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四章 タッグ戦
四十五話 自己紹介
しおりを挟む「ふぁぁ……眠い。」
「寝たらダメっすよ初日から。」
「えぇ…だって話が長いんだもん。」
「でも、ちゃんと聞かないといけないよローナさん。」
「は~い。」
入学式の最中、ローナが寝そうなのをニイダとミルが止めている。
(……どうする…………)
だが、俺はそんなことを考えている余裕はなかった。
『じゃあね…………約束だよっ!』
ラナの事をどうするか……いや、普通なら伝えるのが正解でしかない。
『生きてたよ』……って。
昨日とは違ってこれからいくらでも話す機会はある、それなら……
『死ね。』
『………は…死……?』
「…………………」
…………ラナは……俺はもう死んだと、思ってる。
だから…そんな俺がいきなり言っても……信じることはない…………だろう。
(なら、今はまだ…………いい。)
「続いて……新入生代表、マルク=アーストの挨拶。」
「はい!」
気付けば既に学院長の挨拶は終わっており、代表と呼ばれた男が舞台へと上がっていた。
「あれが首席っすか、随分好青年っすね。」
「まさに貴族って感じだね。」
「貴族? それって何?」
「えっ、知らないの? 貴族っていうのは……」
ローナがミルに貴族のことを教えている中、俺は首席の顔を見る。
マルク=アーストと呼ばれた男は眩しい服に金色の髪を流しながら、堂々とした態度で舞台へと上がっていた。
名前・マルク=アースト
種族・人族
年齢・16歳
能力ランク
体力・80
筋力…腕・77 体・81 足・69
魔力・104
魔法・12
付属…なし
称号…なし
(……ラナより少し低いな。)
ステータスが全てではないことは知っている。だが、少なくとも世間の常識ではステータスでほとんど語られている。そして、この学院でもそれは当てはまっているだろう。
なのに首席か……まあ、貴族だそうだし色々と英才教育でも受けてそれ以上の力でも身についているんだろう。
「……それでは、入学式を終了と致します。各自教室へと戻ってください。」
「やっと終わったぁ……よし帰ろう!」
「は、速いよローナさん、さっきまであんなに眠たそうだったのに…………!」
猛ダッシュで走っていくローナをミルが追いかけていく姿を見て俺も席を立つと、ニイダが後ろからついてくる。
「何かテンション低いっすね、何かあったっすか?」
「……もともとこんなものだ、むしろあいつらが元気すぎるだけだ。」
「ほぇーならいいっすけど。」
俺の言葉にニイダは納得したのか、手をぷらぷらとさせながら俺の先を歩いて行った。
(……そういえば、ここには新入生しか居ないんだな。)
前世での入学式にはいた気がするが……まあ、そういうものなんだろう。
「………………??」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
教室に戻り、席に着く。
そしてしばらくすると教師らしき人が教室へと入ってきて、教卓の前へと立った。
「みんな、配られたバッジは付けたな? それじゃあ始めよう………まず、私はラリーゼ。このクラスの担任をさせてもらう教師だ、よろしく。」
担任のラリーゼは長い黒髪を束ねて白衣を着た、背の高い女だった。見た目だけで言えば研究者にも見えるな。
(……確か、あの時の試験の元担当もこの人だったな。)
「ここは人族の国にある魔導学院の中でも、かなり上の施設になる。当然、訓練や勉強のレベルも高い…………しかし、それについていけないようじゃこれから苦労するだろう。私も全力で支えようと努力するが、くれぐれも研鑽(けんさん)を怠らないように。」
そう言うと、ラリーゼは俺たちを見渡して言葉を続けた。
「あと……分かっているとは思うが、ここは貴族や平民など一切関係ない。今時そんなことでぐちぐち言う奴はいないと思うが…………変な問題を起こすなよ。」
旅の中で知ったが、今でさえ貴族や平民での差別などは無くなったようだったが……昔はその格差がとても酷かったそうだ。その時代を俺は知らないので何とも言えないが……何故、どの世界でもそんなものがあるのだろうか。
(まあ……知るよしもないが。)
「この学院の行事はまた詳しく教えるとして……今日は自己紹介をしてもらう、端から順にやってくれ。」
「は、はい! 私は…………」
ラリーゼの指示で端から順に自己紹介をすることになり……やがて俺たちの番がやってくる。
「私はローナです、得意な魔法は火魔法だよ! これからよろしくね!」
「俺はニイダっす、得意魔法は電気と……金属魔法かな? まあよろしくっす!」
「わ、私の名前はミルです。得意魔法は水魔法です、よろしくお願いします。」
三人の無難な挨拶に習って、俺も自己紹介する。
「俺はウルス、得意な魔法は……風魔法です。これからよろし……」
「…………えっ!?」
よろしくと言い終わる前に、不意に後ろの席からガタっと椅子の音が鳴った。
振り返ると……そこには驚きの顔をしたラナがいた。
「……いや、そんな…ことは……」
「…………」
俺はそんなラナに特にリアクションを起こすことなく、そのまま席に座る…………彼女には悪いが、下手に反応してバレてしまったら元も子もない。
「……どうした?」
「い……いえ、すみません、何でもありません。」
「そうか……では、次。」
ラナの動揺で少し中断されたが、またすぐに自己紹介は再開されどんどん進んでいく。
そして……彼女の番が回って来た。
「わ、私はライナです。風魔法が一番できます……よ、よろしくお願いします。」
俺の名前にまだ驚いているのか、少し言葉がたどたどしかった。
それも無理はない、何せ…………死んだ奴の名前と同じ人間が今、目の前に存在しているのだから。
(……これで、いいんだ…………)
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