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十三章 龍と仮面

百五十八話 瞭然

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「………………えっ?」

 頓狂とんきょうな声を他所よそに、俺は首を掴まれている女の手首を握り潰す。そして、体を落とさせてから結界まで全力で蹴り飛ばしてやった。

「がほぉっ……!!??」
「なっ……な、何をしやぐぅっ!!?」

 続けて、青の方も何か行動をさせる前に顔面……もとい仮面を殴り飛ばす。この程度でどちらの魔力防壁も壊せるとなると、想定よりずっと弱いな…………

「……この程度で倒せると本気で思っていたのか? だとすれば、よっぽど赤い奴は優秀だったんだろうな。」
「ウ……ウルスさん、魔法は……動けないはずじゃ?」
「ああ……確かにかけられたが、あれくらいであいつらが俺に敵うわけない。特に、ステータスロックは対象との力の差があれば威力は半減だしな。」
「つまり……『演技』だったってこと……?」
「そうなるな。」

 

『えっと…………それは、分からない。私が読むのは行動とか心理だけで、考えてることそのままは解らないから。』


 彼女曰く、相手の考えていることはそう簡単に分からないが、代わりに行動やその心理を読むことはできるそうだ。実際、俺はそれを勝負中に仕掛けられ苦戦した。

 特に、行動は思考の写し鏡ともいえるほどに人物像を表すものであり、言い換えれば行動を誘導すると相手の思考が見えてくる……要は『目的』とやらを自白させたわけだ。

(肝心なことは結局分からなかったが……それでも奴らがどういう心理で動いているかは知れた。あとは…………)

「「『蒼色そうしょく雷華らいか』!!」」
「…………効くわけがないだろ。」
《時空斬り》

 吹き飛ばされた奴らの捻り出した破壊級合体魔法でもある、稲妻に装飾された水砲を時空の穴で打ち消す。すると完全に予想外だったのか、2人揃って豆鉄砲を喰らったかのように固まってしまった。

「なっ……な、んだそれは……!?」
「あんたに魔法は使えないはず……一体何をした!??」
「言う義理はない……ほら、返すぞっ。」
「……………っ!!!? ぐぅっ!!??」

 挑発をしながら、先ほど掴み取った剣を青仮面の太腿ふとももへと投げ返し、動きを封じた。

「……大体、魔法は使えなくとも魔力は使える。ただの学院生ならともかく……俺ならすぐにこうやって付加魔法も除去できる。勝ち誇るにも、もっとやることはあっただろうに。」
「ぐっ………」
「この森に転移できないよう仕向け、俺をここに誘き寄せるまでは良かったが……俺を倒せるほどのメンバーが居なかったようだな。 ……その程度で夢を口にするなよ、屑ども。」
「…………くそっ!」

 女がそう叫ぶのを他所に、みんなの方へ軽く目を向けながら指示を出していく。

「ハルナ、ミーファ。俺はこのままこいつらを捕まえる、その内に転移で学院へ戻っておいてくれ。」
「分かりました……ですが結界はどうすれば?」
「それは…………こうするっ!!」

 俺は自慢を勢いよく蹴り、飛び上がって結界がギリギリ頭に当たらないくらいまで近づく。そしてアビスを取り出し時空斬りの発動と同じ程度の速度で結界を斬り……破壊した。

「ち、力で……結界ってあんなふうに壊すんすか?」
「さぁ……でも、それほどウルスの実力が計り知れないことだけは理解できた。」
「話はあとだ、ひとまずみんなは…………」


「……………くくっ。」


 勝負は決した……かのように思われた直後、ももから血を流し苦しそうにしている青仮面が強がるように笑い声を上げた。それに対し俺はその嘲笑に反応してやった。

「……何を笑ってる?」
「馬鹿が……俺たちの敵はお前だけじゃない、それに追随ついずいする者たちだ。」
「ど、どういう意味……?」
「ふふっ……まだ分からないの? あなたみたいな化け物をせっかく学院あそこから引っ張り出した、なら……することはただ1つ。」
「…………まさか……!!」
「そのまさかだ……『遠鏡えんきょうしるべ』!」

 勘づいたクルイを煽るように、青仮面の男が俺たちへわざわざ鏡のような物体を作り出した。
 遠鏡の導とは、ある場所の現在の景色を映し出す超越級魔法であり、この鏡が見せたのは……ソルセルリー学院だった。

「お前さえ居なければ、英雄……ガラルス=ハートも十分倒せる!! ついでに学院生も何人か殺せるだろうな!」
「が、学院生って……あそこにはフィーリィアさんたちが……!!」
「クソっ、なら今すぐ戻って……!」
「とっくに手遅れよ、今頃学院は壊滅してる……それを見れば一目瞭ぜ…ん………」
















「……………ああ、一目瞭然だ。」


 向こうの景色を見て、俺はそう


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