43 / 291
三.五章 『守る』ために
四十一話 師匠
しおりを挟む「いよいよ明日か……」
俺は椅子に座りながら、夜の景色を見て呟く。
外は月明かりに照らされ、一帯の草原が青白く光っていた。
(確かに、俺が学院に行ってみないかと言ったが…………いざこうなると寂しいな。)
明日はついに、あいつらが学院に通う日だ。学院では寮生活になる為、そうしばらくは会えなくなるだろう。
……そう言えば、ミルにあれを頼まれてたな。そろそろ時期的に植えておかないと…………
「……帰ったか。」
そんなことをぼんやり考えていた時、玄関から扉を開く音がした。
そして居間の扉が開き、ウルスが神妙な面持ちで近づいてきた。
「…….遅くなりました。」
「おお、おかえり……確か、村に行ってたんだな……どうだった?」
「……村には墓石がありましたよ、誰が作ったのかは知りませんけど……一応、手を合わせておきました。」
「……そうか…………」
「………それで、用事とは?」
「あ、ああ……そうだった。」
ウルスになんて返そうか迷っているうちに、彼から本題を切り出される。
……まあ、渋るようなことでもない。明日に負担をかけたくはないし、早々に始めよう。
「勝負だ勝負………俺とお前の、な。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……何故、急に勝負を?」
学院に通うことになる前日の夜。いきなり師匠に勝負を挑まれ、流れのまま戦うことになっていた。
「まあ、あれだ……入学前の一勝負ってやつだ。それに、最近戦ってなかったしな……お前の力を再確認しておきたいんだ。」
「……そういうことなら、分かりました。ルールはどうします?」
「そうだな……今回は武器の使用は禁止、先にどちらかの魔力防壁を壊した方が勝ち……でいいな?」
「はい。」
その返事を皮切りに、俺と師匠は互いに構える。
……今となっては俺の方がステータスは上回っているし、帰ってきてから何度か戦って全て勝利はしているが………油断できるような相手じゃない。
(……せっかくだ、『アレ』を試すか………)
「じゃあ……行くぞ!」
「……いつでもどうぞ。」
俺が挑発すると、師匠は超級魔法のギガ・スパークを早速放って来た。
俺はそれを軽く避け、一瞬で師匠の背後に回り込む。
「……やっぱり避けるか。」
「いきますよ………!」
俺は手を手刀の形に変え……魔法を唱えた。
「『スウァフルラーメの呪剣』」
「………っ?」
瞬間、手から紫色の半透明の光が剣の形を形成していき、師匠目掛け超スピードで伸びていく。
「うぉっ!!?」
そんな声を上げながらも、師匠は振り返ってその剣を避けようとした。
しかし完璧に避け切れてなかったようで、紫の剣は師匠の魔力防壁を体を避ける形で貫き穴を空けていた。
「なっ、穴を……どうなっている……?」
魔力防壁は基本的にひび割れるように壊れるのが基本的で、一部だけ欠けたり穴が空いたりするようなことはほとんどない。ましてや師匠クラスの魔力防壁なら、俺でも綺麗に穴を空けるほどの魔法はこれくらいしかない。
師匠は驚いたまま俺に質問をする。
「……この魔法も、龍神流か?」
「はい、最近覚えた魔法です。魔力消費は多いですが、このように威力もずば抜けて高くて、長さも調整できるので便利ですよ…………まあ、貫く程のものなので人にはあまり使えませんが。
「な……なら使うなよ!?」
「師匠なら避けると思ったので。」
実際スピードも抑えていたし、急所を狙っていたわけでもないので、最悪俺の回復魔法を使えばいいので使うのに躊躇はしなかった。
(……それに、こういう時くらいしか『人』には使えないからな、他に試す場がない。)
「はぁ……相変わらず凄い魔法だな、龍神流は。確かお父さんが作ったんだよな? どうやって作ったのか聞いてないのか?」
「……さあ、あまり父の身の上話は聞いたことないので……俺も小さかったし、覚えてなかっただけかもしれませんが。」
……よく考えたら、ただの村人がこんな魔法を使えるなんてとても不思議なことだが…………きっと、父さんには才能があったのだろう。
………それに……………
「……でも、この龍神流を完全に極めれば……何か分かるかもしれません。」
龍神流は、父さんが俺に残してくれた唯一の物だ。
(これは、俺をきっと導いてくれる…………そう、信じよう。)
「……そうだな、じゃあ続けるか。」
「はい……かかって来てください。」
「お前も言うようになったな……じゃあ、遠慮なく!」
それから俺たちは、夢中になって勝負を続けた。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
プリズム―黒と白と七色の冒険譚―
Kyon*03
ファンタジー
『ブラックホール!』……とメイド服を着た銀髪の女性が言い放ち、主人公タリムは“赤のオーラ”が使えなくなってしまった。
赤のオーラが使えなくなったタリムは、オーラを取り戻すため、幼馴染のオペラとともに旅に出るのだが……。
※小説イラストは「すぐつかレルンさん」に描いてもらいました!
X(旧:Twitter)⇒ @Sugutsuka_Rerun

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる