマーとを使い分けられたら十分勝てる可能性はある!


『続いて、1年の部本戦、1回戦第4試合ローナ対ライト=ガッラ……始め!!』



「『フレイムアーマー』……来ないの?」
「『武装・毒牙』…………そっちこそ、様子見か。」

 開始と同時に、私たちはそれぞれ魔法で自身を強化する。確か、ニイダ曰くあの毒魔法は剣にただ毒を纏わせているだけで、本質的には私のフレイムアーマーとほぼ変わらないらしい。

(二刀流だし、間合いを詰めるのは難しいけど……その時は…………)

「…………お前の、その魔法。ウルスも使ってたな。」
「……えっ?」
「知ってたか? 俺と魔法と相性がいいって……即興とはいえ、あれには肝を冷やした。」
「……??」

 唐突すぎる話に、私は首を傾げる他なかった。そういえば、ガッラはウルスと同じ調査隊だとは聞いてたけど…………

「……ガッラも、?」
「…………ああ。あいつの強さは……はっきり言って異次元だ。3席で……いや、学院に甘やかされていると気付かされた瞬間だったよ。」

 ガッラはそう言いながらも、彼の強さに対する悔しさを見せていた………











 …………、何故か不安そうな印象をこちらに抱かせてきた。


「…………。」
「……その様子じゃ、誰もんだな。」
(…………何か、知ってる。というより……。)

 ウルスとは、昨日以外帰ってきてからほとんど会話をしていない。それは、単純に冬の大会に向けて忙しいのもあったが……何より、ウルスから感じる『気配』のようなものが以前とは異なっていたせいもあるかもしれない。



『……元気っすねぇー』
『…………そうだな。』



 そして……それはウルスだけじゃ無い。ニイダもライナも、どこか暗い雰囲気を醸し出していて、彼らに聞いても何も答えてくれることはなかった。

「……調査隊でデュオ取り逃したって聞いたけど…………みんなが暗いのはそのせいじゃないんだよね?」
「…………そうとも言えるし、そうでないとも言える……何にせよ、遭遇して捉えられなかったのは事実だ。」
「誤魔化さないでよ。 ……わざわざ意味ありげに言ってるってことは、もっと重大な…………話せないようなことがあったんでしょ?」
「……………」
「教えてよ……私も、知りたいんだ。調査隊で……いや、に何が起こったのか。」

 …………多分、今回のこともきっと、ウルスが口止めしているに違いない。

 ユウのことも、本当の実力のことも、生まれ育ちのことも……今まで何度もウルスは私たちに隠してきた。それは一見、心配をかけないようにするための彼なりの優しさなのだろうが…………ある意味では、信用されていないのと同等だ。

 もちろん、ウルスはそんな冷たい人じゃない。誰よりも優しくて、強くて…………『影』を必死に隠そうとする、嘘つきなんだ。


「…………全てを話すことはできない。だが、もし俺に勝てたら……その事実の重みを少しだけ教えてやる。何せ、俺だって未だに受け入れられないからな。」
「分かった……じゃあ、全力で行くよっ!!!」
『グランドアーマー』『アーマーバーン』

 はやる気持ちを胸に、私は片足に一瞬だけ炎を集め、地面を踏み込む瞬間に弾けさせることで驚異的な推進力を生み出す。そして、ガッラに反応させる暇もなく懐に潜り込み……拳だけのフレイムアーマーで大きく吹き飛ばした。

『フレイムアーマー』
「はぁァぁッ!!!!」
「ぐほっ……!!?」

 高速の勢いを相まって、その拳の威力は計り知れず……だった一撃でガッラの魔力防壁は既に大半削れてしまっていた。

「……いい威力だ、『武放・沼酔』!!」
「くっ、『ジェット』!!」

 反撃として、ガッラは左手に持つ剣を地面に突き刺し無理やり体勢を維持しながら、右手の剣から纏われていた毒を斬撃としてこちらに飛ばしてきた。そんな矢継やつばやな行動に初撃は腕で防御する形になったものの、遅れてやってきた左の斬撃はジェットの噴射で打ち消すことに成功する。

