二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

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三.五章 『守る』ために

四十二話 守るために

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「ウルス、相変わらずそんな感じなのか……もうちょっと派手でもいいんじゃないか?」
「派手なのはあまり好きじゃないので……地味で十分です。」

 今日はいよいよ学院に通う日、俺は服の見直しをしていた。

 学院は制服などが無く自由なので、俺が着るのは黒の長袖の服の上に茶色のコートを着て黒の長ズボンという、色合い的には地味なものだが……俺はこれくらいがいい。
 態々目立ってやる理由もないし、いざと言う時は隠密行動だってこの色なら可能だ…………まあ、黒が好きっていうのもあるかもしれないけれど。

「……おっ、いい感じゃないかミル! 流石我が弟子だ!」
(テンション高いな、師匠……)

 部屋から出てきたミルを見て、師匠はそう褒める。

 ミルが着る服は白の服に青のコートと、水色のスカートといった鮮やかな色合いの服装だった。
 ミルは照れ臭そうに髪を弄りながら、俺の方を見て聞いてくる。

「ウ、ウルスくん……ど、どうかな? 」
「……ああ、良いと思うぞ。」
「そ、そう? えへへ………!」


 そうやって笑うミルが途端に眩しく見えた。あまりこういうことを感じたことがないので合ってるか分からないが……これが『可愛らしい』という奴だろう。

(……学院か…………)

 合格が決まってからの間も、俺とミルはさらに特訓を重ねた。その結果、ミルはまたステータスが上昇し、俺はステータスこそ変わらないが技術的な成長もそれなりしたはずだ。




名前・ミル
種族・人族
年齢・15歳
 
能力ランク
体力・194
筋力…腕・141 体・115 足・119
魔力・200

魔法・14
付属…なし
称号…【魔法の才】
   【化身流継承者】


 特に、ミルはこの期間で化身流を習得した……まあ、強力な魔法なので学院で使うことはないと思うが。

「ウルスくんは……いつも通りって感じだね、カッコいいよ!」
「ああ……ありがとう。」

 ちなみにだが、俺のコートは裏返しにも使えるようになっている。裏返しにすると色が黒になり、裾が伸びてロングコートになる。また、襟がなくなりフードになったりと少し変化もある。

(使うことはないと思うが……一応、いざという時の変装用に仕上げて置いた…………師匠が。)


「よし……ミルは準備できたか?」
「うん、オッケーだよ。」
「……じゃあ、行くか。」

 荷物をボックスに入れ、外に出る。そして、師匠は前と同じように扉の前で見送ってくれた。

「さて……しばらく会えなくなるな。」
「そうですね……でも、また夏頃には帰ってきますよ。」
「ああ、その時は楽しみにしてるぞ。」

 学院に通うとなると寮生活になるので、ここに戻ることもほとんどなくなる。
 今まで住んでいた場所を離れるのは寂しいが………旅の時に比べればなんてことない。

 師匠は俺たちの肩を叩き、話し出す。

「それじゃあ……ミル。学院じゃ、ずっとウルスと一緒に居られるわけじゃない。例えウルスがいなくても1人で何でもできるよう、成長するんだぞ。」
「はい!」

 ミルは返事をする。


(……変わったな、ミルも。)

 出会った頃のミルは哀しみに暮れ、今にも消えてしまいそうな小さな光だった。
 



『…あの……き、今日も魔法…教えて?』



 けど…………ミルはその辛さを乗り越え、今となってはこんなに明るく、優しい光となっていた。




(……俺なんかより、ずっと…………)





「……そして、ウルス。」
「はい。」
「お前さんは強い……それも、俺が知っている限りでは世界一だ………だけど、決して強さに溺れるなよ。その強さは人を脅かすものでも傷付けるものでもない……分かるな?」
「……………はい。」



 俺の強さ……それは……







『いや………だ………』



『ぁぁ…みんなぁ…ひっく…うぐ…みんなぁぁぁぁ……!!!!!』






(…………守る、ため。)



 もう、二度とあんな………嫌な思い出は作らせない。



 街が襲われ、父さんと母さんが殺されたこと。



 初めて会った時の、ミルの哀しい顔。









 そして……………前世で親を殺されたこと。







(……俺は、二度と見たくない。)





 己を恨め。



 あの時の弱さを憎め…………!








「じゃあ……そろそろ出発します。」
「ああ、二人とも楽しんでこい。」

「「はい!」」

 俺は転移魔法を唱える。


「………………」


 俺はミルの顔を見ると、彼女は笑ってくれた。


 その表情には期待と喜びの色が映っており、俺を照らしてくれた。






(………三度目は、ない。)








 だから俺は…………今日も、最強を目指す。



















 大切なものを、守るために。






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