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十五章 息吹く気持ち 『face』(冬の大会編)

百九十三話 魔力管理

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「貴方は…カーズ=アイクさんでしたわね、ローナさんとお友達の。」
「……僕のことを知ってるんですね、意外です。」
「ローナさんから色々聞かされてますわ……それに、貴方とソーラ=ムルスさんは最近、変な特訓をしていると噂になってるので……知らない人はいませんわ。」
(……化身流と武身流のことですか。)

 予選の初戦、いきなり上位スプリア4位であるナチ=キールさんと戦うことになった僕は、やや緊張した心境で彼女の対策を練っていく。

(確か、武闘祭では不思議な石を使ってローナさんを追い詰めてた……手数勝負じゃまず間違いなく押し切られそうだ。)

 ウルスさんやニイダさんのように、過敏に動けるのならともかく……僕みたいな魔法型に回避を続けるのは難しい。ならば、道は2つ…………やられる前にやるか、かだ。


『予選第4グループ、第1試合カーズ=アイク対ナチ=キール……用意、始めぇ!!』

「……こぼせ、『レベル1・アクア』!!!」
「……!! それが、噂の……!」
「行かせてもらいます……はぁっ!!」

 体から青い光を放ちながら、僕は腕を全力で振り払う。すると、溢れる光はその軌跡きせきを辿るように伸びていき……水飛沫みずしぶきとしてキールさんの方へ飛んでいった。

「なっ……!?」
「『アクアランス』……!」
「くっ、ぐぁっ……!!?」

 水飛沫は避けられてしまったが、続け様に飛ばした高速の水の槍たちは簡単に彼女を追い詰め……その内の1本が魔力防壁をごっそり削った。
 その威力の高さに、キールは驚愕と疑問の色をぶつけてくる。

「……アクアランスは中級魔法、それのたった1本当たっただけで、この私の魔力防壁が……いくら貴方の技術が優れていても、あり得ませんわ。」
「…………しかし、これが現実です。」
「ふふっ……どうやら、私の想像以上に強敵のようですわね……『スレッドスパイダー・サンダー』!」

 キールさんは挑戦的な笑みを浮かべながら、ボックスから例の石を10個放り出し……それぞれの指から電気の糸で繋げていく。そして、その石をそれぞれ違う角度から僕目掛けて振り回してきた。

(精密な操作……だが、終着点は結局僕おなじだ!)
「ふんっ!」
「弾いても無駄ですわ!」

 化身流で向かってくる石を払い除けるが、休むことなく攻撃は飛んでくる。このままだと魔力防壁が傷つけられることはないが……先にこちらの魔力が枯渇してしまう。

(まだ、化身流の実践経験は浅い……だが、仮面たちあの戦いでこの魔法の特徴は理解できている!)

 多少鈍くはなるが、動くこと自体にもう苦手意識はない……しかし、まだ僕に動きながら化身流を完璧に扱う技術もない。けれども、この魔法は…………それ以上の可能性を秘めている!

「……? 諦めたわけじゃ……」
「もちろん……ないですよっ!!」

 僕は一度体を脱力させ、攻防から退しりぞく。その結果、当然あちらの攻撃が一斉に向かってくるが…………それでいい。

「はぁぁっ……らぁっ!!!」
「っ!? そんなこともできますの……!??」

 魔力防壁がちょうど石によって傷つけられたぐらいのところで、僕は一気に体に力を込める。すると、光がそれに呼応するように溢れ……水となって弾け飛んだ。
 弾けた水は石を砕き、魔力の線を掻き消し……空からサラサラと小雨こさめを降らした。

「な、なんて威力……」
「……感心している場合じゃないですよ。…………決着なんですから。」

 手を前へ突き出し、溢れる青い光を徐々に集約させていく。すると、その光はやがて球体をかたどり……そこから果てしない魔力の反応を示した。

「さ、させませんわ、『スレッドスパイダー・ファイア』……えぇ!?」
「意外とできることが多いんですよ、この魔法は……!」

 慌てて腰につけた袋からさっきの石を取り出し、妨害してくるが……既にそれを予想していた僕は空いている片手で地面を殴り、その際に生じた水の噴射で浮かび上がって回避した。

 そして、もう片方の手で作っていた青光あおびかりの球を圧縮し…………彼女目掛けて一直線に投げた。

「『オーシャン・エクスプロージョン』!!!」
「よ、避けられな……ぐはぁっ!!」

 キールさんの石の防御も間に合うことなく、彼女に球が当たった瞬間に強烈な水の爆発が起こった。そして、そんな衝撃に自身もやられたが…………僕の勝利だ。



『……そこまで! この試合の勝者はカーズ=アイク!!』

「や、やった……ぐっ!?」

 勝負に勝ち、早速喜んでいたところ……謎の頭痛に襲われ、その場に倒れ込んでしまう。これは…………


「魔力切れ……やはり負担は大きかったようですわね。」
「キ……キール、さん……ありがとう、ごさいます。」
「全く……敗者に肩を貸してもらっていては格好かっこうがつきませんわよ?」

 僕が苦しんでいると、ケロッとした様子でこちらへ近づいてきていたキールさんが肩を貸して、立たしてくれた。


「……あ、キールさんは……大丈夫でしたか? 最後の、まだ調整が完璧じゃなくて、怪我とか……」
「見ての通り、ピンピンしてますわ。予選はこの試合だけじゃないので、そこを考慮した上でいつも戦ってますの……もちろん、手を抜いているわけではないですわよ?」
(そ、そこまで考えているのか…………)

 介抱されながら、ふと思った疑問をぶつけると……彼女はそう答えてくれた。確かに、たった1試合でこんなに疲れていては……勝ったとしても次に繋がるものかは微妙だろう。


(魔力管理……課題は山積みですね。)


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