「炎に空飛び……厄介極まりないっ!!」
「同感! でも…………私だって真剣だから!!」
「……なっ、どこに……!?」

 ガッラに同調しながらも、私は休む暇なく空は浮かび上がり……そのままガッラが米粒くらいに見えるまでの高さまで移動した。
 そして、ジェットを解除して……拳に力を溜めながら落下していく。

「逃げ場はないよ……『グランドアーマー』!」
「……まさかっ、『武放・沼酔』!」
「効かないよっ!!!」

 拳にどんどんと炎が溜まっていく中、ガッラは慌てて斬撃を飛ばしてくるが……太陽と見間違うほどに大きくなった炎拳えんけんが、私を守るように毒を焼き殺した。

 そして、私は落下の勢いとともに…………拳を振るった。



「おゥラぁッァッっ!!!!!」
「…………!!!」

 
 炎は地面へぶつかった瞬間……周囲を大きく揺らし、その熱波を瞬く間に伝わらせていく。それこそ、どこにも逃げ場のない……超範囲攻撃だった。

(……反動が………でも、これでやられてくれてたら………!)

 あまりの衝撃に、私自身にもダメージが来るが……等価交換はできてるはず。このまま押し切れば勝て…………







「…………やたらに炎を溜めて、威力を飛躍させる……。」
「…………!!? な、なんで無事なの……!?」

 しかし……炎が明けた頃に映ったのは、先ほどよりも数倍膨れ上がった毒の剣を交差させて、攻撃を受け切っていたガッラだった。
 ガッラはニヤッと薄気味悪く笑いながら、2つの剣を肩へと回し構える。

「『極装きょくそう毒牙どくが』……性質が似てるなら、同じことができてもおかしくはないだろ?」
「……真似っこは流行らないよ?」
「ああ、だから俺なりの『色』を付けてやる……『極放きょくほう沼酔しょうすい』!!」
(……速いっ!?)

 毒の剣は振り下ろされた瞬間、まるでグランドアーマーがそのまま飛んで来たかのような巨大な毒の塊が私を襲う。しかも、さっきよりも数段速くなっているため、避けようにも魔力防壁を掠らせてしまった。

「っ、すごい威力……!」
「さぁどうする!! さっきの連撃で動きが鈍ってるぞっ!」

 ……ガッラの言う通り、先ほどの無茶な落下攻撃が若干身体に堪えている。そのせいで斬撃を避けるので精一杯で、とても距離を詰めるようなことはできなかった。

(ガッラの魔力防壁はもう、吹けば吹き飛ぶ……あと一撃さえ当てられたら………!)

 しかし、私に遠距離攻撃の選択肢はほとんどない。強いていえばソーラと開発したドラゴンブレス・ファイアがあるが……私の精度ではとてもじゃないが通用しないだろう。

「ぐふっ……なら、もうしかないねっ!」
「止まったら終わりだぞ……食らえっ!!」

 私は集中するために、一度足を止める。その瞬間、ガッラの攻撃を避けることが不可能になってしまうが…………別に



「『炎』は、速さと威力。『』は…………流しと距離!!!」
『ウィンドアーマー』
「…………なっ、なんだと!!?」

 私は全身に風を纏わせ、拳をその場で思いっきり突き出した。すると、腕から吹く風は勢いよく拳の延長線上を辿っていき……また、毒の塊を壊すのではなく、私への直撃を避けさせた。
 そんな不可解な現象にガッラは驚きながら、何とか剣で風の拳を受け止めようとしたが……それすらも、吹き飛ばされながら彼の魔力防壁は破壊された。

「がぁっ……!!」
「はぁ、はぁ………」



『……そこまで、この試合の勝者はローナ!!』



 何故か、勝利の味はしなかった。


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